灰と幻想のグリムガル~死霊術師の物語~   作:arc00

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25話

ハルヒロside

 

俺達は上位ゴブリンがいる建物から大きく離れた場所に待機している。

 

「そろそろ始まる頃だ・・・」

 

マナトがシオリ達が向かった辺りを見て呟く。暫くするとゴブリン達が走っていく姿が見えた。中にはホブゴブリンの姿も見える

 

「始まったようだ。俺達も作戦開始だ」

 

シオリ達がゴブリンを引き付けてくれているので建物の近くに移動するのは簡単だった。今俺達6人は入口近くの物陰に隠れている。

入口に門番として2匹。屋根には入口側と裏口側にボウガンを持つゴブリンが2匹いる。おそらくだが裏口にも門番ゴブリンがいる

マナトが合図をすると遠く離れたところで待っていたユメが弓を構え矢を放つ。放たれた弓は裏口の警備のため、背を向けているゴブリンの頭に命中し屋根から落下する。

落下音がしたことにより、裏口が騒がしくなる。そして、入口を警備していたゴブリンが後ろを向き身構える。後ろを向いたゴブリンの頭にも矢が当たり倒れ動かなくなった

 

「よし。下には気づかれていない」

 

入口を守るゴブリンは裏口が騒がしいので1人建物に入って今は1人だ

 

「オーム・レル・エクト・クロム・ダーシュ」

 

睡魔の幻影〈スリーピーシャドウ〉。シホルの杖から、黒い靄のような影のエレメンタルが飛び出した。黒いエレメンタルはそこまで早くない速度でまっすぐゴブリンに当たる。黒いエレメンタル鼻、耳、口に入り込みゴブリンを眠らせる。俺達は素早く入口に移動する。ゴブリンの手足を縛りランタがゴブリンの首めがけて剣を振るう

 

「ーーーー!?!?」

 

ゴブリンは首の痛みで飛び起きるが手足を縛られていて動けず、声を出そうにも首を切られているため声が出ない。ユメとクザクが合流する頃にはゴブリンは事切れていた

 

「よし。中に入ろう」

 

俺を先頭で中に。ないとは思うが罠を警戒してだ。建物は元は宿屋だったようだ。入口入ってすぐ大きな階段、奥は裏口に繋がっているはずだ。

1階を確認していると奥から足音。ゴブリンが奥から出てきた瞬間、横で待ち構えていたモグゾーがグレートソードを降り下ろす

 

「ガァ!?」「ギャギャ!」

 

奥からゴブリンの声が

 

「1匹だけじゃなかった!?」

 

しまった!ゴブリンの数を見誤った

 

「肝心なときに使えねえなぁ」

 

2階に走り登りながらランタが言う。後ろにモグゾー、シホルが続く

 

「ハルヒロ、ユメ、クザク、チョコ手筈通りで」

 

マナトが俺達に声をかけランタ達を追いかける

 

「ヒロもっとしっかり」

 

「チョコ誰だって失敗はある。ハルヒロ気にするな」

 

「ランタはいつもあんなだ。気にしてない」

 

クザクが慰めてくれるが俺はもうあれくらいは気にならない。チョコ同じ盗賊なら一緒に警戒してもいいんじゃないか?

 

「そんなスキルない」

 

足音だから敵感知スキルじゃない気がするなぁ

 

「ハルくんこっちにこないよ」

 

「うん。ユメお願い」

 

ゴブリンは階段のある部屋に入ってこない。俺達は1階のゴブリンを倒す。チョコはこの建物に近づくゴブリンの監視が目的だ。目の前のゴブリンにかまけて2階にゴブリンを送ってしまうとマナト達が挟み撃ちになってしまう。

ユメは弓を構え矢を手に取る

 

「ギャア!」

 

ゴブリンの達のいるところには身を隠す所はない。弓を引かせまいと1匹が飛び込んでくる

 

「・・・下がり打ち〈ダウンストリング〉」

 

ユメが後ろに飛びながら矢を放つ。放たれた矢はぶれることなくゴブリンの足に突き刺さる。足の踏ん張りが効かなくなったゴブリンは着地に失敗して倒れる。そこにクザクがトドメを刺す

 

「入口方面には何もない」

 

