本当は帰省中は執筆する気無かったんですけど、なんか執筆しないと物寂しいのでぽちぽちと打ってたらいつの間にか一話出来上がってたので投稿。
久々にエースコンバット5やりながらこれ書いてます。
「きひひひひ!!!」
眼前の魔人が腰の刀に手をかける。
距離にしておよそ四十メートルほど。
「ブレイブザッパー!」
遠くの魔人がその刀を抜き……………………直後、脳裏に過ぎった嫌な予感に咄嗟に
だが。
「なっ……にぃ……?!」
胸に走る痛み。視線を落とせば胸の辺りを一文字に薙がれ、大量に血が出ていた。
「っく…………っそぉぉ!!!」
咄嗟に腰に下げたソレを投げる。魔人が不愉快な笑みを貼り付けそれを避けようとし…………。
「きひ…………ひっ?!」
光が弾ける。轟音が響き、魔人の目を焼き、耳を潰す。
悪魔にそんなものが通用するのか、と言われれば目でものを見ている悪魔には通用する。
悪魔の体がマグネタイトで構成されているとは言え、悪魔の体を模しているのだ、人型であるのなら、目は目の働きをするし、耳は耳の働きをする。
元が不形の悪魔や、そもそも目も耳も無い悪魔などは別の方法で知覚しているらしいが、人型に限れば人間と五感の働きはそう違わない。
ならばこういった対人間用の武器が通用したりもする。
眼前の魔人が再度その刀を振り下してくる、だが視覚を一時的ながら失い距離感を失ったその一閃は俺の鼻先を掠めていく。
「っ…………っぶね、これでもまだこんだけピシャリかよ」
盲目の状態でさらには音まで奪われていると言うのに、それでも掠めたことに驚きを通り越して呆れる。
「さすがは魔人ってことか…………ふざけてやがる」
さらに数度魔人の剣閃を回避する、と魔人がようやくその攻撃の手を止める。
「きっひっひ、当たんねえな」
そうして数メートルながら俺と魔人との間に距離が開き…………。
「ようやく離れてくれたな、アリス、ランタン、フロスト!」
「メギドラ!」
「マハラギダインだホ!」
「ブーメランフロステリオスだホー!」
破滅の光が、炎が、氷が…………魔人を一斉に襲い。
「きひっ」
すっ、と…………手にした刀で一閃する。
それだけで…………全ての魔法が弾け飛んだ。
「っ…………な、に?!」
「きひひひ…………羅刹斬」
魔人の手元が一瞬霞む。
何が起きたのか、知覚すらできないほどの一瞬。
だがその一瞬で、俺の全身から血が噴出した。
「っぐ…………がああああ、ランタン!」
「ディアラハンだホ!」
治癒の光が俺を包み、全身の傷を消し去ってくれる、だが失った血までは供給してはくれない。
幸い体内の活性マグネタイトのお陰で早々に行動不能になったりはしない。
だが不味い、今何をされたのか気づかなかった。
何より。
「大丈夫か、アリス…………」
「…………だ、だいじょうぶ」
俺と同じく全身に切り傷を作っているアリス。俺より後ろにいたフロストとランタンは無事だったが…………。
「きひ…………なるほど、だいたい分かった」
魔人の呟き、そうして再度刀を握り。
「きっひっひ、このくらいか?」
正確な距離感を持って刀を薙ぐ。その刀身が再度俺を輪切りにしようと迫り…………。
「っく!!!」
「させないホー!」
指示を下すより早く、フロストが俺の前に出てその一閃を受け止めようとし。
「フロスト!」
「?! ブーメランフロステリオスだホー!」
その一閃がフロストを薙ごうとした直前、フロストの放った冷気。
それに魔人が飲み込まれ、吹き飛ばされる。
「…………なるほど、な」
それを見て確証を得る。やはりそうだ、さきほど魔法を呆気なく切り裂いたあの剣。特別なのはあの剣ではなく…………。
