灰と幻想のグリムガル~死霊術師の物語~   作:arc00

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感想で指摘があって番外編の投稿は話の区切りで投稿することにしました。
楽しみにされていた方がいましたらすいません


38話

ビンセントの人達にワンダーホールへの道のりを聞いて出発する。風早荒野は視界がよくサッサに索敵を任せずともモンスターを見つけて回避しながら移動する。天気もよく風が少し肌寒いが快適だ。

 

「あそこの丘がそうみたいだね」

 

サッサがワンダーホールを見つけたみたいだ。大きな丘の斜面にぽっかりと開いた穴。聞いていた通りあれがワンダーホールだ。横幅は少なくとも百メートル位ある。

 

「こんなところパーティー単独で入る場所じゃないですね・・・」

 

ワンダーホールには危険なモンスターがいると聞いていたが入口付近にはいない。穴の中は斜面になっている。穴を覗くと風早荒野で見かけた鶏がいた。遠目で大きいと思ったがやっぱり大きい。2、3メートルはあるんじゃないだろうか。そしてよく見ると首を跳ねられたりして死んでいる鶏もいる。

 

「どうやらワンダーホールに入るにはあの鶏をどうにかしないといけないようですね」

 

あの鶏達はワンダーホール入口を住みかにしていて中に入るには倒さなければいけないみたいだ。

 

「クエッ?」

 

1匹私達に気づいて近づいてくる。鶏冠があるから雄だ。

 

「うわ~」

「鶏って近くで見ると怖い顔してますね」

「・・・グロッ」

 

鋭いくちばしに血走った目。鶏冠には太い血管が浮き出ている。それがどんどん近づいてくる。はっきり言うと気持ち悪い。鶏はちょっと離れたところで止まると体を揺すったり羽を広げて威嚇しだした。

 

「ここにいるのもまずそうですね。離れましょう」

 

ワンダーホールから距離を取る。鶏は私達が離れても穴の中に戻らずにじっとこちらを見ていた。しばらく様子をうかがっていると急に走りだしこちらに近づいてきた

 

「クエェェェ」

 

威嚇して離れたが一向に消えないから痺れを切らせたんだろう。巨大鶏は飛び上がって足を私達に向けてきた。

レンジが前に出てグレートソードを盾にして受ける。私達はその間に陣形を整えた。

 

「ギャギャア。グェー!」

 

巨大鶏は足を左右に出して連続で蹴ったりジャンプして体重を乗せた両足で踏み潰そうとする。

 

「ーーッ!」

 

連続攻撃の隙をつき、グレートソードでの回転斬りを巨大鶏の脚にぶつける。血が飛び散るが両断にいたっていない。

 

「ウラァ!」

 

巨大鶏の後ろに回ったロンが剣を深々と突き刺す。脚に比べて体は柔らかいようだ。

 

「グゲー!」

 

ロンに刺された痛みか巨大鶏はひときは大きな声で鳴くと標的をロンに切り替える。

 

「うおっ!?」

 

巨大鶏は大きく振りかぶると鋭いくちばしをロンに向けて降り下ろす。ロンは盾で防御せずに大きく飛び退いて回避した。

 

「グエッ!グエッ!」

 

巨大鶏はくちばしで執拗にロンを追いかける。

 

「ロンさん!」

 

ヒロトが巨大鶏を攻撃すると今度はヒロトを標的に・・・って姿の通り鳥頭だこいつ。

 

「こっちだ!」

「は、はい」

 

巨大鶏のくちばし攻撃、脚の連続攻撃を避けながらヒロトはレンジの元に移動する。

 

「はぁぁぁぁ!」

 

巨大鶏のくちばし攻撃に合わせてレンジがグレートソードを叩きつけた。

 

「!?!?!?!?」

 

レンジの攻撃が巨大鶏の首に命中して巨大鶏の頭が吹き飛ぶ。頭を失った巨大鶏は首から血を吹きながらあさっての方向に走り出した。頭がないから死ぬのは時間の問題だろう。穴の方に視線を移し、追加の巨大鶏が来ないことを確認して私達は集まった。

 

「入口付近で待ち構える予定でしたけど予定が狂いましたね」

 

周りは開けた原っぱで身を隠す場所はない。かといって入口に戻って巨大鶏を倒して待つのもダメだろう。さっきの戦いで巨大鶏はかなり耐久力があることがわかった。

 

「入口付近じゃなくとも中に入って待つのはどうだ?」

 

