幻次元ゲイム ネプテューヌ -少女達の非日常な日常- 作:橘 雪華
なお世界観はギャオスですが当然外伝パラレルなのでどこかと繋がる事はないです。多分ね。
「ハァッ…ハァッ…!」
見慣れた街並みの中を息を切らしながら走る。
武器である自分の杖を手にしながらどこへと走っているのかというと、別にゲームの発売日に寝坊しただとか、限定デザートの為だとかそういう訳じゃない。
むしろそうだったらどれほど良かったか。
「ッ!!」
余計な事を考えていると、背後から殺気。
咄嗟に横に跳べば、街中だというのに容赦のない氷塊の一撃がわたしの居た場所に直撃した。
「く、ぅ…」
咄嗟に跳んだせいで無様に転びつつも何とか起き上がるけど、追ってはすぐそこまで来ていた。
「さっすがディールちゃん。そう簡単には捕まらないね」
「鬼ごっこ、上手」
ふわり、とわたしの前に降りて来た、二つの影。
それは、わたしのよく知る、わたしが守りたいと思っていた、大切な二人。
一人は水色の髪、胸元辺りからお腹下辺りまで露出させたような黒と桃のユニットを装備した…ホワイトシスター・ロム。
一人は桃色の髪に、小悪魔風のプロセッサユニットとロムちゃん以上に露出の多い大胆な恰好になった…ホワイトシスター・ラム。
どこか禍々しさのようなものを纏った二人が、わたしを追う"追って"だった。
「っ…二人とも、どうして…!」
「だって…ディールちゃん、ディーちゃんの事悪く言うんだもん」
「そうよ。いくらディールちゃんでもそれは許せないんだから!」
追いかけ、攻撃してくる理由を問えば、二人から帰ってきたのはそんな言葉。
ディー。本来の名はDCDという、いつだったかこのルウィーにやって来た謎の女性。
あいつが…あいつが来てからだ……全部おかしくなったのは…
始めは、ブランさん。
突然DCDの事を"ディー"などと呼ぶようになった上、二人の様などこか禍々しさを感じる姿になったブランさんから始まり、
そしてブランさんが二人をあんな姿に変えてしまった。
そんな三人を見て、どう考えてもDCD……というより、DCDと一緒にいた羽虫のような奴が原因だと考えたわたしは、二人をどうにか始末しようとして……
結果それがばれて、現在に至るという訳だ。
「二人ともおかしくされてるんだよ…! あのDCDって奴に…どうしてわかってくれないの!?」
「おかしいのはディールちゃんの方よ! どうしてそんなひどい事言うの!?」
追われながら何度も二人を説得しても、帰ってくるのはそういう答えばかり。
こうなったら、力ずくでも二人を大人しくさせて……
「……っ…そんなの、できない…!」
杖を構えて二人に攻撃しようとするけど……わたしには、できなかった。
「ったく、いつまで手間取らせる気だよー」
そこへ、わたしにとって耳障りな声と共に、二人の傍にやって来た人物がいた。
──ブランさんと、DCDの近くにいた羽虫……確か、イクスとかいう名前だったはず。
「ッ…お前が…お前達さえ来なければ…ッ!!」
「おー怖」
キッ、と睨みつけてもおどけた様子でふわふわと浮かぶイクス。
……せめて、コイツだけでも仕留められれば…
「まぁ逃げ回るのは良いけどさー、こっちとしちゃあんまり時間を取られるのはうんざりなわけよ。だから大人しくカオス化されちゃってくんねーかなー?」
「……そっちの事情なんて知った事じゃないです」
「おー? いいのかなぁ。あんまりそういう態度取ってるとぉ……大事な大事な双子チャンの記憶、奪っちゃうよ?」
「…ッ!?」
「なっ、テメェ…!」
何がおかしいのかケラケラとしながらとんでもない事を言い出す。
それにはブランさんも気に入らなかったのか、イクスを睨みつけていた。
「おっと、あんたは口出ししないでくれよ。あたしは今この子とお話してんだからさー」
「…チッ」
イクスの言葉に舌打ちをするブランさん。
いや、それよりも…記憶を奪う…? そんな事…
「あ、その顔は信じてないなー? でも本当なんだなーこれが。あんまり記憶奪い過ぎて二人もDCDみたいになったって知らねーよ?」
「なっ…!?」
DCDみたいに、だって…?
まさか、こいつ……仲間なんじゃないの…!?
