問題児たちが異世界から来るそうですよ? 出来損ないの陰陽師の異世界録   作:カオス隊員

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第三章

 

俺の言葉にまた全員が驚いた表情を浮かべる。先ほどと違うのはガルドが感心したように、ジンは顔が蒼白になっていくってところだ。

 

 

「先ほどの私の監視を見破ったことといい、貴方は観察眼にとても優れていらっしゃる。将来、必ず『ギフトゲーム』で大活躍出来るプレイヤーとなるでしょう」

 

 

「お世辞なんかいらん。それでどっちが正解なんだ?俺は後者だと睨んでいるんだが」

 

 

「ちょ、ちょっと待ちなさい!龍騎!いつ、ジン君のコミュニティの状況に気付いていたの!?」

 

 

俺の言葉に慌てて飛鳥が俺に詰め寄ってくる。耀も声にはだしていないが気になるようでコクコクと頷いている。

 

 

「私も少々気になります。良ければ御説明をお願いしたいのですが?」

 

 

「簡単な話だ。まず俺達は組織を強化するために召喚された。そう考えれば黒ウサギの今までの行動や、俺や逆廻がコミュニティに入るのを拒否した時に本気で怒っていたことも辻褄が合う」

 

 

「………そうかな?それだけじゃ」

 

 

耀が不思議そうに首を傾げる。確かに辻褄が合うが断言出来る事は出来ないと思っているのだろう。

俺は耀の言葉に頷き、親指と小指を曲げ“3”を耀の目の前に突き出す。

 

「確かにこれだけでは俺も確信までにはいかなかっただろうな。だが、ある三つの要素が疑念から確信に変わったんだ」

 

 

「ある三つの要素?」

 

 

「あぁ。まず一つ目は、黒ウサギが俺達に自分が所属しているコミュニティを紹介しなかった点だ。これから同士になるというのに後で説明するとしてもまったく話をしないのは明らかにおかしい。ということは、俺達にコミュニティの状況を知られると不味いってことになる」

 

 

「………そういえばそうよね。此処に来るまで数時間以上かかったのにコミュニティについてのことなんて世間話程度すらでていなかったわ」

 

 

飛鳥も改めて考えると思いあたる節があったようだ。俺は飛鳥に頷きながら説明を再開する。

 

 

「そういうことだ。二つ目にガルドが言っていた“名無し”という名称。ジンは“ノーネーム”と訂正していたが、コミュニティの話を聞く限り、“ノーネーム”という名は蔑称であることが分かる。その上、“過去の栄華に縋る亡霊”とも言っていたことから弱小チームであると確信し、ギフトゲームに敗れて衰退した可能性が浮かび上がってきた」

 

 

「………確かにそれだと辻褄が合う」

 

 

耀もうんうんと頷きながら俺の推測に納得していく。その小動物のような仕草を見てちょっと可愛いと思いながらも俺は最後のトドメとばかりにジンを指差した。

 

 

「最後の三つ目。それは―――ジン、お前自身だ」

 

 

「ぼ、僕がですか!?」

 

 

まさか自分のせいでバレてしまったと思ってもみなかったのか凄く驚愕している。そんなジンを無視して俺は畳み掛けるように言葉を放つ。

 

 

「そうだ。俺達と会った時、自分のことをリーダーと名乗った。何故黒ウサギがリーダーではなくお前なんだ?知識はそれなりにあるみたいだが、ただの子供であるお前がリーダーであることはおかしすぎる。黒ウサギが何かしらの理由でリーダーになれないとしても代わりなら誰でもなれるはず。それも出来ないことから、コミュニティは壊滅寸前の状態。しかも、『ギフトゲーム』に参加できるのはお前と黒ウサギだけ。他のメンバーはおそらく参加出来ない女子供のみ―――違うか?」

 

 

俺の推測が終わると、静寂に包まれる。しばし静寂が続いた後、その静寂を壊したのはガルドによる拍手だった。

 

 

