艦これ楽しい。
ガンナーレベル56。
PSO2楽しい。
結果→ご覧の有様だよ。
追記:日刊16位ありがとう。
「私は告げる、あなたに頼みがあると」
話を終え、病院へと帰ろうとしている悠希に、ふとナトリが声をかける。
「えっと、なんだ?」
立ち止まり、ナトリへと振り返り首を傾げる悠希。そして、そんな悠希にナトリが告げる。
「私は懇願する、この近くの病院に連れて行ってほしい」
「病院? どこか悪いのか?」
ナトリをやや心配そうに見る悠希に、けれどナトリは特にソレといった様子は見せず、首を振る。
「私は向かう、お見舞いに」
「こんな夜に?」
すでに夜十時近い時間だと言うのに、こんな時間にお見舞い?
「私は回顧する。先ほどその人が入院したと電話をもらったことを」
「さっき…………入院…………近くの病院…………」
それはもしかして…………。
「有栖?」
悠希の零した言葉に、ナトリが不可思議そうに首を傾げる。
「私は疑問に思う。どうしてあなたがその名を知っているのか」
「どうしてって…………俺は有栖の昔からの友人だし、寧ろなんでナトリが知ってるんだ?」
悠希の問いに、ナトリがふむ、と少しだけ思案したような表情になる。
数秒ほど沈黙が続き、やがてナトリが口を開く。
「私は答える。私の保護をしている人の知り合いであると」
「何か近いのか遠いのか良くわからない縁だな…………まあいいや、有栖の見舞いに行くのか、なら俺もちょうど病院に戻るところだったから一緒に行こうぜ」
「私は感謝する。あなたの行動に」
そう言って、ナトリが微かに…………笑った。
「っ?!」
瞬間、悠希の心臓がどくんと跳ね、鼓動が早くなるのを感じる。
「私は疑問に思う、どうして突然黙ってしまったのか」
「あ、い、いや…………な、なんでも無い」
そう、なんでもない、はずだ…………そのはずだ。
高鳴る鼓動を無理矢理押さえ、湧き出した感情を無理矢理蓋をした。
* * *
「有栖?」
病院から抜け出すと同時に、自身の名を呼ばれる。
振り返る、そこに何故か悠希と一人の少女がいた。
腰まで届く長い銀髪。そして装飾が施された黒のドレス…………ゴスロリ服とか言うそれを来た少女。
「悠希……………………それに、ナトリ?」
自身はその少女、ナトリを知っていた。そして、だからこそ、どうしてナトリがここにいるのかが分からなかった。
「私は挨拶する、こんばんわ、
「ああ、こんばんわ」
「私は首を傾げる、入院していたと聞いたはずだと」
相も変わらないおかしな日本語の使い方だったが、その特徴的な言葉遣いに懐かしさすら覚える。
「問題無い、とは言わないが寝てもいられないからな、強いて言うなら…………仕方ない」
肩をすくめそう言うと、ナトリが無表情に、そう、とだけ呟いた。
「な、なあ…………有栖?」
と、そこで俺たちのやり取りを見ていた悠希が声を挟む。
「今、ナトリがお前のこと兄様って」
「ん? ああ、こいつの兄代わりみたいなことやってた時があるから、その時の名残だよ」
「兄代わりって…………えらく親しいんだな、俺はお前にそんな時期があったなんて知らなかったよ」
なんとも言えない微妙な表情をした悠希に首を傾げる。
と、そこでふと気づく。
「お前、ナトリって名前で呼んでるんだな」
「え…………? ああ、ナトリが名前で呼んでくれって」
へー、と呟きナトリを見ると、こちらに視線に気づいて首を傾げる。
「何したのか知らないが、気に入られたんだな」
「え"?!」
俺の呟きに、悠希がどうしてか素っ頓狂な声を上げる。
「き、気に入られたって…………どうして」
「さあ? けどナトリが自分の名前を呼ぶのを許容するってのはそういうことだろ」
「私は思う。悠希は興味深い人間であると」
「そうか………………ならそれでいいさ」
「え、あ……う…………」
俺とナトリのやり取りに、百面相のように変化するその表情を面白おかしく見ながら話を進める。
「まあそれはそれとして、どうしてナトリがいるんだ?」
「私は答える、有栖兄様が入院した、ちょうどその時、父さんと一緒に日本にいた、だからお見舞いに来た」
「へえ、お前日本に来てたのか…………いや、待てよ。そうなると…………」
もしかすると全部あいつの仕込みだったのか? こうなることを予想していた?