「ほーらほーら、早く決めろよー? さもないとー…」
「ぐ……」
「ディール…」
ニヤニヤと嫌らしい笑みを向けてくるイクス。
…………いや、そうだ。何を迷ってるんだわたしは。
「……わかった」
「物分かりが良い子は好きだよあたしは。じゃ、後はよろしくー」
「……ああ」
わたしが肯定の意を込めて頷けばイクスは満足気にして、
そしてブランさんがわたしの前へとやって来た。
「……すまねぇ、ディール」
「良いんです、ブランさん。元々、こうなる運命だったんですよ」
「…けどよ」
「やってください」
酷く申し訳なさそうにするブランさんに、早くやるようにと促す。
例え…どうなろうと、わたしがするべきことは一つだった。だから、何も問題はない。
「…っ!」
ブランさんがわたしに手をかざすと同時に目を閉じる。
するとわたしの身体の中に何か…黒いモノが流れ込んでくるような…感覚。
それと同時に、身体の底から力が湧いてきて……
「……終わったぞ」
「…はい」
ブランさんの言葉にゆっくりと目を開けば、まず複雑そうなブランさんの表情が目に映る。
そして念のためにと自分の身体を見てみれば……案の定。
黒と青を基調としたプロセッサユニットを身に纏っていて、そしてなぜだか髪の色が水色ではなくなっていた。
この色はなんだろう……青の濃い青紫? なんというか、言ってしまえばグリネプ本編に出てきたクロムみたいな髪の色。
「……なんでわたしだけ髪の色まで変わってるんですか」
「いやそれはあたしだって知らねーし。そういう体質だったんじゃね?」
「……そうですか」
こんな奴に聞いたわたしがバカだった。それはさておき…
不思議……身体の奥からどんどん力が湧いてくる。…なんだか、誰かで試したい。そんな気分。
「あ、お話終わったー?」
と、ブランさんとイクスが来てややこしい話になりそうだとでも思ってたのか、少し離れた場所で二人で遊んでいたラムちゃんとロムちゃんが戻って来た。
……なんか、闇堕ちみたいな事されてるのに普段と変わらないような…
「…ディールちゃん?」
「わ、なんかディールちゃんがカッコよくなってる!」
と、わたしの姿に気付いた二人が近くまでやってくる。
カオス化させられたからか知らないけれど、さっきよりも敵対心が薄く感じる。
「…そう?」
「うん。かっこいい…!」
「髪の毛の色まで変わってるもん、カッコいいよ!」
二人的には今のわたしの姿はカッコいいらしい。自分じゃよくわからないけど…
この姿は…言うなればグリモアシスター〔カオス〕といったところか…
…と、そうだ、一つあいつに言っておかないといけないことがあった。
「……一つ、言わせてもらいますけど」
「あん? なによー」
「……わたしは、あくまでもロムちゃんとラムちゃんの為に動きます。なので、あなたの仲間になるつもりはありませんから」
そう、わたしがカオス化を受け入れた理由は、ロムちゃんとラムちゃん…それにブランさんを守るため。
わたしにとって最も大切な人達を守るためならば、強い力を得られるカオス化はかえって好都合だ。
そう、わたしの最も大切な人達"だけ"を守るのなら……たとえ闇に堕ちるのだとしても、構わない。
それに、ロムちゃんとラムちゃんはともかく…ブランさんが黙ってる理由も少しだけわかったような気がするし。
「ふーん。ま、あたしらに逆らったりしなければ別に良いんじゃねーの?」
「…そうですか」
まぁ、下手な真似をすれば本当に二人の記憶を奪いかねない相手だから、そんなことにならないと思っているんだろう。
……いつか、出し抜いてやる。
「ふふっ、よーし! それじゃディーちゃんのとこまで帰ろっ!」
「あっ、ラムちゃん待って…!」
「………」
こうしてわたしは…ブランさんやロムちゃん、ラムちゃんに続いてカオス化してしまった。
けど、後悔なんてものは微塵もない。
……わたしのすることは、ただ一つ。
ロムちゃんを、ラムちゃんを、ブランさんを……守る事。その為なら、例え知った顔でも……
心に黒い感情を抱きながら、はしゃぐ二人の後に続いて教会へと戻るのだった。
~DCDとディール~
ラム「ディーちゃんあそぼ!」
ロム「あそぼ…」
DCD「えぇ……良い、けれど」
ディール「………」
DCD「……視線が、痛いの」
ラム「もー、ディールちゃんてば。ディーちゃんに何か言いたい事あるの?」
ディール「……単純な事。」
DCD「……何?」
ディール「……貴女の愛称がわたしの名前と被ってややこしい…!」
ラム「…え」
ロム「…え」
DCD「そ、そんなこと、言われても…」
ディール「公式の方だから仕方ないですけど…それでも…うぐー!」
DCD「……ディールちゃんも、大変ね…」