落第騎士の英雄譚–力の求道者–   作:黒乃 柳

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今回は主人公の能力について少し判明します、まぁプロフィールを見れば察しはつくかもですが(笑)


提案

「………いい加減タネ明かしをしたら如何だ?二人共間違いではないのだろう?」

 

二人の主張を統合し、この眼で見た事実を照らし合わせた結果一つの仮説が浮上し新宮寺へと視線を向ける

 

「くく…いや、まるで兄妹喧嘩を諌める兄の様だったからな?中々面白かったが…そうだな、結論から言うと黒鉄の部屋もヴァーミリオンの部屋も"あの部屋で正しい"——取り敢えず寮に戻ってみようか」

 

赤面し頭から湯気を立てるステラ皇女と黒鉄は互いに見合わせた後渋々とばかりに後をついてきた……然し、予想通りだとしたら実に底意地が悪いな此の理事長センセーは。

 

—————

———

 

案の定というか何というか、部屋割りの結果二人はルームメイトという事が判明し黒鉄が疑問を投げ掛ける

 

「なんでAランクのステラさんが落第生の僕と同じ部屋なんですか?」

 

落第生と聞きステラ皇女の表情は変わる

 

「あんた落第生なの!?」

 

「うん、使える異能は最低限の身体強化だけだし魔力も普通の人の10分の1しかないよ」

 

「他の能力値も軒並み最低限レベル、ついた渾名は落第騎士(ワーストワン)…文字通り学園最弱の男だ。…因みに其処の無愛想面はヴァーミリオンと同じAランクだが訳有りでな、今の処は個室を使わせる予定だ。」

 

 

…無愛想で悪かったな、と視線で抗議するが正直煩わしさが無い分依頼された仕事は遣り易い、然しステラ皇女にとっては不満らしく直様反論の声が上がる

 

「そんなの可笑しいじゃないですか、其れなら私も個室が良いですしこんなのと一緒に住めないです!」

 

「こんなの…」

 

苦笑する黒鉄を指差し自分も個室が良いと主張するステラ皇女、成る程確かに一つ屋根の下で男女が暮らすのも其れはそれで考えものか……——仕方が無い、事情を話すか。

 

「……実を言うとな、俺は新宮寺に雇われた傭兵だ、新入生や在校生、教師陣に解放軍の人間が居た場合此れを秘密裏に排除する為に雇われた…な。」

 

「「な…ッ!?」」

 

あまりの事情に苦笑していた黒鉄もステラ皇女も驚愕を隠せないでいる、無理もない…だが可能性としてあり得ない事では無いと二人を見詰める。

 

 

「黒之……はァ、黒鉄は知っているかとは思うが学園革変に於いて前理事長の息が掛かった教師は辞めさせて教員不足でな、其処を狙って来ないとも限らんから念には念を入れて入学させた。そういう訳で黒之は訳有りなのさ、其れに男女でペアになるのは御前達ばかりじゃない、嫌なら退学してくれて結構だが?」

 

 

肩を竦めるが何れは不信感を感じる者も出て来るだろう、其れならば最初から立場を明かしておいた方が余計な疑念は払拭出来る

二人共俺に関しては納得したらしく此れ以上の言及はない、そして妥協案とばかりに指を3本突き立てるステラ皇女。

 

「…解りました、ならイッキ、同じ部屋で生活するなら3つ条件があるわ。

 

1、話し掛けない事

2、眼を開けない事

3、息しない事」

 

 

「…その一輝君、多分死んでるよね?」

 

彼女が出した条件に冷や汗を垂らしながら返す黒鉄、…多分じゃなくて死んでるだろう、然もその3つが守れるなら部屋の外で暮らして良いと宣う始末だ。

 

「最低限息はさせてよ!」

 

「嫌よ!私が吐いた息を嗅ぐつもりでしょ変態!」

 

「なら口呼吸するから!」

 

「私の吐いた息を吸うつもりでしょ変態!!」

 

「その発想は無かった!」

 

「嫌なら退学しなさいよッ!」

 

「そんな滅茶苦茶なッ」

 

 

……流石に可哀想になってきた為俺はある提案をする事にする。

 

「…なら二人が今から戦い勝った者が後日俺と戦い、勝ったら個室を手に入れる、というのは如何だ?此れなら最悪部屋のルールは決められるだろう。」

 

此れには新宮寺も予想外だったのか眼を丸くするが直ぐに不敵な笑みを浮かべ二人の表札を其々に手渡す

 

「騎士たるもの己の運命は己の力で切り拓くべきだな、1時間後に模擬戦を行い明後日の正午黒之と今日の勝者の模擬戦を行う…其れで良いな?」

 

「成る程……其れは公平で良いですね」

 

ヴァーミリオンの表札を手に納得した様に頷く黒鉄、然しステラ皇女はそんな黒鉄を甘く見ているのか表札を手に鼻で笑う

 

