とある科学の傀儡師(エクスマキナ)   作:平井純諍

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この場合はフレ•ンダ?

遅くなって申し訳ない


第98話 父

人の死って何だろうか?

身体を切られた時?

呼吸が止まった時?

心臓が止まった時?

脳が破壊された時?

 

その大部分の禁忌を犯しながらもサソリは自らの歩みを止めずに遥かなる頂きを目指して突き進んでいた。

『父と母に逢いたい』から『永遠なる芸術』へと昇華した夢は生物学的な死を超越し、哲学的な領域へと知らずに足を踏み入れていた。

 

人間は皆死ぬ

ソクラテスは人間

よってソクラテスは死ぬ

 

センター試験にも出されるような至極当たり前の三段論法だ。

皆死ぬ

ソクラテスだろうがアインシュタインだろうがこの理りから外れなく死ぬ。

常識がそれだった。

死なない人間が居るのなんで知らない。

考えたくない。

文明やメカニズムの立ち位置が崩壊してしまう例外は例外として処理し無理矢理こじ付けをして納得させる。

たった一つの例外に対してうってつけの言葉を並べるなら『ノイズ』や『諸説、例外あり』で済ませて終了だ。

 

だが、歴史はその一部の例外者によって撹拌され発展を遂げてきた。

マンモスには勝てないと考えた人々に武器を与え、獲物として狩れるまでになった。

 

祈りや呪いでしか治せないとされた病気に対して特効薬を生み出して根治させる。

 

人は空を飛べないからの飛行機開発。

 

 

不可能からの脱却、科学の発達してきたのはいつだって常識を疑い、破る事によって成されてきた。

ここで最初の疑問に戻ろう。

『人の死とは何だろう?』

複雑雑多になったならゆっくりと前提を疑えば良い。タバコをふかし、コーヒーを飲みながらゆるりと......

 

******

 

「生命反応がない......?」

白ゼツの爆発から生徒を庇った木山が入院している病室へやって来た初春が渡された資料に目を通しながら二人揃って絶句した。

「そうみたいね。死んでいるから物理攻撃や特殊攻撃は一切効かないらしいわ」

パイプイスに斜めに座りながらマーブルチョコレートを噛み砕きながらテレスティーナが淡々と説明をしていくが正直イライラが加味されて初春の頭ではSFのような絵空事にしか聞こえない。

 

「これは何処からの情報だ?」

痛々しく包帯を巻いた木山が顔色悪くしながらも資料の一行一行を指で追いながら理解しようとするが前提が崩れた科学なんぞ今までの経験と学問で学んだ科学では太刀打ちすら出来ずにベッドに横になった。

 

「とあるサイトからかしらね」

「......これだけの研究となると玉ねぎ(注)が関係しているか?」

注)普通の検索では引っかからないサイトの事を揶揄した言葉。

危険な情報が多数あり、閲覧する為には特殊なソフトを使わなければならない。

 

「そうね」

「俄かに信じがたいな」

「信じられないって言っても現にこうして暴れているからね。それにここでの常識を簡単に壊すのがあの世界だからね」

 

いちいち論文の最初の定義に『人は死ぬ事とする』と書かれないのが当たり前の世界に不死身となれば定義から何かから全てひっくり返ってしまう。

そして理解出来ないから立ち止まってしまうのも科学者の性だが、そんな暇はおそらくない。

不死身の戦士は待たずに殺戮を犯す。

「ただ少し気になる事があるんだけどね......」

「気になる?」

「あのお方の拡散力場が計測出来ていないのよ」

「っ!?」

「それって......まさか」

不意に蛍光灯が一瞬だけカチカチと点滅を繰り返すと赤い髪の成人男性の黒のローブを羽織った人物があたかもずっと居たかのように佇んでいた。

「「!!?」」

距離を取る三人だが、男性は内木のような腕を持ち上げて静かに。

 

タスケテホシ......イ

君達ノ力デ息子ヲ

 

******

 

路地裏でボロボロになっていたサソリを保護したがその正体はサソリに化けていた弟子のフウエイであった。

彼女は亡き師からの命令を忠実に行い、ゼツ達と戦闘を繰り広げていたがミサカネットワークの強制起動により意識が消失し、術が解けて幼子の姿で倒れてしまう。

「!?フウエイちゃん!」

倒れたフウエイに心配そうに駆け寄る婚后が抱き抱えるが関節が自由にジャラジャラと音を上げて揺れており人体の構造とは違う異形な光景に近い。

「ど、どうなってやがる」

状況が掴めない垣根は幼い幼女の顔を見下ろしているが、いきなり微睡んだ片目だけが開きだして全開の万華鏡写輪眼で彼の眼を捕らえた。

 

