待たせました、超待たせました。ほぼ一年待たせました。
でもまだ四章終わってないの(
艦これとか書きまくってたらいつの間にかこんな季節に(
しゅ、就職活動とかあったから、そ、そのせいだよきっと(震え声
とりあえず、番外編でお茶濁ししますので、四章まだ待ってください(土下座
有栖と名探偵
『こんな話を、知っているかい?』
『ビルとビルの間の抜け道、森、交差点の中心、隠れた裏通り、学校、病院』
『これ全部に共通すること』
『正解はね、七不思議だよ』
『別世界へと繋がる抜け道、一度入れば抜け出せない迷いの森、廃れた交差点の中心に浮かぶ幽霊、誰も存在を知らない裏通りの百貨店、学校の校庭に現れる死神、死体安置所で動きだす死体』
『以上六つ。え? 七不思議なのに、六つしかないって?』
『七つ目は誰も知らないのさ、いや……………………
『おまえが長く深淵を覗くならば、深淵もまた等しくおまえを見返すのだ』
『七不思議はね、知ろうとすれば誰でも七つ目にたどり着くことができる、けれど七つ目を知るということは、七つ目に、そこにまつわるモノたちにその存在が知られるということでもある』
『だから、心してかかることだ』
『深淵はいつでもこちらを覗き込もうとしている。キミが視線を合わせれば、キミもまた覗きこもうとすれば、深淵もまたこちらに気づいてしまうのだから』
* * *
「で、あるからして、この公式を――――――」
カツカツ、と教師が黒板にチョークで数式を書いていく。書かれた数式を呆けるように眺めている。
ふと視線を机の上に開かれたノートに落とせばそこには真っ白で何も書かれていない。
やる気でねえなあ…………内心の呟きをけれど誰にも悟られること無く目を閉じる。
正直言えば中学生で学ぶ程度の内容など本当に今更過ぎてやる気にもならない。
前世はとにかく家族に迷惑をかけまいと必死になって勉強したりもしたが、すでに両親ともに他界し、他に家族もいない自身にとってもうそれほど懸命になる理由も無い。そもそも授業の内容も覚えていることの繰り返しに過ぎないので入学当初に買ったノートは未だに半分も埋まっていない。
かったりいな、なんて思わず心中で呟く。誰にも聞かれないはずの言葉、けれど、彼女には聞こえている。
くすくす…………そんな笑い声が聞こえる、だが周囲のクラスメートには届かないその声は、アリスの心に直接語りかけてくるように声を紡ぐ。
有栖ってば、わるいこね。
うるせえよ…………悪魔に言われたくねえよ。
語りかけてくる声に、心の中で返答を返す。音にもならない言葉、けれどちゃんと彼女には届いている。
何故なら自身と彼女の間には目には見えない糸の繋がりがあるから。
だから、有栖と呼ばれる少年は、アリスと呼んでいる少女に言葉を漏らす。
だいたいお前がこの間貯めたマグネタイト馬鹿みたいに使うから毎日夜中まで悪魔狩るはめになってんだろうが。
でもそーしないとサマナーしんじゃってたよね?
アリスの言葉に、ぐっ、と言葉に詰まる。間違ってはいない。確かに敵に不意を打たれて危うく死に掛けた場面もあった。その時、アリスが全力を出して押し返し、結果的に命を助けられたことも間違ってはいない。
やっぱり、あと一体…………仲魔が必要だな。
それは前々から考えていたことではある。
だいたいどんなCOMPでも最低3体ないし4体の仲魔をストックできるようになっている。
それはそれだけ戦術の幅が必要とされる、と言うことに他ならない。
そもそも悪魔との戦いにおいてレベルの差とは絶対の差となりえない。勿論あまりにもかけ離れている場合は覆しようが無いが、往々にして十や二十程度のレベル差よりも相性の差のほうが重要になる。
悪魔の属性、弱点、持っているスキル…………等々、単純な能力よりもいかに相手に対して有利な相性を持つ悪魔を出せるか、と言うのが大事になってくる。
だから大体のデビルサマナーと言うのは最低二体、ないし三体の仲魔を所持しているものである。
だが俺の持っている仲魔はアリス一体。
これまでそれでどうにかなってきたのは、それこそ、絶対的と言えるほどのレベル差とどんな相手だろうとある程度以上に戦えるアリスのスキルのお陰だった。
