落第騎士の英雄譚–力の求道者–   作:黒乃 柳

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今回は2作12時間ズレ投稿ですが此方は彼方と違い短めです、キャラ崩れ、設定無視に耐性の無い方はお気を付け下さいm(_ _)m




外伝–幸せな世界–

「ほらほら!早く行きましょお兄様!」

 

双子の妹、黒之春姫に腕を引っ張られながら悠騎は気怠そうに歩く、肌色の肌、長く伸ばした射干玉の髪は背後からでは何方が何方か解らぬ程似通っているがリボンで髪を結っているのが春姫だ。

 

「慌てんでも集合時間5分前には着く様に計算している…一輝達も其れくらいに「だって皆で遊ぶなんて久しぶりじゃないですか!ほぉらっ、早く早くっ」…全く…何時まで経っても…」

 

 

子供だな、と笑いながら頭を撫でる…此れは"もしも"の幸せな夢の物語

 

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都内のプール

 

「…久しぶりだな、一輝、珠雫…ついでに王馬」

 

「お久しぶりです、悠騎さん…春姫も」

 

「久しぶり、というか来年からは僕も兄さんと同じ破軍に通うから先輩と後輩の「おい悠騎、子供の頃に勝ち越していたからって調子に乗るなよ?今年から貴様と同じ土俵の上で戦えると思うと今から楽しみだ」…はは、ま、まぁ…宜しくね?」

 

小さい頃に交流があった三兄妹と連絡を取り合い微笑ましいやり取りを交わす、春姫と珠雫は今でも手紙やメールのやり取りをする親友同士、悠騎と王馬は歳は1歳程離れているが共に競い合う好敵手であると同時に喧嘩友達…一輝はそんな二人に手を差し伸べられ孤独感から救われた上で努力を積み重ねてきた努力の天才だ。

 

 

「…おい一輝、御前はそんなだから何時まで経ってもペテン師なんだ。」

 

 

「兄さん……」

 

 

「王馬、努力の仕方は人それぞれだ、技術も立派な強み…御前と一輝とじゃタイプが違うんだよ」

 

 

…やるか?と互いに眼から火花を散らす二人に弟であり弟分である一輝は苦笑する、因みに一輝が血の滲む努力を重ね"剣士"として強くなった技巧派の天才なら兄の王馬は何処ぞの野球ギブスでも付けて特訓しているバ火力タイプ…悠騎は何方も尊いとした上で何方も疎かにせず技術も持ち合わせた火力寄りの万能タイプだ、小さい頃は考え方の違いで良く喧嘩が絶えなかったが割と上手く回っている

 

 

「また始まりましたわ、全くお兄様ときたら…」

 

 

「うふふ…でも、羨ましい……ねぇ、春姫?王馬お兄様と悠騎さんを交換しませ「しません、お兄様は私のものです」…冗談ですよ?」

 

 

やれやれと肩を竦めていたかと思えば冗談に真顔で返す春姫、冗談とは言うが珠雫としては割と本気だった…実を言うと今日着てきた黒い水着も悠騎の為に新調した水着なのだが矢張り似合わないだろうか…そんな事を思っていた矢先

 

 

「…今日の珠雫は何だか大人びているな、とても魅力的だぞ?」

 

「ぁ…」

 

己が能力で"彼等と喧嘩をしている自分"と"一人でかき氷を食べる未来の自分"の二人を具象化させた悠騎がかき氷片手に珠雫の頭を撫でながら褒める、頬を真っ赤に染め俯く珠雫…それを面白くなさそうに横眼で見つめる春姫…様子が変わった事を知らずにいるは悠騎ただ一人である。

 

 

—————

———

 

「……それにしても、貴様等の両親が亡くなってから3年か…昔は良く遊んだな?」

 

 

「…まぁな、今となっては酷く懐かしいよ、寝泊りもした」

 

 

「…………知ってるか?珠雫は御前の事を…」

 

 

「…昔から悪餓鬼だったからな、珠雫は内向的だから憧れていただけだろ。」

 

プールサイドで王馬と語る悠騎、両親の死は"表向き"は火災によるものだった……だが、恐らく其れは真実ではない。

そんな明日をも解らぬ身の上で珠雫を守る等出来る道理もない、ましてや春姫を守るだけで精一杯だろう。

 

