翌日。
見知らぬ天井の部屋で目が覚めた俺は寝起きの鈍い頭もあり、混乱した。ここは何処だ!?と寝ていたベットから飛び起きてしきりに自分が居る部屋を観察したりして、自分が駄女神の所為で異世界に放り込まれたことを思い出した。……ついでに若干使えない疑惑があるアークウィザードの少女、めぐみんとパーティーを組み、なし崩しに同じ宿に泊まったことも思い出した。
ある程度の間隔をあけた場所に備え付けられているもう一つのベットにめぐみんが寝ている。それはもういい顔で寝ている。魔法一発撃ってぶっ倒れた挙句、俺に飯を食わさせたのに、いかにも一仕事したあとの快眠という風に寝ている。少しだけイラっとした。
完全に頭が覚醒したので、今後の予定を組み立てていく。
まずは昨日しとめ損ねたジャイアント・トードの討伐だ。昨日で七体倒したので、残りは三体……このくらいならパパッと終わらせることが出来る。多分午前中で片付くだろうし、そのときに受け取る報酬で昼飯を取った後にまた別の仕事をすればいいか。
「それにしても……」
考え事がひと段落したため、俺は自分の冒険者カードを取り出して眺める。そこには狂戦士レベル4と書かれていた。どうやら本当にレベルが上がったりする仕様らしい。しっかりと能力値も上昇していた。
元々、こういったことがないところで化け物相手に戦っていた身としてはちょっと複雑な気持ちだけど。
「うぅ……んぅ……ん?あ、おはようございます」
めぐみん起床。
冒険者カードを眺めていた俺を不思議そうな顔で見つつ、目をくしくしこすっている。ちなみに左目の眼帯はつけていない。強大な力が封印されているとか言っている割には、ごく普通に外して寝ていた。
なんか色々適当だよね。この子。
「おはようございます。さっそくで悪いんですけど、今日の予定について話したいのですがよろしいですか?」
「ん、問題ないです。……それと、敬語じゃなくてもいいですよ?私のほうが明らかに年下なのに敬語使われるってなんか違和感が……」
「そうですか?なら―――――そうさせてもらうわ」
俺も久しぶりに敬語使ってたから違和感あったんだよね。まぁ、それはいいとして。俺は先程考えていた予定をめぐみんに話す。一通り話し終わると彼女も異議はないのかすんなりと頷いてくれた。
「よし、予定も決まったことだし、さっさと朝ごはん食べて昨日の続きをしようか」
「そうですね。私も早く爆裂魔法を使いたいです」
壁に立てかけてあった杖を手にとって立ち上がっためぐみんが言う。
「あ、それは無しの方向で……」
「えぇっ!?」
何故そんな驚くのだろうか。
詠唱に時間がかかり、範囲も割りと広く、何より撃った後に行動不能になる超ピーキー魔法を使わせると思っていたのだろうか?上記のことを戦いの場でやった場合は普通は即死である。昨日はたまたま運が良かっただけに過ぎない。いや、本当に。俺が居たとこで行動不能になってみろ。上田!からの即死コンボ安定だぞ。
ごく当たり前なことを言ったと思うのだが、言われた本人は世界の終わりといわんばかりの表情でベットに座り込み、体を震わせていた。そこまでか。そこまでして魔法を使いたいのか。
「あのさ、他には何か覚えてないのか?上級職についているんだから、他の魔法もある程度使えるはずだろ?」
「使えません」
「えっ」
「他の魔法は使えない」
「何それ怖い」
え?爆裂魔法は最強の攻撃魔法で、めぐみんは魔法職の上位版であるアークウィザードとかいうものなんだろう?だったら下級魔法の一つや二つくらい使えたりしないのだろうか?
「確かに、習得しようとすればある程度のものは習得できるでしょう。それらを習得すれば今後はさらに楽になることでしょう。しかし……!ダメなのです。私は、私は爆裂魔法しか愛せない。使えない!例え、魔力の消費が大きく、一日一回しか使えないとしても……それでもッ!私は爆裂魔法しか愛せない!なぜなら、爆裂魔法を使いたいがために私はアークウィザードになったのだからっ!」
拳を強く握り締めて、気付けば俺の懐に入り込んでそう熱弁する。あまりの迫力に俺は声が出せずにただ「お、おう……」という言葉が口からこぼれただけだった。
「そもそも、私の目的は爆裂魔法を使うことにあります。ぶっちゃけそれが出来ないならパーティーを組む理由がありません」
「だったら解消する?パーティー」
「…………」
俺の言葉に黙り込む彼女の様子を見て、俺はある一つの答えにたどり着いた。昨日、めぐみんが最強の攻撃魔法を使え、上位職であるアークウィザードであるにも関わらず新人の俺とパーティーを組むのかということを考えていた。昨日はめぐみんが自分で言ったとおりの理由かと思ったが……。これは違う。新人で何も知らなさそうな俺としかパーティーを組めなかったのか。
上級職とは言え、使える魔法が超ピーキー魔法、それも味方を巻き添えにする危険を孕んだものしか使えないというのであればパーティーを組めないことにも納得だ。
めぐみんはまるで捨てられた子猫のような瞳でこちらを見てきた。軽く言った一言でここまでの反応をされると結構罪悪感が……。
「冗談、冗談。パーティーは解消しないからその目で俺を見るのは止めてくれ。俺の精神がゴリゴリ削られていく」
「でも、爆裂魔法……」
「周囲に敵が居ないことを確認したら使わせてあげるから」
そう言った瞬間、今までの暗い表情から一転して太陽のような笑みを見せるめぐみん。その笑顔のまま俺の近くまで来て袖を引っ張ると、
「さぁ、早速爆裂魔法を使いにいきましょう!」
「目的変わってますけど、俺たちは仕事をしにいくんですけど」
「その前に腹ごしらえですね。行きますよ、ジンジさん」
「聞いて」
この子人の話聞かなさすぎィ!
