とある科学の傀儡師(エクスマキナ)   作:平井純諍

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ずっと疑問に思っていた事なので、こうだったかもしれないなと思って書きました
しかし情報が少なくて四苦八苦


第96話 プロパガンダ

全ては20年以上前に始まっていた。うちはマダラが延命していた命の灯火が搔き消える寸前の数ヶ月前......輪廻眼を開い時からだった。

 

自分の身体が朽ちる事で自身の見果てぬ夢が完結しないと悟っていたマダラは『凍てつくような意志』の体現者である最後のしもべ『黒ゼツ』を生み出し、己の意志を託してその生涯に一時的に決着を付けて絶命した。

本来であればそのままその世界に留まり、マダラ復活という業火を忍の世界に知らしめて『新たなる秩序を持って神』となる主を迎えるはずだった。

 

......だが齟齬が起きた。

切り離されたばかりの小さな白ゼツと共に力を溜め、意志を意思に変え、徐々に黒白と分かれた人間体型生物として鹿やウサギ、森に迷い込んだ幼い童を喰らい力を溜めていたある日、マダラの死から3ヶ月が経過した日にソレはやってきた。

 

熊のようでもあり、鬼のようでもあり見方によっては鱗を生やしたトカゲにも見えたソレは掴めないはずの我々を掴んできた。

「ヤットカ......マダラデサエモ意志ヲ切リ離スノハ難シイラシイナ」

「!?」

身体ガ動カン......

「ククク......コレデ準備二入レル......マズハオビトト接触ダッタナ」

「キ、貴様ハ?」

「残念ダガマダラノ計画ハ俺ガ上手ク引キ継イデヤル......マダラノ意志ハコレカラ......カグヤノ意志トナル」

 

突然現れたカグヤの意志という黒い獣は輪廻眼を開いて時空を歪ませると持ち上げた黒と白の塊を出現した穴へとゴミを捨てるように突き落とした。

「!?」

「マダラハ警戒心ガ強イ......コレデ貴様ノチャクラヲコピーシタ......バレル事モ無イダロウ。下手二殺シテアノ世デマダラ二感ヅカレルノモ面倒ダ」

 

熊のような鬼のような荒ぶるトカゲのような黒い塊はチャクラを吸収すると自分と全く同じ姿、チャクラを保ちゆっくりと時空のうねりを強くして間を収斂させていく。

「ナアニ......スリ替エハ歴史上繰リ返サレテイル常套手段ダカラナ。上手クヤッテヤルヨ」

 

黒ゼツが最後に見た光景は黒い正方形の間が狭まる中にぽっかり浮かぶ、左右不均衡な笑みを貼り付けた自分自身その者だ。

白ゼツが居ないからかバランスが取れていない半身は必死に手を伸ばすが、ソレは最後を見届ける事もなく踵を返していき、歪みの口は捻りが解けるように元の風景へと変化していった。

 

数式すら破滅する時空のうねりの中でもがくマダラの意志『ゼツ』は主のチャクラを求めて強張る身体を揺り動かして出口を探す。

なんとかして元の世界へ戻らなければならない。

幸いな事に元の世界に胞子の術で残してきた白ゼツの微小分身を捕食の度に撒き散らしたので見つけるの容易い。

 

しかしソレが邪魔しているらしく、まだ円熟していないゼツではどうにも破る事が出来ない。

些細なチャクラ反応も取り零さないように最大範囲の感知能力を駆使して彷徨う内に一つの出口と偶発的に繋がった。

 

それがこの世界

『学園都市』と呼ばれる忍術とはまた違う発展を遂げた超能力者が集まる都市だ。

なぜ繋がったか分からない。

ただ莫大な負のエネルギーがあり、切り離された十尾の陰のチャクラを感じ取ったゼツは立ち上がりながら復讐に身を焦がしていく。

 

十尾の影を復活させて

元の世界に戻る

 

それがマダラの意志『ゼツ』の大きな目的となった。

元の世界で起こるであろう戦争に参加し、本来果たされるべき結末を完結させる為の戦いがこの世界から始まった。

 

******

 

停電となって混乱している一般学生や何も知らない職員が復旧したばかりのネットで情報を集めている中で公式の情報を扱うテレビ局がついに動きを始めた。

 

都市のスクランブル交差点にある大きなモニターにニュース特番が流れ始めて混乱している市民は足を止めて食い入るようにモニターに観入る。

 

