有栖とアリス   作:水代

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近くにあった書店にあった東方M1ぐらんぷり、っての一つ買ってみたんですよ。
それが滅茶苦茶面白くて全部揃えてたらいつの間にかこんなに更新間隔空いてた。


有栖と剣鬼

 あの魔人を俺と仲魔で撃退、ではなく討伐しようとするならばどうやっても避けて通れないものが一つだけある。

「アリス、メギドラ!」

「りょーかい!」

 放たれる黒紫色の光。それがその威力を解き放つ、その直前に魔人の剣が光を切り裂き無効化する。

 これだ…………この魔法の無効化、これをどうにかして魔人に魔法を当てることができなければどうやっても撃退以上のことはできないだろう。

「あと二発ってとこか」

 龍神との連携により向こうに気を取られた今なら入るかと思って撃ったが、やはり簡単に斬り払われた。

 マグネタイトの残量を考えればあの魔人を一撃で倒せる可能性のある魔法は撃てて二回と言ったところか。

 各種属性のストーンもすでに半分以上使っているが全てあの剣で切り裂かれる。

「っち…………どうしろってんだよ」

 正直一か八かの賭けしか方法が思い浮かばない。だが出来ればそう言う運任せな方法は避けたい。

 そうこう言っているうちに魔人が刀を振りかざす。

 

「羅刹斬」

 

 すぐにアリス帰還させ下がる。その攻撃は何度か見た、射程も凡そだが把握してある。

 この距離なら当たらない、そう確信し。

 

 スパッ、と腹部が綺麗に裂かれる。

 

 薄い、皮一枚切れただけ。

 

 けれど…………届いている。

 

 咄嗟に両腕を交差させ体を丸め…………。

 

 全身が切り刻まれた。

 

 

 

 不味い、と思う。彼は自分とは違い正真正銘の人間だ。

「マハブフダイン!」

 全力の氷結魔法を放つ。刹那に巻き起こる魂までも凍りつかせるような魔法に、魔人の剣撃が中断され、魔法の斬り払いに入る。

「悪い……助かった……」

 全身のいたるところに切り傷を作り血を流した彼がそう言う。

「大丈夫? かなり不味そうだけど」

「ああ…………致命傷じゃない、まだ戦える」

 けれど時々痛みを気にしたような様子でけれど銃を構える彼。どうやらもう傷を回復させるためのマグネタイトを惜しむほど残りに余裕がないらしい。

「こっちはまだ余力がある、とは言え一人で戦って勝てる相手とも思えないしねぇ」

 均衡が保たれているのは二人だからだ。先日これを独りで相手にした彼の力無しではもっと早くこちらがやられていただろう。

「勝てる作戦を考えないといけない」

「勝ち方自体はシンプルだ…………でかい一発を当てればいい。だがどうやって? それが問題だ」

「あとどのくらい余力がある?」

「二発だな。仲魔を召喚して二発魔法使ったら空っぽだ…………さっきので決めたかったんだが、早々上手くはいかねえか」

 二対一だからこっちも相手の燃料切れを狙えばいいか、と言われるとそうでもない。

 こっちは魔法主体の攻撃に比べ、相手は物理主体の攻撃だ。純粋な技を使う物理攻撃はあまりマグネタイトを消費しない。だからこそあの魔人は脅威なのだ。あれだけふざけた攻撃を連打できるくせに息切れを起こすことが無い。

 それさえなければ危険覚悟で空撃ちさせればいつか勝てる。

「キミ、良くあれを相手に一人で生き残れたね」

()()()()()()()()()()()()()()()()()

 なるほど、と内心が納得する。

 あの魔人の行なう攻撃は物理攻撃一辺倒だ。物理反射魔法が使えればほぼ封殺できる。

 

 さきほどまでだった、なら。

 

「なんだと思う? あれ」

「分からん…………けど、今のアレにはもう小細工は通用しないってことだけは分かってる」

 実を言えば物理反射魔法(テトラカーン)なら自身も使える。

 それも自身の特性により味方全員を対象として使用できる。

 当初はそれで封殺できるはずだったのだ…………そう、はず()()()のだ。

 

 何ごとも無いかのようにあっさりとその斬撃は反射魔法を無視してこちらを切り裂いた。

 