「そういう技か…………厄介だな」
武器破壊すればそれで終わりかと思ったが、どうもあれは単なる刀のようだった。すぐにマグネタイトで復元して終了。あれほどの大物、早々楽はさせてもらえないようだった。
「だがだからこそチャンス、か」
それを今証明したばかりだ。つまり…………技なのだから、相手が別の技を使っている最中には使用できない。
そこを突けば相手にもダメージを与えられる、だが問題がある。
距離だ。先ほどの技は何をされたかは分からないがとにかく目算だが五メートルほどの距離があっても当たった。だが他の攻撃は基本的に接近してから使われる、つまり距離にして一メートル以下まで接近される。こんな状態で魔法を使おうものならば俺まで巻き込まれる。
仮に今のフロストのように真正面から対峙して使おうにも、技を繰り出すタイミングとこちらが魔法を打ち出すタイミングが絶妙にかみ合わないと最悪あの一撃で致命傷を負いそうな攻撃と相打ちになってしまう。
そうなると頑強さの面であの魔人のほうがどう考えても有利だろう。
少なくとも魔法一発で瀕死になってくれそうなほどやわな体はしてなさそうだった。
「
呟きと共に弾ける闘気。瞬間、ありもしない暴風に襲われたような錯覚すらした。
「きひ…………きっひっひっひ……きひっひっひっひっひっひ!!!」
狂ったように笑う魔人。それに呼応するようにその手元の太刀が紅く、鈍く光る。
「鬼神薙ぎ」
十メートル以上離れたその場から、真横に太刀を一閃に薙ぐ。
太刀の長さは通常より長く、だがそれでも二メートル少々。
到底当たる間合いでは無い…………だと言うのに。
「ぐ、が…………」
何故俺の腹部が焼けるように熱い?
何故ランタンとフロストが倒れている?
どうしてアリスが苦痛に顔を歪めている?
「きひひっひ…………羅刹斬」
瞬間、自身に迫り来る無数の剣閃が、視界に僅かに映った。
洒落にならない。それが感想。
左腕が落とされた。文字通り、切り離された。
首も頚動脈が切れている。活性マグネタイトが無ければ即死だった。あっても死ぬのは変わりないが、数秒の猶予がある。
宝玉と呼ばれる特殊な力の篭った玉を自身に押し当てると、玉が光り、傷が幾分か癒えた。と言っても致命傷を避けた程度だが。
「っぐう、まっず…………」
脳裏を焼き尽くすような痛みに塗りつぶされる。思考が上手く回らない。
宝玉を使っても落ちた左腕が生えてくるわけでもない。
すっぱりと切り落とされた左腕を視界に捉え、歯を噛み締め、痛みを堪える。
「…………はあ…………はあ」
荒い息を吐き、地面に転がる左手からCОMPを回収する。幸いにもCOMPは無傷だった。とにかくこれで仲魔たちを確保できた。
だがその仲魔たちも今の一撃で全員沈んでしまって…………いや、物理耐性を持つフロストが辛うじて生き残っているくらいか。
正直言って危機的状況だ。
だが、まだ絶望的ではない。
正直俺の仲魔たちは基本的に攻撃特化で回復手段などが非常に乏しい。
だからこそ、こうしてサマナーである俺の側で道具は用意してある。
地返しの玉。魂に活力を与え再び立ち上がるための生命を与える不思議な玉。
それを使って、ランタンを復活させる。
「フロスト、ランタン…………アレできるか?」
俺の端的な問い。それに両者が頷いて答える。
「やれと言うならやってやるホ」
「ちょっときついけど、まだやれるホー」
その言葉に俺も頷き。
「やれ」
命令を下した。
「デビル」
「フュージョンだホー!」
ランタンとフロストがその手を重ね、言葉を紡ぐ。
そして。
