鬼神西住   作:友爪

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西住みほ、誕生日記念。
黒森峰女学園時代、小話。


鬼神西住と親衛隊長3

 寒いほど独りぼっちだ。

 

 ◆

 

 黒森峰女学園戦車道部『西住みほ親衛隊』主催の盛大な誕生日パーティーは大いに荒れた。

 普段は気を張り続けている黒森峰の生徒たちが、主役が無礼講宣言をした事で、反動によって些か騒ぎ過ぎたのだ(誰かが特別なジュースを持ち込んだという原因もある)。ようやく場が静まったのは、深夜も近くなった頃だった。

 

 大量のプレゼントをやっとの思いで整理した主役……西住みほは、外のベンチに腰かけている。

 大きく息を深呼吸をする。すっかり秋の様相である外気と、パーティー会場の熱気とは大違いだ。

 一切が冷たく静まっている。

 不意に、耐え難い寒さを感じた。

 

 誰かが近づいてくる気配がした。

 その人物は、無言で隣に座る。

 

 エリカ。

 

 その姿を認めると、少しだけ寒さが和らいだ気がした。

 二人は無言で居た。既に今日の言葉は、出し過ぎるほど出している。

 だから、無言でいた。

 

「副隊長」

 

 長い沈黙を破ったのはエリカだった。

 

「先ほどの醜態の事、親衛隊には、きつく言っておきます」

「許すよ」

「はい」

 

 再びの沈黙。

 これは、エリカが本当に言いたい事ではないなと感じた。

 不器用な女だ。

 

「今日はありがとう」

 

 みほは、自分から切り出した。

 

「いいえ。当然の事です」

「お姉ちゃんは、来なかったね」

「隊長にも声は掛けたのですが、忙しいらしくて」

「毎年の事だよ」

「そう、なんですか」

「うん。毎年、そう」

「偶然でしょうか」

「違うかも」

「薄情な人」

 

 エリカの歯に衣着せぬ物言いに、みほはくつくつと笑った。

 まほにここまで言ってしまえる部員は、そうは居ない。

 

「最後に家族に誕生日を祝ってもらったのは?」

「毎年、電話をもらいます。プレゼントも、郵便で」

「そっか」

「……みほ」

「なに、エリカ」

「私があなたを祝福するわ。来年も、再来年も、何時までだって」

「ありがとう」

「本当よ」

「疑ってないよ」

「そういう目をしてた」

「そんな事ない」

「絶対してた」

「じゃあ、してたかも」

「嘘じゃ、ないんだから」

 

 詰め寄るエリカの顔には必死さの他に、別のものが浮かんでいる。

 

「そんな顔しないで」

「どんな顔よ」

「悲しそうにしてるよ」

「してない」

「嘘」

「してないっ」

 

 エリカは頑なに言って、顔を背けた。

 それで、また静かになった。

 エリカの耳が赤くなっている。

 その姿が、無性に愛おしく思えた。

 

 みほは、エリカに近づいていって、肩をくっつけた。

 

「なによ」

「寒いから」

「嘘ね」

「そうかも」

「ずるいわね」

「だめかな?」

「……いいわ。私も、寒かったから」

「嘘ばっかり」

 

 エリカは顔を真っ赤にして「嘘じゃないっ」と言った。




みぽりん誕生日おめでとう。

公式で誕生日設定されてない逸見かわいそう。

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