灰と幻想のグリムガル~死霊術師の物語~   作:arc00

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すいません。体調不良+私用で投稿ができませんでした。来週も私用の方が忙しくて2日か3日に1本投稿になると思います


39話

「お帰り。ちゃんとできたみたいね」

 

ビンセントからナナンカ防衛要塞線に戻った私達を出迎えたのは鎧を着た所長だった。よそ行きだからだろうか全体的にメイクが濃い。

 

「えっ?所長どうして?それにその格好・・・」

「戦力が予想以上に集まったからね。この膠着状態を打破するためにこっちから仕掛けることになったのよ」

 

所長はそのまま私達を連れて砦に案内してくれる。通された部屋は広く中央に大きな机があって机には地図や何かの情報が記された紙が乱雑に置かれている。

 

「風早荒野に行っていた子が帰ってきたわ」

 

所長の言葉に部屋にいた人の視線がこちらに向く。辺境軍の軍服を着た人、シノハラさんやカジカさん、ホーネンさんもいる。後の人はクランのリーダーかギルドの人だろう。

 

「偵察で得た情報と君達の情報を加味すると陣地外の状態はかなり緩いみたいだな」

 

兵団指令〈オーダー〉成功の報告とナナンカ防衛要塞線と風早荒野間の状態を報告すると髭を蓄えた辺境軍の人が嬉しそうにそう言った。

 

「質問があるのだが・・・」

 

主にナナンカ防衛要塞線周辺での状況について質問が出る。これにはサッサが主に答えたが、重箱の隅をつつくような質問に晒されかなり可哀想な状態になっていた。

 

「もしかしたらまた呼ぶかもしれないから横の部屋で休んでおいてくれたまえ」

 

扉の前で待機していた兵士に隣の部屋へ案内される。兵士は「何か飲み物を持ってくる」と言って部屋を出ていってしまった。

 

「これって俺達も参加することになるんでしょうか?」

「まだ分かりませんが後で正式な依頼か兵団指令〈オーダー〉は来るでしょうね」

 

ヒロトの疑問にアダチが答える。オーク達の陣地は実際には見ていないが待ち構えている所に攻撃をすることになるから勝っても負けても被害が大きくなると思う。

 

「やるにしても真っ正面からはやらないよ。奇襲か何かで相手の体勢を崩してからだよ」

 

椅子に座ったアディさんが手で獲物に食らいつく仕草をする。

 

「でも奇襲って上手くいくのですか?」

「それを考えるのが上の仕事。人を集めてるんだ、それなりに現実的な手があるからこうして集まっているんだ」

 

そもそもの発端が奇襲からだったから今度はこっちからって訳か。それにこの膠着状態をずっと続ける訳に行かないだろうし。ソウマさん達もオルタナに帰れなくなっちゃう。

 

「あなた達もういいわよ」

 

扉を開けて入って来たのは水を持った兵士ではなく所長だった。

 

「あなた達の持ち帰った情報が良かったからすんなり決まったわ。後は煮詰めるだけだからゆっくり休んでなさい」

「所長は一緒にいなくていいのですか?」

「後は役割分担と配置だからいいの。美味しいところは功績が欲しい人達の好きにさせればいいわ。あ、辺境軍のことよ。本当に・・・どんな功績上げても本国に行けないのに」

 

所長は笑いながら肩をすくめる。

 

「あの、やはり私達は参加ということですか?」

「ああ、ごめんなさい。兵団指令〈オーダー〉を出しているのよ」

 

オルタナに戻って確認して急いで戻っても参加できないってことか。みんなの顔を見渡す。みんな仕方がないって顔をしている。

 

「数日で作戦が開始されるからゆっくり休んでちょうだい。ああ、それとあなたのパーティーは残りなさい」

 

レンジ達は兵士に連れられて部屋から出る。部屋にいるのは私達パーティーと所長だけだ。所長は私達を見てニコニコしている。

 

「あの、私達が残された理由は?」

「この作戦中あなたのパーティーに入ってあげる」

「はぁ・・・えぇぇ!?」

「そんなに驚くことないじゃない。私やギルド局員はクランに属していないパーティーを指揮するんだからどこかのパーティーに入るのは当然じゃない」

 

言っていることはわかるけどどうして?