考える私にレンジが提案する。レンジやアディさん、それにロンがいればあの巨大鶏の巣を抜けるのは簡単なんだろうけどワンダーホールの入口は広かった。多分入口の時点で複数個あると思う。

 

「多分入口が広いのですぐに分かれ道に行き当たると思いますし巨大鶏と奥にいるモンスターで挟み撃ちになるのが怖いので却下で。それにソウマ達が戻ってくるまで戦い続けるのは現実的じゃありません」

 

簡単な情報収集でワンダーホール奥にはオークやこの周辺の勢力争いに敗れた異種族や危険なモンスターがいるとの話を聞いた。もし私達の手に終えない敵と出会った場合、入口付近で陣取る巨大鶏がかなり厄介だ。

 

「・・・」

 

レンジは黙っている。納得してくれた?

 

「ワンダーホールでソウマ達を待つのは諦めましょう」

 

情けないがここはビンセントヘ戻るしかない。ビンセントヘ戻った私達がソウマに出会えたのは1週間後だった。

 

 

 

 

 

 

「なるほど・・・今そっちの方はかなり大変な状況みたいだね」

 

ソウマは椅子に座って腕を組んでそう言った。ワンダーホールから戻ってきてもらって疲れているだろうが無理を言って会ってもらっている。ソウマ以外にはエルフのリーリヤが同じ席に座っていて奥にはピンゴとゼンマイが背中合わせで座っているのが見える。私達の方は大人数で押し掛けたら悪いのでメリイ、レンジ、アダチの4人だ。

所長の言付けはオルタナに戻ってくるかセントール族の集落ビンセントの警護。オルタナに戻る場合は戦闘行為の禁止だ。

 

「ビンセントヘの滞在か・・・もしかしたらデットヘッド監視砦に攻撃することを考えてるかもな」

 

オーク側はナナンカ防衛要塞線の城壁が邪魔で攻撃できない。こちら側は城壁の利点を捨ててまで戦いたくない。かといって引こうにもお互いの戦力が大きくなってしまい引くに引けない。そのための打開策としてデットヘッド監視砦への攻撃。

 

「効果あるんでしょうか?」

「どうだろう?こんな大人数ここで遊ばせることなんてしないだろうし何か策でもあるんだろう。それにどのみち全員でオルタナまで戻ることはできないしな」

 

大人数で移動したら見つかってしまうから2、3パーティーに別れて移動するしかないが時間がかかる。それならば戻らずにここにいた方がいいというわけか。

 

「ではここまま残ることでよろしいですか?」

「ああ。ブリちゃんにそう伝えといてくれ」

 

ソウマクランはビンセントの滞在、セントール族は数十人がナナンカ防衛要塞線に派兵される。これで後はオルタナに戻って所長に結果を報告すれば依頼は達成だ。

 

「君たち俺達のクランに入らないか?」

 

席を立って去ろうとした私達にソウマが言った。

 

「オルタナに戻ったらすぐにこっちに戻って来なくてもいい。この件が終わったら君たちもここにきてワンダーホール攻略を手伝って欲しい。」

「どうしてですか?」

「行ったことはないだろうけどワンダーホールはかなり広大だ。この大人数で何度もアタックをしているが未だに全容はわかっていない」

 

前々から複数のパーティーやクランがアタックして地図を作成する試みがされていてソウマクランが参加してからは作成スピードも早くなった。しかし、まだ全容解明までいたっていない。それに私達も参加して欲しいらしい。

 

「すみませんがお断りします」

「断る」

 

レンジも断った。まあ群れる人じゃないですしね。

 

「そちらの2人は?」

 

ソウマの視線はメリイとアダチに移る。パーティーの引き抜きを狙うなんてそんなに数が欲しいの?

 

「嫌よ」

「抜ける気はありません」

 

当然メリイも断る。レンジパーティーの頭脳担当のアダチも断った。ソウマは「気が変わったらいつでも言ってくれ」とあっさりと帰してくれた。宿に戻ると3人にも別の人からクランに入らないか?と勧誘されていたらしい。この分だとレンジの方も同じだろう。

 

「何だか感じが悪いような・・・」

 

噂では義勇兵の中の義勇兵とか人柄がいいと聞いていたがそうでもないような気が。これならオリオンの方が礼儀正しくていい。まぁ接する時間が少ないからかもしれないし、近くにいればそうでもないんだろう。

とにかく依頼は達成した。さっさとオルタナに戻ろう。

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