幻次元ゲイム ネプテューヌ -少女達の非日常な日常- 作:橘 雪華
タイトルから察せる通り、あの人が…
ロムちゃんとラムちゃん達女神組、通称C.P.U(ゲイムギョウ界の守護女神をそう呼ぶことがあるって理由で付けられたらしい)と呼ばれているパーティーは順調に前線の方で攻略を進めている中。
わたしとエスちゃんはマイペースな調子で四女神オンラインを楽しんでいた。
……まぁ、エスちゃんがヒャッハー状態でモンスター狩りしまくってるから微妙に進みが悪いだけともいうけど。おかげでレベルばっかり上がり気味だし…
で、今日はそのエスちゃんとは別行動中。
何でも
何をするのかは知らないけど…本系の存在同士ってことで何かあるんだろう。
「ぼー………」
わたしも特に教会でやることも請け負ったクエストもないからログインしてみたものの、特にこれをしよう! って目的もなくてウィシュエルの広場にあるベンチでぼけーっとしていた。
ストーリー進めるのは…今までがエスちゃんと一緒にだったから一人で進める気もないし…
…あぁー…でもほんとになにしよう…することないのにログインしてる意味あるのかな…
「…んぅ…?」
なんて考えながらぼーっとしていたところ、ふとなんだか見たことがあるような姿が目に映った。
あのオレンジ色の特殊な形のツインテールは…もしかして…
…いや、でもうずめさんはいつもの姿にキャラメイクしてたはず…この前会ってソロプレイで遊んでるって言ってたし…
ファンが似せて作ったアバターの可能性もあるけれど、オレンジハートってまだ超次元のゲイムギョウ界じゃあんまり知られてないし…っていうかなんかあんまり目立たないように隠れてる…?
…なんとなく気になったわたしはそのオレンジハート? の人の様子を伺ってみようとベンチから立ち上がった。
「……むぅ、どうしたものかな…」
何やらオレンジハート姿の人は広場の影でぶつぶつ呟きながら唸っていた。
着ている衣装や腰にある得物……刀から察するに、職業は侍かな。
……なんか困ってるみたいだし、声かけてみよう。
「あの…どうか、しましたか?」
そう思ってその背中に声をかけてみると、何故だかびくりと驚いた様な反応の後、ゆっくりこちらに振り替えるオレンジハート姿の人。
…顔もまんまオレンジハートと同じに作られている。ここまでクオリティが高いとなると、プラネテューヌ教会の誰か?
「…き、君は……」
まるで見られたくなかった相手に見つかったみたいな顔をしながらそう言いかけて…固まる。
…あ、あれ?
「………君はどっちの方だ…?」
どっちって…あぁ、もしかしてロムちゃんかわたしのどっちって意味か。
確かにわたしもロムちゃんも
「…えっと、ディールの方、です」
「ああ、可愛げの少ない方だね…」
仕方ない事だと思いつつ失敗したかなぁ、なんて考えながらそう名乗ると、随分と喧嘩を売ってるような言葉が返ってきた。
……うずめさんはこんな失礼なこと言わないし、でも声はうずめさんで、でもでも声が少し低い……
…なるほど、ねぇ…
「……まさかあなたもこのゲームをやっているとは思いませんでしたけどね。暗黒星くろめさん」
「ぐっ!? な、何故オレだと…」
「少し話せばわかるかと……それにしても、随分可愛らしい姿ですね」
「ぐはっ!」
にっこり、笑顔でそう褒めてあげると、悶える様に震え出すオレンジハート…こと、暗黒星くろめ。
反応からして知ってる顔には出くわしたくなかった様子。
…反応面白いからもう少し弄ってみたくもあるけど…我慢我慢。
「…それで、どうしてあなたが? なんだかこういうゲームやる様なイメージではありませんでしたけど」
「……俺に誘われたのさ。ネトゲの招待チケット分けるからやろうって。でも俺の奴、一緒にはやらないとかって…」
