灰と幻想のグリムガル~死霊術師の物語~   作:arc00

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29話

「は~何でこうなっちゃたんだろ?」

 

俺は現在ランタと別れ、庭の隅で身を屈めて隠れている。前回は何とか許してもらえたけど今回ばかりは無理だ。その・・・ユメの大事な所を見てしまった。

 

ヒュン

 

目の前に何かが横切る。横切った方を見ると木に矢が刺さっている

 

「うわ!」

「・・・何か言うことある?」

 

声のする方を向くと寝間着に弓矢と剣鉈を装備したユメが立っていた。

 

「どうして・・・」

「宿舎側からは見えんでも外から見たら丸見えやったで」

 

しまった。外からは考えてなかった。けれども・・・

 

「ちょっと待って、それは洒落にならないぞ」

「シオリにお願いすれば大丈夫やろ?」

 

殺るき満々だ~当然だよね・・・だってばっちり見ちゃったし。ユメは矢をつがえ、目を瞑って開く。早目まで使って本気だぞ。

 

「・・・あっ」

 

弓を下げ体を屈めて小走りで近づいてくる。まさか剣鉈で!?あんなので切られたらメチャクチャ痛いぞ!?

 

「ユメ待って、剣鉈はやめて。せめて別の方法で・・・」

「違う。ちょっと黙ってて」

 

ユメはそのまま通り過ぎて矢の刺さった木の前で止まる。「ユメどうしたの?」と近づくと、小声で「しゃがんで!」と腰を引っ張られて屈まされる。ユメのやつ一体どうしたんだと目線を追うとマナトとシホルが向かい合って立っていた。

 

「・・・でランタとハルヒロくんを探していて」

「あ~、全くあの2人は~。俺の方からも言っておくからシホルはもう遅いから部屋に戻っていて」

「あの・・・マナトくん!」

「ん?」

 

シホルは手を組んだり後ろに回したりして

 

「あの時はありがとうございます」

「あの時?ああ、俺も夢中だったから」

「私がもっとちゃんとしていたら・・・」

「いや、俺の責任だよ」

「いえ、私が・・・」

「俺が・・・」

 

お互いが自分のせいと言い合ってる。マナトとシホルであの時・・・上位ゴブリン相手に負傷したことか

 

「あはっ」「フフッ」

 

2人は笑いだす。空気がちょっと緩くなった気がする

 

「んんっ、マナトくん」

「どうしたんだい?」

「・・・マナトくんのことが好き」

「・・・」

 

えっ!?告白した!シホルがマナトに!マナトどうなんだ!?

 

「・・・シホルが俺のことをどう思ってくれていたかは薄々気づいてた・・・でも俺はそんな資格はないと思ってた」

「ーーッ」

 

シホルが震える。そういえば前にマナトは自分のことを仲間扱いしてもらえるようなやつじゃないって言ってた気がする・・・

 

「あ、そうじゃないんだ。最後まで聞いて欲しい。あの時、俺が助かった時、師匠に仲間を信用していないって怒られた。それでずっと仲間のことを自分なりに考えてきた。そしたらさ・・・みんなに対しての自分の気持ちに気づいた・・・みんなには恥ずかしくて伝えれてないけどシホルにだけは伝えたい・・・俺もシホルのこと・・・好きだ」

「・・・マナトくん」

 

マナトが1歩踏み出す。シホルも遅れて1歩。2人はゆっくりと近づいてゆき抱き合った。それを呆けて見ているとユメの方から「はふぅ」と声が聞こえたのでユメの方を向いて静かにのジェスチャーをする。ユメはジェスチャーを見て急いで両手を口に当てる。顔を元に戻すと2人は抱き合ったまま見つめ合っている。シホルが目を閉じた!まさかこのまま・・・。俺の予想通り、2人の顔が近づいていき、マナトとシホルの唇が触・・・

 

「うわぁぁぁぁ。やめてくれ~」

 

宿舎全体に響くランタの絶叫。2人はその絶叫に驚き離れ、辺りを見渡す。完全に雰囲気を壊されて居心地が悪そうに頭をかくマナトとモジモジしているシホル

 

「その・・・うん。部屋まで送るよ」

「う、うん。お願いします」

 

2人は並んで歩いていき、どちらかともなく手をつないで去っていった。ランタの邪魔がなかったら2人ともキ、キスしたよな?も~あいつは~

 

「良かったな~シホル」

「うわっ!」

 

ユメが抱きついてきた。ユメから香る風呂上がり特有の甘い香り・・・あの光景が思い出される。落ち着け俺!

