落第騎士の英雄譚–力の求道者–   作:黒乃 柳

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今回は二本立てで彼方は貶め回、此方はネタ回です…今回は作者も幻聴として出演しますが…荒れますね、恐らく(苦笑)


痴話喧嘩、作者の介入、R18スレスレの単語(勿論伏字)が苦手な方はご注意下さいm(_ _)m


誓いと追憶–掛替えのない存在と新たな出逢い–

 

 

翌日、プールで鍛錬を積む為にバスを半ば貸切状態となる事態に悠騎は苦笑する

 

 

 

「…一輝よ、何をどうしたらこんなに信者が増えるんだ?」

 

 

悠騎は隣に居る水着姿の一輝へと語り掛けるが其の視線は一輝以外の生徒達に向けられている。

 

行きでさえバスに乗り切れるか如何かという程の生徒の数に苦笑する、自身やステラ、珠雫、春姫、アリス、変装したエーデを除いてもかなりの人数だ…最悪帰りは己が能力でぱっと帰るか?等と思案していた悠騎に一輝は苦笑で返す

 

 

「あ、あはは…ま、まぁ…色々あってね…というか信者じゃないからね?」

 

 

「…そうか…まぁ、其処が一輝の良い処ではあるが…

 

——あまり、根を詰めるなよ?

 

御前は優しいから少しだけ心配だ…ショッピングモールの件もあるのだろう?身体の使い方を教えるのは」

 

 

同じく水着姿で語る悠騎、生と死の循環の縮図たるガンジス川を四年間肌身で感じ続け遂に『仙術・刻王神拳』に辿り着いた悠騎だからこそ一輝の意図が読み取れる。

 

 

「流石だね、僕にはこういう事しか出来ないから…良かったら悠騎も手伝ってくれないかな?ヨガとかでも良いから…頼むよ」

 

 

「…良いだろう、しなやかな身体作りは体術の基本だ、但し真面目に受ける者だけにさせて貰う。

適当に流す奴に教えても互いにメリットは無いからな」

 

 

「はは、君は何時も辛辣だね…でも、助かるよ、じゃあ最初は——。」

 

 

 

今後の打ち合わせを始める、先ずは一輝が水中で自己を見詰め精神を養う鍛錬、次いで悠騎が真面目に希望する者のみにヨガを教える手筈となり身体を傷付けぬ為に後でラバーシートを人数分手配する事となる。

 

そんな二人の立ち姿に何人かの女生徒が見惚れていたが

 

 

「お師匠様…感激です!」

 

「今日まで付いて来て良かった…!」

 

「後は俺達がモテれば…ッ」

 

 

 

 

「…此奴等は…要らんな、動機が不純すぎる…金の無駄だ。」

 

 

「あはは…、まだ数日なんだけどね…」

 

 

等と感涙する五人組の男子生徒にさしもの悠騎もどん引いている有様だ。

 

 

 

「「お兄様♪」」

 

 

ふと、珠雫と春姫が其々の兄へと声を掛ける

 

 

「…はる、中々だな…露出が抑えられていて俺は好きな部類だ」

 

 

「珠雫も、白と黒でまるで春姫さんと打ち合わせたみたいだね?」

 

 

「みたい、じゃなくて打ち合わせたんですよ?」

 

 

「そうですよ〜?珠雫と春姫は仲良しですから♪」

 

 

「「ねー♪」」

 

 

声すらハモらせて笑い合う姿は中々に微笑ましい、まるで本物の姉妹の様に仲が良いから一輝にしてみれば数日前の春姫との会話は夢なのかと疑いたくなるレベルだ

悠騎としても自分に好意を向けてくれている親友の妹が元気で嬉しそうに笑う

 

 

(でも…夢、ではないんだよね…)

 

 

(珠雫ちゃん…嬉しそうで何よりだな…)

 

 

 

「あら、私には何も言ってくれないの?妬けちゃうわね〜」

 

 

「ま、まぁ一部の人には需要はあるのかな〜…何て、先輩方、どうですか?私の水着姿!」

 

 

横から聞こえる声に悠騎は嫌な予感、一輝も同様だが振り向かずに対処するのは難しく仕方なく振り向く

 

 

「……良し、沈めるか?」

 

 

「処す?処す?って返したい気もするけど尺もあまり無いしスルーしようか」

 

 

「一輝お兄さんまで酷いっ!?せめて似合ってるか如何か位言ってよお兄さ〜ん!」

 

 

「そうですよ!酷過ぎま「…まぁ、日下部は似合ってるだろう、少し…目のやり場に困るが」っ…黒之君に褒められるなんて意外、かも」

 

 

 

滅多にお世辞を言わない悠騎の発言に照れる日下部、本人としては事実を述べただけだが

 

 

 

 

——此れが3人の修羅とブン屋を動かすとは思ってすらいなかった。

 

 

 

「あらら〜…お兄様?春姫の方が似合ってますよねェ?」

 

 

春姫の眼が妖しく輝く

 

 

「いえいえ、お兄ちゃんは慎み深い照れ屋さんですからきっと本当の事が言えないんですよ……ネ?」

 

 

珠雫が小太刀(宵時雨)を顕現させる…いや、学外での霊装(デバイス)の持ち出しは…「な に か ?」…ごめんなさいなんでもアリマセン。

 