「……………………一度試してみるか」

「何か思いついた?」

 自身はこう言う作戦立案は苦手だと言うことを理解している、逆に召喚師である彼はこう言ったことが得意のようだった。それは先の水族館でのやり方を見るに、少なくとも自身よりはずっと得意そうだと思った。

「ああ…………サマナーを狙うぞ」

 そう口にし、彼は自身の思い描く策を述べたのだった。

 

 

 散開する。

 俺、小夜で二手に分かれ別々の方向に散らばる。

 一瞬どちらに向かうか悩む魔人だったが、すぐに当初の目的である小夜へと向かう。

「なら俺は、こっちだ」

 銃を構え、その照準を魔人のサマナーである少女に向ける。

「む…………」

 すぐにそれに気づき、小夜への接近を止め少女の前に立ちふさがる。

 バン、バンと銃声が響きほぼ同時にキン、キンと言う金属音。

「やっぱりそうか…………」

 仲魔である以上サマナーは弱点でしかない。やはり当たっていたか。

 どうやらあのサマナーは自身では何もしないタイプらしい。ある意味純粋なサマナータイプと言える。

 

 一口にサマナーと言っても実は三種類くらいタイプがある。

 一つ目が近距離で仲魔を守る剣サマナー。仲魔を全て後衛に割り振り、サマナー自身が武装して前衛を勤めるタイプだ。普通のサマナーがやるとサマナー本人が集中砲火を受けてあっさりやられるのだが、時々いるキチガイなやつらがこれをやると前衛であるサマナーがいつまでも抜けず、後ろの安全地帯から大火力魔法が雨霰と飛んでくる地獄絵図な状況が出来上がる。なので実際にこんなことをしているのはだいたい人間離れしたキチガイだけだ。

 

 二つ目は仲魔を前衛にし、後衛からその援護射撃をする銃サマナー。主に銃を使う者や異能者などがこれに辺り、前衛を物理スキルの得意な仲魔で固め自身は後ろでサポートタイプの仲魔と共に援護射撃を行う。突出した特徴も無い代わりに非常にオーソドックスで王道な組み合わせだ。

 そして最も王道だけにこのスタイルを選ぶサマナーは多い。実際俺もこれに当たる。

 

 そして三つ目が純サマナー。前衛で仲魔を守るのでも無ければ後衛から敵を攻撃するのでも無い。だが実を言えばこれが最も強いと言われている。簡単に言えば、仲魔の力を最大限に引き出すのが純サマナーだ。支援特化型、と言えば分かりやすいだろうか。実際、純サマナーの仲魔は他の二種類と比べて、比較にならないほどに強い。だがだからこそ純サマナーはサマナー本人と言う最大の弱点を背負うことになる。

 

 悪魔たちとの戦いにおいて、数の利、と言うのは往々にしてあてにならないことが多い。

 それは一対二なら二のほうが有利だろうが、それは質が同じ場合の時のみだ。

 

 レベル1の悪魔が使うアギダインはレベル50の悪魔が使うアギにも劣る。

 

 とあるサマナーの言ったブラックジョークだが的を得た言葉でもある。

 レベルの…………内包した活性マグネタイトから生み出される能力値の差と言うのはそれほどまでに絶対的なのだ。

 故に複数の悪魔を育てるより一固体の悪魔をひたすらに育てたほうが圧倒的に強いことのほうが多い。

 勿論悪魔同士の相性の問題などもあり実際にそんなことをするサマナーなどいないに等しい、のだが。

 

 例えば、だ。

 火炎属性魔法がとても得意な悪魔がいたとしよう。

 とあるサマナーがその悪魔を仲魔にし、ひたすらにその仲魔を育て続けた。

 そうして出来上がったのは最強の火炎属性魔法を使う悪魔だ。

 その魔法は並大抵の敵を一瞬で焼き尽くすまさしく地獄の劫火。

 だが自分よりもはるかに格下のはずの悪魔にすらあっさりと負ける。その悪魔が火炎無効属性を持っていたから。その悪魔がこちらの弱点属性の魔法を扱えたから。

 