年配の熟練アナウンサーが座り、慌ただしくスタッフとの打ち合わせと原稿の確認をしている。

画面の上で警告音と非常事態宣言が出されており不気味なアラームがおよそ2分間流れた後に

 

学園都市ニュース!のテロップと共にいつものBGMが流れて、鬼気迫る原稿が淀みなく読み上げられていく。

 

たった今入りましたニュースです

学園都市が何者かに襲撃されました。統括理事会では一連のテロ事件と関連があるとし調査をしているとの事。

負傷者多数

今のところ死者は確認されておりません。

 

なおテロ事件の容疑者は「学園都市上級特別研究員のゼツ容疑者」と判明致しました。

非常に危険な思想と能力を持っていますので付近の住民は見つけましたら、お近くのアンチスキルに連絡を取り、決して近づかないようお願いします。

ゼツ容疑者の動機は不明

今もなお破壊工作を続けている模様

 

そこへスタッフが姿勢を低くしながら青白い顔をしながらアナウンサーに原稿を手渡した。

その原稿に目を落としたアナウンサーは一瞬だけ驚きの表情を浮かべた後に一呼吸置いて仕事に戻る。

 

!?

た、たった今入ったニュースです。

現在、ゼツ容疑者のテロ行為止める為に接触している人物がいるとの情報が入りました。

監視カメラの映像があるそうなのでご覧ください。

 

赤い髪の少年が鎧武者の姿の犯人に鉄骨で撃ち抜かれている映像が流れて、観ていたアナウンサーとモニター前の視聴者が息をのんで惨劇を目の当たりにし、静寂が包み込んだ。

 

それでも少年はボロボロになりながらも再び立ち上がり、傷口を抑えて鎧武者に立ち向かっている所で映像が止められて元のアナウンサー画面に戻る。

 

この赤い髪の少年は学園都市第1位のサソリ氏であると判明しました。こちらの鎧を着た長髪の男性がテロ事件のゼツ容疑者と見られます。

 

統括理事会からのコメントが来ております。

「今回このようなテロ行為を許してしまった事は正に痛恨の極み。都市の治安を揺るがしかねない事態にまで発展しようとしていた矢先にこの少年はテロに対抗する為に孤軍果敢に立ち向かい、多くの大切な学生諸君を助ける為に踏ん張っています。我々はこの少年に報いなければならない!テロは断じて許されるものではない!」と公式に発表し、毅然とした態度でテロ行為に抗議すると約束をしました。

 

ここでゲストの大人気アイドル『一一一(ひとついはじめ)』さんにコメントを頂きたいと思います。よろしくお願いします。

「いや〜。都市のピンチに駆けつけるなんてヒーローだね。是非ともお友達になりたいな。今度ライブがあるから特別ゲストで来て貰うのも悪くない......誰か彼の連絡先を知っていたら教えてくれないかな?」

 

ありがとうございます。

大部分関係ないような気がしますが、都市を守ったサソリさんには都市から感謝状が贈られる見込みです。

サソリさんは以前に起きた『幻想御手事件』解決に尽力したとの情報もあり、一部では英雄として讃えられています。

 

******

 

復活したマダラは枯渇したはずの塵に近い血液が幽かに通い出す血の脈動に高揚感を露わにしながらもヒビ割れた顔で歪に笑みを浮かべた。

背中側には黒く長い逆立った尾が二本煙のように伸びながらマダラの身体の周りに湯気のようにチャクラがまとわりついている。

割れた顔の隙間から真っ赤な液体が粘り気が比較的に緩やかな液体が流れているのが傍目からでも見えた。

 

「......?!どういう事だ?」

マダラは細かいヒビ割れた腕を眺めながら限られた情報から現状へと対応を開始し始めた。

「よ、余所見してんじゃないわよ!」

先ほどまでとは違い、桁外れの殺気に若干怯みながらも麦野は弱さを振り払うように一歩踏み出しながらメルトダウナーを3発連続で放つ。

「.......」

「!?」

マダラは少しだけ表情を綻ばせると一瞬で姿を消して光る写輪眼の残光が曲線のようにだけ動くと麦野の目の前に体勢を低くした状態で移動した。

「塵遁か......両天秤の小僧関係のようだな」

「くっ!」

マダラは麦野の目を突こうと拳を突き上げるが砂の盾がガードして麦野を守るとメルトダウナーを再起動して咄嗟に頭を下げながら脇腹を抉り抜いた。

 

「やるな」

風化した血糊のような体液がドロリと流れ出すがマダラは意に介さないように印を結ぶと

 

