灰と幻想のグリムガル~死霊術師の物語~   作:arc00

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35話

「そいつは一応俺の知り合いだ。置いていけ」

 

私が上位オークに連れ去られようとした時、レンジが助けに来てくれた。振り向いた上位オークは周りに一声かけるとオーク達がレンジに群がる。

 

「オーム・レル・エクト・ネムン・ダーシュ」

 

奥にいたアダチが魔法の詠唱と共に杖を地面に突き立てる。するとオークの足元から黒いエレメントが伸び絡みつき拘束する。オークが足の拘束を解こうともがいている隙に2匹。黒いエレメントの拘束を引きちぎりレンジと鍔迫り合いをするが上手く剣を絡めて体勢を崩してからの攻撃で3匹。合計5匹のオークを一瞬で倒してしまった。

 

「ムー、ンッ(凄い・・・きゃ)」

 

レンジってこんなに強かったの?私が感心していると私と上位オークとを固定しているロープが切られる。急な落下に身構えるが大きな腕に抱き止められる。そして私をゆっくりと地面に置いてレンジの前に出る

 

「ニンゲンヤルナ。オレハイシュ・ドグラン」

「・・・レンジ」

「ワズカナテゼイデコンナトコロニ。シニニキタカ?」

「貴様が死ねば終わりだろう?」

 

レンジパーティーは突出して敵指揮官を倒して混乱させるために出てきたんだ。イシュ・ドグランはレンジの言葉を聞いて大きく破顔して笑う。

 

「オモシロイ。オンガシュラドゥ」

 

周りのオーク達がイシュ・ドグランの言葉に次々と答える。そしてオーク達は2人を囲う。囲んだオークは武器を構えるのではなく下に下ろしていたり、鞘に戻したりしている。短い時間で2人の闘技場が完成した。私?私は闘技場を形作るオークの1匹に抱かれて2人を観戦している。

 

「スグニオワルナヨ」

「こっちの台詞だ」

 

開始の合図もなく2人は打ち合う。2人が剣をぶつける度に大きな音が響く。イシュ・ドグランはオークを一撃で両断するだけの力を持っているので当然だとしてもそれに負けないレンジも凄い。鍔迫り合いでは流石に人間とオークの差があって押されるが力を上手く流して体勢を崩そうとする。

 

「フフ・・・イイゾレンジ」

「・・・」

 

一進一退の戦いが展開される。周りのオークは固唾を飲んで見守って私のことは蚊帳の外だ。

意識が外れている内にどうにか逃げないと・・・。周りを見渡すと嫌なものを見つけてしまった。櫓の屋根に1匹のゴブリンがいる。そいつはボウガンを構えて・・・レンジを狙ってる!?2人はもちろん、オーク達もレンジとイシュ・ドグランの戦いに集中していてゴブリンの存在に気づいていない。

 

「ンー!ンー!ンー!(レンジ!後ろ!狙われてる!)」

 

猿ぐつわをされているので声が届かない。オークは私が急に暴れだしたので腕の拘束を強くする。どうにかして伝えないと。あ、私には便利な能力がったんだ。私が伝えるのと周りをオークが驚く。これオークにも伝わるんだ・・・

 

「!!」

 

私が伝えたのとほぼ同時にゴブリンはボウガンを放つ。レンジは大きく体をひねり矢を避ける。しかし、その隙をイシュ・ドグランは見逃すわけもなく剣を降り下ろす。

 

「・・・チッ」

 

レンジはイシュ・ドグランの攻撃も避けようとするが矢を避けた後では上手く避けられない。レンジは左腕を大きく切り裂かれた。

 

「・・・グッ」

 

レンジは大きく下がり剣を構え直そうとするが左腕が動かせない!私が気を反らしてしまったから・・・

 

「シュルグァ!」

 

イシュ・ドグランが怒りに満ちた声で叫ぶ。周りのオークは辺りを見渡し屋根にいるゴブリンを見つける。ゴブリンはそのまま捕らえられイシュ・ドグランの前に連れ出される。

 

「グルフドゥ!」

 

イシュ・ドグランはゴブリンに剣を降り下ろして殺してしまうとレンジの方を向く。

 

「ドレイガジャマヲシタ」

「教育のなっていないやつだな」

「フン・・・イノチハオイテオイテヤル」

 

そのまま身を翻す。私を掴んだオークもその後に続こうとする。

 

「まだ勝負も決まっていないのに景品を勝手に持っていくのは反則じゃないの?」

「うらっ!」

 

サッサとロンの声。それと同時にオークの拘束が解けて私は地べたに倒れる。周りが離れる足音がするから2人が威嚇してくれてる?

 

「全く、縛るなんて大層な趣味をしてるじゃないの?」

 

サッサはそう言いながら私の前でしゃがみこんで首筋にダガーを当てた。

 

「フグ?(えっ?)」

 

えっ?ここは縄を切って助けてくれる流れじゃ?