「…ち、俺が言いたいのはもっと俺達を頼れと言ってるんだ、昔から事ある度に全部抱え込んで後になってから知る気持ちを考えろ…馬鹿者」

 

 

「…王馬…」

 

 

…腐れ縁とはいえ、御前は幼馴染なんだから…と不器用なりに気遣ってくれる友人、「…その…助かる…」と気恥ずかしそうに礼を述べる顔は歳も相まり少女の様にも映る

 

 

「ッ…馬鹿者!礼なんて言うなっ——…良いから、たまには歳上に甘えておけ…」

 

何故か怒鳴り散らされるが甘えろというその言葉が嬉しい、王馬は王馬なりに良い奴だ…ただストイック過ぎるあまり不器用なだけで。

 

 

「…さてと、そろそろ泳ぐか……ん?」

 

「どうした?」

 

「いや……あの人集り、一輝がまぎれてないか?」

 

「は?——何をやっているんだ、あの愚弟は。」

 

人集りを指差す悠騎、そして其方に視線を向け頭を抱える王馬……それもその筈、何故なら

 

 

 

『ドキドキ☆美女も美少女も全員集合!ぽろりは自主規制ッ!』

 

 

なる催しモノから逃れようとしながら人混みの所為で上手く逃れられないでいるのだから。

 

 

「…なぁ、王馬…一輝は「…聞くな、黒鉄家の面汚しめ」…すまん、一輝…御前が何故そこに近付いたか納得のいく理由を聞く迄は王馬に同意だ」

 

 

野次馬根性か否か、まさかとは思うが参加するつもりだったのか…いや、幼馴染が女装に目覚めた等何処の変態だ…と思考は次々と巡る、王馬は自分の弟ながら情けないと首を振るが取り敢えず事情聴取が必要という回答を出し春姫等の力も借りて人混みの中から一輝を引っ張り出す

 

 

「うぅ…助かった…ありがと、悠騎…兄さん…」

 

 

「……幼馴染のよしみだからな、そんな事より聞きたい事がある。」

 

 

「えっと…何で彼処に居たか、かな?」

 

 

小さく頷く一同、珠雫に至っては先程から「お兄様が…お兄様が…」とぶつぶつと何かを呟いている

仕方がない、と自らが先陣を切る悠騎、こうなった幼馴染を知っている王馬は先程から肩を落とし遣り取りを静観する…場合によっては口を出す為に。

 

 

「…一輝が女装に目覚めた等言いふらさないし女に興味を抱くのも当たり前の事…さぁ、全てを白状(げろ)るんだ、一輝…!」

 

 

「いや!悠騎がそういう風に言う時って絶対何か言いふらすよねッ!?ていうか違うからッ!」

 

 

「…どうだかな、大方人混みにまぎれて何かするつもりだったのではあるまいな?」

 

 

「兄さんまで…っ、ぼ、僕はただ女の子が「お兄様…女の子がなんですか?」珠雫まで…此処には僕の味方は居ないのか…!」

 

 

がっくりと膝を付く一輝、少しだけかわいそうになってきたので助け船を出すべきかと一考していた処に

 

 

「一輝…大丈夫ですよ?」

 

「春姫…?」

 

 

水玉ワンピースの水着を着た春姫が一輝の肩に手を置く、ナイス妹!と心の中で親指を立てる悠騎、きっと考えもしない救済を齎すと思いきや

 

 

「女の子に憧れただけですよね?一輝は可愛い顔をしていますから…でも大丈夫、きっと女装なんてしなくても参加出来る筈ですわ!」

 

 

…その場の誰もがずっこけた、あの王馬もだ。あまりの力説…否、暴論に。

 

 

(我が妹ながら…何処かずれてるんだよなぁ…)

 

(私…だから春姫と親友で居れるんですね、少し頭が春だから……何て、言えないですけど)

 

(…悠騎も大変だな…本当に)

 

 

本人は慰めたつもりだろうが一輝は暫く放心状態だった、まぁ…小さい頃から好きだった女の子に男として見られていないという事実故だが。

 

「……そんな事より此の催しモノ……私も出てみよう、かと…」

 