「いやはや、少ない情報からここまで答えられるとは驚きました」

 

 

「その言い方だと俺の推測は当たっていたみたいだな」

 

 

「えぇ。貴方の推測は全て事実であります。“ノーネーム”とは“名”が無いその他大勢のことを指します。ギフトゲームに敗れたジンのコミュニティは“名”と“旗印”に続いて、中核を成す仲間達は一人も残っていないんですよ。今、残っているメンバーはジンと黒ウサギ以外は十歳以下の子供達ばかりで、もう崩壊寸前のコミュニティなんです。………しかし、貴方達の所属するコミュニティは―――数年前まで、この東区画最大手のコミュニティでした」

 

 

「へぇー、そこまで実力があったのか」

 

 

「とはいえリーダーは別人でしたけどね。ジン君とは比べようもない優秀な男だったそうですよ。ギフトゲームにおける戦績で人類最高の記録を持っていた、東区画最強のコミュニティだったそうですから」

 

 

ガルドが一転してつまらなそうな口調で語る。多分、現在この付近で最大手のコミュニティを保持しているこいつにとって心底どうでもいい話だからだろう。

 

 

「彼は東西南北に分かれたこの箱庭で、東のほかに南北の主軸コミュニティとも親交が深かった。いやホント、私はジンの事は毛嫌いしてますがね。これはマジすげえんですよ。南区画の幻獣王格や北区画の悪鬼羅刹が認め、箱庭上層に食い込むコミュニティだったというのは嫉妬を通り越して尊敬してやってもいいぐらいには凄いのです。―――まあ、先代は、ですが」

 

 

「………」

 

 

「“人間”の立ち上げたコミュニティではまさに快挙ともいえる数々の栄華を築いたコミュニティはしかし!………彼らは敵に回してはいけないモノに目を付けられた。そして彼らはギフトゲームに参加させられ、たった一夜で滅ぼされた。『ギフトゲーム』が支配するこの箱庭の世界、最悪の天災によって」

 

 

「「天災?」」

 

 

飛鳥と耀は同時に聞き返した。まぁ、ただの天災が巨大な組織を滅ぼしたとはあまりにも不自然だよな。

 

 

「此れは比喩にあらず、ですよレディ達。彼らは箱庭で唯一最大にして最悪の天災―――俗に

“魔王”と呼ばれる者達です」

 

 

「魔王………ね。それはまた大層な名だこと」

 

 

「魔王は“主催者権限(ホストマスター)”という箱庭における特権階級を持つ修羅神仏で、彼らにギフトゲームを挑まれたら最後、誰も断ることができない。ジンのコミュニティは“主催者権限”を持つ魔王のゲームに強制参加させられ、コミュニティとして活動していく為に必要な全てを奪われてしまったのですよ」

 

 

「なるほどね。大体理解したわ。つまり“魔王”というのはこの世界で特権階級を振り回す神様etc.を指し、ジン君のコミュニティは彼らの玩具として潰された。そういうこと?」

 

 

「そうですレディ。神仏というのは古来、生意気な人間が大好きですから。愛しすぎた挙句に使い物にならなくなることはよくあることなんですよ」

 

 

ガルドはそう言いながらカフェテラスの椅子の上で大きく手を広げて皮肉そうに笑う。

 

 

「名も、旗印も、主力陣の全てを失い、残ったのは膨大な移住区画の土地だけ。もしもこの時に新たなコミュニティを結成していたなら、前コミュニティは有終の美を飾っていたんでしょうがね。今や名誉も誇りも失墜した名も無きコミュニティの一つでしかありません」

 

 

「………」

 

 

「そもそも考えてもみてくださいよ。名乗ることを禁じられたコミュニティに、一体どんな活動ができます?商売ですか?主催者ですか?しかし名も無き組織など信用されません。ではギフトゲームの参加者ですか?ええ、それならば可能でしょう。では優秀なギフトを持つ人材が、名誉も誇りも失墜させたコミュニティに集まるでしょうか?」