《従エ......オレニ従エ》

「!?」

気がつくと垣根は洞窟の中で石で出来た棺桶に入れられていた。

動かそうともがくが石棺はビクともせずに彼の表情を変えるだけに終始する。

能力を解放しようとするが身体から力が抜けるような脱力感に襲われた。

 

そこにメスを持った赤い髪の少年が出現し、迷いなく正中線に沿って切り裂いた。

「!?がっ!ギャアアアア!!?」

麻酔無しで肉体を切られる痛みは想像を遥かに超える燃え滾るような傷から臓器が取り出されていく。

 

オレのコマとして使ってやる

時間が無いからこのままお前を『人傀儡』にしてやるよ......一瞬の24時間でな

 

垣根の耳元で囁くと大量のメスが一斉に用意されて赤髪の指の動きに合わせて向かいだした。

「!!?」

 

 

フウエイの眼はまんじりともせずに睨み付けたままだが、垣根は冷や汗を流しながら片膝をついていた。

確かに24時間で人形にされた......だが腕がある......目玉をくり抜かれた痛みもある。

震えが止まらない垣根は鮮明に残る痛みの記憶に混乱しながらも呼吸を整えて立ち上がる。

「はあはあ............マジかよ......この俺が......ビビっただと」

「??」

婚后の腕に抱かれたフウエイは無茶苦茶に震えだして暴れだした。

「きゃ!」

婚后が耐えきれずに落とすと頭を揺らしながら見えない糸に操られるように路地裏を両手で突き刺しながら這い上がると片目の写輪眼でマダラを見つけるとパカッと口を開けて睨みつける。

 

人間ハ死体ニ

死体ハ人形ニ......止メル

 

そう呟くとフウエイの中で流れているサソリのチャクラが強く反応し、カクカクと動き出した。

焦点が合っていない写輪眼はまるで軸が固定されていない球体のように動くたびに四方八方に瞼部分の中で転がっていた。

 

******

 

学園都市の闇の中から伸びる四つの黒い尾が燃え盛る焔のように縦に揺れると地面に叩きつけた。

ビルは傾き、隕石の落下の影が濃くなる。マダラは腕に尾から身体深部に向けて染みるような疼痛を感じて、神経節が繋がるような痛みが走る。

 

「そろそろか......丁度良い」

真っ赤に光る目はまるで獣のような姿となり静かに破壊の邪魔をする輩を消し去りに尾をしならせて一気に移動をした。

 

隕石が落下し窪んだ影を肌で感じながら削板は落下中心地点にやってくる腕を構えて腕と足に力を込める。一撃で粉砕してしまえば岩石は割れて破片が散らばり被害は甚大となる。

選択するのは岩石そのまま受け止めて投げ返す事だった。

 

「根性ー!全部受け止めてやるよ!!」

飛び上がり頭突きをしながら落下してくる隕石を双肩で受け止めてスピードを押し殺す。

「はぁぁぁぁぁー!!」

感じた事のない重量感にまるで大陸を相手にしているような視界全ての岩に気圧されながらも削板は足を空中で蹴り上げて堪える。

 

「無駄な事だ」

マダラは高速移動するとたった一人で受け止めている削板目掛けてチャクラが染み込んだ具現化した爪を伸ばして斬りつけようと振り下ろすが。

「だぉらー!」

「!?」

伸ばした爪に上条の右手が触れると強制的に掻き消されて、そのまま生身の拳で殴りつけるがマダラに受け止められて手首を返されて背中から地面に叩きつけられた。

「がはっ!?!」

「??......十尾のチャクラを消しただと......」

「へへへ......ちょっとした特別性でね」

「......」

マダラは問答無用に拳を握ると上条の頭に向けて渾身の力を込めて振り下ろした。

「ちょっ!?物理攻撃はマズイって!!」

 

そこに白い髪をした青年が両腕を突き出してニタニタと笑みを浮かべて突進してきた。

「消えなカスがァ」

一方通行が殴り掛かるのを瞬時に察知したマダラは身体を翻しながら一方通行を蹴り上げようとする。

「......!?」

《反射》

ガラスに触れたような音と共に普段の人間とは違う感触にマダラは翻った方向と正反対に軸足を回転させて衝撃を相殺した。

マダラは受け止めきれずに粉々になった足首から上を見下ろすと胸の高鳴りを覚えた。

「なるほどな......体術を跳ね返すか」

塵が集まり出してマダラの足を復活させる印を結び出して広範囲の火遁の術を発動したが上条の右腕と一方通行の身体には届かずに周囲を火の海に変える。

「体術だけでなく術も跳ね返すか......厄介だな」

 