「あんた正気?言っちゃァ何だけど同じAランク同士なら兎も角Fランクのあんたが私に叶うと思ってるの?」

 

「取り敢えずやるだけやってみようよ、僕も其れなりに努力はしてるからさ」

 

自身を甘く見られて尚穏和な一面を崩さない黒鉄に業を煮やしたのかビシッ!という擬音が似合う程の佇まいで指を指すステラ皇女…人を指差すなと言ってやりたいが折角纏まりつつある話に水を指す訳も行かず遣り取りを眺める。

 

「良いわよ、やってやるわよ!但しやるからにはもう部屋のルールなんてもんじゃなくて負けた方は一生奴隷だからねッ、どんな屈辱的な命令でも犬のように従う下僕になるのよ!」

 

……部屋のルール割の為に出した提案が予想の斜め上を行く…解せぬ。

 

 

—————

———

 

 

そして1時間後

 

「如何観る?あの二人を。」

 

観客席も疎らながら生徒が座る中俺は二人の試合を観るべく実況席に座る新宮寺に問われる、答える義理は無いが義務はある為に感想を述べる事にした。

 

「……一見為るとステラ皇女が押している様に見えるが黒鉄は剣の技術で彼女の剣を悉くいなしているな、恐らく単純な剣術だけで云えば此の学園でもトップクラスだろう。——それ故に惜しい訳でもあるが。」

 

事実皇女の剣圧をギリギリとはいえいなす技術は弛まぬ努力の賜物であろう、然し闘技場や天井を焼き尽くさんが如き魔力を持つ彼女に勝つには足りないものがある

 

「…魔力の優劣は其の儘伐刀者の優劣に繋がる、あの一太刀が通じないのが良い例だ。」

 

観ればフェイントを織り交ぜたステラの剣を捌き刀型の霊装で斬り付けるが彼女の魔力の前に傷一つ付けられていない

 

「……努力が無駄とは云わん、だが……何れ犬死するぞ…奴の遣り方では。」

 

「…クク…」

 

恐らく決め技であろう竜を模した焔を操る様に決まったと瞳を閉じる俺を笑うかの様に新宮寺が喉を鳴らす

 

「確かに、一般論で云えば御前の言う通りだな、否…幾つもの戦場を渡り歩いてきたからこそか。——才能(魔力)に恵まれず機会すら不当に奪われた彼奴に出来る事は自分の全力をなりふり構わず使い切るだけだ……御前にも経験があるんじゃないか?」

 

火龍を躱し高速で移動する黒鉄、事前に聞いていた《一刀修羅》を発動させた黒鉄の前に圧倒されるステラ皇女の敗北を知らせる報らせを聞きながら肩を竦める

 

「…さァな、仮にそういう経験があったとしても力が無ければ他人処か家族や自分すら護れない…——弱さは罪なんだよ。」

 

「………そう云う割には黒鉄やヴァーミリオンの肩を持つじゃないか?私とやり合った時だってそうだ、噂通りなら御前は幾つもの戦場を潰してきた《悪魔》なんだろう?写真を見たが辺り一面何も残らない不毛の大地じゃないか」

 

確かに…憤怒の壊炎(パスパタ)を使えばある方法を除き何の様な防壁も意味持たせず打ち倒せるが自爆覚悟の攻撃等俺が求める勝利では無いし何より今の俺では魔力制御に難がある…片方だけに力を入れればもう片方は如何しても甘くなるからだ

 

「…決して征服されぬ者(アダマス)の能力を個人的に確認した中で九次元迄は干渉を遮断出来るがその分憤怒の壊炎(パスパタ)の威力が激減する、逆もまた然り…故に引き分けがやっとだと言ったんだ、——今はな、それにあの二人が特別な訳では無い…あの二人の様に己が道に矜持を持った戦士であれば評価はする。」

 

「……言ってくれるねェ、ま…其れだけの力がなければエーデルワイスと遣り合う事も出来ないだろうし…明後日の戦いは如何するつもりだ?」

 

物理攻撃は勿論時間や概念…呪いといったものの干渉すら防ぐ代わりに最大火力が引き出せない《アダマス》、全力で投躑すれば自分諸共広範囲を煉獄の焔で焼き払い破壊し尽くす《トリシューラ》二つの霊装を"最大出力で"使用するには魔力を制御する力が不十分である俺に考えるだけでも恐ろしいと冗談めかす新宮寺に振り向く

油断でも驕りでもない…唯真実だけを告げる為に

 

「…明後日の試合、俺はアダマスしか使わない…早い内にあの遣り方では限界がある事を伝えるのも年長者の務めだからな。」

 

 

 

 

 




次回は悠騎VS一輝です、一輝強化フラグ回になる予定なので一輝ファンの皆様は閲覧注意でお願い致しますm(_ _)m
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