 

 

「無いな。普通、誰も加入したいとは思わないだろうな」

 

 

「そう。彼は出来もしない夢を掲げて過去の栄華に縋る恥知らずな亡霊でしかないのですよ」

 

 

品の無い、豪快な笑顔でジンとコミュニティをあざ笑うガルド。ジンは顔を真っ赤にして必死に耐えていることが分かる。反論したいが事実であるため出来ないのだろう。

 

 

「もっと言えばですね。彼はコミュニティのリーダーとは名ばかりで殆どリーダーとして活動はしていません。コミュニティの再建を掲げていますが、その実態は黒ウサギにコミュニティを支えられてもらうだけの寄生虫」

 

 

「………っ」

 

 

「私は本当に黒ウサギの彼女が不憫でなりません。ウサギと言えば“箱庭の貴族”と呼ばれるほど強力なギフトの数々を持ち、何処のコミュニティでも破格の待遇で愛でられるはず。コミュニティにとってウサギを所持しているというのはそれだけで大きな“箔”が付く。なのに彼女は毎日毎日糞ガキ共の為に身を粉にして走り回り、僅かな路銀で弱小コミュニティをやり繰りしている」

 

 

「………そう。事情は分かったわ。それでガルドさんは、どうして私達にそんな話を丁寧に話してくれるのかしら?」

 

 

飛鳥は含みのある声で問い、ガルドはそれを察して笑う。

 

 

「単刀直入に言います。もしよろしければ黒ウサギ共々、私のコミュニティに来ませんか?」

 

 

「な、何を言い出すんですガルド=ガスパー!?」

 

 

ガルドの勧誘にジンは怒りのあまりテーブルを叩いて抗議するが、ガルドは獰猛な瞳でジンを睨み返す。

 

 

「黙れ、ジン=ラッセル。そもそもテメェが名と旗印を新しく改めていれば、最低限の人材はコミュニティに残っていたはずだろうが。それを貴様の我が儘でコミュニティを追い込んでおきながら、どの顔で異世界から人材を呼び出した」

 

 

「そ………それは」

 

 

「何も知らない相手なら騙しとおせるとでも思ったのか?その結果、黒ウサギと同じ苦労を背負わせるってんなら………こっちも箱庭の住人として通さなきゃならねえ仁義があるぜ」

 

 

先ほどと同じ獣の瞳に似た鋭利な輝きに貫かれて、僅かに怯み顔を俯かせるジン。藁をも縋る思いで俺達を騙してでもコミュニティに入れたかったんだろう。話を聞く限り、ジンのコミュニティが崖っぷちな状況みたいだしな。

 

 

「………で、どうですかジェントルマンにレディ達。返事はすぐとは言いません。コミュニティに属さずとも貴女達には箱庭で三十日間の自由が約束されています。一度、自分達を呼び出したコミュニティと私達“フォレス・ガロ”のコミュニティを視察し、十分に検討してから―――」

 

 

「結構よ。だってジン君のコミュニティで間に合っているもの」

 

 

は?とジンとガルドは飛鳥の顔を窺う。だが、飛鳥自身は何事もなかったように耀に笑顔で話しかける。

 

 

「春日部さんは今の話をどう思う?」

 

 

「別に、どっちでも。私はこの世界に友達を作りに来ただけだもの」

 

 

「あら意外。じゃあ私が友達一号に立候補していいかしら?私達って正反対だけど、意外に仲良くやっていけそうな気がするの」

 

 

「うわっ、抜け駆けだ!じゃあ、俺は友達二号に立候補してもいいか?」

 

 

飛鳥は自分の髪を触りながら、俺は手を上げながら耀に問う。少し恥ずかしがっている飛鳥をみると、あまりこのようなやり取りをしたことないようだ。耀は無言でしばし考えた後、小さく笑って頷いてくれた。

 

 

「………うん。飛鳥と龍騎は私の知る人達とちょっと違うから大丈夫かも」

 

 

