トラクターに轢かれそうになりショック死して、駄女神を引っ張って異世界に転生してしばらくが経ち、ようやく冒険者らしいことをしようと思ったら早速壁にぶち当たってしまった。
俺たちが仕事として請け負った巨大カエル、ジャイアント・トードは思っていた以上の強敵だった。昨日はアクアが食われているうちに俺が倒すという囮作戦でなんとかなっていたのだが、それでも二体倒すのが精一杯だ。そこで、アクアが仲間を募集しようと言い出した。ろくに装備もそろっていないパーティーに人が来てくれるかどうか不安があったが、アクア曰くアークウィザードは引く手が数多なので心配ないとのこと。
で、その翌日なのだが……。
「……………来ないわねぇ………」
アクアが寂しそうに呟いた。
張り紙を張ってからはや半日が経過したが、誰も俺たちのパーティーに加わってくれるという人は現れていない。だからといって誰も掲示板を見ていないかといえばそういうわけでもない。別の張り紙を見て、パーティーを組んでいた人たちも近くに居たからである。つまりは俺たちの張り紙を読んでそれで遠慮しているのだろう。いや、気持ちは分かる。張り紙に書いてあることが書いてあることだからだ。
『急募!アットホームで和気藹々としたパーティーです。美しく気高きアークプリースト、アクア様と旅をしたい冒険者はこちらまで!』
パーティーに加わったAさん
『このパーティーに入ってから毎日がハッピーですよ。宝くじにも当たりました』
同じくBさん
『アクア様のパーティーに入ったおかげで病気が治ってモテモテになりました』
『採用条件、上級職に限ります』
うん。コレで来るのは、アクア並みに知力が低い奴だと思う。内容は詐欺と変わらなからな。せめて上級職限定の条件を外すとかはしたほうがいいよな。
この条件を外すだけで大分ハードルは下がるし、何より上級職だけだと俺の肩身が狭くなる。
このままだとまた昨日と同じくアクアに食われてもらうしかなくなるぞ。
「募集の張り紙、見させてもらいました……」
『えっ?』
そんなセリフと共に現れたのは、見た目十代前半の少女と十代後半の青年。少女のほうはマントにローブ、帽子に杖といかにも魔法使いと言った外見で左目には眼帯をつけている。髪の色は黒髪だが瞳の色は珍しく赤色であった。
青年のほうはここらでは絶対に見かけないであろう服装。明らかにこの世界で作られたわけではないデザインのジャケットとズボンを身につけている。髪の色は銀髪で瞳は少女と同じく赤色。ぶっちゃけ、一昔前に流行った「ぼくのかんがえたさいきょうのしゅじんこう」のような外見だった。手に持っている武器はまたも見たことないもので鎌のような形状だが、外側にはシールドらしきもの、持ち手に近いところには銃口のようなものも確認できる。変形でもするのか?
