このスバラシイ神機使いに祝福を!   作:トメィト

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この未知なる世界で冒険を!

 

 あの駄女神にあらん限りの呪いをかけつつ、再び目を開いてみればそこには壮大な光景が広がっていた。俺が元々いた世界では絶対に見られないであろう、豊かな自然やしっかりとその役目を果たしている建造物などがよく見れた。

 それは当然のことだろう。なぜなら俺が今居るのは、上空1000メートル。東京タワーなんてぶっちぎりで抜き去り、スカイツリーすらも見下ろせる位置に居たからである。

 

 

 「これ、選んだものによっては速攻で死ぬんじゃないんだろうか」

 

 

 何のために何でも好きなものをあげたんだよ……。先程心の中で散々呪いつくしたこともあり、あの駄女神にはもはや呆れるしかなかった。あそこまで残念だと逆にこっちが心配になってくる。現在心配されるべきは明らかに俺だけどね!

 

 

 などと1人で寒いボケとツッコミを繰り返している間に、残り300メートルを切っていた。この高さからの落下はさすがにまずい。いくら半分人間じゃないものが混ざってるキメラボディでもトマトみたいにつぶれてデッドエンドを迎える羽目になる。

 俺は神機の刀身をヴァリアントサイズに変更した後、自分の中に眠っている偏食因子をたたき起こし、ブラッドアーツを使った。

 

 

 スピンペンデュラム。

 

 

 空中で自身の体を基点として回転して攻撃する技である。これの特徴は回っている間は何故か落下せずに空中にとどまることができるのである。俺はそれを利用し、残り25メートルの辺りでスピンペンデュラムを発動。今までの勢いをゼロにするには少しばかり足りなかったものの、それでも大部分の勢いを削ることに成功しそのまま地面に着地した。25メートルくらいなら問題ないからな。

 

 

 ドスンと音を立てて着地した所為で、周囲に居た人が俺を取り囲むように集まってきた。ちらりと集まってきた人の服装を確認してみると、なんというかいかにも村人という服装をした人といかにも冒険者もしくは魔法職と分かるような服装をしている人達が多く居た。他にも馬車が普通に使われていることから、一番近いのはドラク〇の世界だろうとも考えた。

 

 

 しかし、ここで困ったことが起きる。異世界に来たはいいが、そこからどう行動すればいいのかまったく分からないのだ。あの駄女神は特にここでの生活については何も説明しなかったが、こんなことなら自分から聞いておくべきだったと若干後悔している。

 かといってこのまま何もしないのもアレなので、自分の周りに集まってきた人の内の1人に話しかけてみることにした。

 

 

 

 「すみません。少し聞きたいことがあるのですが……」

 

 

 「あぁ……?」

 

 

 俺が話しかけたのはモヒカンでちょび髭を生やしている筋肉隆々の男。世紀末臭がするのはご愛嬌として、その人に近付きここで欲しい情報を得ようとした。

 何故ここで筋肉隆々の世紀末モヒカンを選んだのかというと、空中から武器もって現れた人間に動じずに話を聞いてくれそうな人がこの人しか居なかったからである。

 

 

 「なんだてめぇ……見かけねぇ顔だが……ここにいる奴ら傷つけようってんなら、俺は容赦しねェぞ」

 

 

 やだ、この人見かけによらずとってもいい人。

 とても怖い顔でガンを飛ばしてきているはずの男の人にほっこりしつつ、彼に言われたことを思い返す。

 ……そういえば、今の俺の格好は寝巻きなのか?今の今までまったく気付かなかったそのことにあわてて自身の格好を見てみるも、そこには何時も通り背中に狼の顔があしらってある普段着であった。まぁ、この格好も十分に見ない格好なんだろうけど、寝巻きよりマシだな。

 話がそれたな。さて、俺の目的は魔王を倒すことなんだが……どうやって尋ねようか……。

 

 

 「あの……魔王討伐の機関に属したいのですが……そういうことを行っている施設とかありますか?」

 

 

 「なんだオメェ、それは冒険者になりたいってことか?」

 

 

 「そうですそうです」

 

 

 「なんか、変わった言い方しやがるなお前。……まぁ、いい。これから同業になるってんなら俺が案内してやる。ちょうど俺も用事があるからな」

 

 

 

 やだ、この人見た目によらずとってもいい人(二回目)。掛け値なしでいい人。

 お言葉に甘えさせてもらい、ずんずんと前を歩く世紀末モヒカン改めいい人。その後姿を眺めながら、俺は何気なくいい人に話しかけてみる。

 

 

 

