幻次元ゲイム ネプテューヌ -少女達の非日常な日常- 作:橘 雪華
ここからお話が続いていくかは…未定!
「ブランさんブランさん。ちょっとよろしいですか?」
ある日の事。
一時的にネプテューヌらと別行動を取っていたブランの元へ、イストワールから連絡が入る。
「その声は…イストワール? 珍しいわね、貴女から連絡なんて」
「実はですね、ブランさんに会わせたい方がいるのですが…」
どうやらブランに誰かを会わせたい様子のイストワール。
しかしどこか歯切れの悪い言葉に、ブランは疑問を感じながら問いかける。
「どうかしたの?」
「ああいえ…それも含めて、一度こちらに来て頂けますか?」
「…? わかったわ」
イストワールとの通信を終え、ブランはひとり思案しながら歩き出す。
「私に会わせたい人…一体誰なのかしら…それに…」
イストワールが自分に会わせたいという人物と、少し不自然だったイストワールの態度に疑問を感じながらも、彼女の待つ場所へと向かうのだった。
「イストワール、来たわよ」
そうしてイストワールの元へとやってきたブラン。
その直後、イストワールが口を開くよりも先に、ひゅん…と風を切る音を立てて何かが飛来してきた。
──ガッ
「…ってぇな! いきなり何しやがる!」
突如として飛来してきた
本の飛んできた先へと視線を移すと、そこに居たのは、
「いっえーい! 大当たりー♪」
「…痛そう(おろおろ)」
見覚えのない二人の幼い子供だった。
一人は桃色のコートに身を包み、今しがた本を投げた張本人であろう、長い髪でコートと同じ色、デザインの帽子をかぶった少女。
もう一人は水色のコートに、おろおろと擬音を口にしながら不安そうな、短い髪でこちらもコートと同じ色、デザインの帽子を被っている少女。
二人の少女は、服の色、髪の長さこそ違うものの、瓜二つの容姿をしていた。
「子供…?」
「あわわわわ…ダメですよラムさん、本は投げるものではなく、読むものなんですから」
見知らぬ子供の姿に怒りよりも疑問が勝るブランの横で、イストワールが慌てて注意する。
「はーいっ、ごめんなさーい」
「ご、ごめんなさい…」
叱られて、あまり反省の色が見えない様子で謝る少女と、その横で一緒になって謝る少女。
そんな二人を(というよりは主に反省していない方を)見ながらイストワールはため息を吐きながら、ブランに謝罪する。
「すみませんブランさん。ラムさんがご迷惑をおかけしてしまって…」
「………別に。子供のする事だから、今回は我慢してあげる。それで、私に会わせたい人って言うのは、その子達なの?」
流石に子供相手にすぐ怒鳴り散らす訳にも行かず、ブランはぐっと怒りを抑えながら、疑問をイストワールに投げかける。
するとイストワールは、突拍子のないことを言いだした。
「はい。彼女達は、ロムさんとラムさん。ブランさんの妹です」
「………」
突然の"妹紹介"に、目を瞑って思案顔になるブラン。
「あの、ブランさん?」
「…ちょっと待って。今、私に妹がいたか思い出すから…」
「いえ、元々いたのではなく生まれたばかりなんです」
「…どういうこと?」
自分が忘れているだけで、妹がいたかもしれない。そう考えたブランは自身の記憶から二人の少女を思い出そうとするが、初対面なので思い出せるはずもなく、
話が拗れる前に、イストワールが二人の正体について説明を始めた。
「先の戦いで過剰に増えたルウィーのシェアが元になり、新たな女神が誕生したんです。しかも双子です」
「…シェアって便利な言葉ね」
「それは言わないお約束です。…まぁ、そこまでなら何ら問題はないのですが…」
ぽん、と突然妹が生まれ、それを成したシェアに戦慄するブラン。
するとイストワールが何やら困ったような表情を見せ、ブランは首を傾げた。
「何か問題があるの?」
「はい、実は…」
ブランがそう訊ねると、イストワールは視線を双子へと移し、つられてブランも双子を見やる。
