魔法少女リリカルなのは〜第二の人生を受けた者〜 作:ヤンデレ好きの変態
目を覚ますと、そこはどこかの病室だった。
大部屋ではなく、個室だ。
ベッドと椅子と机がある。
「……なんで……」
そこで、意識が消える前の出来事を思い出した。
「そうだ……アリシア……フェイト」
ベッドから降りようとすると、力が入らず床に落ちた。
頭から落ちて、一瞬だけ脳震盪が起きたが気にしてられない。
地面を這いながら、個室を出て行く。
「どこだ……あいつ等がいる所は」
壁の方に子供用の手すりがあったので、そこに手をかけ何とか立ち上がる。
「はぁ……はぁ……カードリッジシステムの使い過ぎだわこれ」
ゆっくりと足を進める。
寝る前の俺と比べたら、兎と亀の程だろう。
別れ角についたので、取り敢えずエレベーターがあるところに進む。
「マジかよ……もう意識が……」
負担かけ過ぎだろカードリッジシステム。
これでも結構負担を消せるようにしたのに。
必死の思いでエレベーターに着くと、俺はボタンを押して待つ。
「……」
喋る気力すらない。
あとなんかどこからか悲鳴が聞こえた。
それと同時にエレベーターが来たので、中に入り一階に向かう。
そこで、ここが五階だと分かった。
「ふぅ〜……」
壁にもたれ掛かり、一階に着くまで楽な体制へと変える。
一階に行けば、アリシアがどこにいるのかとか、プレシアがどこにいるのかが分かるだろう。
一階に着くと、院内はかなり慌てていた。
何かあったのだろうか。
「っ! やっぱ辛いな」
壁、ソファ、カウンターと体の体重を預けて進むと、受付の所までやって来た。
「あの、すみません……」
脚は産まれたばかりの鹿みたいに、かなり震えていた。
声もかなりの覇気がない。
「えっと……お友だちのお見舞いかな?」
「ええ……それで今日が初めてのお見舞いなので部屋番号を知りたくて」
「それもそうね……お友だちのお名前は?」
「『アリシアテスタロッサ』です」
「ちょっと待ってね……あ、見付けた。部屋番号は……」
受付の人はパソコンか何かに名前を記入し、部屋番号を教えてくれた。
「ありがとうございます」
重い体を引きずりながら、教えてもらった場所に向かった。
☆☆☆☆
──のはずなんだが、
「なんで俺の部屋に……」
「当たり前です! なんでそんな無茶をしたの!」
ナースさんが俺のことを拉致り、(恐らくだが)自分がいた部屋に連れ戻された。
「無茶の一つ、今更なんですよ……あいつの所に行って、声を聞かないと……」
その時、どこかが切れたような音が鳴った。
「あっ……」
刹那、とてつもない激痛に襲われる。
「ああああああああ!!!」
今までに出したことのない声量が病室に響く。
それは自分を苦しめる鎖のように。
「ああああ!!! うぁぁぁぁぁ!!!」
痛みは治まらない。
それどころか、少しずつ大きくなっていく。
そんな光景を見たナースは、
「ど、ドクター!」
この場から離れ、医師を呼びに行った。
痛みは治まらず、そして俺は、
「ごはっ! ぐふっ! ごほっ!」
血を吐き出していく。
シーツに掛かり、ほんの少し経てばシーツは赤黒くなった。
ダメだこれは。
下手に無茶するから、とうとう体が壊れたか。
「こ、これは……大丈夫かい!?」
血を吐いていると、医師が俺の元に駆けつけて来た。
「今、回復魔法を……」
体が優しい光に包まれ、様態は安定していくと、また俺は、意識を離すこととなった。
☆☆☆☆
「…………」
もう一度目を開けると、フェイトが俺のことを覗き込んでいた。
「あ! 気が付いたんだ! 今、お医者さん呼んでくるかね!」
そう言うと、フェイトはどこかに言ってしまった。
腕に力を込めて、拳を天に向ける。
グーパー切り返すが、異常は感じられない。
「…………。ッ!?」
声が……出ない……!?
まさかあの吐血で、喉をやったのか……?