「よし!これから友達としてよろしくな、耀、飛鳥」

 

 

「………うん」

 

 

「えぇ。よろしくね」

 

 

早速、箱庭に来た甲斐があったな。俺も職業柄からそんなに友達はいなかったんだよなぁ。二人共美少女だし、これからの箱庭生活が楽しみだ♪

 

 

俺達が盛り上がっている中、空気を読まずガルドが顔をひきつらせ、取り繕うように咳払いをして問いだしてきた。

 

 

「失礼ですが、理由を教えてもらっても?」

 

 

「だから、間に合ってるのよ。春日部さんは聞いての通り友達を作りに来ただけだから、ジン君でもガルドさんでもどちらでも構わない。そうよね?」

 

 

「うん」

 

 

「次に龍騎君は―――」

 

 

「明らかに俺達をコミュニティに入れようとする魂胆が気に食わねえ。ジンのコミュニティを悪印象ばっかりの状況を、自分のコミュニティは好印象を与えようとしてるのが見え見えなんだよ。その上に黒ウサギが不憫?勝手に決めつけんな自称虎紳士(笑)。嫌だったらとうの昔にジンのコミュニティから出て行くだろ。どうせお前も黒ウサギの“箔”が欲しいだけだろうが。それに仁義だぁ?さっきから人のコミュニティを乏してる奴がよくそんなことが言えるな。極めつけには、交渉術も下手くそで挑発も躱せないほどの短気、人を見下し礼儀もなっていないと言い出したらキリがないほど欠点を持っており、怪しい行動をしているリーダーのコミュニティなんか誰が行きたがるか」

 

 

「そして私、久遠飛鳥は―――裕福だった家も、約束された将来も、おおよそ人が望みうる人生の全てを支払って、この箱庭に来たのよ。それを小さな小さな一地域を支配しているだけの組織の末端として迎えてやる、などと慇懃無礼に言われて魅力的に感じるとでも思ったのかしら。だとしたら自身の身の丈を知った上で出直して欲しいものね、このエセ虎紳士」

 

 

俺と飛鳥はピシャリと言い切る。ガルドは俺達の物言いに対して怒りで体を震わせている。

 

 

「お………お言葉ですがレデ」

 

 

黙りなさい(・・・・・)

 

 

何か言い返そうとしたガルドの口が不自然な形で勢いよく閉じられた。へぇ………飛鳥の力は支配系統の力か。しかも、ガルドの様子をみるとかなり強力みたいだな。混乱したように口を開閉させようともがいているが、全く開く様子がないし。

 

 

「………!?………!?」

 

 

「私の話はまだ終わっていないわ。貴方からはまだまだ聞きださなければいけないことがあるのだもの。貴方はそこに座って(・・・・・・)私の質問に応え続けなさい(・・・・・・・・・・・・)

 

 

また飛鳥の言葉に力が宿り、椅子に罅が入るほどの勢いで座り込んだ。その様子に驚いた先ほどの猫耳店員が急いでこっちに駆け寄ってきた。

 

 

「お、お客さん!当店で揉め事は控えてくださ―――」

 

 

「ちょうどいいわ。猫の店員さんも第三者として聞いていって欲しいの。多分、面白いことが聞けるはずよ」

 

 

首を傾げる猫耳店員を制して、飛鳥は言葉を続ける。

 

 

「貴方はこの地域のコミュニティに“両者合意”で勝負を挑み、そして勝利したと言っていたわ。だけど、私が聞いたギフトゲームの内容は少し違うの。コミュニティのゲームとは“主催者”とそれに挑戦する者が様々なチップを賭けて行う物のはず。………ねえ、ジン君。コミュニティそのものをチップにゲームをすることは、そうそうあることなの?」

 

 

確かに生きるためにコミュニティには必ず所属しなければならないと黒ウサギも言っていた。生命線となるコミュニティを簡単に賭けられるものではないはずだ。なら、ガルドが何かしら小細工をして強制的にゲームに参加させたとしか考えれない。