 

「っ…ちょ、ちょっと待て2人と…も?」

 

 

ふにゅん…時に不慮の事態で揉んだり胸板で何度体感したか解らない感触が後退りした背中に当たる

正直怖い、振り返るという行為が。

 

だが…此処で振り返らなければ後で何をされるか解らない為ギギギ…と油を注していない歯車の様な音がなりそうな速度で振り向くと

 

 

「…聞き捨てならないわねぇ…ユウ?まさか私達以外にもちょっかい出そうだなんて考えてないわよね?」

 

 

表面上は普段通りのステラ…否、よく見ればプールの水が沸騰している、その在り様は暴龍宛ら…というか誰もプールに入ってなくて安心したと思うのは私だけだろうか

 

 

「あは♪ステラちゃん?いくらお兄様と付き合ってるからってすこーし邪魔ですよぉ?」

 

 

「そうです、大体お兄様からお兄ちゃんに乗り換えただけでも許し難いのに…いえ、勿論お兄様を盗られる事を考えたら妹としては喜ばしい事ではありますが…兎に角、ステラさんは少し引っ込んでいて下さい」

 

 

「冗談じゃないわ!幾ら実妹と妹分だからといって今ユウが付き合って…うぅん、結婚を前提に交際しているのは私と絵留(エーデ)なの!あんた達こそ邪魔よッ」

 

 

「えぇッ!?ちょっと初耳なんですけど!?然もまさかの二股ッ!?絵留さんってバスに乗ってた美人さんだよね…これは…取材よ取材ーッ!」

 

 

まさに修羅場…然もステラの一言で交際関係が露呈されてしまった

まぁ、必要とあらば嘘も腹芸も出来る悠騎と違ってステラの性分からして嘘は吐き通せないのは間違いなかった訳だが

 

 

 

(…悠騎…同じ男として羨ましい反面君みたいにはなりたくないよ…いや、貶してるとかじゃなくて普通に境遇的に…が、頑張って!)

 

 

密かに修羅場を作り出した親友に対する見方を顕す一輝

かく言う一輝もかなりモテるがある意味、魅了(チャーム)の呪いでも掛かっているのでは?と思われる悠騎の不運さに一輝は此れから始まるであろう事態に恐れ慄いて徐々に距離を置いていく

 

 

「いや!俺は…っ」

 

 

日下部を含めた4人に詰め寄られさしもの悠騎も徐々に後退するが

 

 

「…全く、何をしているんですか…ほら、逃げますよ」

 

 

絵留…基、エーデに腕を掴まれ走り出す悠騎、鳶に油揚げをさらわれた形となった4人は同時に声を荒げる

 

 

「「「「!!待てーーッ!」」」」

 

 

—————

———

 

 

「た、助かった…有難う…」

 

 

滝の様に流れる水をカーテン代わりに息を潜め向かい合うエーデに礼を述べる、アリスが何処で入手したかは知らないが中々外れ難い鬘の様で水に濡れても違和感を感じさせない彼女は微笑みながらも苦言を呈す

 

 

「いえ、ですが悠騎…もう少し距離を置くべきかと…最近の貴方は近付き過ぎです、彼等に。」

 

 

確りとカラーコンタクト越しに自分を見詰める瞳を見詰め返すエーデ、細長い指は自身よりも一回り以上幼い身体を撫でるが撫でられている悠騎は俯いてしまう

 

 

「…矢張り、いけないだろうか…」

 

 

彼自身自覚は充分にあった、一輝達に自分の想いと出自を伝えた上で側に居る、其れは悠騎の我儘。

本来なら此の時点で別れを告げ去るべきなのに…其れでも側に居たいと願う心の弱さが招いている我儘だ。

 

 

 

「…ダメとは言いません、ですが…

 

——識ってしまったのでしょう?未来に起こり得る出来事を。」

 

 

そんな彼を想っているからこそ彼女は言葉を続ける、彼の事を知り尽くしているからこそ…如何いう道を選ぶのかも識った上で。

 

 

「…エーデには敵わないな…あァ識った、尤も其れを口外するつもりは無いがな。

 

…エーデは兎も角、ステラは甘い部分もある…そして彼女は第二皇女としての地位がある…俺は、迷ってるんだろうな…。」

 

 

愛しているからこそ、知らせたくない事実もある。

だが…其れと同時に違う形で知らさねばならないとも思う、何よりアストレア王妃が宗我に聞いている以上何れは知る事だ。

 

 

其れでも迷っているのは…今の彼女の笑顔を護りたいから、見縊っている訳でも驕っている訳でもない

 

今しかない学生時代を満喫して欲しい、ただその一点で迷っている…そして、本来であればエーデにも知らせるつもりは無かったが矢張り人生の先駆者か、と自嘲気味に笑う悠騎をエーデは…。

 

 

「——ばか、ですね…言った筈ですよ?」

 

 

『私は…消えない、居なくならない…』

 

 

静かに…けれどぎゅッ…と抱き締める力は温もりを感じさせる他に初めて身体を重ねた時の記憶を蘇らせる

 

 

「……エーデ、俺の予想が正しいなら貴女が何故犯罪者と呼ばれるのかが漸く解った気がするよ…」

 

 

恐らく、何らかの方法、或いは経緯でエーデは此の未来を識った…国にとっては最重要機密を。

 

其の為に"国家"からは犯罪者として追われる身となった…が、彼女は罪を背負ってでもヒトを救おうとしている。

 

——でなければ態々戦場で他者を救おう等とはしないだろう…何の道放っておいても死ぬなら、と幾度となく巡らせた結論を紡ぐ

 

 

「…如何でしょうね、買い被りかもしれませんよ?