「ヒホヒホヒホ! オイラ再び参上だホー!」
召喚…………ジャアクフロスト。
「分かってるな?」
「お任せだホー! さあ、罪に彩られるホ、クライシス!」
そうしてジャアクフロストから発せられた薄紫の光が俺たちを包み込み…………。
「羅刹斬」
直後聞こえた声、そして放たれる無数の剣閃。
だが。
カキンカキンカキン、と何かが弾かれる音。
「きっひ…………ぐげぁ…………なんだあ?」
俺たちを包む薄紫色の光に弾き返された剣閃が全て魔人の元へと返る。
クライシス。バステ防止と補助魔法全種と反射補助二種を一度にかけると言う非常に便利ながらも消耗の多いスキルだ。因みにジャアクフロスト以外にこんなスキルを使える悪魔を俺は知らない。
一定時間の間、物理魔法の両方を反射できるこの魔法は万能魔法などの反射魔法を貫通する攻撃を除けばほぼ万能の盾となる。
そして、あの魔人は恐らく物理攻撃しか無いと見た。
つまり、これで封殺できる。
問題はこの魔法が持続している間にあの魔人を落とせるか、だ。
攻撃は封殺したに等しいと言っても、相手にダメージを通せばければ意味が無い。
反射される物理攻撃をいつまでも続けはしないだろうし、こちらから相手に痛烈な一撃を与える必要があるだろう。
だがこちらの仲魔は魔法攻撃中心だと言うのに、相手は魔法を刀で切って落とす。
かといってにわか仕込みの物理攻撃では魔人を倒せるほどの威力は見込めないだろう。
だとするなら…………如何にこちらの魔法攻撃を通すか。
実は一つ案がある。
それにはCOMPを操作しなければいけないのだが、左腕が無い状態でできるだろうか?
リカームの魔法でもあれば切断された腕をつなげることもできると思うのだが、生憎俺の仲魔にそんな便利な魔法覚えたやつはいない。
「やるしかねえか」
呟き、脳裏に実行のための計画を立て。
「近づくぞ、フロスト」
声をかけ、ジャアクフロストを前面に押し出しながら、
「きっひっひ、そっちから死にに来てくれるか」
魔人が嗤い、その刀を構え…………袈裟斬りに振り下ろす。
「きひっひっひ…………
「っ!!? っく、間に合えええええ!!!」
やばい、直感的にそう思った。
魔法補助なんて簡単に吹き飛ぶ、俺の仲魔であるフロスト自身がそれを証明している。
だったら、だ。
この魔人がその手段を持っていないと言えるだけの確証も無い。
帰還。慣れない片手でのCOMP操作。間一髪のところでジャアクフロストがCOMPの中へと収納され。
「今度は…………こっちの番だ!」
SAMMON OK?
「ヒホヒホヒホ!」
俺の目前に再度召喚したジャアクフロスト。
そして。
「いくよー!」
「撃て」
「メギドラオン」
「メギドラダインだホー!」
前と後ろ、両側から同時に放たれた魔法が、魔人を飲み込んだ。
簡単な話だ。普通に魔法を撃ったのではまたあの刀に撃ち落されるのがオチだろう。
だがどうあがこうとあの刀は一本。一度に複数方向から攻撃されたのでは簡単には撃ち落すこともできないだろう。
その…………はずだった。
「ひっひ…………きひひひひ、きっひっひひっひひひひひひ!!!」
魔人が嗤う。放たれたジャアクフロストの魔法を一瞬にして切り裂き、返す刀で背後から迫るアリスの魔法を斬る…………減算しきれなかった魔法が魔人に多少のダメージを与えるが、それでも致命傷にはほど遠い。
あり得ない。そう思っていた。だが目の前で現実にやってのけた。
タネが割れた以上、もうこんな奇襲じみたことは通じないだろう。次からは避けられて終わりだ。
第一、遠隔召喚と言うのは難易度が高い。それも好きな瞬間に好きな場所へ、と言うのはほとんど不可能だ。だからこそ危険を冒してまで魔人へと接近したのだから。