──すると、不思議なことに双子の数が増えていたのである。
「もー、やるならもっとこう、勢いつけなきゃでしょ」
「えー。最初からゼンリョクはどうかと思うんだけどー」
「…いや、まず本を投げるのがどうかと思うような…?」
「うん…音、痛そうだった…」
「……は?」
さっきまでいた双子のロムとラムの二人親しげに会話する、新たな双子。
その容姿は二人と似た……というレベルではなく、まるでロムとラムがもう一組いると錯覚する程そっくりであった。
辛うじて衣装の色が青と赤で、ロムとラムと違い帽子ではなくそれぞれ髪を色つきリボンを使い、後ろで結いているから判別できるものの、あまりの光景に思わずブランは呆然としていた。
「……何かの異常なのか、はたまたバグなのか…分裂? 増殖してしまったといえばいいのか…」
「いや…え、四つ子…? 流石の私でも理解が追いつかないわ…」
イストワール自身も困惑した様子でそう言うと、話を聞いていたのかもうひとりのラム? がぶすぅ、と不機嫌そうな顔になる。
「なによー、わたし達はバグ扱い? ひどーい」
「そう言われるとちょっと悲しい、かも…です」
「あー。お姉ちゃんとイストワールがディールちゃんとエストいじめてるー」
「なっ、私はそんなつもりじゃ…」
むくれるラム似の少女エストと、しゅん、と悲しそうに俯くロム似の少女ディール。
戸惑ったことは事実と言えど、幼い子供を傷付けるつもりのなかったブランはそんな二人の様子を前に狼狽える。
「言い方が不適切でしたね…申し訳ありません、ディールさん、エストさん」
「ふーん。ま、別に良いけどね。わたし達自身なんでこうなったのかわかんないし」
「本当に女神のシステムにバグが発生してる…んでしょうか…?」
「どうでしょう…女神のシステムと言うより、お二人はロムさんラムさんから生まれたようにも感じます」
「イストワール、故意ではないのでしょうけどその発言は色々と危険よ…」
不満そうにしていたと思いきや、あまり気にしてないと言うエスト、ディールはまだ緊張が抜けきってない様子で原因に着いて考え込む。
そうすると、今度はロムとラムの二人がむぅ、と膨れ顔に。
「もーっ、ぶんれつでもぞーしょくでもばぐでも別にいいよー! わたしはこのままでもいいもん!」
「みんなでいっしょの方が、たのしい…(ぷんぷん)」
そんなロムとラムの様子を見て「今度はこっちがご機嫌ななめね、やれやれ…」と思いつつも、ブランは二人の頭に手を乗せて撫でてやる。
「大丈夫よ。なにもなかったことにしようだとかそんな事は考えていないわ…そうよね、イストワール」
「はい。原因はともあれ、お二人もブランさんの妹に変わりはありませんから」
落ち着かせるように頭を撫でながらイストワールに確認を取れば、イレギュラーとはいえ物騒な処置にはならないとの答え。
それにロムとラムは「よかったー」と安堵した表情。ディールとエストもどこか安心した様子だ。
「ふふ。見ての通りまだまだ子供ですが、可愛がってあげてくださいね、ブランさん」
「…えぇ」
「ですが、甘やかしてはいけませんよ? 教育ははじめが肝心ですから」
「わかったわ」
…自分が姉なら、イストワールはまるで母親みたいだ、とブランは感じながらも、新たに誕生した自分の妹達を見つめる。
ロムとディールはまだ緊張し、少し怯えの混じった顔。
ラムとエストは二人ほど緊張していないものの、片方からは興味の眼差し、片方からは警戒の眼差しが感じられる。
「…これからよろしく。ロム、ラム」
「よろしくね、お姉ちゃん!」
「よ、よろしく…(ぺこり)」
「えぇ。それと、ディールとエストも」
「ん。…よろしくー」
「よ、よろしくお願いします。…お姉ちゃん」
数もそうだが、それぞれの性格も含めてこれからたいへんそうだ…
そう感じつつも、自分に妹ができたことに思わずふっと微笑んで喜ぶブランだった。