落第騎士の英雄譚–力の求道者–   作:黒乃 柳

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作者事情により長らく更新が出来ずに申し訳御座いません~_~; 約7ヶ月ぶりになりましたが今回は外伝物、然も作者の使用する端末が不調な所為で所々穴だらけという御粗末なものですがそれでも良ければご覧下さいm(_ _)m


Xmas外伝 護るべきもの

 12月も半ばに差し迫ったある日の晩、己が才覚と血反吐を吐く程の努力で七星剣王(セブンスワン)の称号を勝ち得た黒之悠騎と彼の祖父である黒之宗我は宗我が保有する高層ビルの一室で酒を飲み交わしていた。

 

 尤も悠騎自身が祖父と交流を深める様になったのは七星剣舞祭が始まる少し前であり未だに慣れてはいないが。

 

 

「……で、今日呼び出した理由は何だ?まさかただ酒を煽りたい訳でも無いのだろう?」

 

 

 隣で酒を煽る祖父…と言っても外見だけなら兄弟に間違わられてもおかしくない白銀の頭髪を上下に揺らす青年へと問う、彼が今現在生活している寮では2人の愛する女性が帰りを待っている、それを知らない筈は無いだろう?と不満気な表情を浮かべ暗に物語っている孫に宗我は肩を竦め

 

 

「そう急くでないわ、…此の数ヶ月で御主を取り巻く環境はかなり変わったと思うが…果たして絶望の未来を変えられるか気に成ってのう…?」

 

 

 月影総理から明かされた未来の話と悠騎自身が観た凄惨な未来、此れ等は全て何時か起こり得る未来。

 

 忌まわしき未来を回避する希望を見出す為に嘗ての仇であろうとも手を結ぶ、それが黒之悠騎が祖父黒之宗我との蟠りを捨てた要因の1つである。

 

 そんな彼の気持ちを知っているからこそ宗我は問う。

 

 ——今の御前は果たして未来を変えるに足る存在なのか?

 

 ——仮に変えられるとして…御前は何故其れを変えたいのか…と。

 

 

「…御主も知っての通り運命とは幾重にも枝分かれした川の様なものじゃ、喩え大戦を回避したとしても別の形で災厄は降り掛かる…否、下手をしたら元々起こる筈だった未来よりも悲惨な未来を辿るやもしれん…それは御主が過去を改竄しようとした際に何度も言ったであろう?」

 

 

「………。」

 

 

 宗我の言葉に悠騎は沈黙する、それは暗に反論が出来ずにいるという現れである。

 

 無理は無い…正当な覚醒を果した今だからこそそういった事は無いがそれ以前…家族を取り戻そうと過去へ時間跳躍(タイムリープ)したとしても世界の修正力といっても良い力が働き修正する処かかえって悪化してしまう始末であったのだから…。

 

 

「…まぁ、返事に困る話じゃからのう…今は取り敢えず置いておいておくかの…実を言うと他にも頼み事はあるんじゃよ。」

 

 

 悠騎が宗我と交流を持つ様になり半年、その間に彼が積んできた苦行を知っているからこそ宗我は彼の決意と覚悟を今一度確認しておきたかったのであろう…然し即答出来ずにいる悠騎を見て話の話題を変えると懐から地図と住所が書かれた紙切れを取り出し手渡す。

 

 

「…これは?」

 

 

「儂の友人が牧師をしている教会じゃよ、同時に孤児院でもあるがの、毎年この時期になると儂がサンタになってイブとクリスマスを過ごすのじゃが今年は多忙でのぉ…すまぬが儂の代わりに行ってはくれぬか?」

 

 

 返ってきた言葉に何故自分が、という顔をする悠騎…だがこの時の彼は何故か運命めいたものを感じ首を縦に振る事となる…。

 

 

 

—————

———

 

 

 12月24日

 

 

「やっと着いたわね、ていうか何であンた達も居る訳?」

 

「あら良いじゃない?お兄さんが居る処に私は居るものよ?」

 

 あの後、ステラとエーデに相談した結果2人が付いてくる事となった…正直な話今迄も何回か孤児院で聖夜を過ごした経験はあるが聖夜を"夫婦"で過ごすというのは慣れていなかった為喩え悪ふざけだろうとアリス(こいつ)が来てくれたのは嬉しい誤算だったのだが…。

 

 

「そうですよ、第一クリスマスの準備と称して七面鳥をトラック2台分寮に持ち込もうとしたステラさんがお兄ちゃんの御手伝いが出来るとは到底思えませんし。」

 

 

「あー…確かにあれはびっくりしましたね〜、ね?一輝?」

 

 