「私はあなた方のような存在を待ち望んでいた!」
『えっ』
「我が名は、めぐみん!アークウィザードを生業とし、最強の攻撃魔法、爆裂魔法を操るもの!」
「えっと……」
どうしよう。すごく反応に困るんだが……。
後ろに居る銀髪の青年も頭を抱えてあちゃーって言ってるし。
「フフン……あまりの強大さ故に、世界から疎まれし我が禁断のt「いい加減にしなさい」痛っ!?」
呆然と彼女の話を聞いていると、めぐみんと名乗った少女と共にいた青年が彼女の頭をスパーンと叩き言葉を中断させてくれた。めぐみんはそのことに対して青年に抗議し始める。
この隙にアクアへと話しを振った。
「なぁ、あの子一体なんだと思う?」
「あの赤い瞳からするに多分紅魔族よ。紅魔族は生まれたときから高い魔力と知力を兼ね備えているの。そのことから大抵はみんな魔法使いのエキスパートで、変な名前を持っているわ」
だからめぐみんなのか。
ん?待てよ。アクアの言葉が本当だとするならば、あの隣の青年も紅魔族なのか?装備とか格好とか、明らかに魔法職じゃあなさそうだけど。
「なら、あの隣の銀髪の奴は?同じ赤色の瞳を持ってるし、紅魔族なのか?」
アクアに尋ねる。すると今度は先程のようにすぐに答えるのではなくすすーっと視線を逸らした。何でだ。
「えーっとアレは、違うわ……違う……うん」
どこか煮え切らない言葉を溢す。
視線を逸らすってことは何か後ろめたいことがあるってことだろう。そして、あの明らかにこの世界で作られたわけではないであろう服……。個々から導き出される答えは。
「俺と同類か……」
これに限る。
けれど、ここに来るのは肉体と記憶を引き継がなくてはならない。そのことから考えるとあの容姿は元からということになる。アルビノだったのだろうか。
そのようなことを考えているとあちらのやり取りは一通り終わったらく、再びこちらに向き直っていた。
「この子は話しをややこしくするので変わりに説明しますね。簡単に言ってしまうと私たちをパーティーに入れてくれませんか?ということです」
「それは是h「じじじじじ、条件は見てきたんでしょうねッ!?」おい駄女神……」
せっかくパーティーに入ってくれるって言ってるのに何でそんな事言ってんだ。このまま行くとまたお前に喰われてもらわなといけなくなるのが分からんのか。この戯けが。
「特にそこの貴方!上級職じゃないと、このアクア様のパーティーには入れないわよ!?」
俺の気持ちなんて露知らず、銀髪の青年に指を突きつけてそう宣言する。宣言されたほうの青年は額に青筋を浮かばせて、顔を引きつらせつつ自身の冒険者カードを取り出して俺に見せた。
「ば、
「一応、上級職です。実は私、とてもこのパーティーに入りたかったんです。………そちらの女性とも……話したいことが……あるので……ね?」
「ピィ!?」
アクアが涙目で怯え始める。
今回ばかりは俺も同じ気分だ。なんだ今の笑顔超怖ェ……。俺と同じ地球から来た(暫定)とは思えない気配だった。多分、アレが殺気って言うんだろう。
ダメだ。常識人かと思ったが、こいつもぶっ飛び枠だった。俺に味方は居ないのか。
「まぁ、なんにせよ。コレで条件はそろっているわけですし、パーティーに入れてもらえますか?」
「あ、あぁ……上級職2人がパーティーに加わってくれれば、俺たちとしても心強いよ」
若干一名ほど猛反対している元なんたらが居るが、大した問題じゃないだろう。
「さっそく向かおうか。ジャイアント・トードを狩りに」
――――――――――――――
またあのカエルか……。
めぐみんが突撃したパーティーになんとか加わることが出来たのだが、明らかにあのアークプリースト……俺をこの世界に「手違い」で送り込んだ駄女神だろ。ちょっと威圧したら涙目になったし。隣にいるのはこの世界観にかけらも合わないジャージを身に纏った少年だ、彼がこの世界に来たときに巻き込まれたか、「なんでも」の条件に当てはめて連れ込んだんだろう。
「ところでめぐみん。コレで念願のパーティーを組めたわけだが、俺はもう用済みじゃないか?」
「んなっ!?この数日、一緒にパーティーを組んだというのに愛着とかわかないんですか!?」
「特に」
「鬼!悪魔!仁慈!」
何でそこまで言われなくちゃいけないんですかねぇ……。初めはこの世界の知識をもらえていいかもしれないとか思ったけど、よくよく考えてみれば兄貴のほうがこの世界に詳しそうだし。知力が高いといっても色々残念だし。
「ひどいです……ひどすぎます……あんなに良くしてくれたのに」
「まぁ、一日一回は必ず爆裂魔法を撃たせてあげてたしね」
「私のおなかにいっぱい熱いものを注いでくれたのに」