 

「ユ、ユメ!?は、離れて」

「あ、ごめんつい・・・」

 

いや、俺もあんなの見たら・・・

 

「あの・・・ユメ。ごめ、じゃなくて覗いてごめんなさい」

「あ、うん。別にええ・・・いや、あかんのやけど・・・その・・・見たやんなぁ」

「あ・・・う、うん・・・」

 

ユメは赤い顔をさらに赤くする

 

「不可抗力というか・・・本当にごめんなさい」

 

俺は土下座する。暫く経っても何も反応がないので顔をあげるとユメは赤い顔をしてモジモジして

 

「・・・つに・・・裸・・・いい・・・って」

「へっ?なんだって?」

 

あまりにも小声で聞き取れなかった。ユメはプルプルと震えて

 

「も~アホ!」

 

弓を大きく振りかぶり、俺の頭めがけて降り下ろす。土下座の体勢をしていた俺は回避できるわけでもなく

 

「イテ!」

 

まともに受ける。結構痛い

 

「反省し!」

 

踵を返し、去ってゆくユメ。一応これで終わりなの?暫く待っても何もなかったので部屋に戻って寝た

 

 

 

 

 

 

朝起きるとランタがいない。朝食の当番でもないし・・・もしかして戻ってきてない?そう考えながら外のテーブルまで出てくるとランタが土下座をしていた

 

「ラ、ランタどうしたの?」

「何か僕が来たときからずっとしてた」

 

食器を並べにきたモグゾーが答える

 

「おはよう」

「おはようございます」

 

ユメとシホルが出てきた。ユメにもう一度謝らないと・・・

 

「あのユメ昨日「覗きをして申し訳ありません!今後このようなことは一切行いません!」」

「ランタ?」

 

おかしい。前覗いた時は最後まで謝らなかったのに。でも何でこんな必死に?

 

「ハルヒロ、おはよう」

 

後ろからシュウに声をかけられる。

 

「あれ?シュウはここに泊まったの?ってうわっ!」

 

シュウの両頬は真っ赤に腫れている。

 

「大丈夫?それ?」

「覗きの罰だ。ハルヒロは大丈夫そうだな」

「ああ・・・」

「どんな罰を・・・すまない」

 

シュウは話を中断して炊事場に走る。そこにチョコとリンがくる

 

「ハルヒロさんおはようございます」

「あ、おはよう」

「シュウから聞きました。2人でランタを止めようとしたんですよね?結果的には覗いたので罰を受けてもらったのですけど大丈夫ですか?」

「えっ、うん大丈夫」

 

シュウが両手に水が入ったコップを持ってきて2人に渡す。2人が礼を言うと「悪いことをしたから当然だ」と言って離れる。離れる際、俺にだけ見えるようにサムズアップした。そうか・・・シュウありがとう。

 

「ふぁあぁぁ。シオリさんとランタのお仕置きをしてたので眠いです」

「さ、3人で?」

「いえ、5人で」

 

リンが指を指す。振り向くと眠そうなヒロトとアオイが扉から出てきたところだった

 

「あ、おはようございます」

「・・・おはようございます」

「私達が戻った後も続いてたの?」

「・・・はい。お陰で寝不足で」

 

会話の様子だとかなり遅くまでやっていたみたいだ。ヒロトが近づき耳打ちしてくる。

 

「ハルヒロさん。覗きに参加しなくて正解でした・・・もし覗いてたら・・・」

「・・・ヒロトくんも覗きたかったの?」

 

アオイがいつも間にか後ろにいた。

 

「あ・・・いやそんなことは・・・」

「私・・・ヒロトくんにだったら」

 

アオイがヒロトに迫る。アオイって絶対ヒロトのこと好きだよな。ヒロトも嫌がっていなさそうだしさっさと告白すればいいのに

 

「何でだよ!お前らも一緒に覗いてたのに・・・何で俺だけこんな!」

 

急にランタが立ち上がり、俺達の方を指さす。ランタは泣いていた。

 

「ランタ大丈夫か?」

「うるさい!裏切り者!俺は、俺は・・・」

「ふ~ん。俺は?」

 

声のする方を見るといつの間にか来ていたシオリがゴミを見るような目をして立っていた。ランタはシオリを見ると再び土下座をし

 

「いえ、何でもありません!覗きをしてすいませんでした!」

「まあいいです。ちゃんと一晩中していました?」

「はい!」

「嘘ですね。私、離れていても相手の様子が分かる魔法が使えるのですよ。昨日あれだけしたのに・・・まだ足りないようですね」

 

ランタはシオリの言葉を聞くと四つん這いでシオリの元に行き 、すがりつく

 

「一晩中はかわいそうだから疲れたら休んでいいって言ってたじゃないですかぁ!休んでいる以外はちゃんとしてました!」

 

一晩中土下座させてたの!?みんなちょっと引いてるよ

 

「嘘ですよ。そんな魔法使えませんよ。その様子だとずっとやってたみたいですね」

 

シオリの言葉を聞くと手を離し脱力するランタ。一体何されたの?