 

「あなたを押さえるとレンジの様子もわかる。あの子無茶苦茶するから大変なのよ。報告によるとあなた達の6人だけで突っ込んで行ったのでしょう?いくら何でも無茶しすぎよ」

 

オークに拐われそうになり、レンジに助けられたがそのまま報告する訳にいかなかったので当時、私はレンジパーティーに臨時で入っていたことになっている。すごい混乱していたので今のところバレていない。

 

「あなたがレンジに首輪をしてくれたらいいのに」

「そんなの無理ですよ」

「あら?アプローチ受けてないの?あの子意外にシャイなのね」

 

所長の中ではレンジは私に気があると思っているらしい。私がパーティーと離れてレンジパーティーに入っていた弊害がこんなことになっているとは・・・

 

「とりあえず作戦中は一緒に行動するからそのつもりでいて」

「そうなると必然的に所長の護衛ってことですか?」

「そういうこと。あとパーティーメンバーなんだから所長じゃなくてブリちゃんと呼びなさい」

「はい・・・ブリちゃん」

「はぁい♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なかなか鍛えているみたいだけどまだまだね。もっと頑張りなさい」

「はい」

 

休息中のある日、ブリちゃんが私達の力を見たいと言ってきた。それでついさっきヒロトとの戦いが終わったところだ。ブリちゃんのクラスはヒロトと同じパラディンでアタッカー。片手剣なのにヒロトを吹き飛ばす位の力強さだ。

 

「お疲れさま」

「あ、はい。負けちゃいました。もうちょっとやれると思ってたんですけど」

 

今ブリちゃんはアディさんと戦っている。お互い一進一退の戦いをしている。アディさんは鎧で全身を守っていても間接の隙間に突き刺したりする。現に今もそうやっているがブリちゃんは剣や盾で巧みに防御している。

 

「出来るかは別としてあの動きは参考になります」

 

ヒロトは2人の戦いをじっと見ている。私の知る限りヒロトの周りのパラディンはクザクとロンだけで、クザクは技量に差があるし、ロンは野性味がありすぎてヒロトには合わない。その点ブリちゃんの動きはヒロトにとってかなりいいお手本になっているようだ。

 

「ここまでにしましょう」

「ええ」

「はぁ~。ちょっと休息して次にしましょう」

 

アディさんとブリちゃんの戦いは決着がつかないまま終わった。この時点でブリちゃんはアディさん並の強さを持っている。あれっ?これって私達必要なくない?

 

「ブリちゃんは指揮官なんだから戦いに集中したらダメじゃない」

 

メリイからの突っ込み。そっか大人数の指揮をするからまともに戦えないか。次はアオイちゃんが前に出てくる。

 

「よろしくお願いします」

「神官は後衛を守ったり、緊急時に前に出たりするぐらいだけどちゃんと力量を確認したいの。だから結果は気にしないで」

 

アオイちゃんが緊張した面持ちで杖を構える。ブリちゃんは構えたと思ったら一瞬で距離を詰めて剣を首筋に剣を当てる。

 

「あっ、えっ!?」

「仕方がないけど経験不足ね。もっと隙を・・・って言ってもまだわからないか」

 

アオイちゃんの番はすぐに終わりメリイが入れ替わる。メリイはアオイちゃんのようにすぐには終わらなかったが結果は似たようなものだった。さすがに経験不足とは言われなかった。

 

「よし!最後はあなたよ」

 

ブリちゃんが笑顔で手招きする。

 

「あの~私戦士職でも神官でもないんですけど~」

「知ってるわ。いつでも神官に守ってもらえるわけないでしょ」

 

確かにそうだけどそうなった時点でパーティーがほぼ全滅していると思うのですけど・・・。ブリちゃんは私が出てくるのを待っている。諦めてブリちゃんの前に立つ。

 

「そんなのあり得ないって顔してるけどリーダーは常に最悪の状況を想定しなきゃダメよ」

 

私とブリちゃんはお互い構える。結果は・・・言わなくてもわかるだろうけど一瞬で終わった。アオイちゃんより酷いって言われた。

 

「シオリは私が守るから大丈夫よ」

 

そうだ。私にはメリイがいるし、こんな状況には持っていかないように心がけよう

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