「勝手に頼んでたからね。コーンスープ。しかも注いでないし、自分でがぶ飲みしてたし」
「な、何度も夜を共にしたのにッ……!」
「十代前半の小娘が何をほざくか。同じ部屋で寝泊りしただけだろ」
「辛辣ッ!?」
がっくりと肩を落とすめぐみん。
「何がそんなに不安なわけ?」
「だって……私の実態を知ったらあの人達もパーティーから外そうとするのでは」
「大丈夫だろ」
だって駄女神を同じパーティーに加えているくらいだし。あの少年、色々不幸な目に遭いそうな人相をしているが、案外面倒見良さそうだしね。
「そうだといいんですが……」
そうこう話し合っているうちに目的地に到着した。見覚えのある草原で、この前十匹倒したにも関わらず再び何体か沸いている。
ざっと見渡す限り、2、3……3匹か。
「爆裂魔法は最強魔法……その分、魔法を使うのには準備時間がかかります。なので、カエルの足止めをお願いします」
「といっても……カエルは3体居る。俺たちも三人だけど、正直俺とアクアで一体の足止めが精一杯だ。だから一番遠いカエルを魔法の標的にしてくれ」
「わかりました」
「アンタには悪いんだが、一人でカエルの相手をしてもらいたい」
「問題ありません」
指示を出すジャージ少年にそう言葉を返す。
伊達にジャイアント・トードを10体狩ったわけではない。そのことを証明しようじゃあないか。
俺に指示を出し終えたジャージ少年と駄女神が何かを言い合っている間に俺は一番近いジャイアント・トードに接近する。俺はコイツの効率的な倒し方を編み出したんだ。
接近した俺に対して戦闘態勢を取るジャイアント・トードに対して俺はヴァリアントサイズを咬刃展開状態にし、地面を踏みしめて飛び上がると、そのまま宙で横回転をする。回転の力と重力の力を足した神機は普段よりも強い力でジャイアント・トードに向かい、その巨体を真っ二つに両断した。
コレが効率のいいやり方である。横薙ぎにすると、脚力を生かして回避されるので飛んでも問題ないように縦に切りつける……コレこそが一番いい対処法である。
「震えながら眠るがいい!ゴットレクイエム!!」
両断し終えたジャイアント・トードを眺めていると、俺の右斜め前からそんな気合の入った声が届く。視線を向ければ、手に持っている杖から金色の光が出現しそれを伴いながらジャイアント・トードのお腹に向かって突撃をかまし………喰われた。
「………歯もないし、足も出てる。口内で消化されることはないだろうし、放置でいいか」
駄女神から視線を外すと、今度はめぐみんが詠唱の最終段階に入っていた。
そして、
「エクスプロージョン!」
最強の魔法が放たれる。
威力だけは最強の名に恥じないものであり、今回も対象となったジャイアント・トードは跡形もなく消滅していて、地面には溶解した地面だけが残った。案の定、めぐみんは倒れた。
「コレが魔法か……すごいじゃないか!めぐみ……ん……?」
そして、ジャージ少年が魔法の威力を称えようとと振り向いたときに地面に倒れているめぐみんの姿を発見していた。
「……………えっ?」
「爆裂魔法は威力こそ強いものの、燃費がすっごく悪いんですよ。で、めぐみんが撃った場合はああなります」
混乱を極めているであろうジャージ少年に説明を入れる。
「えー………ところでアンタに頼んでおいたカエルは?」
「あそこ」
「ヴェ!?」
どうやら刺激が良すぎたらしい。俺が指差したところを一瞬だけ視界に入れて、すぐさま逸らしていた。
まぁ、今まで戦いとは無縁の世界に居たんだし、仕方ないのかもしれないけど。
「仁慈さん。暢気にしゃべってないで、早く回収してください。食べられます。カエルに食べられちゃいます」
「あーはいはい。ちょっと待っててねー!……ところで、そろそろあの駄女神助けないと不味いんじゃ……」
「そうだ!忘れてた!こぉらぁ、駄女神!結局喰われてんじゃねーぁあああああ!!」
………大変そうだなぁ。
もう靴しか見えないほど駄女神を丸呑みしているジャイアント・トードに向かって叫びながらジャージ少年は駆け出していった。俺もめぐみんを回収しないと……。
―――――――――――――――――
疲れた。昨日ほどじゃないが疲れた。
どろどろの粘液にまみれた元なんたらと、赤目の白黒コンビを伴い町に帰って来た俺はそう思った。
アクアが使えないのは、まぁ知ってた。しかし、アークウィザードを名乗るめぐみんも同類だったとは……。威力は確かにすごかった。けど一日一発という制限がキツすぎる。唯一上級職の貫禄を見せる戦いをしたのは銀髪の青年、仁慈だけだった。彼だけ引き抜くということは出来ないのであろうか?