 

——ですが…私と貴方は矢張り番…生きてきた道程は違いますが"他者を救う"という願いは…同じかもしれません。」

 

 

彼女の微笑む表情に愛おしさを覚え更に強く抱き締める。

此の細身に…何れだけの誓いと重荷を背負ってきたのだろうか…と涙を浮かべながら

 

 

「…積極的ですね…悠騎…、貴方が何方の道を歩もうとも最後迄私は貴方と歩みます、貴方はアルストロメリアの花の様に…私はエーデルワイスの花の様に…凛々しく」

 

 

「…高潔な勇気を…」

 

 

「「互いに、護り抜く」」

 

 

声が重なる、譬え世界が敵に回ろうとも…愛し抜く

 

 

 

「…俺は、宿命に抗う…綺麗事なんぞ語るつもりは無い。

 

——俺がそうしたいからそうする、其の過程は如何であれ成す事に変わりは無い…エーデとステラを愛し抜く為に地獄(絶望)すら破壊してみせる…!」

 

 

若き破壊神は迷いを抱えたまま己が成す事は変わらないと微笑む、破壊とは何もマイナスイメージだけではない

 

 

苦悩を砕き、病を祓うもまた…破壊也。

 

破壊とは新たな創造、既存の考えからの逸脱も見方を変えれば破壊と相成る。

 

 

 

——故に、漸く時空神としての力を使い熟し始めた二重覚醒者(デュアル)たる新たな破壊神は祖父ともう1人の自分に"修行"を申し込んだ。

 

 

(…その為には…力を使い熟す必要がある、——あの時の様に感情に任せて全てを破壊する様な無様な勝ち方ではいけない…否、あれは勝ちですらない。)

 

 

何方の力も極限迄引き出さねば宿命に抗う等到底不可能だ

 

幸い、その極致に到った者は居るし数日前に存在を感じた

 

 

何なら別の世界で"心の勇者"と呼ばれし別次元の子孫にすら頭を下げよう

 

 

(俺は…運命(絶望)を破壊する…ッ!)

 

 

愛しい存在を抱き締め返し、口付けを交わす漢はもう一人の相棒(トリシューラ)から託された言葉に対する答えを出す

 

 

 

——其れが如何いう過程を描くかは未だ見えぬ儘に。

 

 

—————

———

 

 

「全く、二人きりでイチャつかないでよね…何時も譲ってばかりじゃ悪いから今回は譲るけど…」

 

 

「あら、ステラさんにも空気なんてものが読めたんですね?」

 

 

少し離れた場所で取材対象を一輝に変更した日下部を除いた4人が一つのテーブルを囲む、尤も此の際だからステラにも事情を聞いておこうという腹積もりだが中々口を割らない

 

 

 

「煩いわよ…全く、兎に角…私は悠騎と付き合ってるの、此れ以上は話すつもりは無いわ。」

 

 

思い描いた恋模様では無いが其れでもお互いに愛し合っている以上自分は幸せだ、と言わんばかりに話を終えようとするステラに珠雫と春姫が追撃を掛ける

 

 

「へぇ〜そうですかァ…まぁ、私としては貴女からお兄様を護る手間をお兄ちゃんに傾ければ良い話になりましたが…

 

——ステラさん、お兄ちゃんとせ○○すはしたんですか?」

 

 

ぶふォッ!?…ステラが噴き出す

 

 

「珠雫ちゃん大胆ですね〜?でも、私も聞いておきたいですぅ、確かお兄様は薬草学も齧ってたみたいだし…あ!もしかしてお薬——(ぴー)もしたんですかァ?お医者さんごっこですかァ?」

 

 

ぶしゅゥッ!!…湯気を出して赤面する、ダブルパンチ処か悠騎が好きなカードゲームの用語に双闘(レギオン)アタックというものがあるが正に其れを受けた気分であろう

 

 

「な!?ななななッ!?!?」

 

 

パクパクと口を金魚の様に開閉する、顔処か身体全体が紅い

 

 

「ふふ…珠雫も春姫も女の子がはしたないわよ?

 

——まぁ、婚姻前ですもの…普通のじゃなくて——(ぴー)でシてるんでしょ?お兄さんがその気なら私でも出来るんだけど…羨ましいわ、ステラが。」

 

 

すかさずフォローに入るアリスだが何、彼に普通を期待した処でシリアスな場面なら兎も角日常パートではギャグ要員だ、全く問題無い(役に立たないという意味で)

 

 

「………て…いわ…」

 

 

「はい?」

 

 

「…し…な……よ!」

 

 

「何ですかぁ?」

 

 

 

ぶちッッ!!

 

 

「してないわよッ!?キスや手は繋いでくれるけど何で一向に手を出してこないのッ!?