「むっ、なら私も出ます、見ていて下さいねお兄様!」

 

ちらりと悠騎を見遣る珠雫に対抗してか出場すると言い出す春姫、然し王馬は反対のようだ。

 

 

「駄目だ、黒鉄家や黒之家の名に傷を付けるなんて…悠騎からも何か言え」

 

「………出たいなら出れば良いんじゃないか?——だが、出るからには勝ちを目指す事、負ける時は"勝利以上に価値のあるものを見つけた時"だ…」

 

王馬の制止ではあったが悠騎は二人のやる気を尊重し出場自体に異を唱える事はなかった、…一輝は…未だに落ち込んでいるが

 

 

「あら、こんな二人に私が負ける訳ないじゃない?」

 

「ん…?」

 

見知らぬ赤毛の少女が白いビキニで覆われた胸の下辺りで腕を組み春姫と珠雫の両者を煽る、ふと一輝が少女の方を見遣ると「「あ!」」と声をハモらせ指を指し合う

 

 

「…指を指すな、…失礼だが何方様だ?名も知らないこの二人に君が勝てるという根拠は?」

 

「一々理屈っぽい奴ね…私はステラ・ヴァーミリオン。ヴァーミリオン皇国の第二皇女よ。お父様の公務について回ってたのだけどこう熱くては参っちゃうから庶民の遊びに興じに来たのよ…其処のとは道案内をお願いしてはぐれちゃったんだけど……へぇ…ふぅん…?」

 

成る程、だとしたらつくづく運の無い弟分だ、春姫に慰められている幼馴染の哀れな背中を見詰めていたがステラと名乗る少女の視線に気付き首を傾げる

 

「……あんた、かなり強いわね…良いわ、もし私が負けたら其処の二人に謝罪でも何でもしてあげる。その代わり…——。」

 

—————

———

 

さて、いよいよ決勝戦なのだが、ひょんな事に決勝戦迄残った3人は件の3人…3人とも伐刀者だった

ならば、伐刀者なら伐刀者らしい試合形式が良いだろうと特別ルールによるサドンデスマッチが設けられる事になる

 

「…ふぅん、思ったよりやるじゃない。でも私には勝てないわ…シズク、ハルキ…覚悟しなさいっ!」

 

灼熱の炎が彼女の闘志を示すかの様に燃え盛る、だが珠雫も春姫も負けてはいなかった

 

 

「失礼なひと…貴女にだけは負けませんから…っ!」

 

 

「お兄様を一日自由にして良い権利権は渡しません…!」

 

…誤解の無いように補足を入れるとステラが望んだのは一日剣の修行に付き合う事、然し"一日の時間をその人物の為に割く"という点では強ち間違いではない。

 

 

『試合開始!』

 

「傅きなさいッ妃龍の罪剣《レーヴァテイン》ッ!」

 

「飛沫け…宵時雨ッ!《よいしぐれ》」

 

「咲き誇れっ!地母神の籠手《レア》ッ!」

 

灼熱の炎を具現化したような西洋の剣を構えたステラに対し小振りだが芯のある清涼さを感じさせる刀を構える珠雫、大地の如く力強いガントレットを両手に装着し構えた春姫…奇しくも火、水、大地の三竦みになった。

 

(火は水で対処出来ますが私の水では春姫の大地には勝てません……けど、この試合のルールは…ッ!)

 

開始早々に珠雫が動く、目指すは水中にある星型のピース、此れを先に取りプールサイド側にあるパネルに嵌めた者が勝者となる

 

「やらせない、こんな水全部蒸発させてやるわッ!」

 

炎を操りプールの水を全て蒸発させようとするステラ、術式構築に意識を傾けていた珠雫は一瞬処理が遅れるも

 

「残念ですね、邪魔させてもらいます!」

 

足元に手を付き地震を起こす、やろうと思えば震災クラスの地割れも可能だが流石に弁えている為かなり抑えめの地震…然し、2人の邪魔をし周囲のコンクリートを捲り上げるには此れでも充分だ。

 

 

 

「…中々勝負がつかないが…どう見る?」

 

「…珠雫は最後に逢った時からかなり腕を上げたな、あのステラという少女もAランクだと聞くし中々の研鑽を積んでいる。問題は春姫、彼奴……」

 