「残りは1匹だ。俺が行く。ハルヒロとユメは2階に」

 

チョコの報告でとりあえずここに近づくゴブリンはいない。クザクは剣についた血を振るいながら俺とユメに先に上がるように言ってゴブリンに突撃する。俺達は1階をクザク達に任せ2階に上がる。

2階ではモグゾーとホブゴブリン1匹にゴブリン2匹、ランタとゴブリン3匹、マナトがシホルを守りながらゴブリン2匹と戦っていた。そして奥に1匹ホブゴブリンとゴブリンとの中間の身長、普通のゴブリンより明らかにいい鎧兜を付け、手には槍、腰には剣を下げているしている。そしてそいつは戦況を観察している

 

「あれが上位ゴブリン・・・」

 

「うちらで倒してしまう?」

 

「いや、俺達2人じゃ無理だ。それよりみんなを」

 

上位ゴブリンを狙って倒してしまいさっさっと逃げてしまうのがいいがあの佇まい、自信を見るに相当腕がある。それよりマナト達を助けるのが先だ。モグゾーはオーク鎧の防御力のお陰でまだまだ余裕そうだ。ユメはマナトとシホル、俺はランタの援護に向かう

 

「ランタ!」

 

「ハルヒロ!俺は大丈夫だ。モグゾーやマナト達を助けろ」

 

「そんなこと言ったって押されまくってるだろ」

 

「バカ言え、これから俺の華麗なる逆転劇が始まるんだよ」

 

「逆転劇って言ってる時点でヤバイだろ」

 

ランタと口喧嘩しながら後ろを向いているゴブリンに襲いかかる。しかし、声を出しながらなので気づかれて避けられる。ゴブリンは体をこちらに向ける反動を利用して剣を横に振るう。蠅叩〈スワット〉では 捌けないので大きく体を沈ませて避ける。ダガーを両手で固定し起き上がりながらゴブリンの着ている鎧の隙間に突き刺す

 

ガギン!

 

俺の一撃は体を反らした鎧に弾かれる

 

「排出系〈イグゾースト〉!おっしゃっ雑魚共こい!」

 

ランタはゴブリン2匹と距離をとり挑発する。しかしゴブリン2匹はランタではなく俺に向かって来た

 

「あれ?何でこねえ!」

 

「ミエミエなんだよ!それより早く助けろ!」

 

「おう!・・・って、うわ!」

 

上位ゴブリンはランタに襲いかかって来た。今までずっと見てたのに・・・

 

「ははぁ、パーティー1の強者である俺に挑むとはお前もなかなかやるな」

 

ランタは上位ゴブリンに捕まりこっちに戻ってこれない。ゴブリンの攻撃を回避、またはスワットするが

 

「・・・きつい」

 

・・・このままではやられる

 

「ハルくん!」「ハルヒロ!」

 

マナト達が来てくれた。そっちの方はどうにかなったようだ

 

「・・・ハルくん!?どういうことだハルヒロ!」

 

上位ゴブリンの攻撃に押されまくって細かい切り傷を作ってしまっているランタが俺の渾名に反応する

 

「バカ!集中しろ!」

 

「・・・後で教えろよ」

 

「その前にあれだけ傷があるといずれ攻撃に耐えられなくなる・・・光よ、ルミアリスの加護の元に・癒光〈ヒール〉」

 

マナトの手に浮かんだ魔方陣が集まりランタにの方に向かう。ランタのキズが光るとみるみる塞がっていく

 

「おお、サンキュー。マナト」

 

「グォォ」

 

上位ゴブリンが唸るとモグゾーと戦っていたゴブリンの1匹がこちらに向かって来た。モグゾーの負荷は減ったけどランタが依然としてヤバイ

 

「みんな!すまん!あの後ゴブリンが来て遅れた!」

 

クザクが来てくれた

 

「クザク、ランタの元に」

 

「おう」

 

クザクがランタの元に駆け寄る

 

「暗黒騎士がパラディンと一緒に戦うのは恥だがこの際仕方がない!」

 

また訳のわからんことを・・・

クザクの参加で戦況は一気にこちらに傾いた

 

「オーム・レル・エクト・ヴェル・ダーシュ」

 

シホルの影鳴り〈シャドービート〉がゴブリンに命中する。ゴブリンは鈍い音と共に動きが止まる

 