いや、予想していたのはこっちではなく…………。
「で、肝心のあいつは?」
「私は答える、知らないと」
「……………………なるほど」
現状を整理するには情報が足りない、か。
「お前に何か言っていたか?」
「私は答える。病院へ行って、有栖兄様に会え、とだけ」
それだけか。となると…………電話だな。
と考えたところで、そう言えば荷物の中に電話が無かったのを思い出した。
「悠希、俺の携帯知らないか?」
そう問うと、悠希が思い出したようにはっとなって、すぐ様俺の携帯を渡してきた。
「キョウジさんって人から電話がかかってきたから思わず出ちまった、悪い」
「キョウジからか? まあいいが」
「父さんから?」
「は…………?! と、父さんって!」
驚いた様子の悠希に、ナトリが首を傾げる。
「私は疑問に思う、悠希が驚いていることに」
まあ知らなかったのだとすれば、驚くだろう。
この二人を知る人間で、その事実を知らなければ、まずこの二人にそもそも接点があることすら想像できないだろう。
方やスーツ姿のヤクザ、方やゴスロリ衣装の外国人少女。
それが親子であるのだというのだから、まあ驚くのも無理は無い。
とは言っても、この二人は血は繋がっていない。つまり、義理の親子だ。
正直最初に聞いた時は、あのキョウジが? と思ったものではあるが…………。
ナトリと言う少女の立場を聞けば、納得する。
次代葛葉キョウジ。
今代葛葉キョウジが自身の全てを詰め込み、自身の全てを受け継がせ、自身の代替となることを望み拾った次代葛葉キョウジとなるためだけに育てられた少女。
それが、葛葉名取と言う存在だった。
* * *
昔、あるところに、一人の少年がいた。
少年は物心ついた時から孤児院に居て、優しい院長先生だけが少年の親だった。
その孤児院は教会系列が運営するもので、ゆえにこそ院長先生もまた教会の信者であった。
当然の帰結として、その孤児院に引き取られた子供たちはまだ幼いころから教会の教えを受けて育った。
少年もまた、その例に漏れず、孤児院で生活する中でゆっくりと、その教えを自身の中へと受け入れていった。
人一倍純粋だった少年は、人一倍信仰にも熱心であった。
院長先生も、週に一度やってくる教会の神父もそれを喜んだ。
そう……………………そこまでは良かったのだ。
その日までは。
孤児院に、強盗がやってくるまでは。
結果だけ言うならば、少年を除く孤児院の住人全員が死亡。
同時に、十六名にも及ぶ窃盗団たち、それらも全て死亡。
内十三名を少年が殺害した。
回顧する。
孤児院でも年長組みとなっていた少年はその日、院長先生に頼まれ買出しのために街から離れた孤児院から街へと向かっていた。
生真面目だった少年は、一切の寄り道などをせずにまっすぐ…………それこそ最短で帰ってきた、帰ってきてしまった。
だからこそ、鉢合わせた。あと十分、たった十分で良かったのだ。少年が遅れて帰ってくればそんなことにはならなかっただろう。
孤児院へと帰った少年が見たものは…………血の海だった。
絶叫する少年。そしてそんな少年に窃盗団が気づくのは当然の帰結であり…………。
少年を殺そうとする窃盗団。そしてそんな少年の前に姿を現し、少年を庇ったのは…………他でもない、まだ生きていた院長先生であった。
恐らく、その時だったのだろう。
少年の瞳が開花したのは。
魔を縛る神の権威の一旦を宿した瞳。
その日、少年は…………生きながらにして聖人と認定された。
少年は知った。
あの日、孤児院を襲った窃盗団がその実、異教徒たちの集まりであること。
他の神を信じる教会によって運営されている孤児院は、異教徒たちの見せしめとして襲われたこと。
少年は悟った。
神の教えを広めなければならない。全ての人間が同じ神を崇めたならば、このような悲劇は二度と起こらない。
そして、異教徒は狩りつくさねばならない。やつらは人ではない、畜生にも劣る獣である、と。
少年は自身を捨てた。
汝殺すなかれ。けれど殺さなければ守れないものがある。
汝寛容を持って汝の隣人を愛せ。愛すべきは同じ信徒のみで良い。
例えこの身が滅びようと。
例え死後、地獄に落ちようと。
例え自身が永劫救われることがなかろうと。
同じ神を信じる愛すべき隣人たちだけは守り抜く。
例え神の教えに反したとしても。
その日から、少年は自身の名を捨てた。
主は牧者なれば、迷える羊を導きたもうて。
けれど自身は導きに従わず、永劫さ迷う羊である。
故に、
その救いの道から逸れてしまった自身は、永劫迷い続ける。
代わりに一人でも多くの異教徒を殺しつくすことを誓い。
一人でも多くの信徒を守り抜くことを誓った。
それは…………誓いの名である。
ならば。
このようなところで挫折してるわけにはいかない。
「あなたは御心のままになし給う御力の御方に在します」
屈した膝にありったけの力を込め、体を起こす。
「あなたの他に神はいまさず」
震える両の手で双刃を握り締め。
「あなたは栄光に輝き」
顔を上げて、両手を交差させ構えを取る。
「常に許し給う御方にまします」
昔から何度も繰り返し呟いて来た聖句。
神の教えを穢すこの身で、このような聖句を呟く自身は、いつか天罰が下るだろう。
それでも良い。贖いの主である神自らに断罪されるのならば、本望ですらある。
だが、今はまだ…………目の前のあの神の敵を倒すまでは。
「Amen」
どうか、再びその教えを穢すことを…………お許しください。
* * *
「っていうか、有栖、お前起き上がって大丈夫なのか?!」
今更と言えば今更過ぎる悠希の案じに、簡素に返す。
「大丈夫だ。それより悠希、お前俺を撃ったやつを見たか?」
「わ、悪い…………気が動転してて…………それに、暗かったし」
そうだ、やはり暗いのだ。見えるはずがないのだ。いくら入り口にいたからと言って。
「やっぱサマナーの仕業だな。だがそんなやついたか?」
超常の力が働いたのは分かる、だがどんな力だ? 暗いところでもものが見えるようになる力か? それとも、絶対に外れない力か? それによって相手がどんな悪魔と契約しているかどうかも変わってくる。
と言うか、拳銃ならともかく、狙撃銃を使うサマナーと言うのはさすがに初めて聞いた。
これは一つの特徴ではないだろうか?
