落第騎士の英雄譚–力の求道者–   作:黒乃 柳

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長い文章で纏めるスキルが欲しいと思う今日この頃、アニメ一話分とオリジナル要素を絡めただけで3、4話分書き溜めていますがそれでも宜しければ御閲覧下さいm(_ _)m


第2章 《悪魔》と呼ばれし者
受難


 

『…にぃ…ま…』

 

いやだ……っ

 

『お…ぃさ……』

 

こんなのは…いやだ…ッ!

 

『…いきて…ね…おにぃ…さま…』

 

まって…ッ…逝くな……逝かないでくれ…ッ!!

 

『……だいすき…だよ…』

 

 

「ッ!!」

 

「…は…ッ…は…っ…は……——夢か…」

 

春の陽射しが眩しいと感じる程深い眠りから目覚めベンチから飛び降り片手でアタッシュケースを担ぐ、気付けばぐっしょりと汗を掻いていた俺は今日から3年間通う事と成る破軍学園の門を目差す道すがら幼い頃の夢に意識を傾ける。

 

「……年々減っては来たんだがな…矢張りこの国は嫌いだ…。」

 

あの男が居る国…サムライリョーマや最後の侍(ラストサムライ)、綾辻海斗と並ぶ英雄…黒之宗我…俺から全てを奪った英雄(ヒトゴロシ)

 

 

「…父さん…母さん……春姫…」

 

今は亡き家族の名を呟き門と舞い散る桜を背に寮へと迷う事なく歩き出すがふと気に成る"気配"を感じ視線を其方に向ける。

 

(…魔力は大した事は無いが……相当鍛えている、見た目は俺より若干背が低い位か…。)

 

第一印象は『意志の強さ』、そして其れを裏打ちする鍛え抜かれた肉体的な強さであった

此方の視線を感じ取ったのか黒髪の青少年は爽やかな笑顔で此方に近付いてくる。

 

「こんにちは、…えっと…君は若しかして新入生かな?」

 

「……あァ、そうなるな……先ず荷物を置きたいから充てがわれた部屋に向かうつもりだッたが…」

 

「そッか、僕も丁度部屋に戻って着替えるつもりだったから良ければ途中迄一緒に行こうか?」

 

友好的な申し出にほんの数秒だけ考え込むが「……感謝する」と素直に好意を受け取り手に持ったアタッシュケースを引っ提げ後を付いて歩く、戦闘狂ではあるが人の好意を無碍にする程せせこましい性格ではない事が窺える。

 

「良いよ、あ…僕は黒鉄一輝、君は?」

 

黒鉄…と聞いて僅かに眉を寄せる、が直ぐに無表情を装い名を名乗る。

 

「黒之、黒之悠騎だ…」

 

「黒之…理事長先生も黒乃って名前だし悠騎君って呼んで良いかな?」

 

…如何やら彼に対する印象を微調整する必要がある様だ、友好的というよりは人懐こいのではなかろうか?

いや、別に構わないのだが…戦場では名を呼ばれる事よりもコードネームや渾名で呼ばれる事が殆どである為少々新鮮味がある。

 

「……問題無い、其れより着替えなくて良いのか?…自己管理も鍛錬の内だろう」

 

気付けば彼の部屋の前迄来ていた様だ、黒鉄の名が書かれた表札を横目にさっさと着替えて来いとばかりに云う俺に黒鉄は苦笑しつつも鍵を開ける……——のだが、違和感を覚え"女物の靴"を注視…次いであるビジョンが脳裏を過ぎり慌てて黒鉄を呼び止める。

 

「待て、黒が「イヤアァアァーッ!?」……すまない…黒鉄…」

 

ぱしィンッ!!

 

女の悲鳴と共に乾いた音が部屋に響き渡る、間に合わなかった事に対する謝罪を頬を赤く腫れさせた黒鉄へと紡ぎ羽織っていたコートを赤面して身を隠さんとする少女へと向け投げ背を向ける

 

「……取り敢えず、荷物は後になりそうだな…」

 

 

—————

———

 

「成る程、アホだろ御前。」

 

紫煙を吐き頬に紅葉型の跡を残す黒鉄を見て新宮寺は一言、俺はというと一応居合わせていたという事もあり学園長室へと招集されていた

 

「フィフティ・フィフティで良い案だと思ったんですよ…あの時は」

 