 

 

「や、やむを得ない状況なら稀に。しかし、これはコミュニティの存続を賭けたかなりのレアケースです」

 

 

聞いていた猫耳店員も同意するように頷いている。

 

 

「そうよね。訪れたばかりの私達でさえそれぐらい分かるもの。そのコミュニティ同士の戦いに強制力を持つからこそ“主催者権限”を持つ者は魔王として恐れられているはず。その特権を持たない貴方がどうして強制的にコミュニティを賭けあうような大勝負を続けられることができたのかしら。教えてくださる(・・・・・・・)?」

 

 

ガルドは悲鳴を上げそうな顔になるが、口は意に反して言葉を紡ぎだす。

 

 

「き、強制させる方法は様々だ。一番簡単なのは、相手のコミュニティの女子供を攫って脅迫すること。これに動じない相手は後回しにして、徐々に他のコミュニティを取り込んだ後、ゲームに乗らざるを得ない状況に圧迫していった」

 

 

「まあ、そんなところでしょう。貴方のような小物らしい堅実な手です。けどそんな違法で吸収した組織が貴方の下で従順に働いてくれるのかしら?」

 

 

「各コミュニティから、数人ずつ子供を人質に取ってある」

 

 

それを聞いた飛鳥の取り巻く雰囲気には嫌悪感が滲み出ており、コミュニティには無関心な耀も不快そうに眼を細める。

 

 

………どうやら思った通りの外道だな。そうなると、こいつの外道っぷりから推測するとその子供達はもう―――。

 

 

「………そう。ますます外道ね。それで、その子供達は何処に幽閉されているの?」

 

 

「もう殺した」

 

 

その場の空気が瞬時に凍りつく。

 

 

………ちっ。なんでこういう時まで俺の推測が当たるかね………。真相が分かった以上、こんな外道をさっさと倒したいところだが、こいつに絶望を与える良い案が浮かんだので今は我慢するとしよう。

 

 

「初めてガキ共を連れてきた日、泣き声が頭にきて思わず殺した。それ以降は自重しようと思っていたが、父が恋しい母が愛しいと泣くのでやっぱりイライラして殺した。それ以降、連れてきたガキは全部まとめてその日のうちに始末することにした。けど身内のコミュニティの人間を殺せば組織に亀裂が入る。始末したガキの遺体は証拠が残らないように腹心の部下が食」

 

 

 

 

黙れ(・・)

 

 

 

 

またしてもガルドの口が先ほど以上の勢いで閉ざされた。飛鳥の声は先ほど以上に凄みを増し、魂ごと鷲掴むような勢いでガルドを締め付ける。飛鳥だけではなくここにいる全員が鋭い視線でガルドを睨みつけている。

 

 

「素晴らしいわ。ここまで絵に描いたような外道とはそうそう出会えなくてよ。流石は人外魔境の箱庭の世界といったところかしら………ねえジン君?」

 

 

「彼のような悪党は箱庭でもそうそういません」

 

 

ジンは飛鳥の冷ややかな視線に慌てて否定する。

 

 

「そう?それはそれで残念。―――ところで、今の証言で箱庭の法がこの外道を裁くことはできるかしら?」

 

 

「厳しいです。吸収したコミュニティから人質をとったり、身内の仲間を殺すのは勿論違法ですが………裁かれるまでに彼が箱庭の外に逃げ出してしまえば、それまでです」

 

 

それはある意味裁きともいえるだろう。リーダーのガルドがコミュニティから去れば、“フォレス・ガロ”は瓦解するのは確実であろう。………だが、その程度で許すほど俺は甘くない。

 

 

「そう。なら仕方がないわ」

 

 

飛鳥が苛立ちしげに指を鳴らす。すると、ガルドを縛り付けていた力が霧散していくのを感じたので飛鳥は拘束を解いたのだろう。体の自由が戻ったガルドは怒り狂い、カフェテラスのテーブルを勢いよく砕き、

 

 