「おお、目を覚ましたのか」
色々と思考をしていると、さっき俺の元に駆けつけて来た医師がやって来た。
「どうだ? 何か異常はあるか?」
声が出せないことが一番の異常じゃなかろうか。
……いや、プレシア辺りに聞いたら脳に異常があるとか言われそうだ。
「……ぁ……ぇ……」
声が出せないとどうやって伝えよう。
子供が微妙に声を出すとか、ただ相手のことを恐れて縮こまってるだけにしか思えないやん。
「心配するな。私は医師だ。一つ一つ教えてくれ」
だから声が出ないから話せないんだよハゲ爺。
いやハゲてないけど。
隣にフェイトがいるので、念話を送る。
『助けてくれフェイト』
『え? どうかしたの?』
『俺、声が出なくなってるんだ。そのことを伝えてくれ』
『え!?』
フェイトの驚く顔が見れたので、声が出せなくなるのもいいかもしれない。
「あの、リュウは今、声が出せないらしく……」
「なに……? まさかあの吐血による……?」
俺と同じ考え持ってる。
つまり俺も簡単に医師になれるんじゃね?
「まあ喉は検査してから判断しよう。問題は……」
それから、俺は色々言われた。
この歳でどうやってそこまで身体にダメージを負わせることができたんだ、とか。
下手をすれば死んでいた、とか。
今の状態を言い例えるなら、身も心も完全に壊れた状態だ、とか。
取り敢えず喉について検査するからついておいで、とか。
まあもう力も入ったりするから、別に行くのかいいけど。
「ほらリュウ。私の肩を使って」
え、マジで。
フェイトに触れたい放題?
なにそれ素晴らしい。俺一生入院したいわ。
「…………………………」
口だけ動かして例を言う。
そんな俺にフェイトは、
「お礼なんて要らないよ。それより、ほら、おいで」
フェイトの肩を使い、少しでも負担を減らすために歩く。
☆☆☆☆
あれから、色々と大変だった。
検査やら書類やら色々やることがあって、フェイトに会えない日々が続き、更にはジュエルシード事件による後始末。
後始末と言っても、ただの裁判だが。
「んっ……! くぁぁ……」
病院の屋上に行き、風を感じる。
ちなみに、声は普通に出せるようになった。
屋上にはベンチがあるので、そこに腰をかけてのんびりとする。
「……平和だな」
街では車が行き交い、人々が活気に溢れていた。
「大人になったら、フェイトに告白したいなぁ……」
でもフェイト、優しいから俺に好意なんて無いだろうし。
まあいって、優しい兄? 程度だろう。
「世知辛い世の中だよ……」
「どうかしたの?」
「うぉ!?」
いきなり後ろから話しかけられて、思わずベンチから起き上がる。
そこには、先程口にしたフェイトがいた。
「あれ、どうしたんだフェイト」
「リュウに会いに来たら、リュウがいなかったから。リュウは自然とか景色とかが好きだから、ここにいるかなと思って」
「まあ間違ってないけど……」
リンカーコアも生きていて、魔法を使ってまたフェイトにピンチに駆けつけることが出来る。
「あ、そういえばフェイト」
「ん? どうかしたの?」
相手が分かったので、もう一度ベンチに座るとフェイトも隣に座る。
「いや、アリシアはどうなったのか気になってさ」
「ちゃんと生き返ったよ。リュウが頑張ってくれたから」
「俺は、ほとんど何もしてないよ。ジュエルシード集めだって、フェイトが率先してやったことだし。俺はただ、プレシアと一緒に装置を作ってただけさ」
「ううん」
フェイトが俺の手を握ってきた。
「私が頑張れたのは、リュウが隣にいてくれたからだよ。リュウが傍に居てくれたから、私は頑張れた。だからありがとう」
「……ぁ、ああ!」
笑顔でお礼を言われて、その笑顔があまりにも魅力的で見惚れてしまった。
「……俺も、フェイトが居たから、装置を完成させたんだよ」
「え? 私がいたから?」
「ああ」
本当は恥ずかしくてこんな事は言いたくないけど。
フェイトの瞳を見て、真っ直ぐに言う。
「アリシアが生き返って、プレシア達と一緒にいる未来を夢見て、そんな幸せな未来で、フェイトが笑っている。俺は、そんなフェイトの笑顔が見たくて頑張ったんだよ」
「…………」
あ、なんか顔が真っ赤になった。
どうかしたんだろうか。
「あわ……あわわ……!!」
慌てっぷりが半端ない。
取り敢えず久しぶりにフェイト成分を補給出来たので、勢い良く立ち上がる。
「さて、そろそろ戻るか」
「……うんっ」
二人仲良く、手を繋いで病室に戻った。
あとあと聞いたのだが、なぜ個室だったのか聞くと『アンタみたいな世間知らずで変態を大部屋にしたら、毎日トラブルだらけじゃない。あとお金はあったから、個室にしたのよ』と言われた。
許さんプレシア。