「春姫がどうかしたの…?」

 

自分達の幼馴染や妹を応援に最前列で応援する3人、王馬は珠雫には勝ち目は薄いと思っている様だ、だが悠騎は違った。

 

「……この勝負、若しかしたら珠雫が勝つやもしれん。——春姫の意図に気付けたら…だが」

 

 

—————

———

 

「全く…っ、鬱陶しいわね…!」

 

地震に晒されていたステラだが遂にプールの水を蒸発させる、だがプールサイドは僅かにひび割れが生じコンクリートから土が見え隠れし枯れた草が生えていたのを珠雫は偶然にも視界に収める

 

(春姫…まさか……なら…!)

 

にっこり微笑む春姫に意図を読み取ればピースを持って走るステラの前方…正確にはコンクリートから見え隠れする土へと狙いを定め術を発動させる、此れには足止めの意味合いもある

 

「障破水蓮《しょうはすいれん》っ!」

 

 

「ッ…こんなもの効かないわ…ッ!?」

 

 

「えへへ、捕まえました…蔓《かずら》!」

 

 

珠雫が繰り出した術…水により栄養が行き渡った土中の草花を春姫が急速に成長させステラの身を幾重にも蔦が絡み付き拘束する、じたばたともがく間にピースを拾った珠雫は春姫に向き直り

 

 

「…良いんですか?勝ちを譲る様な事になりますが…」

 

 

親友とはいえ…否、親友だからこそ斯様な勝ちを望んでいないのは事実、だが春姫は首を振り微笑む

 

 

「……お兄様が言ってたでしょ?"勝利よりも価値のある敗北を見つけた時"……私は珠雫との友情も大事にしたいんですの。

——だから…今度やる時は一対一…正々堂々死力を尽くして…ね?」

 

 

離しなさいよー!と暴れるステラをどんどん拘束しながら次があるなら今度は邪魔の入らない一対一の勝負を望む旨を告げる春姫、男女の違いはあれど矢張り双子、親友の気高さに珠雫は優しく微笑む

 

 

(……貴女が私の親友で…本当に良かった……大好きです、私の大切な…)

 

 

『親友』と口に出し同時にピースをパネルに嵌める…この時点で優勝者の名がアナウンスを通し高らかに挙げられた。

 

—————

———

 

「さぁ、謝罪でも何でもしてくれるのでしょう?」

 

「うぅ…っ」

 

「あはは、まぁ負けは負けですしね?」

 

優勝商品として今期分のプールのフリーパスポートを贈与された珠雫だが試合前の約束をステラに強いる姿は少しどSだ、これには流石に見ていられなかったのか悠騎がステラを庇う

 

 

「……まぁ、途中から二対一だけどな。——ステラ、君も解っただろう?相手を見た目で判断してはいけない……どんな相手にも慢心せず全力で立ち向かうのが本当の強さであり騎士の姿だと俺は思うよ。」

 

「……ぅ、ん…」

 

ぽんぽんと頭を撫でる、春姫がこれをされると落ち着くらしいから最早悪癖になっているが癖は簡単には直らない…一国のお姫様に失礼かと思うが殊の外、ステラは嫌がる処か素直に受け入れ話を聞き入れていた。

 

気付くと珠雫と春姫が御立腹、王馬と一輝は其々触らぬ神になんとやら…といった様子だ

 

 

「…ステラさん、もう一度勝負です…!」

 

「そうしましょう、一対一が良いので先ずはアミダで決めましょう…ッ!」

 

「ふふ…良いわッ、騎士らしく正々堂々!全力で!!1人ずつ叩き潰してあげるッ!!!」

 

 

女が3人集まれば姦しいと書くが…やれやれ、どうしたものか?等と肩を竦めながらも笑顔に満ちた幸せな世界は今尚"もしも"の世界として続くのだろう

 

 

未来は無数に枝分かれし、次元も数多にも存在するのだから。

 

 




ふと春姫ちゃんが生きていて黒鉄三兄妹がそれなりに仲良くしていて尚且つ幼馴染なら…と思い書いてみました、彼方の胸糞設定を濯ぐ意味合いも兼ねて楽しんで頂ければ幸いですm(_ _)m

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