ぐいぐいと外見からは想像もできない力で引っ張られる袖と同じく引っぱられている俺は何とか壁に立てかけてあった神機を回収して彼女の後についていった。
――――――――――――――――
と、こんな感じで異世界で生活を始めて早数日が経過した。え?あの後はどうしたのかって?普通にジャイアント・トードを討伐してめぐみんが爆裂魔法をブッパしただけだよ。そして、その仕事で稼いだお金で初仕事成功パーティーしたりしただけだ。別の日にもまた別の仕事を請けて過ごしただけだし。森に変な影響を与える木をめぐみんが爆発させたり、戦い方を教えて欲しいという人に神機使い式戦闘技術を叩き込んだり、兄貴にお礼したりしていた。
そして、今日も同じように簡単な仕事をこなして過ごそうと思ったために冒険者ギルドの仕事案内の場所へとやってきたのである。いや、俺の目的は魔王を倒してもとの世界に帰る事なんだけど、手がかりがまったくないんだよね。だからこうして金策に走っているんである。俺、RPGではサブクエも出来るだけクリアしていくタイプだし。
「ん?これは……」
しかし、仕事受付カウンターへと向かっている途中めぐみんが何を見つけたのか、一つの掲示板へとその歩を進め、その掲示板に張ってある一つの張り紙を読み始めた。
どうしたのかと思い、俺も彼女の背後からその紙を覗き込む。
『急募!アットホームで和気藹々としたパーティーです。美しく気高きアークプリースト、アクア様と旅をしたい冒険者はこちらまで!』
パーティーに加わったAさん
『このパーティーに入ってから毎日がハッピーですよ。宝くじにも当たりました』
同じくBさん
『アクア様のパーティーに入ったおかげで病気が治ってモテモテになりました』
『採用条件、上級職に限ります』
「うわぁ……」
うわぁ……。
掲示板に書かれていたその内容に心の中で思ったことがついつい口に出てしまう。なんだこの内容。典型的な詐欺の手口じゃないか。このAさんBさんの証言が本当だったらもう募集する意味もないだろうし……。コレ考えた奴頭が残念なのかな?
「上級職……ジンジさん。私たちいけますよ。当てはまってますよ」
「やめろ」
何故かこの急募用紙を見てパーティーに加わる気満々のめぐみんを引き止める。なんでこの内容でパーティーに加わろうと思えるんだ。一応俺より知力高いんだからさ。もう少し物事を考えてから行動に移しましょうよ。
「何ですかその馬鹿を見るような視線は……。私のほうが知力高いんですからね」
「ホント、ステータスの数値は当てにならないよね」
「それは遠回しに私が馬鹿ってことですか!?これにはちゃんと理由があるんですよ」
「へぇ……その理由は?」
「いいですか?ここに書いてあるアークプリーストというのは私たちと同じ上級職で、回復魔法や蘇生魔法を使うことが出来る職業です。また、こういう職業にありがちな接近戦も問題なくこなせる万能職です。この職業の人が1人いるだけで、戦闘面での効率がかなり変わってきます」
なるほど。回復魔法はともかく蘇生魔法まで使えるのか……。というかこの世界では蘇生できるのが一般的なのか……。本当にゲームみたいになってんな。今度めぐみんが倒れたら棺おけに入れて引きずって町に帰ってこようか。まぁ、それはともかく。
アークプリーストが物凄い職業だということは分かった。それに伴いアークプリーストになるその人物も凄いのだろう。でも、なんか名前に引っかかりを覚えるんだよなぁ。こう、つい最近ひどい目に遭わされたような、そんな感じが。
「まぁ、行くだけ行ってみようか」
「そうですね。ついでに、爆裂魔法も普及させます」
「おいやめろ」
あんな魔法を放つ奴を量産されてたまるか。
必死にめぐみんを抑えつつ紙に書いてあった場所に向かう。すると、この世界では絶対にありえないジャージ姿の少年と、どこかで見たことのある青髪の痴女擬きが木製の椅子に座っていた。
どうしよう。今すぐ帰りたくなってきた。
直接本人を見たことにより、疑惑が確信に変わりすぐに帰ろうと思うがとき既に遅し、めぐみんが既に異世界人組みに話しかけていた。
「募集の張り紙、見させてもらいました」
あぁ、もうどうにでも成れ。
ずんずん話しを進めていくめぐみんを見て俺は一つ溜息を吐いた。
仁慈「あれ?めぐみんがコレでパーティー組めたら俺要らないんじゃないか?……よし、解消だな」
めぐみん「止めてください、置いていかないでください。あなたが居ないとわたしカエルに喰われる気がします!」