 珠雫ちゃんに呼応する様に頷きながら一輝へと話を振る春姫に頭を抱える、…いや、確かに驚きはしたがステラの燃費の悪さを考えれば…まぁ朝からびっくりはしたが。

 

 

 

「あ、あはは…まぁ人それぞれ食べる量も違うだろうし…可哀想だよ?」

 

 

 この中では唯一の良心である一輝も苦笑している、無理もないか。

 竜神憑依(ドラゴンスピリット)を体得して以来ステラの食事の量は増すばかりであったが流石に今朝起きたら近くで鳥の鳴き声が聞こえて少し怖かったしな…。

 

 

「う、うっさいわね…しょうがないじゃないしっかり食べないと眩暈がするんだから…そ、それにユウの手伝いは絵留(エーデ)もするんだから矢ッ張りあンた達が居る必要はないじゃない!」

 

 

「えー?でも姉ちゃん達が気付いて連絡くれなかったらおいらも…ついでに那岐も遊びに来れなかったにゃんよ?」

 

 

「悠輝さんと同じ意見というのは些か癪ですが…確かにお姉様達と一緒のクリスマスというのはとても楽しみで仕方がありませんわ?」

 

 

「あんた達ねェ…冬に来るとは聞いていたけどタイミングが良過ぎなのよ…」

 

 

 未だ生きているシチメンチョウを抱き締めながらにこにこと笑う悠輝と那岐に声を張り上げんとしていたステラはすっかり毒気が抜かれ2人の頭を撫でる、その姿は歳の離れた姉妹や姉弟の様で見ていて微笑ましい。そんな3人にエーデも微笑みを浮かべている。

 

 

「良いではありませんか、夏以来逢っていなかったから少しだけ心配していたのですが…ふふ、元気そうで何よりです。」

 

 

 言いながらステラに倣う様に2人の頬を撫でる様子は母親が我が子を慈しむようにも見える、2人に撫でられ那岐も悠輝も恥ずかしがりながらも甘えている…俺としても連れてきて良かった。

 

 

「そう言えば、2人とも何時の間にこっちに来てたんですか〜?昨日のお昼はお兄様達と一緒に居たからその後なのは分かるんですけど〜…。」

 

 

 はるがそっと近付いてきて俺に問う、はるからしたらこの2人(那岐と悠輝)は親戚筋の様なものだから気になるのは無理も無いのだろう。

 

 

「本当は勇気や新希も来る予定だったのだが2人ともそれぞれの世界での仲間や家族と過ごす様だな…仕方が無いから昨日の晩に俺が2人を連れてきた。—さ、そろそろ着くぞ?」

 

 

 地図と睨めっこして暫く歩いていたが漸く見えてきた教会らしき建造物を視界の隅に収めそのまま突き進む、如何やら先方の方も迎えを出していた様で元気一杯とばかりに此方に手を振る女性とその子供らしき女の子が近付いてきたのだが…。

 

(…っ…今のは…なんだ…?)

 

—————

———

 

 

 出迎えてくれた女性…望月琳音(もちづきりんね)さんと娘の優璃(ゆり)ちゃんに招かれるまま教会の門に足を踏み入れればこの教会のもう1人の主である望月優(もちづきゆう)さんが愛想の良い笑顔で屋内へと招き入れてくれた。

 

 

「態々すみません…本来なら夫婦揃って出迎えたかったのですが子供達の面倒も見なくてはなりませんので妻に迎えを頼んだ次第です、さ…外は冷えたでしょう?ココアをどうぞ。」

 

 

「わーいココアだにゃん☆」

 

 

「…少しは遠慮して下さいまし、此れだからどぶ男は…」

 

 

「ほら、大人しくしてなきゃダメじゃないの」

 

 

 優さんの出してくれたココアに無邪気な笑顔を浮かべる悠輝に対し那岐はやれやれとばかりに肩を竦める、そんな2人を宥めるアリスに内心評価を改めるが他のメンバーはそれ処では無かった。

 

 

「お兄ちゃん達知ってるよ!よく遊びに来てくれる刀華姉ちゃんと一緒に今年の七星剣武祭に出てた人達だもん!」

 

 

「あ、あの!僕お姉ちゃん達のファンです!サインして下さいっ!」

 

 

 すっかり人気者になっている一輝、ステラ、はる、珠雫ちゃんは院の子供達に囲まれている。アリスは…まァ悠輝達の世話をしている時点で御察しという奴だ。

 

 

「ちょっ!酷いッ!?」

 

 

 …最近彼奴に迄心を読まれているが此処は敢えてスルーしよう。

 

 

「ん〜仕方が無いですね〜…なら私と珠雫は奥の方でサイン会です〜♪」

 