あのあとヒロトに聞いてもはぐらかされるだけで分かったことと言えばシオリを怒らせてはいけないってことだけだ。ランタは暫くパーティーのヒエラルキー最下位で特に女子2人に使われていた・・・

 

ハルヒロside end

 

 

 

 

 

 

 

other side

 

「「「「「乾杯」」」」」

 

俺達5人は仕事終わりの恒例行事。シェリーの酒場での酒盛りをいつもの通り始めた

 

「ングッ、ングッ、はぁ~」

 

あ゛~仕事終わりのビールがうまい!

 

「そういえばあの噂どうなんだろうな?」

「あの噂?」

「ほら、あれだ。ソウマパーティーの」

「ああ・・・」

 

仲間の戦士が最近流れている噂について言ってきた。噂というのはソウマパーティーがクランを作るという噂だ。

意外なことにソウマパーティーはどこのクランに属したことはない。ここオルタナ周辺で活動するならともかく、人間族や同盟国家の勢力圏を離れれば離れるほど、モンスターや敵対種族は手強くなるし、1度に相手にする敵も多くなる。だから勢力圏外で成果を上げるにはクランに入って活動するのが普通だ。

それなのにソウマパーティーは6人だけで成果をあげ続けている。

 

「ソウマパーティーがクランを作るっていう噂か・・・」

 

どこからか湧いた噂。あのソウマパーティーがクランを作るらしい。ソウマ位のネームバリューなら強い義勇兵が集まってさぞ強いクランができるだろうな。

それに噂は広く伝わっているらしく、ソウマパーティーがよく利用しているシェリーの酒場は満員で立ち飲みも発生している始末だ

 

「俺達には関係ない話だよ」

「だけどよ・・・」

 

俺達みたいな弱小パーティーが入ろうにも断られるに決まっている。ここに来たときにあまり者同士でパーティーを組んで、危険なことを避け続けて今まで誰も死なずに生き残ってきた俺達に・・・

 

「ソウマじゃねえか!」「ソウマ!」

 

噂をすれば何とやら、ソウマパーティーがシェリーの酒場に入ってきた。カウンター近くの目立つ場所のテーブルに座っていた義勇兵が「ソウマ!ここに座れよ!」と席を譲る。

 

「羨ましいねぇ。俺達なら逆に「どけ!」とか言われちゃうぜ絶対に・・・」

 

その後、ソウマ達も飲み始める。周りの奴等はソウマの方をチラチラ見ている。そんなあからさまに見ちゃって、落ち着いて飲ませてやれよ。

 

「そう言うお前もチラチラ見てるだろう」

「うぐぅ」

「バカなことやってないで飲めよ」

 

仲間達に飲まされ、酔いも回っていい気分になってくるとソウマのことも忘れて仲間達との会話に花が咲く。そして・・・

 

「・・・俺たちはクランを結成することにした」

「えっ!?」

 

その言葉が聞こえて酔いが覚めた。酒場全体もどよめいている。

 

「おい、あの噂ホントだったのかよ」

「けど俺達みたいなのはお呼びじゃねえよ」

 

仲間もバカな会話をやめ、ソウマのクラン結成について話ている。まぁ確かに俺達には関係ない話だ・・・

 

「目的は、旧イシュマル王国領、不死の天領〈アンデットDC〉への侵入だ」

 

みんなソウマの言葉を聞くために黙る。ソウマは特に声を張り上げていないのにシェリーの酒場全体に響く

 

「俺達は、不死の王〈ノーライフキング〉復活の兆候ありとの情報を掴んでいる。その調査と、ノーライフキングが復活した場合は即座にこれを討ち滅ぼす。当然、容易くはないだろう。そのための手段を探り当てないとならない。力も必要だ。俺達6人だけじゃ足りない。みんなの力が必要だ」

 

すげえ・・・ノーライフキングが復活するかも知れねえから調査して、いたら倒すって・・・これが最強の義勇兵か・・・。

周りも割れんばかりの歓声や拍手をしてまるで祭りのようだ。ソウマは手を上げる。すると歓声や拍手はピタッと止まる。

 

「どうか俺達に力を貸してほしい!力がない者も、我こそはという者も、参加を申し出てくれ!」

 

わっとまた歓声が上がり、パーティーリーダーらしき人がソウマに群がる。

 

「すげえなぁ・・・もうあんなに集まってるぞ」

「・・・力がない者か・・・」

「おいおい、リーダーまさか参加するつもりじゃないだろうな?」

「今まで危険を避けて頑張って来たのよ」

「でも・・・」

「だけどよ。どこかで勝負しないとずっとこのままだぞ」

「現状維持でもいいじゃない!」

 

パーティーメンバーがケンカを始める。皆をなだめながら考える。俺達弱小パーティーじゃ対して役に立たねえと思うがタクトがそんな俺達でも必要って言ってくれている。パーティーメンバーは賛成反対半々だが、俺は参加したい・・・。説得に時間がかかりそうだが頑張るしかない

 

other side end

 

 




ここまでで1巻は終了です
ここまで読んでくださった方、お気に入り・評価してくださった方ありがとうございます。次話から2巻の内容に入っていきますのでこれからもよろしくお願いします
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