 

何なのよっ!『YOBAI』って!?一輝も悠騎もシてこないなんて伝統ってなに!?食べられるのッ?!

 

大体どうしてお尻が出てくるのよッ!バッッカじゃないのッ!!」

 

 

 

「ぐはァッ!?」

 

 

「ゆ、悠騎?!」

 

 

 

走り出すステラ、小腹を空かせたエーデに自前のおにぎりや唐揚げ等を食べさせていた悠騎にドロップキックを食らわせた挙句先程迄エーデと語らっていた場所に閉じこもる

 

 

 

「……ふん、お兄ちゃんも何であんな暴力女と絵留さんを選んだんでしょう?」

 

 

「ん〜…良く解りませんね〜…もし珠雫を選んでいたら私としても本当の姉妹に成れるから嬉しいんですけどね〜、姉妹丼です〜…♪」

 

 

「末恐ろしいわね…貴女、まぁ…此処はお兄さんに任せるとして…

…其処の貴女は、お兄さんに何か用事?其れとも一輝お兄さんに用事かしら?」

 

 

春姫の思考に苦笑しながらもアリスは物陰から隠れて様子を伺っていた存在に声を掛ける、最初は硬直していたが観念したかの様に姿を現わす

 

 

「…え…っと…ボク、は…」

 

 

「……何方も、って処かしら?午後からは悠騎お兄さんが希望する子だけにヨガを教えるみたい、今からじゃ一輝お兄さんを探すのも苦労するだろうし…ね?」

 

 

「う、うん…ぁ、ありがとう…」

 

 

儚げな少女…といっても見た目からして春姫と同い年位だろうか、はにかむ仕草は愛らしいと形容出来るが何処か危ういものを感じた春姫は彼女をじっと見つめ呟きを漏らす

 

 

「……失った名誉を濯ぐ為には…圧倒的な迄の力が必要です。

 

其れこそ敵と認識した者全てを屠る位…うぅん、屠るなんて生温い…生け捕りにして死ぬ迄嬲り続ける位しないといけません。

 

そうじゃなきゃ、傷付けられた矜持(プライド)は満たされないでしょう?

 

——自分であれ…大切なヒトのものであれ、ね。」

 

 

 

「ッ!?」

 

 

息を飲む黒髪の少女、心当たりがあるのかと珠雫とアリスは春姫に視線を向けるが春姫は微笑みながら立ち上がり指先を彼女の首筋に這わせ耳許で囁く

 

 

——まるで、彼女の中の昏い感情を…憤怒の炎を更に煽る様に。

 

 

 

「何て、私とお兄様の身の上話ですよ〜…——如何か、お忘れ下さいな?」

 

 

くすくす…くすくすくすっ、と可笑しそうに笑い「売店で何か買ってきますね〜」とその場を離れる春姫、珠雫は薄々感付いていたものを自覚し、アリスは悟る

 

 

(…春姫……お兄様なら何か知ってるのでしょうか…)

 

 

(…ある意味、お兄さんの双子っていうのは事実ね…"好き"と"嫌い"…合わせ鏡みたいな双子…)

 

—————

———

 

 

「……地味に痛いな…」

 

 

背中に鈍い痛みを感じながらヨガの基礎、マールジャーラ()ポーズ(アーサナ)を丁寧に、呼吸法(プラーナ・ヤーマ)も間違える事無く教える、本来なら自分も混ざり教えるのだが故障がある場合は別だ

数回動きを見せて後は注意点を教えているのだがふと、視線を感じ首を傾げる

 

 

「…君は…確か…」

 

 

「ぁ…絢瀬、だよ…その…今日は宜しくお願いします…!」

 

 

名前を思い出そうとして思案していた悠騎に絢瀬と名乗る少女は頭を下げ様とするが

 

 

「そうか…絢瀬、礼儀正しいのは感心するが鍛錬中は其れに集中してくれた方が嬉しい、今日は一輝のオマケみたいなものだからな。

 

彼奴が午前中に言ってた様に自分の内側にも眼を向けろ、ヨガは唯の運動じゃない…自己を見詰める瞑想でもある、呼吸の仕方一つ一つで其れが解るようになれば大したものだ。」

 

 

くす、と微笑む…春姫と顔の作りは同じなのに其の微笑みからは険を感じない、指導者として厳しくも穏やかな笑みだ

 

 

「は、はいっ……黒之君って皆が悪魔とか言ってて怖いイメージがあったけど優しいんだね…」

 

 

同じく微笑みながらも真面目にヨガに取り組む絢瀬、其の姿勢に好感を抱くも首を横に振る

 

 

「…優しくはないさ、もし俺が優しいとしたら其れは周りの奴等が与えてくれた光を反射しているだけ……基本的に、現金な奴だぞ?俺は。」

 

 

人間不信に陥らなかった訳では無い、寧ろ師に拾われて半年程は見るもの触れるものが敵と思える程だった

 

だが…師は見捨てず愛情を注いで彼を鍛えた、厳しいだけが愛情ではないように優しいだけでも愛情ではない…。

 

本当の意味で、其れこそ祖父と孫の様に育ててくれた存在…何より今現在彼を愛する存在が居たから今の悠騎が在るといっても良い。

 

 