いや、本当に狙撃銃か? 狙撃されたからそう思い込んでいるだけで、実は拳銃だったりするのだろうか?
「って、これじゃ駄目だな…………やっぱりまだ情報が足りない」
と、なれば…………探すしかないだろう。
問題はどこを探すか、だが。
「現場百遍ってか? そういうのは俺の領分じゃないんだが…………」
そこで、ふと気づいてナトリのほうを見る。
俺の視線に気づいたのか、ナトリもこちらを見て。
「私は問う、兄様何か用?」
「いや、お前は俺の見舞いに来てくれたらしいが、それが終わった後どうするつもりだったんだ?」
「私は答える、父さんと合流するつもりだった」
「キョウジに? それに合流って…………」
キョウジの元に戻る、ではなく合流する、と言う言葉を使った、ということは。
「今から仕事か?」
「私は肯く、その通りであると」
次代葛葉キョウジである以上、ナトリはいつかキョウジのやっていることを全て受け継がなければならない。
そのため、キョウジも少しずつではあるが今の自身の任された役割にナトリを同行させていることがある。
つまり、ナトリがこれから行く仕事とは、そのまま葛葉キョウジが動くほどの案件、と考えても良い。
「一応聞いておくが、何があった?」
「私は答える、街の南でガイアとメシアが抗争中」
ガイアとメシアが抗争中? そんなものは常時ではあるが、キョウジが動くレベルで?
いや、待てよ?
ふと過ぎった予感。こう言う時の勘と言うのは絶対に馬鹿にしてはいけない。特に、デビルバスターと言う存在は。
思い出すのは、今日自身の家にやってきた一人の少女のこと。
「………………………………」
携帯で自宅へと電話をかける。電話越しに呼び出し音は鳴っている…………だがいくら待とうとそれが繋がることは無く…………。
「和泉か!!!」
ほぼ確信する。南で抗争をしていると言うガイア、それが和泉であることを。
けれどおかしい、確かに和泉はあれでも一応ガイア教の幹部だ。だがそのフットワークの軽さと行動原理から、和泉が動くこと自体はそこまで危険視はされないはず。
だとすれば、どうしてキョウジは動く?
いや、待て。先ほどナトリはなんと言った?
メシアとガイアの、抗争?
「一つ聞くが、メシアとガイアの戦いはまだ続いているのか?」
「私は答える。是である、と」
ガイアとは、力が絶対の集団だ。無法と混沌を求めるからこそ、力こそが優劣の全てである。
そして曲がりなりにもそのガイアの幹部である和泉は相応の実力を持っている。
だとすれば…………それと戦い続けることのできる相手がメシアにいる、と言うことか?
考えれば考えるほどに不安が募る。
嫌な予感が途切れない。
自身の直感が最大の警告を鳴らしている。
勿論だが、それを無視することも可能ではあるが…………。
「有栖」
聞こえた声に振り返る。アリスが少しだけ不思議そうな表情で告げる。
「あっちのほうから、へんなかんじがするよ」
そうしてアリスが指差したのは…………南側だった。
いつになったら三章終わるんだああああああああああああああああああああああああああああああああああああ。
と叫んだところで、あとがき。
ナトリの設定が一つ回収されましたね。だがナトリはもう一つ設定があったりする。
とりま、あと3,4話で三章終わらせる…………予定。
早く四章書きたいいいいいいいいいいいい。
勝手な設定ですけど、葛葉キョウジだけはキョウジ自身が選んで実力が問題なければそのまま後継になり、って設定です。
原作見る限りだとキョウジって葛葉の中でも異端と言うかアウトローな存在ですし、葛葉の里の掟みたいなのにあまり縛られない存在、として書いています。
感想どしどし募集。水代に次の話を書く気力を。