「私はまだこの時代のデュエルには慣れていないものでして、先行はお譲りします」
(この時代?)
夜行の言葉は引っかかるが、今はデュエルに集中すると決めた。
「俺のターン、ドロー!!」
ドラガンが夜行を睨む。
相手は得体が知れない。まずは戦術を見極める。
「モンスターを1体セットし、カードを2枚伏せてターンエンドだ」
ドラガンにしては珍しく、相手の出方をうかがうようだ。
(まずは様子見、さあどうくる?)
夜行がどんなモンスターを使うのか、どんな戦術で戦うのかを確認するのを優先した
。
「それでは私のターン、ドロー。
私はモンスターを裏側守備表示でセットし、カードを2枚伏せ、ターンエンドです」
(攻撃してこない?)
フィールドにはお互い裏守備モンスターが1体とリバースカードが2枚の状況だ。
「あの男、戦うつもりあるのか?」
ブレイブは夜行の実力を疑う様に呟く。
「今のはお前らしからぬ発言だな。ただ闇雲に攻撃するだけがデュエルではない。攻撃しなかったのは奴の戦術的なものなのか、ドラガンのリバースカードを警戒していたのか、単に手札に攻撃できるモンスターがいなかったのかは分からんがな」
何にせよデュエルは始まったばかりだ。判断するのは早すぎるだろう。
「俺のターン!!」
ドラガンがカードをドローする。
そしてドラガンは夜行を鼻で笑う。
「攻撃をしなかった己の臆病さを悔いるがいい。俺は極星獣タングニョーストを反転召喚!」
ドラガンのフィールドに黒い山羊のようなモンスターが現れた。
極星獣タングニョースト
星3/地属性/獣族/攻 800/守1100
「タングニョーストの効果発動!このカードが攻撃表示になった時、
自分のデッキから「極星獣タングニョースト」以外の「極星獣」と名のついたモンスター1体を守備表示で特殊召喚する事ができる!現れろ、極星獣グルファクシ!」
今度は黒い馬の様なモンスターがドラガンのフィールドに現れる。
極星獣グルファクシ(チューナー)
星4/光属性/獣族/攻1600/守1000
「そして、俺は極星獣タングリスニを通常召喚する!」
さらに白い山羊の様なモンスターが現れる。
極星獣タングリスニ
星3/地属性/獣族/攻1200/守 800
「ほう、一気にモンスターを揃えてきましたか」
夜行は慌てず静かにモンスター達を見回す。
「はっ!余裕ぶっこいてんのもそこまでだぜ」
「ああ、来るぞ。神の力を見せてやれ」
ブレイブとハラルドはドラガンが攻めるのを決断し、最強のモンスターを呼び出すのが分かった。
いつまでも様子見をしていてはらちがあかない。
「(一気に行かせてもらうぞ!!)俺はレベル3のタングニョーストと、レベル3のタングリスニに、レベル4のグルファクシをチューニング!!」
ドラガンの左目にルーンの瞳が浮かび上がった。
モンスター達が星となって飛び散り、光の柱となる。
「星界の扉が開くとき、古いにしえの戦神がその魔鎚を振り上げん。大地を揺るがし轟く雷鳴とともに現れよ。シンクロ召喚!光臨せよ、極神皇トール!」
轟く雷鳴と共に、光の柱の中から現れし巨人。
大気を振るわせ、地上に顕現した。
極神皇トール
星10/地属性/獣戦士族/攻3500/守2800
三極神の一体。極神皇トール。まさに神に恥じない力を発していた。
「いくそ!極神皇トールで、守備モンスターに攻撃!サンダーパイル!!」
『GUOOOOOOOO!!!!』
トールが巨大な鉄槌を振りかざし、夜行の守備モンスターを破壊した。
その攻撃はソリッドビジョンなのか疑ってしまう衝撃があった。
というか、実際辺り一帯に言葉に出来ない被害が出ている気がするが、今ここにいる人達は誰も言及しない。
「おおっ!すばらしい。それが貴方の神ですか」
夜行も全く動じず、ドラガンのトールを褒め称える。
ドラガンはそれを見て僅かに眉をひそめる。
神を使ってくると分かっていても、実際に目の前で神を見た者は色々な反応をする。
動揺、恐怖、羨望など色々ある。不動遊星でさえも神を目の前にすれば動揺していただろう。
だが、目の前の男。夜行にはそれがない。
不気味なほどに自然体のままだ。
恐怖に狂ったわけでもなく、冷静に冷たいまなざしをトールに向けている。
砕け散ったモンスターは『ジャイアントウィルス』。戦闘破壊された時、相手プレイヤーに500ポイントのダメージを与え、さらにデッキから同名モンスターを任意の数だけ特殊召喚できるモンスターだ。
ドラガンは500ポイントのダメージをくらい、夜行のフィールドには紫色のトゲが付いた球体が2体出現している。
ジャイアントウィルス
星2/闇属性/悪魔族/攻1000/守 100
ドラガンが覚えたのは疑問。
たしかにジャイアントウィルスは低レベルモンスターの中では結構優秀なモンスターだ。
戦闘破壊すれば500ポイントのダメージを受け、さらに2体のジャイアントウィルスを残していく。次のターンで守備にされてしまえば面倒だし、攻撃している方だけが一方的に1500ポイントものダメージをくらってしまう。
確かにトールに対して、小癪だがそれなりに有効な手立てではあるだろう。
(そんな時間稼ぎが通じると思っているのなら随分と舐められたものだが、あれだけ大口を叩いていた奴が守備固めとは)
起死回生のための時間稼ぎか、もしくは・・・・
「シンクロへの布石か」
十中八九間違いなくシンクロをしてくると思った。
だが、夜行は不敵に笑う。
「私のデッキにチューナーモンスターは入っていません。シンクロモンスターなど持っていませんからね」
そのセリフを聞いて三人とも困惑した。
シンクロモンスターを持っていない。
そのセリフが嘘ではないとすれば。
(ただの愚か者だったか?)
一瞬浮かんだその思考をドラガンは切り捨てる。
シンクロモンスターを使わないからといって弱いとは限らない。
今の時代、シンクロモンスターを使うのが上級モンスター召喚のセオリーだが、機皇帝や眠れる巨人ズシンなど、シンクロを使わない強力なモンスターだって沢山存在している。
「御託はもういい。口先だけじゃなくお前の力を見せてみろ」
「ええ、いいでしょう。私のターン、ドロー。
私は伏せていたリバースカード、『リビングデットの呼び声』を使い、先ほど破壊されたジャイアントウィルスを呼び戻します」
夜行のフィールドには三体のジャイアントウィルスが攻撃表示で並んでいる。
夜行は不敵な笑みを浮かべ、宣言する。
「それではお望み通り、貴方達に神をお見せしよう」
「何!?」
夜行の手にした1枚のカードから闇のオーラが噴出している。
ルーンの瞳とトールがドラガンに危険を知らせている。
「何だ!何がくるってんだ!?」
普段の冷静さを欠いたブレイブが叫んだ。
「三体のモンスターを生贄に捧げ!!」
黒い風が渦巻き、三体のジャイアントウィルスを包み込み、見えなくなった。
「現れろ!邪神ドレット・ルート!!」
闇の風の中からトールにも劣らない巨体が現れた。
邪悪な波動が発せられていた。
悪魔より魔王より恐ろしい。
まさに邪神の名にふさわしい力。
恐怖の根源ドレット・ルート
今ここに降臨した。