灰と幻想のグリムガル~死霊術師の物語~   作:arc00

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21話

「この辺は収集クランに同行したときにキャンプをしてた場所なので安全だと思います」

 

今回ダムローでのゴブリン狩りは毎日オルタナとの往復を行うのではなくキャンプを張張りながら行うことになった

 

「うちギルドで早目教えてらって弓が当たるようになったから何か狩ってくる」

 

「俺とモグゾーは釣りにいってくらぁ」

 

弓矢を片手にユメが釣竿を片手にランタとモグゾーがキャンプから出て行こうとする

 

「3人ともちょっと待ってヒロトくんとアオイさんはゴブリンと戦ったことがないから今日1日はこの森でゴブリンを探そう」

 

ダムローでゴブリンと戦うとその音でゴブリンが集まってくるので2人だけで時間をかけて戦わせることはできない。なのでキャンプ周辺の森ではぐれのゴブリンと戦って経験をつけようと言うわけだ。私達は何人かの班に別れゴブリンを探す。できれば1人で行動しているはぐれが見つかれば良いのだけれど・・・

 

「どう?あれ」

 

私達の視界には小川で火を焚いているゴブリンが1匹いた。

 

「周りに他のゴブリンはいない」

 

辺りを探索していたハルヒロとユメが戻ってくる

 

「ユメが弓で合図をしたら2人が出る。それでいいかい?」

 

「・・・」

 

2人は緊張からか無言だ

 

「大丈夫。本当に危なくなったら助ける。もし無理そうなら何人かで一緒に倒すかい?」

 

「いえ俺達2人でやってみます。アオイさんは?」

 

「・・・うん。ヒロトくんがいいなら・・・」

 

手に杖を強く握りながらアオイちゃんは答える

 

「よし。じゃあ行動開始だ」

 

ゴブリンを囲むような形に移動し隠れる。ハルヒロは様子を伺い合図を送るとユメが弓を構える。目を瞑って深呼吸し、瞼を開き弓を打つ。矢はまっすぐ飛びゴブリンの足元に刺さる

 

「グァ!?」

 

ゴブリンは驚き立ち上がる。そこにヒロトとアオイちゃんが前に出る。ヒロトはゴブリンとアオイちゃんの間に立ち盾を前に構えている。アオイちゃんは杖を構えているが腰が引けて微かに震えていいる

 

「ガアァァァァ!」

 

ゴブリンは大きく叫びヒロト達を威嚇した。その声に萎縮した2人を見てゴブリンが走る

 

「ええぃ」

 

ヒロトが剣を振るう。しかし、ゴブリンは避けて後ろのアオイちゃんに飛びかかった

 

「きゃあぁ!」

 

私は前に出ようとするとメリイが「大丈夫」と首を振って止める。視線を戻すとヒロトが盾を横に振るいゴブリンを突き飛ばしていた

 

「アオイさん大丈夫?」

 

剣をゴブリンに向けながらアオイちゃんを立たせようとする

 

「あ、ごめんなさい。んっ、すぐに・・・」

 

アオイちゃんはうまく立てないでいる。多分腰が抜けてしまったんだ。

 

「そのままで」

 

ヒロトは盾を構え直しゴブリンと相対する。アオイちゃんとの距離が近いのは倒れているアオイちゃんを守るのとさっきみたいなことを防ぐためだろう

 

「グ、グフッ」

 

ゴブリンが笑う。さっきのやり取りでこっちが素人だとバレた。ゴブリンは横に移動しながら攻撃のチャンスを待っている

 

「でやぁぁぁ!」

 

この膠着で先に動いたのはヒロト。ゴブリンはこっちに主導権があると思い油断していたのか反応が遅れヒロトの剣が肩に食い込む

 

「くぅぅぅ。もしかして骨?」

 

「ギャス!」

 

「あぐぅ」「ヒロトくん!」

 

ゴブリンの肩に吸い込まれた剣は途中で骨に阻まれて止まってしまった。ゴブリンはお返しと言わんばかりにヒロトの肩に短剣を突き刺す

 

「は、離れろ」

 

ゴブリンを蹴って距離を取る。距離が離れたので肩に刺さっている短剣を抜く。肩の傷は深いようで剣が握れず盾を持っていた手で剣を持って構える。ゴブリンも肩におった傷のお陰か動きが緩慢だ

 

「おおおぉぉぉぉ」

 