 

「ちょ、春姫…仕方が無いですね…ではお兄ちゃん、お兄様…また後程…。」

 

 

 遠回しに子供達の面倒を率先して見ると申し出たはるに連れられる形で会釈をした後席を立つ珠雫ちゃんに会釈をし返す、今度何かを奢らなければな…。

 

 

「ねーお兄ちゃん?遊ぼー?」

 

 

「ふふ、良いわよ?…なら一輝、私達も行きましょ?」

 

 

「アリス1人じゃ大変だろうからね、僕も付き合うよ」

 

 

「皆が遊ぶならゆりも遊ぶです!」

 

 

 男の子に手を引かれる形で席を立つアリス、そんなアリスを見兼ねてか遊びに興じる一輝、1番面白そうな方へと向かう優璃ちゃんはにこにこと楽しそうに笑っている。

 

 

 

「夕食迄に戻ってくるのよー?…それじゃ、私もパーティの準備を始めるわね、あなた?」

 

「ありがとう、後で僕も手伝うよ。」

 

 

 

 飾り付けや料理の準備を始める琳音さん、悠輝が連れていた七面鳥を見て「あら、美味しそうな七面鳥ね♪」等と宣うものだから七面鳥はすっかり怯え悠輝に擦り寄る…見ていてシュールだ。

 

 

「はは、すまないね…勿論冗談だから気にしないでね?」

 

 

「ぅー…おいらガボと遊びに行く〜…」

 

 

「悠輝さんは兎も角ガボさんが心配ですから私も行きますわ…た、食べないで下さいましね?」

 

 

 優さんのフォローも虚しく…というよりすっかり警戒してしまった双子はアリスの後を追う様に七面鳥を伴って外に出る、少し刺激が強過ぎただろうか…?

 

 

「まぁ…あの年頃の子は多感だからね、後で家内にはきつく言っておこう…。」

 

 

 申し訳無いとばかりに頭を下げる優さん、まぁ確かに冗談にしては琳音さんの眼は本気(マジ)だったが…。

 

 

「いえ、後で俺からも言っておきます…それにしても、俺の中では女性牧師は淑やかで慎ましいというのが今迄のイメージでしたが琳音さんは何というか…」

 

 

 言い掛けて止める、出逢って間も無い相手にずけずけ言う程今の俺は不躾では無い。

 

 ——何より、琳音さんの病気を考えればある意味では納得すらしている。

 

 

「ふふ…君は宗我さんから聞いていたよりも思慮深い様だね、——家内は心臓病でね…宗我さんの伝でシオン先生に出逢わなければ今頃死んでいたんだ、近々大きな手術を控えているから何時もよりも明るく振る舞っているが本当は不安なんだよ…。」

 

 

 此処まで聞いて先を促す程冷血漢でもない…否、同じく家庭を持つ様になった今だから解る事もある、俺だってステラやエーデが琳音さんと同じ様な立場なら2人の意思を尊重したいし何より長く生きていて欲しいのだから…。

 

 

「…琳音さんを見た時にある幻視…いや、あれは本人の記憶なのでしょう…病に伏せた琳音さんと焦燥しきった優さん、泣き噦る優璃ちゃんと元気のない子供達…俺なら耐え切れない…。」

 

 

 言いながらエーデとステラを見詰める、俺の運命を変えてくれた2人の最愛の女性…彼女達に何かあったら俺は果たして正気で居られるだろうか…、あり得るかもしれない未来に恐怖する俺にエーデとステラが寄り添う様に手を取る。

 

 

「…言った筈ですよ悠騎、私は居なくならないと…」

 

 

「ばかね…それを言うなら私達、でしょ?—何より、ユウが私達を護ってくれる様に私達もユウを護る…そう、決めたじゃない。」

 

 

 静かに…けれど確りと握られる手から感じる温もりと「僕達も君達と同じですよ。」と一度は絶望を経験して尚明るく振舞える望月夫妻の在り方に俺が護りたいものを再認識させられる…。

 

 

(あァ…俺は…俺が護りたいものは…)

 

 

 喩え、茨の道であろうとも…

 

 喩え、自分よがりであろうとも…

 

 

 俺は…今俺を取り巻く人々が好きだから…運命に抗ってみせる…ッ!

 

 

 

 ——其れは少し未来の物語、破壊の神であり時空を司る神である男が改めて自身が護りたいものを見定める事が出来た物語。

 

 




次回の投稿日は未定ですが恐らく来年になるかと思います、この外伝も加筆、修正があると思います。未だ1週間程ありますが今年も有難うございました、来年も宜しくお願い致しますm(_ _)m
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