突如として現れた全ての攻撃を跳ね返す若者の対処に少しだけマダラは思案しているとその背中にメルトダウナーが命中し、よろけた。

「!!?」

「余所見するなんて随分余裕ね」

麦野が構えたまま次々とメルトダウナーを放出するがマダラは紙一重で避けると麦野の死角から尾を伸ばしてしならせると鞭のように麦野の身体目掛けて突き刺そうとする。

「死ね」

「麦野!」

隠れていたフレンダが走り出して麦野にタックルをすると振り降ろされた鋭い尾がフレンダの背中に刺さり、血が飛び散った。

「ねっ.....,」

「ん!?馬鹿な奴だ」

「ふ、フレンダぁぁぁぁぁ!」

フレンダの脇ではニヤリと感触を味わうマダラがまだべったりと血が付着したチャクラの爪を眺めると地面から5つ目の尾が飛び出てきて穢土転生独特の黒目が少しずつ白くなっていく。

更にマダラのチャクラが凶悪さを増していく中でマダラの動いていないはずの心臓が少しずつ動き出している事に気付くものは誰もいない。

 

******

 

意識不明から快復した白井は病院着から静かに常盤台の制服へと着替えて、風紀委員会の腕章を身に付けた。

これが自ら課した事だ。学園都市の治安を守る為にするべき事は決まっている。

明らかに非常事態のはずなのに妙に落ち着いている自分が不気味で体温が通常よりも高くなっている。

 

意識を失う前よりもざっくり言ってしまえば調子が良かった。

充分な休息と栄養管理が行き届いた食事、個人差と考えれば偶然に良い結果になったと判断される。

文献に乗るのは多数決の総意でしかない。

あとは利権が絡んだ場合も封殺されるが現在、大規模なレベルアッパーで快復した患者は多数いるがまとも歩行が即座に可能だったのは白井だけだった。

 

現在進行系での自分自身に起きた例外的な処置に困惑しながらも行かなければならない場所へと向かわなければならないという使命感が彼女を戦場へと駆り立てる。

人形にしか心を開かない弟分であり、頼りになる兄貴分......そして、ピンチに駆けつけてくれるヒーロー像と重なる想い人。

『サソリ』を助ける為に。

 

「病院を抜け出すのは躊躇いますわね」

窓を開けて駐車場の灯りに照らされた着地地点の座標演算を終えると一呼吸置いて重心を前のめりにする。

「聞けばわたくしの姿でサソリは何回か抜け出したみたいですの......だったらわたくしもですわ」

些細な事で同じ経験をしていると思うとむず痒い感覚になる。

 

すると背後に何者かの気配を感じて振り返るが見慣れた病室のカーテンが風で揺れているだけだった。

「!??」

何か背中を舐められているような悪寒に白井は背中を掻くように先ほど感じた嫌な調子を探していると息を少しだけ切らした初春が病室に転びながら入ってきた。

「はぁはぁ。白井さん!」

「初春?......どうしましたの?病院で走るのは良くありませんのよ」

「そ、それがサ......のお.....さんが」

息遣いだけが妙に激しく白井の耳に聞こえて、肝心の箇所が聴き取りにくかった。

「落ち着きなさいですわ。おっさんくらいしか補完できませんわよ」

窓を閉めて耳を軽めに掻くと本調子ではないように装って初春を落ち着かせる。

「そ、それが!サソリさんのお父さんが居るんですよ!浮遊しています。なんか人形みたいです!」

「.......はっ?(浮遊??人形??)」

 

突然現れたサソリの父と名乗る人形に困惑する中、現状理解とまさかのお父様との御対面に頭が追い付かずショートした。

偽物?

いや、でも本物だとしたら失礼な態度が取れませんし

ってそんな事をしている場合でもないし風紀委員の職務があってすぐにでも動かなければ......プスプス

 

「し、白井さん?」

「(とりあえずサソリを)婿に貰いますわよ!」

「お、落ち着いてください!」

 

ゼツとの戦いのはずがまさかの仁義なき御対面プラス御挨拶チャンスに白井は混乱したまま敬礼をして病室から出ていく。

さてさて現れた『父』は何を語るのか?

 

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