ヒロトが剣を前に構えゴブリンに体ごと突っ込む。ゴブリンにマウントポジションを取ったヒロトは剣を何度も腹に突き刺す。ゴブリンもやられまいと体や腕をふるいヒロトをどかそうとする。やがてゴブリンの抵抗がなくなりヒロトはゴブリンに刺した剣にもたれかかり荒い息を吐いている

 

「アオイさん、ヒロトくんに治療を」

 

「あ・・・はい」

 

メリイはアオイちゃんの元に駆け寄りヒロトの回復を指示する。アオイちゃんは時間をかけて立ち上がりヒロトの元へ

 

「ヒロトくん・・・」

 

「ハァ、ハァ・・・アオイさん大丈夫だった・・・」

 

「ヒロトくんのお陰で大丈夫でした。あの・・・治療します」

 

「あ、うん。お願い」

 

「ルミアリスの加護の元に・癒し手〈キュア〉」

 

アオイちゃんはヒロトの傷にキュアをする。傷が癒えるなりヒロトは横に倒れる

 

「ヒロトくん!」

 

「大丈夫・・・ちょっと疲れたから」

 

「アオイさん大丈夫。俺達の回復は傷は直せても血や体力は元に戻らない。ちょっと血を流し過ぎただけだよ、休めば元気になる」

 

マナトとモグゾーが近づいてくる。マナトはヒロトの剣と盾を拾い。モグゾーはヒロトをおんぶした

 

「ごめんね。刺された段階で助けられたら良かったんだけど・・・」

 

「モグゾーさん、なんとかなったんで大丈夫ですよ」

 

「今日はもうゴブリンを狩るのはやめよう。明日はヒロトくんの様子を見てダムローに行くかどうか決めよう」

 

その後、夕食を取りヒロトは戦いの疲れがまだ残っているみたいでさっさとテントに入ってしまった

 

 

 

 

 

 

 

ヒロトside

 

夕食の後、初めてのゴブリンとの戦いの疲れが取れていない俺は先にテントで横になって休ませてもらっている

 

「・・・ふぅ」

 

ゴブリンとの戦いを思い出す。お互い必死だった。初めは後ろでシオリさんやマナトさん達が控えていて助けてくれると思って何処か心のどこかで軽く見ていた。だけど時間が経つごとにその事を忘れて目の前のゴブリンを倒すことに必死になっていった。

 

「あんなに頑張ったのにたったこれだけかぁ・・・」

 

あのゴブリンからの戦利品は欠けた銀貨と何かの爪が何本かそしてゴブリン自身が持っていた短剣。換金しても全然稼ぎにならないと思う

 

「マナトさん達のこと笑えないな・・・」

 

シオリさんにマナトさん達を紹介してもらった時、「ずっと見習いなんだ・・・」ってちょっと下に見ていた。だけどここにくるまでに見た色々な知識や今回のゴブリンとの戦いでそれは間違いだと気づかされた。何も知らない時からゴブリンなどのモンスターと戦い続けて今にいたる。俺だったら途中で死んでる。今日だってアオイさんがいなかったらキャンプに戻れず途中でのたれ死んでる・・・

アオイさん大丈夫かな。なんだか今日のこと引きずっている感じがしたけど

 

「ヒロトくん・・・起きてる?」

 

「アオイさん?だ、大丈夫入って」

 

アオイさんのことを考えた瞬間、訪ねてきた。俺は驚きを隠しつつアオイさんをテント内に招く

 

「どうしたの?」

 

「あの・・・今日のことで・・・私全然役に立たなくてむしろ足を引っ張っちゃったから謝ろうと」

 

「あれは仕方がないよ。俺も必死だったし」

 

「でも、結局1人で倒しちゃったし。私やっぱり捨てられて当然なのかなって・・・」

 

「そんなことないよ。今日だってアオイさんが肩の傷を治してくれたんだし」

 

「そんなのメリイさんやマナトさんもできます・・・」

 

アオイさんは目に涙をためている。まずいネガティブモードになってしまっている

 

「あーその、俺はアオイさんに治療してくれると嬉しいからそんなこと言わないで欲しい」

 

「・・・でも」

 

「マナトさん達も俺達と同じ見習いだけど今はもう義勇兵と変わらない。多分最初は手探りだったんだよ。アオイさんみたいに何もできなかったりしたと思うし、最初はみんなそうだよ。これから一緒に頑張っていけばいいんだよ」

 

「・・・うん」

 

何とか持ち直してくれたようだ。明日から本格的なゴブリン狩り。俺達は上手くやっていけるのか?

 

ヒロトside end

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