「こ………この小娘がァァァァァァァァ!!」

 

 

雄叫びを上げ、ガルドの体が激変していく。巨躯を包むタキシードが膨張する後背筋で弾け飛び、体毛が変色していき黒と黄色のストライプ模様が浮かび上がる。

 

 

「テメェ、どういうつもりか知らねえが………俺の上に誰が居るか分かってんだろうなァ!?箱庭第六六六外門を守る魔王が俺の後見人だぞ!!俺に喧嘩を売るってことはその魔王にも喧嘩を売るってことだ!その意味が」

 

 

黙りなさい(・・・・・)。私の話はまだ終わっていないわ」

 

 

また勢いよく口を閉ざし黙る。だが、ガルドの怒りはそれだけでは止まらなく、丸太のような太い豪腕を振り上げて飛鳥に襲いかかる。

 

 

―――さてと、ここは俺が止めるとしますか。俺の思いついた案は、第一条件として圧倒的な力を見せつける必要があるからな。そう考えた俺は箱庭に召喚される前に影と戦った時とは違う淡い翠緑色の霊力で右腕を包み込ませる。地を蹴り上げガルドの頭上まで跳躍し、右腕を頭部にぶち込んだ。

 

 

「ッガ!?」

 

 

頭部からの強い一撃にガルドはテーブルごと地面に叩きつけられ、半壊していたテーブルがさらに砕け散る。その後空中で一回転、そのまま耀の隣に着地する。今の一連の流れにジンと猫耳店員は驚愕しているが、耀は落ち着いた表情をしており飛鳥は楽しそうに笑っていた。

 

 

「やるわね。まさか一撃だけで鎮圧するとは思わなかったわ」

 

 

「まあな。こんな雑魚に遅れを取るわけにいかないしな」

 

 

「そう。でも、またガルドさんが暴れるかもしれないのに拘束はしなくてもいいの?」

 

 

「大丈夫だ。既に先手は打っている。今のこいつは意識は保っているが、指すら動かせない状態だからな」

 

 

「なら、問題はないわね」

 

 

視線をガルドに向けると、必死に体を動かそうと奮闘しているのが表情で分かった。だが、今の一撃は相手の体を麻痺させる効果なので手加減(・・・)したとはいえ耐性がない奴には絶大な効果を発揮するのだ。ガルドはそれをまともに食らったので、暫くは動けないだろう。

 

 

「さて、ガルドさん。私は貴方の上に誰が居ようと気にしません。それはきっとジン君も同じでしょう。だって彼の最終目的は、コミュニティを潰した“打倒魔王”だもの」

 

 

飛鳥のその言葉にジンはさっきまで怖気ついていた眼が覚悟を秘めた眼に変わった。

 

 

「………はい。僕達の最終目標は、魔王を倒して僕らの誇りと仲間達を取り戻すこと。今さらそんな脅しには屈しません」

 

 

「そういうことだ。つまりお前には破滅以外に道は残されていないってことだ」

 

 

「く………くそ………!」

 

 

身動きができず地を伏せながら悔しそうな表情をするガルドを見て飛鳥は機嫌を少し取り戻し、足先でガルドの顎を持ち上げると悪戯っぽい笑顔で話を切り出した。

 

 

「だけどね。私は貴方のコミュニティが瓦解する程度の事では満足できないの。貴方のような外道はズタボロになって己の罪を後悔しながら罰せられるべきよ。―――そこで皆に提案なのだけれど」

 

 

………どうやら俺と飛鳥の考えは同じようだな。飛鳥の言葉に頷いていたジンと猫耳店員は顔を見合わせて首を傾げ、耀は相変わらず無表情、俺は満面の笑みを浮かべる。飛鳥は足先を離し、今度は女性らしい細長い綺麗な指先でガルドの顎を掴み、

 

 

「私達と『ギフトゲーム』をしましょう。貴方の“フォレス・ガロ”存続と“ノーネーム”の誇りと魂を賭けて、ね」

 

 

 

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