「…優しくない人はそんな事言わないよ?でも、ボクも"強く"なる為に来たからコーチング…お願いします。」

 

 

 

「ふ…貪欲に歩もうとする奴は好きだ、なら次は——。」

 

 

 

絢瀬と他数人の生徒に請われる儘次のポーズを教える、ヨガは柔軟とは少々異なり身体に負荷を掛けるものもある。

確りと取り組めば柔軟な身体を手に入れられる以外にも遅筋や精神も鍛えられる理想的な瞑想の一種だ。

 

 

「…何よ…ちょっとくらい私に構ってくれても良いじゃない…ユウのばか…」

 

 

尤も…其れを恨みがましく見詰めるのは矢張り構って欲しいからだろう、そんなステラにブン屋こと日下部加々美はにやりと笑みを浮かべ近付く

 

 

「水着だって…ユウが気に入りそうなものを頑張って選んだのにな…

 

——…自分の内側に意識を…か…」

 

 

静かにプールサイドから降り水に浸かり、そして膝を抱える様に丸まり己が内面を見詰める

 

 

(…あの人…ソウゲンはユウの選ばなかった道の最果てに到ったあの人は私の事を"竜の姫"って言ってた…導き手でもある、と…それはつまり…)

 

 

私の内側(能力)は…炎の能力では無い?と、疑問を抱く

無理もない、混乱し過ぎる事が立て続けに起きたのだ…驚きや戸惑いが無い方が珍しいだろう

 

 

(——でも…もし、その力でユウを護れるなら…私は…)

 

 

その力が欲しい、せめて…足手纏いにならない位…

 

——彼の隣に立っても見劣りしない位、強く在りたい…!

 

 

「…ステラちゃんって黒之君とぶっちゃけ何処まで行ってるの〜?」

 

 

「がぼッ!?」

 

 

急な来訪者の言葉に動転し水を飲み込み浮き上がる

 

 

「ごめん、まさかそんなにびっくりするとは思わなくて〜…でも、その様子を見ると付き合ってるんでしょ?」

 

 

先程の反応で付き合っているのは明白、だが動転しているステラは慌てて誤魔化そうとする

 

 

「けほっけほ…ッ…な、何言ってるのよ?あ、あんな朴念仁と私が?冗談でしょ?」

 

 

あははと笑い勢いで誤魔化し抜こうとするステラ、然し日下部はそんな事はお見通しと言わんばかりに先手となる言葉を紡ぐ

 

 

「いやいや〜あれで細かい所に気を配れるから朴念仁というよりは、私の見立てからしてただ恋愛経験に疎いだけかも?

 

さっきだって女の子達にそれとなく色目使われても見向きすらしなかったし?」

 

 

「ちょッ!そ、それ何時の話!?

 

…でも…そっか…矢っ張りユウはそういう人だもの…当たり前といえば当たり前よね、ユウは私達を見ていれば良いんだもの…」

 

 

慌ててプールサイドを攀じ登り詰め寄りながらも何処か安堵しているステラに対し可笑しそうに笑う日下部、此処で失言だったと口を噤むが時既に遅く…。

 

 

「ほら、うじうじ悩んでるなんてらしくないよ?私で良ければ相談に乗るから…少し話そう?」

 

 

腕を掴まれ笑顔で座る様に促される、此処迄過剰に反応したのだ、最早逃げる術はステラには無かった。

 

 

—————

———

 

それから暫く経ち

 

 

「ふぅん…つまり黒之君が一時期荒れてた時に彼がステラちゃん達の元を離れようとしたのが許せなくて突っ込んでいったらお家の事情とか彼女さんの事とか色々あったけど、めでたく恋人関係になった訳、ね…で、1週間経つけど未だキスのレベルしかされてない、と」

 

 

「ま、まぁ…そんな処…かな?」

 

 

所々ぼかして話したが嘘では無い、寧ろ要点を纏め的確に話している

 

 

「…私はてっきり先輩と夜の一刀修羅!とかやってるのかと思ってたけど…ふむふむ……そう考えると黒之君、割と酷い人でもないんじゃない?」

 

 

ぽつりと呟かれる言葉に首を傾げるステラ、一輝の話から何故酷い人ではないという結論が出るのか不思議そうに首を傾げる

 

 

「…つまり、黒之君は無意識の内に先輩やステラちゃんに未だ罪悪感があるのよ。」

 

 

「!…罪悪感…って、どうして?」

 

 

振り返るに悠騎とエーデは未遂とはいえ交際して二日目で事に及ぼうとしていた、つまり人並み…若しくはそれ以上の性欲はあるという事になる

其れを何某かの理由で…然も罪悪感で我慢していると聞きステラは問うが日下部は即答で返す。

 

 

「だって女の子にとって初めての経験って一生ものだし…そっか、そう考えると一番辛いのは黒之君とステラちゃんかも…」

 

 

愛しているからこそ大切にする、其れはエーデにもステラにも接し方自体は変わらない

 

だが、(まぐ)わうとなると話は別だ、一応家柄的には引けは取らない家の出同士だがステラは国賓扱い、対する悠騎は今の処一学生兼傭兵…何より親友に対する後ろ暗さが相俟って自分からは手が出せないのだろう

 

 

 

無論、彼自身も気付いていない無意識レベル

の感情ではあるが。

 

 

 

「…矢っ張り…私はユウを傷付けてるだけ?」

 

 

悲しそうに呟くステラ、そんな事はある筈が無いにも関わらず罪悪感を感じる彼女に日下部はブン屋ではなく一人の学友として立ち上がる

 

 

「私、黒之君を探してくる、大丈夫!だって絵留さんやステラちゃんを見る目だけは他の女の子とは明らかに違ってたもの、だからステラちゃん…ちゃんと話さないとダメだよ!」

 

 

「ちょ!…行っちゃった…」

 

 

お節介ではあるが悪気は無い学友の行動に面を喰らうステラだが…こういう状況でも無ければ恋人らしい事をせがむなんてしないだろう?