「あぁ…このゲームでは絶対ソロプレイで貫くっていってましたからね、うずめさん…」
誘うだけ誘ってほっぽりだしたんですかうずめさん…流石に少しくらい付き合ってあげてもいいと思うのに…
「それで、オレもソロプレイで始めたんだが…」
「…? どこかで詰まってるんです?」
「…まぁ、そうさ。次のイベントが発生しないんだ」
ふむ、イベントが発生しない…か。
進行不能バグだったらとっくに報告やら運営対応が済んでる筈だし…
「…えっと、くろめ。一つお聞きしますけど、ストーリーイベントはどの辺まで…?」
「…確か、アメジストの盃だかが手に入った所だよ。新しく増えた場所は敵が強くてどうにも進むことができないしな…」
「…なるほど」
くろめの話を聞いて、大体の原因がわかってきた。あとは…
「ええと…ギルドクエストはこなしてますか?」
「…? ああ、そういえばあまり受けてないけれど」
「…」
そしてこの質問で原因がわかった。
なんというか、初歩的というか…
「…なんだ、君には原因がわかったとでも?」
「はい。恐らくですけど、くろめはギルドのキークエストをこなしていないのが原因でストーリーの進行が停止しているんだと思います」
「キークエスト…ああ、成程、どういうことか…」
わたしが告げた答えでくろめも何となく理解したらしい。
チッ、オレとしたことが…なんて呟いている。
……オレンジハートの姿だといまいち元より迫力に欠ける
なぁ…
「兎も角、原因が分かれば後はオレだけでもなんとかなる」
「そうですね。結構引っかかる人多いみたいですから、クエスト消化」
「ふぅん、そうなのか」
「はい。ああ、これから先も何も起こらなくなったと思ったらギルドクエストをこなすと何か起こるかもしれないので、覚えておくことをおすすめします」
「なら、そうさせてもらうよ」
と、そこまで説明すると早速ギルドに向かうのか、歩き出すくろめ。
…かと思うと足を止めて、こちらに振り返り、
「…まあ、今回は助かった、と礼を言っておこうか」
なんて言ってきて、
返事をしようとするものの、それだけ言ってくろめは足早に去っていってしまった。
…なんていうか、不器用なのかな、あの人。
「……でも、どうしてオレンジハートの姿にしたんだろう」
……ああ見えてうずめさんみたいに可愛いもの好きとか? 元はうずめさんと同じなんだし…
うーん…
「あー! ディールぅー!」
くろめが去っていった方を見つめながら考えていると、後ろから聞きなれた声。
振り返ってみれば、そこにいたのは忍者なラムちゃんと侍なロムちゃんだった。
「ああ、二人共。お仕事は終わったの?」
「もっちろん! わたし達にかかればあれくらいらくしょーよ!」
ふふん、と胸をはりながら答えるラムちゃん。
あ、ここで言ったお仕事っていうのはクエストのことね。
二人とも今日は
「…ディールちゃんは、何してたの?」
「そーいえばそうだね。何かギルドクエストとかやってなかったの? ディールちゃん」
二人がそう聞いてきて、
本当はまさかのくろめと出会って話していたけれど…
「んー…秘密」
「えぇー、なによそれー!」
あえてそれは言わずにおいた。
ラムちゃんがぶーぶー不満げだけど、言いふらすことでもないしね。
…まぁ、うずめさんには今度あったら話しておこうかな…?
「…ね、ディールちゃん。いっしょにあそぼ…?」
「あっ、そうよ! なんだかんだディールちゃんとあんまりこのゲームいっしょにしてなかったし、やろやろー!」
「…そうだね。そうしよっか」
「決まりー! それじゃーれっつごー!」
「「おー!」」
本編で彼女らが出会うのはいつになるかわからないほどに先の話であり、この話もIFかもしれないしそうじゃないかもしれない。
そんなちょっとした思いつきのお話でした。