 つまり、だ。

 一点特化ではどうやっても無理があるのだ…………本来は。

 属性と言うものがある以上、単純な能力の差だけでは補いきれないものがどうしても出てくる。

 

 けれど。

 

 今戦っている魔人はそれを簡単に無視する。

 魔法を使えば魔法を切り裂き、近づけばそれだけでなます斬りにされる。

 挙句の果てに物理反射魔法をも無視して物理スキルを通してくる。

 一点特化型でありながらほぼ全ての状況に対応できる万能型。

 たしかにこんな仲魔が一体いれば他がいらなくなるのも納得できる。

 そしてずっとこの仲魔だけを育ててきたのだろう。

 だからこそ強い。

 隙が無い。

 ずっと戦い続け自身たちの弱点を自身たちで知っているからこそ。

 弱点を晒すような真似をしてくれない。

 

 だから勝てないか?

 

「んなわけねえだろ」

 隙が無いなら、つけ込める場所が無いなら。

「力づくで作っちまえばいいだけだろ」

 袖に予め仕込んで置いた閃光手榴弾のピンを抜くとそれを魔人のほうに向かって投げ飛ばす。

 カッ、と大光量を発するそれは、魔人への目潰し…………では無く、むしろサマナーを狙ったものだ。

「っく、目が…………小賢しいわね」

 

 得てしてだが、サマナーと仲魔と言うのは感覚を共有していることがある。

 例えば仲魔の視点をサマナーが見ることができたり、その逆もまた然り。

 先ほどから二方向の攻撃を出しているのにいとも簡単に捌かれていたが、それは魔人の視界とは別にサマナーがこちらの動きを見ていたからだろう、と結論付ける。

 

 因みにだが、サマナーから仲魔へはあっても仲魔からサマナーへ、は無い。悪魔の感覚を共有するには、人間の扱える情報量はあまりにも少な過ぎる上に、感性が違い過ぎて下手に同調してしまうと発狂してしまう。少なくとも全うな人間に耐えれるものではない。

 さらに言うなら、よほどの相性が良くないとそもそもサマナーから仲魔への同調も難しい。俺の仲魔でそんなことができるとしたら、アリスくらいだろう。ランタンとフロストでさえ不可能なのだから、これがどれだけ尋常ならざることかが分かるだろうか。

 

 そしてだからこそ、その一方…………サマナーを潰せば多少は楽になるだろう、と考え。

 実際それは多少なりとも有効だったらしい。

 

「っち」

 

 舌打ちしつつ魔人が背後からの弾丸を弾く。

「マハジオダイン」

 と同時にもう一方から放たれる雷光。それに僅かに反応が遅れ、けれど刀で切り裂く。

「ったく…………確かに有効だったけど、マジで僅かだな」

「っきひ、気配がバレバレなんだよ」

 俺の呟きに返す魔人の言葉。マジで化物だな、と思いつつ…………。

 

「でもこれでチェックメイトだ」

「っ?!」

 

 魔人が息を呑む気配。

 一体何をするのか、と思ったのかもしれない。

 だがその予想に反して何もしない。

 

 俺と小夜は、だが。

 

「…………っしま」

 

 気配を読み取ったのか、魔人が慌てて自身のサマナーのほうを向き。

 

 サマナーの背後にいるアリスを見た。

 

 アリスが持っている手榴弾。

 

 そのピンをアリスが抜き…………

 

「うおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」

 

 魔人が叫ぶ。

 

 距離は近い、が走っていてはもう間に合わない。

 

 剣撃なら届く、だがその斜線上には自身のサマナーが…………。

 

 しかもサマナー本人は目をやられ、状況判断が遅れている。

 

「おおおおおおおおおおおおお!!!」

 

 魔人が、投げる…………その剣を。

 

 一瞬で自身のサマナーを避け、アリスへと一直線に向かうその刀。

 

帰還(リターン)!」

 

 水族館でジャアクフロストの渾身の一撃を外されたように。

 俺もまた必殺の一撃をアリスをCOMPに戻すことで回避させる。

 

 そして。

 

「来い、ランタン、フロスト」

 

 SUMMON OK?

