魔法少女リリカルなのは〜第二の人生を受けた者〜   作:ヤンデレ好きの変態

16 / 27
入院

目を覚ますと、そこはどこかの病室だった。

大部屋ではなく、個室だ。

ベッドと椅子と机がある。

 

「……なんで……」

 

そこで、意識が消える前の出来事を思い出した。

 

「そうだ……アリシア……フェイト」

 

ベッドから降りようとすると、力が入らず床に落ちた。

頭から落ちて、一瞬だけ脳震盪が起きたが気にしてられない。

地面を這いながら、個室を出て行く。

 

「どこだ……あいつ等がいる所は」

 

壁の方に子供用の手すりがあったので、そこに手をかけ何とか立ち上がる。

 

「はぁ……はぁ……カードリッジシステムの使い過ぎだわこれ」

 

ゆっくりと足を進める。

寝る前の俺と比べたら、兎と亀の程だろう。

別れ角についたので、取り敢えずエレベーターがあるところに進む。

 

「マジかよ……もう意識が……」

 

負担かけ過ぎだろカードリッジシステム。

これでも結構負担を消せるようにしたのに。

必死の思いでエレベーターに着くと、俺はボタンを押して待つ。

 

「……」

 

喋る気力すらない。

あとなんかどこからか悲鳴が聞こえた。

それと同時にエレベーターが来たので、中に入り一階に向かう。

そこで、ここが五階だと分かった。

 

「ふぅ〜……」

 

壁にもたれ掛かり、一階に着くまで楽な体制へと変える。

一階に行けば、アリシアがどこにいるのかとか、プレシアがどこにいるのかが分かるだろう。

一階に着くと、院内はかなり慌てていた。

何かあったのだろうか。

 

「っ! やっぱ辛いな」

 

壁、ソファ、カウンターと体の体重を預けて進むと、受付の所までやって来た。

 

「あの、すみません……」

 

脚は産まれたばかりの鹿みたいに、かなり震えていた。

声もかなりの覇気がない。

 

「えっと……お友だちのお見舞いかな?」

「ええ……それで今日が初めてのお見舞いなので部屋番号を知りたくて」

「それもそうね……お友だちのお名前は?」

「『アリシアテスタロッサ』です」

「ちょっと待ってね……あ、見付けた。部屋番号は……」

 

受付の人はパソコンか何かに名前を記入し、部屋番号を教えてくれた。

 

「ありがとうございます」

 

重い体を引きずりながら、教えてもらった場所に向かった。

 

☆☆☆☆

 

──のはずなんだが、

 

「なんで俺の部屋に……」

「当たり前です! なんでそんな無茶をしたの!」

 

ナースさんが俺のことを拉致り、(恐らくだが)自分がいた部屋に連れ戻された。

 

「無茶の一つ、今更なんですよ……あいつの所に行って、声を聞かないと……」

 

その時、どこかが切れたような音が鳴った。

 

「あっ……」

 

刹那、とてつもない激痛に襲われる。

 

「ああああああああ!!!」

 

今までに出したことのない声量が病室に響く。

それは自分を苦しめる鎖のように。

 

「ああああ!!! うぁぁぁぁぁ!!!」

 

痛みは治まらない。

それどころか、少しずつ大きくなっていく。

そんな光景を見たナースは、

 

「ど、ドクター!」

 

この場から離れ、医師を呼びに行った。

痛みは治まらず、そして俺は、

 

「ごはっ! ぐふっ! ごほっ!」

 

血を吐き出していく。

シーツに掛かり、ほんの少し経てばシーツは赤黒くなった。

ダメだこれは。

下手に無茶するから、とうとう体が壊れたか。

 

「こ、これは……大丈夫かい!?」

 

血を吐いていると、医師が俺の元に駆けつけて来た。

 

「今、回復魔法を……」

 

体が優しい光に包まれ、様態は安定していくと、また俺は、意識を離すこととなった。

 

☆☆☆☆

 

「…………」

 

もう一度目を開けると、フェイトが俺のことを覗き込んでいた。

 

「あ! 気が付いたんだ! 今、お医者さん呼んでくるかね!」

 

そう言うと、フェイトはどこかに言ってしまった。

腕に力を込めて、拳を天に向ける。

グーパー切り返すが、異常は感じられない。

 

「…………。ッ!?」

 

声が……出ない……!?

まさかあの吐血で、喉をやったのか……?