一度きり、絶対に失敗できない方法のはずだったのに…………。
「ああ、まあ、それは別にいいんだけどな」
何せ。
本命は、魔法などではないし。
「んじゃ」
魔法を囮に魔人を一箇所に釘付けにして。
「ばいばい」
手持ちの爆薬を全部爆発させる。
その量、手榴弾十個。
直後、轟音が夜の公園に響き渡った。
手榴弾と言うのは本来そこまで威力が高いわけでもない。
比べるまでも無く、悪魔が魔法一発撃つほうが威力は上だ、最弱の魔法だろうと。
だが威力に比べ、その殺傷力は高い。破裂した金属片が四散して人を傷つけるからだ。
つまり人間には効果は高いが、建物などに対しては本来効果が低い。
また、戦車など装甲のある相手に対して思うような戦果を望めない。
だが、それを改良した対戦車手榴弾と言うものがある。
名前の通り対戦車を想定した手榴弾だが、まあ名前負けして実際は大きさの問題で戦車の装甲を貫けるかと言われれば微妙だ。
だが従来の手榴弾と比べ大幅に威力強化されているのは事実であり。
人間だろうと悪魔だろうとまともに喰らえば一撃で吹き飛ぶ威力なのは間違いない。
「不良在庫じゃなかったんだな」
そして轟音を立てて吹き飛ぶ魔人を見ながら思うことはそれだった。
捨て値同然で押し付けられたから絶対に不良品だと思っていたんだが、普通に機能したことに驚いた。
「そんなふりょーひんこんなときにつかおうとするさまなーにびっくりだよ」
ジトーとした目でアリスがこちらを見てくるがおかまいなし。
異界化が解ける、と同時に異界内の影響が消え何も無い公園だけが広がり、ようやく一安心と息を吐く。
「フロスト、そろそろマグネタイトがやばい、戻れ」
「ヒホー、オイラの出番はこれでデッド」
ぐにゃり、とジャアクフロストが歪み、直後そこにはジャックランタンとジャックフロストがいた。
「ランタン、今のうちに全員回復しとけ」
言いつつ、地面に転がる自身の腕を見てため息を吐く。
腕の無い状態で回復魔法を使ったせいで、傷は塞がっているのに腕が無いと言うおかしな状態になっている。
「くそ、またカラスに頼むしかねえか…………金がかさむ」
だらだらと血を流す左腕をフロストに言って凍らせる、さらに流れ落ちた血は適当に砂でもかけておけばいいだろう。
後は……………………。
「この襤褸切れな上に血まみれの服でどうやって旅館に戻ろうか…………」
ヤラガラスにでも頼むか…………そう呟いた。
因みに一度も表記しなかったけど、タイトルの通り、魔人の名は「ヒトキリ」です。
漢字で人斬り。文字通り辻斬りの悪魔です。
通り魔、辻斬り、殺人鬼、まあ言い方は何でもいいですけどそう言った突発的人意災害の概念を具現化したような存在、と言う設定。
ただもう一面があるんですけど、それは秘密。
設定資料が一人暮らし中の寮のPCに入ってるので魔人ヒトキリのデータは無しです。そのうち悪魔全書みたいな感じの設定資料作るのでその時公開します。
ただ分かりやすいように技の設定だけ。
魔人:ヒトキリ
羅刹斬:敵全体を複数回攻撃。威力は力、攻撃回数は速度で決定する。
修羅闘:一定ターンの間、自身の耐の値を全て力に加算する。文字通りの捨て身の攻撃。また、物理攻撃の射程を最高まで引き上げる。
斬り払い:全ての遠距離攻撃を70%の確率で無効化する。
人斬刃:人型の存在に対し、全ての防御を無視して即死させる。
ジャアクフロストを人型を見るか所詮二等身と見るかは人次第。
エスコン面白いよエスコン。
ファルケンのレーザーが凶悪過ぎる。潜水空母一撃で沈めた。