 

「動くんじゃないよ!変なことをしたらこいつの命はないよ!」

 

サッサはロンに背中を守ってもらいなが周りを威嚇する。

 

「ドウイウツモリダ?」

 

イシュ・ドグランが私達の方を睨む。

 

「不思議に思っていたのですよ。攻城の割には攻撃がぬるいと」

 

声の主はアダチだ。チビに守られたアダチが前に出てきてレンジの横に立つ。

 

「本来ならあるはずの投石やバリスタ等の城壁外から城壁内の味方に対する援護がないことを。」

 

辺りを見渡す。周りで死んでいる人には矢がほとんど刺さっていなかった。

 

「先程のあなたの姿を見て確信しました。この攻撃はついでで本当は彼女を拐うためだと」

「キベンダナ。ソイツヲサラウノハタマタマダ」

「サッサ」

 

アダチの声と同時にダガーに入る力が強くなるのと同時に首から血が流れる感覚がした。オークからの殺気が濃くなった。

 

「イミガワカランナ。ソイツヲコロセバオマエタチガツミニトワレルダロウ」

「嘘なのはバレバレです。今は戦いで兵の死なんて当たり前です。それにここは私達以外は敵であるあなた達しかいません。彼女が死んでもあなた達が殺したと思うでしょう・・・もし、引いてくれるのでしたら僕らが、いえ、レンジが責任を持って守りますよ」

「・・・」

「もちろん迎えに来たときにはレンジと決着をつければよいでしょう。邪魔のない所で」

 

沈黙し目をつむるイシュ・ドグランに対してアダチはさらに言葉を続ける。

 

「・・・イイダロウ。レンジショウブハアズケタ。オマエ、ココノオサヲヨベ」

 

目を見開いたイシュ・ドグランの決定にオーク以外の種族から不満の声が上がるがイシュ・ドグランの一喝でその声は止んだ。侵攻する敵の勢いが止まる。そして何匹かのオークが前に出て停戦を申し入れた。事態を聞きつけた辺境軍が集まりだし、人間族とオークとの停戦のための交渉が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

「緊急とは言えこんな目にあわせてしまってすいません」

「結果的に助かったのでいいですよ」

 

チビに首のケガを治療をしてもらっていた私にアダチが謝罪してきた。

 

「でもすごいですね。あの状況から休戦を引っ張りこむなんて」

「状況がよかったからですよ。不確定要素が多くてかなり危険な賭けでした」

「シオリ!」

 

メリイの声。振り向くとメリイが走ってくるのが見えた。奥にはみんなもいる。

 

「よかった・・・リザードマンに連れ去られた時はもう・・・」

 

メリイはそのままの勢いで抱きつく。そして身体中を触りながら

 

「ケガは?体は?何もされてない?」

「ちょっとケガしただけ、チビが治してくれたから大丈夫だよ」

「急にメリイが敵を押し退けて階段に登ろうとしたときは驚いたよ」

 

アディさん達3人が遅れてやって来た。私がいなくなってメリイがかなり無茶をしたみたいだ。

 

「あの・・・再会を喜び合うのはよいのですが少し質問があります。」

 

再会を分かち合おうとする私達にアダチが割って入る。

 

「そもそも何でシオリさんは拐われたのですか?見た感じオーク達と何か関係がありそうなのですが・・・」

 

その疑問はもっともだろう。オークとの接点・・・あの不思議な夢しかない。だとするとこの力もオークから?時期が合っているから辻褄は合うことは合う。

 

「一応考えられることは1つありますがここではちょっと言えないので戻ってからにしてくれませんか?」

「・・・わかりました」

 

オルタナに戻ってから集まって話すこととなり、レンジ達と別れた。

 

「私には聞かされてないんだけど?」

「私達がいない時に何かあったのかい?」

 

砦の部屋に戻り、メリイ達に問い詰められる。みんなには先に説明しないと

 

「あ~うん。かなり頭のおかしい話なんだけど」

 

夢でオークがいる建物に2回行ったことと謎の儀式、そして謎の儀式以降不思議な力に目覚めていることを伝えた。

 

「関係ありそうなんだけど夢か~」

「シオリもっと何かないの?ほらリザードマンと前に会ってたりとか」

 

オークについてあるとすればサイリン鉱山での調査のことぐらいだ。リザードマンに関してはここに来て初めて見たレベルだ。

 

「でもこの話をあの人達に話すのですか?」

 

ヒロトの言葉にみんなが苦い顔をする。当然か・・・

 

「ま、まあ、とにかくシオリがそう言うのだから信じるしかない。現にオークに狙われてるから外に出るときは私達で守ること」

「それにオークとの交渉がどうなるか気になります。」

 

私達はオークとの交渉が終わるまでここに足止めされている。理由は交渉が決裂した場合の兵力確保のため、既に補充兵の手配等の陳情はされているので少なくともそれが来るまではここで待機だ。

オークの圧倒的優位な状態で突然の休戦の申し入れ。その意図が読めないことと長年敵対していたこともあり人間側の意見は割れていた。だが日が経つごとに大きくなる敵陣地と反比例するように反対意見は小さくなっていき、ついに人間族とオークの休戦協定が結ばれた。





オークなどの他種族もそれぞれ文化を持っていますしノーライフキングとの戦争中もこういった停戦協定や人質の交換みたいなことがあったのではないでしょうか?
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