「んー……難しいですね」
本人に聞いてみた。
そして返答がコレである。
「何でだ?俺たちが弱小パーティーだからか?それともコレが居るからか?」
「ちょっと、コレって何よ。私は女神様なのよ?もっと敬いを持ちなさいよ」
「……神……」
「ヒィ!?」
やっぱり、仁慈という青年は欲しい。本人の戦闘力はもちろんこの駄女神を封じ込めることが出来るのはでかい。
「単品はダメです。セットなら大歓迎です」
「なんでお前が答えたんだよ」
「まぁ、こういうことなので……」
「んー……でも、いいか。これからお願いするよ」
めぐみんの攻撃力は確かなものだし、彼女のフォローには仁慈に回ってもらえばいい。
仁慈とめぐみんをパーティーに加えた後、べとべとな状態のアクアと風呂に入りたいと言っていためぐみんを銭湯に叩き込むと男組みである俺たちはギルドのほうで仕事完了の報告をして報酬をもらう。
「全部で十一万か……山分けして1人約二万八千ほどか……命を賭けたのに、割りにあわねぇ」
「あ、今回は私とめぐみんの分はいりませんよ。あの駄女神と2人で分けてくださって結構です」
「マジで!?」
やっぱこの人、いい人だなぁ。
……そういえばすっかり忘れてたけどこの人も俺と同じく日本から来た人だよな。アクアのことを女神と認識しているし、武器も服もここで調達したものとは思えないし。それにしては戦いに慣れすぎている気がする。結構長くこの世界に居たりするんだろうか?
「なぁ。アンタも俺と同じように日本から来たんだよな?」
「そうですよ」
「ここで生活して長いのか?」
「そうでもないですよ。まだ一週間とちょっとです」
「俺たちとそう変わらないのかッ!?」
意外だ。戦い方からして結構長いのかと思っていた。なら、頼んだものは戦いの才能とかなのだろうか?
「アクアから何もらったんだ?戦いの才能?」
「いや、この武器ですね」
ということは戦闘能力は自前なのか……。どうなってんだ?はたから見ても決して使いやすいとはいえない武器であんな戦いが出来るなんて……。
一体どんな生活をしていたのかと尋ねようとするが、それよりも早く俺たちに声をかけた人物が居た。
「募集の張り紙、見させてもらった。まだメンバーは募集しているだろうか?」
一応パーティーの基本の4人はそろっているし、断りを入れようと振り返る。するとそこに居たのはプレートメイルに身を包んだ金髪の美女。凛とした瞳が、長い髪を後ろで一つにまとめるいわゆるポニーテイルと呼ばれる髪型と実によく似合っていた。
「は、はい!」
断るつもりだったのに美人とわかってそう答えてしまうのは男として悲しい性だな。
「よかった。私は、貴方達のような存在を待っていた。わ、私の名前はダクネス……ん、はぁ……く、クルセイダーを生業とする者だ……はぁ……はぁ…あっ」
「………あ、これヤバイ奴だ」
息が荒く、頬を上気させる金髪美人の様子に隣に座っている仁慈がそんな言葉を洩らした。
「ぜ、是非この私を、ぱぱぱぱぱ、パーティーに……ッ!」
このとき、仁慈の言葉を聞いて置けばよかったと思うことを俺はまだ知らなかった。
ダクネス「あ、貴方は相当力が強いらしいな……」
仁慈「こっちみんな」