 

「おお、目を覚ましたのか」

 

色々と思考をしていると、さっき俺の元に駆けつけて来た医師がやって来た。

 

「どうだ? 何か異常はあるか?」

 

声が出せないことが一番の異常じゃなかろうか。

……いや、プレシア辺りに聞いたら脳に異常があるとか言われそうだ。

 

「……ぁ……ぇ……」

 

声が出せないとどうやって伝えよう。

子供が微妙に声を出すとか、ただ相手のことを恐れて縮こまってるだけにしか思えないやん。

 

「心配するな。私は医師だ。一つ一つ教えてくれ」

 

だから声が出ないから話せないんだよハゲ爺。

いやハゲてないけど。

隣にフェイトがいるので、念話を送る。

 

『助けてくれフェイト』

『え? どうかしたの?』

『俺、声が出なくなってるんだ。そのことを伝えてくれ』

『え!?』

 

フェイトの驚く顔が見れたので、声が出せなくなるのもいいかもしれない。

 

「あの、リュウは今、声が出せないらしく……」

「なに……? まさかあの吐血による……?」

 

俺と同じ考え持ってる。

つまり俺も簡単に医師になれるんじゃね?

 

「まあ喉は検査してから判断しよう。問題は……」

 

それから、俺は色々言われた。

この歳でどうやってそこまで身体にダメージを負わせることができたんだ、とか。

下手をすれば死んでいた、とか。

今の状態を言い例えるなら、身も心も完全に壊れた状態だ、とか。

取り敢えず喉について検査するからついておいで、とか。

まあもう力も入ったりするから、別に行くのかいいけど。

 

「ほらリュウ。私の肩を使って」

 

え、マジで。

フェイトに触れたい放題?

なにそれ素晴らしい。俺一生入院したいわ。

 

「…………………………」

 

口だけ動かして例を言う。

そんな俺にフェイトは、

 

「お礼なんて要らないよ。それより、ほら、おいで」

 

フェイトの肩を使い、少しでも負担を減らすために歩く。

 

☆☆☆☆

 

あれから、色々と大変だった。

検査やら書類やら色々やることがあって、フェイトに会えない日々が続き、更にはジュエルシード事件による後始末。

後始末と言っても、ただの裁判だが。

 

「んっ……! くぁぁ……」

 

病院の屋上に行き、風を感じる。

ちなみに、声は普通に出せるようになった。

屋上にはベンチがあるので、そこに腰をかけてのんびりとする。

 

「……平和だな」

 

街では車が行き交い、人々が活気に溢れていた。

 

「大人になったら、フェイトに告白したいなぁ……」

 

でもフェイト、優しいから俺に好意なんて無いだろうし。

まあいって、優しい兄? 程度だろう。

 

「世知辛い世の中だよ……」

「どうかしたの?」

「うぉ!?」

 

いきなり後ろから話しかけられて、思わずベンチから起き上がる。

そこには、先程口にしたフェイトがいた。

 

「あれ、どうしたんだフェイト」

「リュウに会いに来たら、リュウがいなかったから。リュウは自然とか景色とかが好きだから、ここにいるかなと思って」

「まあ間違ってないけど……」

 

リンカーコアも生きていて、魔法を使ってまたフェイトにピンチに駆けつけることが出来る。

 

「あ、そういえばフェイト」

「ん? どうかしたの?」

 

相手が分かったので、もう一度ベンチに座るとフェイトも隣に座る。

 

「いや、アリシアはどうなったのか気になってさ」

「ちゃんと生き返ったよ。リュウが頑張ってくれたから」

「俺は、ほとんど何もしてないよ。ジュエルシード集めだって、フェイトが率先してやったことだし。俺はただ、プレシアと一緒に装置を作ってただけさ」

「ううん」

 

フェイトが俺の手を握ってきた。

 

「私が頑張れたのは、リュウが隣にいてくれたからだよ。リュウが傍に居てくれたから、私は頑張れた。だからありがとう」

「……ぁ、ああ!」

 

笑顔でお礼を言われて、その笑顔があまりにも魅力的で見惚れてしまった。

 

「……俺も、フェイトが居たから、装置を完成させたんだよ」

「え? 私がいたから?」

「ああ」

 

本当は恥ずかしくてこんな事は言いたくないけど。

フェイトの瞳を見て、真っ直ぐに言う。

 

「アリシアが生き返って、プレシア達と一緒にいる未来を夢見て、そんな幸せな未来で、フェイトが笑っている。俺は、そんなフェイトの笑顔が見たくて頑張ったんだよ」

「…………」

 

あ、なんか顔が真っ赤になった。

どうかしたんだろうか。

 

「あわ……あわわ……!!」

 

慌てっぷりが半端ない。

取り敢えず久しぶりにフェイト成分を補給出来たので、勢い良く立ち上がる。

 

「さて、そろそろ戻るか」

「……うんっ」

 

二人仲良く、手を繋いで病室に戻った。

 

 

あとあと聞いたのだが、なぜ個室だったのか聞くと『アンタみたいな世間知らずで変態を大部屋にしたら、毎日トラブルだらけじゃない。あとお金はあったから、個室にしたのよ』と言われた。

許さんプレシア。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。