灰と幻想のグリムガル~死霊術師の物語~   作:arc00

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金曜日には落ち着くと思いますので次話の投稿は遅くとも土曜日になると思います


34話

砦から城壁まで約15分、馬車なら約5分。私達は全力で走る。城壁に近づくにつれ怒号、金属のぶつかる音、血の匂いがしてくる。

 

「最悪」

「・・・ええ」

 

城壁までもう目と鼻の先にまで差しかかった所でアディさんが呟く。メリイも何かを見つけたようだ。「えっ?」っと私が2人に聞くとメリイが城壁の上に指をさす。私達が向かっている城壁の上の櫓には辺境軍の旗ではなく別の旗が風で翻っていた。

 

「城壁がオークに取られたの?」

「いや、あそこら一帯だけだ。他はまだ大丈夫」

 

両側の城壁上の櫓にはまだ辺境軍の旗が立っている。私の見える範囲では辺境軍は両側とオークの手に落ちた櫓への階段の3方向から攻撃し、櫓を奪還しようと奮闘している。

 

「見えないけど櫓から城壁内に入れるからそこでも戦いが起こってる」

 

私達の力が充分に発揮できるとしたらある程度自由に動ける場所・・・両櫓からか城壁内。今は急いで戦いに参加しないといけないから・・・

 

「私達は城壁内から・・・」

 

ドン!

 

私達義勇兵が城壁外に出るために使用していた門にから大きな音。見ると内門を開き辺境軍が外門を必死にを押さえているのが見えた。

 

「攻城兵器・・・」

 

私達が活動範囲外に準備していたの?城壁から攻撃しようとも門は櫓から近い位置にあるためたいした抵抗もできなさそうだ。

 

「あのままじゃ、門も・・・」

「大丈夫。あっちはなんとかなる」

 

馬とガナーロに引かれて大きな岩が運ばれてくるのが見える。そして門を押さえている兵士と岩を入れ替え、岩が入らなくなると外門を閉めてまた岩を置いていく。門を破壊されても岩、そしてまた門と岩で突破されにくくする。これなら大丈夫そうだ。

 

「私達も急ぎましょう」

 

城壁内に入るために階段に昇る。階段には城壁内に入る者、階段から櫓に攻撃する者が一緒になってすし詰め状態だ。私達の移動速度はかなり遅い。

階段上部ではオークと兵士が戦っているが回避が上手くできずオークの力に押されて苦戦ぎみだ。あの場では鎧と盾で固めたヒロトは大丈夫だけど攻撃を捌いたり回避するアディさんじゃやっぱり不利だ。

 

「ピュ!?」

 

侵攻が遅いのに腹が立ったのか突然後ろにいたオークは前で戦っていたオークの背中を押し始めた。押されたオークはそれに必死に耐え、後ろに話しかけているがオークは押すのを止めない。

 

「プュギュ・・・」

 

意識が後ろに向かったため、剣や槍を捌けずに体に突き刺さる。そしてたいした抵抗もできずオークは死んでいく。

 

「いったい何を・・・」

「・・・チッ、みんな飛び降りて距離を取って!」

「えっ、どうして?」

「早く!」

 

アディさんは階段から飛び降りる。私も続いて飛び降りるが高さがあったため尻餅をつく。

 

「いった~」

「ふっと」

「ありがとう」

 

私の横にヒロトとヒロトに抱きついたアオイちゃんが飛び降りてくる。2人はさっさと城壁から離れていく。私は・・・

 

「何座り込んでるのよ」

 

メリイが私の手を取って城壁から離れる。

 

「おい!何処に行くんだよ!」

 

後ろから他のパーティーの声が聞こえてくるが私達は足を止めない。

 

「アディさんいったい・・・」

「階段が突破される。シオリ急いで援護要請」

 

アディさんは続々到着してくる義勇兵を呼び止めて城壁に近づかないように言って回っている。どういうこと?私は階段に目を向ける。

前のオークが死んでも押すのを止めないオーク達。そして辺境軍にぶつかる。辺境軍は死体を押しているオークに攻撃しようとするがオークの死体が邪魔で上手く攻撃できない。

 

「おい!押し返せ!」

「無、無理だ」

 

人間とオーク、力が強いのはもちろんオーク。そしてここは城壁の上に上るための階段。無論手すりなどの落下防止対策なんて優しいものなんてない。そして徐々に押されて行き。

 

「うわぁぁぁぁ」

「おい、倒れるな」

「そんなこと言ったって」

 