 

 魔人を挟んで対称に召喚されるジャックランタンとジャックフロスト。

 もうマグネタイトの残量が少ないと分かっていたのでジャアクフロストから戻していたのだが、早速出番が来たようだ。

「アギダインだホ!」

「ブフダインだホー!」

 両サイドから放たれる魔法。肝心の刀は今投げ、完全に無防備を晒している魔人。

 これなら行けるか? そう内心で思い…………。

「…………きひっ…………舐めんな!!」

 けれども、左から来る火炎魔法を鞘で撃ち落し、右から来る氷結魔法を右手で握り潰す。

 刀と違い、一撃魔法に当たっただけで鞘は燃え落ち、その右手は凍りつく…………だがまだ立っている。

「姫様のためにも…………負けん!!!」

「それは…………」

 魔人が叫ぶ。そして、その正面からやってくるのは…………。

「こっちの台詞だああああ!!!」

 小夜の手に集まった電気の渦が魔人目掛け、放たれ…………。

「うおおおおおおおおおおおお!!!!」

 魔人が叫ぶ。電撃にその身を焦がされながらも、耐えて、耐えて、耐えて…………。

 

 SUMMON OK?

 

「お疲れ様だねえ」

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()がそう呟き…………。

 

「マハガルダイン」

 

 荒れ狂う暴風が魔人に止めを刺した。

 

 




書いてて思うが、自分には戦闘を書く才能が無い。
なんか単調なことひたすら書いてるようにしか見えない、自分で書いてて。
魔人どうやって倒そうかと魔人の初登場の時からずっと考えてたのは内緒。
そしてようやっと本編内みたいな倒し方思いついたのが昨日だったり。
いやー、魔人は強敵でしたね。
近づけば微塵斬り、遠くからやっても斬り払い。誰だよこんなチート考えたのは、と思って、あ、俺か……と自分で思ってしまった。
物理反射で完封できたのは過去の話。サマナーが来た以上もうそんな生易しい方法は通じない、で実際書いてみて「こいつどうやって倒せばいいの?」って本気で悩んだ。

というわけでヒトキリさんの正式なデータ。


魔人 “剣鬼”ヒトキリ

LV71 HP1920/1920 MP430/430

力89 魔8 体52 速86 運23

弱点:魔法
耐性:万能

ブレイブザッパー 鬼神薙ぎ 羅刹斬 修羅闘
人斬刃 会心ノ剣 斬り払い 不屈の闘志

備考:正体不明の悪魔。剣一本で他の追随を許さない怒涛の強さを誇る。その性質上物理攻撃一辺倒で、物理反射に弱いのだが、今となってはそれすらも克服してしまっている。「我は修羅、我は羅刹、我は剣鬼也」

羅刹斬 敵全体にランダム回数の斬撃を放つ。威力は力、回数は速に依存する。

修羅闘 5ターンの間、体の値を全て力に合計させる、文字通り捨て身のスキル。また剣に宿る気の力により斬撃属性攻撃全ての射程が大幅に上昇する。

人斬刃 人型の存在に対し、全ての耐性、防御を無視して即死させる。

会心ノ剣 斬撃属性攻撃の全ての会心率を上昇させる。

斬り払い 全ての遠距離攻撃を70%の確率で無効化する。

剣鬼 物理攻撃時、相手の体ステータスを0にしてダメージ計算をする。さらに斬撃攻撃が全て物理耐性を無視し、30%の確率で無効、反射、吸収を無視する。全ての剣技が必中し、追加効果の発動確率を100%にする。ただし、マグネタイトの過剰供給が必須でサマナーが近くにいないと使用不可能。

魔人 新月以外にも現れ、戦う。他の魔人とは一線を隔す存在。


いやーチートですねえ。誰がこんなチート考えたのだろう?
こいつを倒す一番良い方法?
最速で行動して最大物理火力を叩き込んで行動させる前に倒す。これが一番良い倒し方。まあ有栖に望めることじゃないけど。
・魔法と銃撃は無効化するけど、近接物理は無効化できない。
・体を0にしてダメージ計算するので物理防御をあげても無視される。
・遠距離攻撃を無効化するたけなので実はバステ系は効く。

以上の三点を踏まえると、最初に一手でラクンダ、スクンダ、こっちにタルカジャ、で物理攻撃で一気に攻撃。
これでだいたい2,3ターンで倒せる…………はず?

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