 

 

「……だって…女の子からそういう事を言うなんて…エッチな女の子だって思われてもし嫌われでもしたら…」

 

 

……少し、昔話をしようか…

 

 

「…?」

 

 

私はね、ステラ君…実は所帯持ちなんだ

 

 

「へぇ…って、普通に喋っているけど何時もの幻聴かしら…」

 

 

ははは、二次作品の作者の特権というものだよ。

 

話を戻すが女の子二人に可愛い伴侶が一人…兄弟姉妹も其の血族の人達と家庭を築いているんだが…昔、あの人と結ばれる前に支えになって貰っていたヒトを血の繋がった子に盗られてしまってね、あれは…表面上は兎も角内面では一年や二年じゃ納得出来なかったな…。

 

 

「にじ?…良く分からないけど、あんたも大変だったのね…」

 

 

ふふ…まぁ、人生色々ってやつだよ、でもね…今では感謝しているんだ…

 

 

「感謝…?」

 

 

…ある事がきっかけでね、幼い頃から私は『人間らしさ』というものが解らなかった。

 

 

 

何故、人は他人を踏み台にしてまで上を目指そうとするのか

何故、人は簡単に友や家族、恋人と呼べる存在を裏切れるのか

 

 

如何して…私の胸には空虚しか残らないのか…

 

 

「……」

 

 

其処で…気付いた。

 

踏み台にされたくなければ圧倒的な迄に強くなれば良い。

 

裏切られたくなければ孤独な侭で良い。

 

 

けれど…空虚さはそのままだ、仕方が無い、我慢すれば良い話だ、とね?

 

 

「……それは…」

 

 

間違っている、かい?だろうね、でも綺麗事だけじゃ此の世界は生きていけない。

誰もが強い訳でも弱い訳でも無い世界で唯一の妥当案があるとしたら…其れは誰も傷付けぬ代わりに誰にも干渉されない様に強く、完璧を目指す…其れだけだ。

 

 

「ッ…」

 

 

——だが…そんな私にも転機が来た…

 

 

「転機?」

 

 

そう…転機だ。

 

私を支えてくれたヒト…そして後に私の伴侶になるあの人の妹…その妻がね、言ってくれたんだ

 

 

「…何て言ったのよ?」

 

 

…『貴方は馬鹿だ、どうして自分から辛い道を選ぶのか?——今度は私が姉に代わり貴方を愛する…だから…その硬く握った手を開いて伸ばして欲しい…貴方の手は…優しい手だから』…と、"私だけ"の為に泣いて抱き締めてくれた…

 

 

「っ…それって…」

 

 

ふふ、まるで今の君達の様だろう?尤も創作人物に自分の名前を付ける程私は自分が好きでは無いから公私混同はしていないがね。

 

 

でもね…妻の涙で私は人というものが…違うな、ヒトに戻れた。

嘘も偽りもない言葉は時に綺麗事に映るかもしれないが…だからこそ、響くものもある。

 

ステラ君、君も素直に想いを込めると良いさ…では、彼が来た様だから私はまた語り部兼傍観者に戻るよ。

 

 

「…その、ありがと、う…ございます…」

 

 

 

…どう致しまして、…皆様お目汚し失礼致しました、続きをお楽しみ下さい。

 

 

 

—————

———

 

 

「…すまない、遅れた…大事な用事とは何だ?」

 

熱心に指導していた処日下部に呼び出された悠騎と向き直るステラだが直ぐに俯いてしまう。

一応何通りかのポーズは教えてきたらしく後は自主練としたが何時まで経っても俯いているステラに心配になった悠騎は覗き込もうとするのだが

 

 

「…私は…ユウにとって重荷…?」

 

 

ぽたぽた…と膝に雫を落とし問う、エーデと逢瀬を交わしていた場所で…。

 

 

「ッ…何を馬鹿な…俺は…!」

 

 

そんなステラの涙を拭おうとするが

 

 

「だって…!何時まで経っても手を出してこないじゃないッ!エーデの時はあんなに早かったのに!!」

 

 

手を払われる、支えると誓いはしたが彼女も矢張り歳頃の女の子だ…愛されているのか不安になるのも無理は無い。

 

 

尤も…否、本当は解っているんだろう、自分もエーデ同様"愛されている"等というレベルではない事を

 

 

 

「……不安にさせたのなら謝る…だが、…ステラ、君は俺を誤解している様だから言うが

 

 

 

——俺は、今此の時でも君という存在全てに劣情を抱いている。」

 

 

 

「〜ッ?!」

 

 

ぼふッ!!