階段から落ちる人、その場で倒れて周りの人を巻き込んで将棋倒しになってしまう人。将棋倒しになった人達を踏みながら階段を下りていくオーク達。私達より体重が重く、あんな数に踏まれたら・・・

 

「みんな、行くよ!敵を門に近づけさせないようにね!」

 

プロテクションを受けたアディさんとヒロトは呼び止めた義勇兵達を率いて階段を降りてきたオーク達に向かってゆく。私は階段に敵が降りてきていること辺境軍の方はほぼ全滅して義勇兵のみで対応していることを伝え、援軍を求めた。私達にできること・・・

 

「2人は階段から落ちた人の治療を!」

 

階段から落ちた人は落ち方が悪く怪我をしている者が大半だが治療すればまだ・・・。「ダメよ」メリイが手で私とアオイちゃんを制す。「矢の射程に入ってる」階段でオークやリザードマンが弓を構えでいる姿見える。弓や魔法を扱える者が応射しているが地の利を取られているため上手くできていない。

 

「こっちはもうひっくり返せないから向こう頼りですね・・・」

 

戦いで傷ついた者は後方に控えた神官達で治癒する。前衛の空いた穴は弓や魔法で牽制をする。砦から義勇兵が続々到着しているので数の心配は大丈夫そうだ。

 

「1匹飛び降りてきた!」

 

階段を攻撃していた人が叫ぶ。リザードマンが1匹こっちに向かって来ている。かなり早い。

そいつは止めようとした狩人や盗賊をあっさりと突破して神官の集団を素通りして・・・こっち!?

 

「シオリ!」

 

メリイが私の前に立つ。リザードマンはメリイに向かって槍を突き出す。メリイは体をひねり回避する。

 

「くっ」

 

リザードマンは飛ぶとメリイを踏み台にして私に飛びかかる。咄嗟のことで回避できない!

 

「あっ、ぐぅ」

 

お腹の空気が一気に吐き出される感覚と両足の接地感がなくなる。リザードマンは私を担ぐとそのままきた道を走り戻る。メリイが私に向かって何かを叫んでいる。

 

「た、助け・・・」

 

助けを言いきるまえにリザードマンは垂直の壁を気にせず階段まで登る。そして櫓に向かって走る。

 

「安寧を生きるものに・・・ぐぅ!」

 

リザードマンの拘束を解こうとモータルレイを唱えるが途中で投げられ壁にぶつけられる。痛みに耐えながら周りを見るとオークやリザードマン、コボルドやゴブリンの姿も見える。兵士や義勇兵は結構近くで戦っている。

 

「オゴッ!プギュ!」

「ガウ、グウ」

 

私を連れてきたリザードマンとオークが言い争っている。オークは黒い鎧に毛皮のマント、牙は何も彫っておらず綺麗だが顔に刺青をびっしりとしている。立ち振舞いからここの指揮官のようだ。恐らく私を連れてきたことを・・・でも、注意が逸れている今なら!

 

「死して我に従う玩具となれ・死体操作〈ゾンビクリエイト〉!」

 

近くにあったオークの死体を操り上位オークに襲わせる。こいつをどうにかしてその混乱中に逃げる!

 

「フン」

 

上位オークは向かってくるオークの死体を腰に身に付けていた剣で一刀両断にする。そしてこちらを見る。

 

「やばっ、って、やっ、ちょっと・・・ムグ、ンー!」

 

すぐに近くにいたオークが私を拘束すると縄で縛り、猿ぐつわをする。

 

「タワムレガスギルゾ」

 

上位オークが剣に着いた血を払いながら近づく。

 

「テアラナマネヲシタノハアヤマロウ。オマエヲツレテユク」

 

は?謝ってきたのはびっくりだが連れていく?どういうこと?わからない?

 

「ンー、ンー(離せ、離して)」

「アバレルナ」

 

上位オークは私を抱え胸の所で縛ると城壁から降りようとする。えっ?ちょっと本当に連れていく気?

上位オークは侵入するのに使ったであろう長梯子に手をかける

 

「おい」

 

上位オークの手が止まる。体ごと振り向いたので私にも声の主が見えた。

 

「んー!(レンジ!)」

 

レンジが立っていた。離れた所ではロン達が戦っている姿が見える。レンジは私の姿を見て一瞬びっくりした顔になるがすぐにいつもの顔になる。

 

「そいつは一応俺の知り合いだ。置いていけ」

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