だが自身のレベルも30を超え、そろそろアリスだけでは辛くなってきていると自覚する。現に最近は危うい場面も多い。
正直、本格的にサマナーになる気など余り無い。だが実力は欲しい、力が無ければ死ぬだけ、それが悪魔たちと戦うデビルバスターの世界なのだから。
それに、倒さなければならない敵もいる。倒すと誓った敵がいる。両親を殺した魔人を殺すまでは、決してこの業界から抜け出すわけにはいかないし、まして死ぬわけにも行かない。だから力が必要だ。
だが困ったことに、俺とアリスが普段戦うレベル帯の敵は、俺自身よりも格上であり、まず仲魔になることはない。だからと言って俺よりもレベルが低い仲魔を見繕っても、育成する時間がかかりすぎて現実味が薄い。
サマナーとして自身が二流程度だと言うことを自身は認識している。
そんな自身が並の悪魔と契約しても、大して強くならないことも分かっている。
それこそ、アリス並に強い仲魔がもう一人いないと、現状使い道も無い。
けれどそんな強力な悪魔、そもそもどこに行けば会えるのか分からない上に、出会えてもまず仲魔にならない。
結局、現状がどうしようも無く詰んでいる。少なくとも、高望みしているうちは絶対に仲魔など手に入らないことは理解している。
どうすべきか、そんなことを考え…………そして鳴り響くチャイムの音ではっと現実に帰る。
「今日はここまでにする、誰か黒板消しとけよ」
そう言って退室する教師を見送りながら、ふと時計を見ると十五時過ぎ。もう放課後だった。
真面目に授業を受けていた生徒たちは帰り支度を始め、机に突っ伏して寝ていた生徒たちは眠そうに目をこする。
そんな中、自身の机に近づいてくる男女。
「よ、有栖…………帰ろうぜ」
「有栖、またノートに何も書いてないの? それで良くテストであんな点取れるよね」
門倉悠希と上月詩織。自身の幼馴染で親友たる二人。
詩織が自身の手元のノートを覗き込みながら、やや呆れたような声でそうつぶやく。
「まあだいたいの内容は頭に入ってるからな…………それより、今日か。悪いがちょっと先約があるんで、遅くなるわ」
先約? と一瞬、悠希が疑問符を浮かべるが、すぐに頷く。
「分かった、んじゃ、俺はもう帰るぜ」
「ああ、また明日な」
「おう」
簡素なやり取りの後、教室を出て行く悠希。そうして俺は、自身の鞄に荷物を詰め込み、帰るための準備を整える。
「また部活?」
教室を出る直前、詩織が首を傾げながら尋ねるので、頷く。
「そっか、じゃあ私たちは先に帰ってるね」
「ああ、また明日な」
悠希が向かった方向、玄関へと向かう詩織を見送りながら通路の反対側にある階段へと歩いていき、三階へと登っていく。教室が一階にあるのは、朝は便利だがこういう時は中々に面倒だな、と感じる。
まだ中学生だと言うのにどうにも階段を登る、と言う行為が億劫に感じるのは前世の記憶の所為もあるのかもしれない。少なくとも、高校を出てしまえば割合、階段を登るなんてことしなくなりがちだ。学生を卒業すると健康に障害をきたす人が増える、なんて話もあったが、あながち嘘でもないのかもしれない。
三階にたどりつき、一息吐く。三階は一年生の教室がある階だからか、階段にいる自身の横をまだ制服に着慣れない様子の一年生たちが通り過ぎていく。
上級生が珍しいのか、こちらをチラチラと横目で見ていく一年生たちの視線を無視しながら、教室とは反対側へと歩き、非常階段の手前にある部屋の扉へと手をかける。
軽く力をこめると簡単に扉が開いている…………どうやら先客がいるようだった。
ガラリ、と音を立てて扉をスライドさせる、と中にいたソイツが振り返り…………笑う。
「やあ、アリス先輩、よく来てくれたね」
部屋にいたのは一人の少女だった。腰どころか膝裏まで届くような長い長い日本ではあり得ない天然の金髪、そしてエメラルドのように透き通った翠の瞳。ぺたん、と両足の間に腰を下ろした、いわゆる女の子座りと言う態勢。何も履かれておらず投げ出された両の素足がどこか艶かしい印象を与えてくる。
明らかに日本人の容姿ではないその少女の、けれどそのどこぞの絵画にでも描かれていそうな、西洋人形のような作り物めいた外見とはアンバランスなボーイッシュな口調。けれどその口調は少女の印象と不思議と合致した。