 

今日最大の赤面だ、…然し…公共の場で言う事ではない気もするが…否、此れも若さか。

 

 

「…俺はステラがエーデと同じ位に好きだ、其の紅いツーサイドアップの髪も笑うと太陽の様に眩しい笑顔、幼少期から剣を振るっている此の指先…羚羊の様な脚、否、脚線美…その…豊満な乳房も含め全てが魅力だ。

 

無論其れは外見的なものであり内面的なもので挙げ連ねるなら先ずは昨日述べた優しさ、そして才能に胡座を掻く事の無い努力家な面も挙げねば成るまい。

 

何より自分の至らない点を素直に認められる姿勢はヒトとしても素晴らしいの一言だ、少し強情な処はあるが其処もまた魅力、所謂ツンデレと思われるかもしれないが——」

 

 

聞いてる者が恥ずかしくなる程にステラの魅力を指折り数えていく、否…最早両手足の指では足りない程の魅力を述べ、当のステラといえば途中でオーバーヒートしてしまう程羞恥に染まる

 

 

「つまり、ステラには語り尽くせない魅力があるんだ…勿論エーデにもな?

 

そんな魅力的な女の子達と同じ空気を吸う事自体申し訳無いのに此れ以上俺を悩殺するつもりか?君はそんなに俺を魔獣にしたいのか?

だが、アストレア王妃やルナアイズ殿下に申し訳が立たないのも事実なんだ…なまじ血が繋がっている分、な?」

 

 

時間にして約半刻程魅力を一方的に語りながら手を出せない理由を述べる、因みに此れでもかなり端折った為彼女達の魅力を語らせたら数時間は一人で喋り尽くすだろう

 

 

——だが、最後の一言でステラの中の何かのスイッチを押してしまった

 

 

「…本当は…人目さえなければ今此の場で二人共組み伏せている、其れ位我慢しているんだ…欲望をぶつけてもしも君に嫌われたr「嫌わないわよッ!!」ッ!」

 

 

無理矢理押し倒される、ステラではなく悠騎が。

 

「私だってユウが好きよッ!大体私を優しいっていうけどユウの方が優しいし思慮深い、何より強くて格好良いんだからッ!

 

——…そんな再従兄にエッチな事をせがむ再従妹は…嫌い…?」

 

 

潤んだ瞳、震える唇…覆い被さる様に身体を密着させる再従妹(ステラ)に悠騎の理性はぷつん…と切れる

 

 

「——嫌いな訳が無いだろ…ッ!寧ろ大好きだッ!!二人共俺が護るって言った!一生俺が愛し続けるッッ!!」

 

 

 

「ンぅっ!ん…ン…ッ!」

 

 

後頭部に腕を回し唇を塞ぐ、何時もの優しい口付けでは無く力技で捻じ伏せる様な乱暴な口付け…舌を絡め取る舌遣いはエーデから学んだものではあるが唾液を供給しあう様なキスはステラから…否、二人から理性を刈り取る

 

 

「…はっ…ふ……ステラが悪いんだぞ…?聞き分けがないから…御仕置きだ」

 

 

「ン…良い、よ…?私に…ユウを刻み込んで…?」

 

 

互いに互いしか見えていない今、介入出来そうなのはエーデ位なものだが彼女は敢えて介入しないだろう

彼女自身がステラを認めている以上は寧ろこの件を交渉材料に悠騎に更なるアブノーマルな事を望むのが関の山だが

 

 

——御安心召されよ、15禁で生々しくやらかす程私は落ちぶれてはいない

 

 

 

 

「あらら〜…お兄様ァ?何をしてやがるんですかァ?」

 

 

「「ッッ!?!?」」

 

 

顳顬をひくつかせて現れるは最強の双子の妹兼女神(レア)である春姫、にこにこと微笑む表情(かお)には其の実憤怒が見え隠れしている

 

 

(はる…ッ!さては見張って…!?)

 

 

「——うふふ…二人共御仕置き、です♪」

 

 

足元を這う蔦に嫌な予想を打ち立てる二人ににっこりと死刑宣告を告げる春姫

 

あまりにも哀れな二人の様子を途中から伺っていた一輝は苦笑する

 

 

(…まぁ、ある意味自業自得だし…ね、本当に不味くなったら助け船を出そうかな…)

 

 

—————

———

 

 

其の後、蔦に拠る鞭打ちをステラの代わりに受けながら鍛錬で疲れた参加者全員を学内迄一瞬で転移させた悠騎は新たに配置された書斎のベッドに横たわりながら眉を顰める

 

 

「酷い目にあったな…ッ…未だ痛い…」

 

 

一応、自分で再生は出来るが痛みすら真摯に受け止めるべく敢えて其の儘にする辺り彼の不器用さ加減が現れている…そんな身体で大丈夫か?