火遁 業火滅却の術

 

口から広範囲に渡る爆炎を放ち姿勢を低くしていた麦野の背中目掛けて火の津波を引き起こした。

「がああー!?」

砂が麦野を包み爆炎地帯から逃すが高温をガードしきれずに麦野は背中に火傷を負った。

「はあはあ」

「麦野!大丈夫!?」

「なんとかね」

塵芥が集まり抉られた脇腹が再生していくのを見ると悪夢でも見るかのように背中が震えた。

 

「チャクラの陰陽が絡まっているようだ。動きにくいな」

再生した箇所からは逃げ場を無くした乾血が滴り落ちていく。

血が下に落ちて粘ついた痕をコンクリートに付けると同時にマダラの肩を撃ち抜く弾丸が当たり、大きく仰け反るが返す脚でマダラは体勢を崩したまま通過した弾丸を片手で受け止めるとそのまま弾丸の角度から弾いた狙撃者へ投げつける。

「なるほどな......これは少しずつ生者となる術か」

撃ち抜かれた肩からは先ほどよりも血の通った血の色をしており、比例するようにマダラの身体に痛覚がうっすら戻ってきた。

「穢土転生と輪廻転生を合わせた術か」

マダラの背中から黒い尾がまた一つ伸びてきて可視化するに従い周囲に尋常ではないプレッシャーを放つ。

 

狙撃を

「ど、どういう事!?」

投げ返された弾丸がそのまま銃身を逆走するように走り、一気にスコープ付きの銃がお釈迦となって引き金が引けなくなってしまった。

いや、それよりも驚嘆すべき事は肩を撃ち抜かれても顔色一つ変える事無く動いている人間という存在がこの先に居るという事実である。

「肩を通過した弾丸が外に出た瞬間に掴んで投げるって......?!」

装着したヘッドギアの画面にノイズが走っているが次の瞬間には巨大な刀を持った燃え上がるようなチャクラの腕が正確に弓箭の姿を隠していたビルを真っ二つに切り裂いて、その中心にマダラはオリジナルの写輪眼を光らせていた。

 

「?」

装置に写輪眼の紋様が浮かんでいる事に怪訝の表情を浮かべるがもう一方の振り上げた刃を呆気に取られている弓箭に容赦なく振り下ろした。

そこへビルの屋上から武術のセンスの欠片もない学校指定のジャージを羽織った黒髪の青年が飛び降りてきてマダラの振り下ろされたスサノオを片腕で受け止めた。

「!?こいつ」

受け止めた片腕とは反対の腕の拳を握り締めると

「ハイパーエキセントリックウルトラグレートギガエクストリーム......もっかいハイパーすごいパーンチ!!」

と超爆発を引き起こして素手でスサノオを押し返し、マダラの身体は余波で少し崩れた。

「硬ぇ!こりゃあ気合い入れねーとな!」

拳と拳で叩き合わせて不敵に楽しそうにマダラを眺める青年は拳に力を溜め始めていく。

息を吐き出しながら、足を踏み込むと溜めた力を一気に放出して体勢が整えられていないスサノオごとマダラにぶつけた。

「超ッ......すごいパァァンチ!」

周囲の障害物を破壊しながら突き進むエネルギー弾はマダラに当たると大爆発を起こしていくが、刹那黒い何かが青年の首を切り裂くように当たり吹っ飛ばされた。

「痛ぇ......視えなかった」

首から出血しながらもあっさりとマット運動のように立ち上がると手足をブラブラとさせた。

 

学園都市第7位「削板軍覇(そぎいたぐんは)」

学園都市の人工的な超能力開発に頼らずに偶発的に超能力を手に入れた『原石』の一人かつ世界最大の原石と呼ばれている。

能力は不明

単純な打撃でさえも兵器並の攻撃力と桁外れの防御力を誇り、研究者でさえも何が起きている能力なのか解明できないでいる。

 

「首を落とすつもりだったが......まあいい」

 

マダラの身体に四つ目の黒い尾が出現しており、万華鏡写輪眼から輪廻眼へと昇華して爆発のエネルギーを吸収して高台へと飛び移ると印を結び背部で繋がる二人のスサノオを出現させると学園都市が一層暗闇になり、異変に気付いた麦野達が見上げると上空数キロ先から視界全てを覆う程の巨大な隕石が落下を始めていた。

 

「う、嘘でしょ!?」

「隕石を超落とす能力なんて」

「規格外」

「早くこの場から逃げろぉぉー!!」


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