その理由は分かっている………………触れれば折れそうなか弱さ、そして繊細そうなその容姿の中でたった一つ、強い意思を伝えてくるその眼。常人には無い強い強い意思を秘めたその眼差しが、少女の口調の違和感を見事に打ち消していた。
「よう…………
七瀬真琴。どう見たって西洋人風なその容姿とは裏腹な日本人風な名前がその少女を示す一つの記号だ。
自身よりも二つ学年が下の中学一年生。そしてこの部屋、オカルト研究部の現部長。
一応補足しておくと、俺は別にこのオカルト研究部に所属しているわけではない。
なら何故この部室に来たのかと言われれば、彼女…………真琴がいるからだ。
「今日は何をするんだ?」
部活と言っても、所属しているのは真琴一人。活動日も基本的には週一回、月曜日だけ。
実際にはやってきても今のように座って床に広げた新聞を眺めているだけ。
だから今日も何もないだろうと、そんなことを思いながら問うたその言葉、けれど。
「ふふ、そうだね…………今日はちょっと外に出るよ」
真琴のその一言で目を丸くした。
* * *
「七不思議?」
「そう、七不思議。ボクも最近知ったばかりなんだけどね」
自身が通う城井谷中学からの帰り道、隣に並ぶ真琴がそう言った。
真琴曰く、今この吉原市で七不思議と言うものが広がっているらしい。
曰く、
別世界へと繋がる抜け道
一度入れば抜け出せない迷いの森
廃れた交差点の中心に浮かぶ幽霊
誰も存在を知らない裏通りの百貨店
学校の校庭に現れる死神
死体安置所で動きだす死体
お約束と言うべきか、七つ目は誰も知らず、知れば災いが起こるとか何とか。
いかにも、と言えばいかにも、な話ではある、だが。
「この街で、七不思議、ねえ…………」
サマナーの集まる街、吉原市。そんな場所で七不思議の噂。
「嫌な予感とかしないかい?」
「…………ノーコメントで」
それは暗に肯定しているようなもので、けれど壮絶に嫌な予感のする今の俺にはそれ以外の言葉は搾り出せなかった。
「あはは…………ボクの勘が今回の件は黒だと言っている、だったら動かないわけには行かないだろ?
どこか誇らしげに呟きながら、真琴は
探偵と呼ばれる職業は現在の日本にも存在する。
だが名探偵とは職業ではなく、小説などの中だけに存在する架空の存在だ。
だって現実の探偵は事件の推理などしない。調査し、物証を集め、犯人像を導き出し、人に話を聞き、犯人を逮捕する。そんなもの警察の役割だ。
少なくとも、この日本において、正当性を持って他者を調査する権限を持っているのは警察だけである。
だから名探偵なんてものは存在しない…………わけではない。
名探偵と聞いて想像するのは誰だろう? 刑事コロンボ? 金田一耕助? 明智小五郎? なるほど人それぞれかもしれない。
その中にあって、きっと誰もが一度は想像するだろう人物がいる。
シャーロック・ホームズ。
19世紀のイギリスを舞台に活躍した名探偵を主役とした小説の主人公である。
改めて言うが、シャーロック・ホームズと言う存在は架空の人物であり、
だが、そのモデルとなった人物が存在することを人は知らない。
フォートレス・D・メイスン
名前どころか、その存在すら知られていない世界一の名探偵。
否、正確には自称“悪魔探偵”。
人の起こした事件を解決するのが警察の仕事ならば。
悪魔の起こした事件を解決するのがフォートレスの仕事だった。
19世紀のイギリスを悪魔から守り抜いた悪魔探偵。
表に出せない事件ばかり扱うが故に、その功績を知る者は限りなく少ないが、時の女王が何度も招いたこともある、とも言われる。
フォートレスこそが、メイスン家の起こりとされるほどの超重要人物であり。
目の前の少女、七瀬真琴は、イギリス国籍でマコト・D・メイスンと言い。
フォートレス・D・メイスンの直系の孫に当たる存在だった。
フォートレス・D・メイスンは架空の人物です(
分かってるとは思うけれど、こんな人いませんので。
この世界にはそういう人がいる、みたいな解釈でおk。
新キャラ、後輩系金髪碧眼超絶美女マコトちゃん。
コンセプトは“平成のホームズ”です。
彼女が本編で登場するかどうかは未定ですが、とりあえずフラグだけは立てておくかな(