 

 

「大丈夫だ、問題ない…等というと思っているのか?」

 

 

丁寧に返してくれる分君は優しいな…ほら…つ《栄養ドリンク》

 

 

「…要らん、というかあんたが絡むとろくな事にならんから暫く黙っていてくれ」

 

 

やれやれ、仕方ない…おや、誰か来た様だ。

 

 

 

 

こンこン

 

 

「悠騎…宜しいですか?」

 

 

「あァ…と、ステラも一緒か…如何かしたのか?」

 

 

仕事上各生徒の資料を厳重に保管する為の書斎は流石のエーデも入り込む事は出来ない、無理に入ろうものなら学園内の何処かに飛ばす様にしてあるからだ

其の為部屋の主である悠騎が許可したものしか入れないが今回はステラも一緒に入室してきた

 

 

「えェ…私はただ夜這いに来ただけですが…ステラ、御願いがあるのでしょう?」

 

 

さらっと先程の情事を見過ごしていたのだから子作りをしようと誘うエーデ、無論悠騎としては歓迎するが…

 

 

「ダメよ、さ、さっきのは未遂なんだから…って!そういう事じゃなくて…其の…ユウに剣を教わりたいな…とか、思ったり…して」

 

 

もじもじと気恥ずかしそうにするステラの言い分に暫しの沈黙、正直な話ステラの皇室剣技(インペリアルアーツ)はかなりのレベルだ

そも、西洋剣術とは東洋剣術に比べて斬れ味よりも"叩き斬る"という概念が強い、無論レイピア等の例外はあるが。

 

 

悠騎は確かに10年以上生死を掛けて培った経験則で相手の行動を先読み且つ深読みして追い詰める戦い方もあり其の実力を遺憾なく発揮する、膂力が急激に高まったとしても此の点は変わらないだろう…寧ろ鬼に金棒というやつだ。

 

 

然し、剣技に於いては其の人外宛らの膂力を以てして暴風を巻き起こす程の剣速で斬れ味を加算しているに過ぎない、つまり元々のスペックの差が出ているからこそ出来る荒業である。

 

 

「——…教える事は容易い、寧ろ剛剣という観点で言えば俺とステラの剣は殆ど同じだと言って良い…だが…俺で良いのか?

 

確かに剣を合わせるだけでも学ぶものはあるだろう、其れで身になれば俺としては此れ程嬉しい事は無い…今のステラの持ち味を殺さない範囲でなら…請け負うが本当に俺で良いのか?」

 

 

剣士としてステラを見詰める悠騎、自分の経験が愛しい者の力に成るなら喜んで教える

 

 

だが、6歳から12歳、そしてエーデの尽力に拠り完成を見た彼の剣は謂わば一度抜けば万の魂を刈る"殺人剣"…羅刹の剣である。

 

 

言い方は悪いが温室育ちの綺麗な剣では到底考えられないえぐい技も多々ある、悪影響を及ぼす恐れを考慮した上で問うステラは迷いなく頷く

 

 

「——勿論、恋人だからじゃない…何時か、騎士の高みでユウと戦う為に…私はユウを超えたいの、貴方とまともに戦う為には小手先の能力に走るんじゃなくて物理的に叩き伏せるしか道は無いんでしょ?」

 

 

大胆不敵に笑う、確かに…悠騎が"九次元防御壁"を展開したまま戦った場合、能力で押すタイプでは絶対に勝てないし生半可な膂力では傷一つ負わない

悠騎に傷を負わせるには一輝が後に生み出す《一刀羅刹》の様に一太刀に全てを注ぎ込み防御壁を突破する以外無い

 

 

尤も、《一刀羅刹》すらビクともしないだろう、ステラ並か其れ以上の魔力の全てを一太刀に込めない限り《魔導騎士》としての悠騎には傷一つ負わせられない

 

——神域とはそう簡単に到達出来ないからこそ神域なのだから…其の点を踏まえると彼とまともに切り結べるエーデは矢張り世界最強の剣士であり《魔人》だ。

 

 

(…流石だな、俺からヒントを与える前に気付くとは…)

 

 

同じく、にやりと口端を吊り上げて笑う悠騎、エーデとしても此の二人の戦いは愉しみでならない

 

 

(…二度目の観戦で気付く分素質はあるのでしょうね、後は経験さえ積めば…)

 

 

 

「…良いだろう、愛しているからこそ俺は剣士としては手は抜かん…俺の扱きは厳しいぞ?」

 

 

「望むところよ!直ぐに追い付いてやるんだからっ!」

 

 

 

微笑み返す二人、其れを暖かい目で見詰めるエーデは自分が来た要件を済ませようと救急箱を取り出す

 

 

「ふふ…若いですね、二人共。ですが今は傷の治療に専念しましょう…身体を壊しては意味がありませんから、ステラも手伝ってくれるのでしょう?」

 

 

「そ、そうね…ほら、背中向けてよ…かなり打たれてたでしょ?」

 

 

消毒はしたが念の為とばかりに消毒液を取り出す二人、甲斐甲斐しい二人の治療に痛みを感じながらも礼を述べる

 

 

 

「面目無いな…、っ……」

 

 

痛みは感じるが自分を案じてくれる二人の愛情を感じ微笑む悠騎、きっと何があっても此の三人の関係は変わる事は無いだろう…そう思う程に三人の間柄は何時の間にか深いものへと変わっていた

 

 

——唯一心残りなのは、春姫が此れから先如何動くかだが…今はただ、見守る事としよう。

 

 

 





次回はアニメ第6話に辺る回です、つまり"正規"なら胸糞回でもありますが…さて、如何なる事やら…(笑)
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