 「すみません。目指したいといっておきながら何なんですが、冒険者ってどんな職業ですか?」

 

 

 「はぁ!?それになりたいのに、何でそんなことも知らないんだよ!」

 

 

 「えーっと……家の教育方針だったんです。『お前は魔王を倒すことだけを考えろ!』ってひたすら戦闘技能だけを叩き込まれてきました。さっきの奴も実は家のものがやったことでして……」

 

 

 「………お前、なかなか苦労してんだな……。息子を空中から町に投げるとか普通はしねぇよ……。何でも言え、飯をいっぱい奢るくらいのことくらいはしてやるよ」

 

 

 同情されてしまった……。思いっきり作り話だったのに、心がぁ……心が痛いよぉ!

 ずきずきと来る胸を押さえつけながら何とか情報を引き出すために会話を続ける。

 

 

 「あ、ありがとうございます。それで、冒険者とは?」

 

 

 「冒険者ってぇのはその名の通り冒険者稼業を行うモンのことだ。その内容は様々、依頼品の納入だったり、モンスターの討伐だったりする。なかにはお前の様に魔王を倒そうとするイカレた野朗もいやがる」

 

 

 ふむふむ、要するに何でも屋ってことだな。そこまでは大体予想通り。

 

 

 「他には、冒険者の身分証明書兼スキルカードってのを渡される。これをもらえればはれて冒険者の仲間入りってぇこった。まぁ、多少の手数料はかかるがな」

 

 

 その言葉を聞いた瞬間俺は思わず足を止めてしまった。今、このいい人はなんといった?手数料が必要だと?俺はこの世界につい先程落ちてきたばかりだ。もちろんのことこの世界の金なんて持ってないし、寝るときにつれてこられたから元々居た世界のお金すら持ってない。ついでに身分証明書もない。

 

 

 ……まずい。

 

 

 ダラダラと冷や汗が流れるのを自覚する。

 今まで案内してくれたいい人も急に立ち止まった俺を不信に思ったのか足を止め、こちらに振り向いた。そして、俺の様子があまりにもおかしかったのだろう。若干口を開こうか迷うそぶりを見せつつ彼は言葉を紡いだ。

 

 

 「ま、まさかお前……」

 

 

 「い、一銭も渡されてません」

 

 

 「大丈夫だ!そのくらい俺が出してらぁ!空中からの着地を見る限りアンタかなり強そうだからな。そんなんが冒険者になれないなんて認められねぇよ!」

 

 

 これから兄貴と呼ばせてください(真顔)。

 もう、この人が親切すぎて思わずそんな事を思ってしまう。この人いい人過ぎるよぉ…その内詐欺にでもあうんじゃないかな?俺が既に詐欺みたいなもんだけど。

 

 

 

 

 

 

 そんなこんなありつつ、俺たちは冒険者ギルドへとたどり着いた。兄貴(心の中での呼び方)が普通に扉を開けて入っていくので俺もそれに続く。

 中に入ると、ショートカットのお姉さんが、ビールジョッキを片手に挨拶をくれた。

 

 

 「いらっしゃいませ!お食事なら空いている席へどうぞ。お仕事案内なら奥のカウンターへお願いしまーす」

 

 

 多分奥のカウンターとやらが冒険者カードの発行をしてくれたり、冒険者が実際に仕事を受けたりするのだろう。

 やっと場所がわかったので、とりあえずお金を稼ぐために俺はいったんここを出ようとするが、

 

 

 「おい、待て。コレを忘れてるぞ」

 

 

 兄貴が俺を呼びとめ、手にお金を握らせてくれた。

 

 

 「兄貴ィ!このご恩は一生忘れません!いつか必ず3倍にしてお返しいたします!」

 

 

 「お、おう」

 

 

 なんか気合を入れすぎた所為で引かれたけど、気にしない!俺は貴方の期待に応えて見せますよ、兄貴!

 

 

 久しぶりに受けた優しさとその他もろもろが爆発した所為で妙に高くなったテンションと共に俺は奥のカウンターへと足を運んだ。

 

 

 「あのー……冒険者登録をしたいんですけど……」

 

 

 「は、はぁ……登録手数料のほうはお持ちでしょうか?」

 

 

 「コレで」

 

 

 「………はい。確認いたしました。それでは、冒険者カードの説明にうつらせていただきます」

 

 

 受付の人の話は俺からしてみれば見るからに信じられないものだった。職業の選択があるのはまぁいい。でもそれがレベルに依存しあまつさえスキルと呼ばれるものも、ポイントを振り分けて習得するといった、ゲームと同じような方式を取っているらしい。

 これ、本当に現実なんだよね?実はソードアート〇オンラインでしたとか止めてね?