……何処の世界に部屋に下着姿の女が居たからといって服をキャストオフしようとするおあいこがあるのだろうか…、そんな考えが過ぎるが一応道案内の礼として弁明…基フォローを入れる事とする。

 

「……外国には服を着ない部族も居る、かくいう俺も8歳から12歳迄は灰で身を清めていた…まァ、今後は裸族として生きれば良いさ」

 

「此処は日本だよ!ていうか僕の事何だと思ってるのさ!?」

 

 

…一々煩い奴め、まァ冗談は兎も角そろそろ本題へと移ろうか。

 

 

「…冗談だ、新宮寺…先方は此の事を国際問題にするつもりなのか?」

 

「理事長先生を付けろ、黒之……まァ、それは黒鉄とヴァーミリオン次第だな」

 

「ぅ……入学早々ステラさんには悪い事をしたなぁ…」

 

普通俺達の遣り取りに違和感を覚えるだろうが今の黒鉄は自責の念を抱いているのか頭を抱えている、尤も相手がヨーロッパの小国とはいえ皇族というのも少なくはないのであろうが。

 

「……ま、という訳で黒鉄には責任を取って貰おう」

 

ガチャ、という音がしたと思うと先程の少女…ステラ・ヴァーミリオンが部屋へと入り此方…というよりも黒鉄を睨んでいる、幾多の戦場を渡り歩いてきたがあれ程怒気に満ちた眼はそうそう無いと断言出来る。

 

さて、黒鉄は如何出るのやら…と腕を組み様子を伺っていた処彼は深々と頭を下げステラ皇女へと謝罪の言葉を述べていた。

 

「本当に御免!あれは…その、不幸な事故で覗くつもりは決して無かったけどステラさんを傷付けてしまったのは事実だから煮るなり焼くなり好きにしてくれて良いよ…ッ」

 

端から見て誠意ある対応だとは思う、そんな彼に対しステラ皇女は名を訊ね、「潔いのねイッキ…なら私も寛大な対処をさせてもらうわ」等と語るものだから此の時は俺も丸く収まると思っていた

 

——だが、次の科白でそんな考えは間違いだと白日の下に晒される。

 

 

「ハラキリ《切腹》で赦してあげる…♪」

 

「へ…?…あの、今寛大にって…」

 

「そうよ?本当は国際問題にしてやろうかと思ったけど感謝しなさいよね」

 

「おおまけにまけて腹切ッてこと!?」

 

「何よ、出来ないの!?」

 

「出来ないよ!たかだか下着姿を見た位で…」

 

 

目の前で繰り広げられる弾丸トーク、何時の間にか理事長室から退室していた新宮寺に溜息を漏らすが止められなかった手前俺迄も席を外す訳には行かず今度こそ助け船を出す事にする。

 

「…黒鉄、其れは彼女に対し失礼だろう。——ステラ皇女、彼の名誉の為に云うがあれは不可抗力だ、何故ならあの部屋には確かに黒鉄の表札が掲げられていた」

 

 

今にも霊装を構えんとしていたステラ皇女だったが先程貸したコートの件もあり俺の言葉に耳を傾ける余裕はあった様だ、だが其れでも納得行かないとばかりに睨んでは来たが。

 

 

「仮にそうだとしてもこの変態、痴漢、無礼のスリーアウトど平民は私の身体を舐める様に見てきたのよ!」

 

「……遅れて入室した俺にはその瞬間の黒鉄の視線が如何いった類のものかは解らないな…その辺りは本人の意見も聞いてやってはくれないか?」

 

其れくらいの度量は見せてやって欲しい、と頭を下げる、口下手なりに誠意を見せる俺の姿勢に剣呑な空気は軟化するが代わりに鋭い視線が黒鉄へと向けられる

 

さて…此処迄の御膳立てはした、此処で失言の一つでもしようものなら俺はもう知らん、煮られるなり焼かれるなり如何にでもなれと内心開き直っていたが彼女の視線に堪らず口走ったのか黒鉄は俺の斜め上を行く返答で彼女の度肝を抜く。

 

「あれは…あまりにもステラさんが綺麗だったから見惚れちゃったんだ…!」

 

「んな…っ…ななな…ッ!?何言ってるのよそんな…未婚の女性に…ッ」

 

 

 

……正直、先が思いやれる…此方を覗き込みにやにやと笑う新宮寺をジト目で見遣りながら俺は肩を竦めるのであった

 

 




次話は一輝VSステラの回ですが戦闘描写は少なめです
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