「斜め十字!」

 

ユメの斜め十字をまともに受け倒れる。俺もゴブリンの攻撃をスワットで捌き隙を見つけて背面打突〈バックスタブ〉。ゴブリンの鎧の隙間にダガーを突き刺す。急所ではないのでゴブリンは倒れないが、傷が深く動きが鈍る。そのまま突撃して首元にさらに突き刺しトドメを刺す

 

「・・・もう少しだ。もう少しで勝てる!みんな後少しだ!」

 

マナトが大声でみんなを激励する。そうだ。あのとき俺達は逃げるだけだったけど今じゃ互角以上に戦えている!

 

「どうもー!」ドシン!

 

モグゾーのどうも斬と大きな音。目を向けるとモグゾーのグレートソードが床に突き刺さり、ゴブリンと素手の取っ組み合いをしている。ホブゴブリンは・・・いない。あるのは床に大きな穴。もしかしてどうも斬でホブゴブリンと床ごと斬った?モグゾーはゴブリンにマウントポジションを取り手甲を付けた手でゴブリンを殴打する

 

「ははは、そんな力では俺に勝てないぞ!」

 

モグゾーどうしちゃったの?僕から俺になってるよ。そんなモグゾーを見ている内にこっちの方も終わった。後は上位ゴブリンだけ・・・みんな武器を握り直し上位ゴブリンの前に立つ。上位ゴブリンは雰囲気に飲まれたか1歩後ろに下がる

 

「先手必勝!忌避突〈アヴォイド〉!」

 

ランタが1歩下がったことを隙と見てアヴォイドを放つ。ロングソードを前に突き出し上位ゴブリンに突撃する

 

「おわ!」

 

しかし、槍で上手くいなしランタを俺達の方向に蹴り飛ばす。

 

「グウィ!」

 

俺、クザク、ユメがランタを受け止めて動けない隙に槍を捨て剣を抜いて後ろのシホルに襲いかかる

 

「ヒッ!」「シホル!」

 

マナトはシホルを抱き寄せると背中を向け剣を受ける

 

「ぐぅ!」「・・・マナトくん?」

 

マナトの背中が深々と斬られる。飛び散る鮮血。背中が血で染まっていく。あの時の光景を思い出す

 

「やめろーーー!」

 

急いでマナトの元に駆け寄りたいがランタが邪魔だ。上位ゴブリンが追撃をしようとしたがモグゾーが剣で吹き飛ばす。ランタを押し退けるとシホルに抱き抱えられているマナトの元へ

 

「マナトくん!」

 

「マナト!」

 

上位ゴブリンはランタ、モグゾー、クザクによって倒される。しかし、マナトは返事をしない。嘘だろ!?こんな・・・最後の最後で・・・

 

「・・・がはぁ・・・ごめん・・・痛みで意識飛んでた」

 

「マナト・・・」「マナトくん!」

 

「光よ・・・ルミアリスの加護の元に・・・癒光〈ヒール〉」

 

今度は俺にではなくちゃんと自分に使ってくれた。みんなが集まってくる

 

「みんなごめん。最後の最後で気を抜いちゃった」

 

「いや、俺が・・・すまん」

 

ランタが謝る。あいつ素直に謝れるじゃん

 

「ヒロ!みんなゴブリンがいっぱい来た!」

 

チョコが階段をかけ上がって来た

 

「ヒロ?ハルヒロ・・・ヒロ。おい!ユメだけじゃなく他の女まで」

 

「ランタ後で今は急いで逃げないと」

 

「いや、間に合わない」

 

窓から外を確認しているクザク言う。外を見るともう目の前だ

 

「なんかボロボロやし逃げてきたんたちゃうん?」

 

「あいつらが頑張り過ぎたってことか、適度にやれよ。適度に」

 

「ランタ無茶言うな」

 

「きっとシオリさんもこっちに向かって来てくれるからそれまでの辛抱だ」

 

暫く籠城して戦っているとユート達が後ろから攻撃してなんとかゴブリン達を倒せた。シオリは無茶をして大きな怪我をおったがメリイが適切な治療をして今は眠っているらしい

 

「マナト・・・俺達やったね」

 

「・・・ああ」

 

ハルヒロside end

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