 

 

 「では、こちらの機械に手をかざしてください」

 

 

 その言葉と共に差し出されたのは、青い水晶とそれを鉄の輪が囲っているような機械。

 

 

 「これは?」

 

 

 「コレで貴方のステータスが分かるんですよ。その数値によって職業を決めるのが殆どですね」

 

 

 「ふむふむ、こんな感じか?」

 

 

 言われたとおり手をかざしてみると、青い水晶が光りだし、下にあるカードにまったく見たことはないが何故か読める文字を書き込んでいった。

 光が収まると受付の人がカードを手にとって内容を読み上げていく。そういうのって普通個人が管理して他の人には漏れないようにするんじゃないのかね?

 

 

 「樫原仁慈(かしはらじんじ)さんですね。ステータスは………ふぁっ!?」

 

 

 ステータスの欄を読み上げるときに急に奇声を発するお姉さん。なんぞ。

 

 

 「幸運地は平均より若干低く、知能はまるっきり平均レベルですが、それ以外のステータスが過去最高レベルを記録しているんですけどっ!?」

 

 

 あー……まぁ、ここに来る前から大いに暴れまわってきたきたからなぁ。その辺にいる奴よりは高いと思うけど。そこまで騒ぎ立てるほどのことだったか?

 

 

 「それがどうかしましたか?」

 

 

 「どうかしましたか?じゃありませんよ!!コレはすごいことですよ!?初めから殆どの職業につくことが出来るんですからっ!!」

 

 

 「は、はぁ……」

 

 

 すごいのは分かったから、ボリュームをもう少し下げてもらえませんかね?ほら、あそこで食事している人たちや店員さんもみんなこっち向いてますことよ?職業に神喰らいとかないかな?

 

 

 「特に適正があるのは狂戦士ですね!」

 

 

 「ちょっと待とうか」

 

 

 誰がバーサーカーか。

 

 

 

 「どうもジンジ様は物理に重点を置いたステータスのようですし、狂戦士じゃなくても前衛職が最もあっていると思いますよ?」

 

 

 「狂戦士でいいです」

 

 

 どんな職業があるのかも分からないし、適当に選んでていいや。とにかく戦ってみないことにはわからないしな。

 

 

 「それでは、」

 

 

 そういって改めて姿勢を正した受付の人。その背後にはいつの間にか別のギルド員が集まっており皆姿勢を正して直立していた。周りを見てみても、今まで食事をしていた人達が俺のことを囲っていたりもした。

 リンチでも始まるんですか?

 

 

 「冒険者ギルドへようこそ、ジンジ様。スタッフ一同、今後の活躍を期待しています」

 

 

 「お、おう……」

 

 

 『わぁあああああああ!!』

 

 

 ……もうついていけません。

 ギルド職員の皆さんの言葉と共に盛り上がり始める周囲の人たち。その中には兄貴の姿もあった。何やってんですか、兄貴。

 

 

 

 三十分ほどもみくちゃにされたがようやく開放された俺はお仕事案内の場所に来ていた。兄貴に貸してもらった分のお金を返済することとここまで親切にしてくれたお礼をするためである。

 

 

 今の自分でも受けられそうな仕事を受注してもらい、意気揚々と仕事をこなそうとその場を離れようとしたとき、服の裾を何かに引っ張られる感覚を覚えた。

 引っ張られたほうに視線を向けてみればそこにはいかにも魔法使いですといわんばかりの格好をしている少女が居た。三角帽子にマント、眼帯に包帯と若干属性を盛りすぎているのか、怪我でそうなっているのかは分からないがどちらにせよ、どこか痛々しい風貌だった。

 その少女は俺が自分に意識を向けていることを確認したのか、俺の目をまっすぐ見ながら口を開いた。

 

 

 「先程の言葉、聞かせてもらった。何でも、このギルド始まって以来のイレギュラーだとか……我は貴方のような存在を待っていた!」

 

 

 少女はそこで一度言葉を切り、その後ビシッ!っとよくわかんないポーズを決めると、

 

 

 「我が名はめぐみん!アークウィザードを生業とし、最強の攻撃魔法、爆裂魔法を操るもの!さぁ、イレギュラーよ。我と共にこの世の全てを意のままに操ろうではないかっ!」

 

 

 

 少女はドヤ顔でこういった。

 

 

 

 

 

 

 

 やべぇ、また変なのに会った……。 

 

 

 

 

 




二話連続でサブタイトル詐欺である。
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