仮面ライダーマッハ 作:クレイジーサイコマコト兄ちゃんキチ
物語後半→マッハ負けすぎィ!
最終回付近→マッハ熱すぎィ!
映画→マッハ噛ませ役すぎィ!
そしてこの小説が生まれた。
魔法というものは、万能ではない。特に密かに広がるこの宇宙に存在するそれは、行きすぎた科学に近いもの。誰もが持つ神秘的力である魔力を具現化、運用させることに特化された術式の類いは、いつの間にか魔法と呼ばれるようになっていた。
話を戻そう。魔法は意思と術式が物を言う。誰かを救いたいと尊い意思、誰かを破壊したいと願う意思。そういう物に答えて、高性能魔力運用機『デバイス』が自動的に術式を組み込む。そうすることで魔法は発動への一歩を踏み出すこととなる。
一見すればなにもかも可能なそれ、だが魔法は奇跡ではない。あくまで行きすぎた科学の一環、出来ないことなど未だに山ほどある。特に、死んだ人間を蘇らせることは、絶対に。
魔法は万能ではない。
『Project Fate』
それは禁術。死んだ人間に限りなく近いコピー体である人造人間を作り出すクローン技術。生命への冒涜とされたそれは、理不尽を受け、悲しみに暮れ、絶望の淵にある人を救える画期的な技術ともなれる、はずだった。
新暦0077年、首都ミットチルダが48人の謎の金髪集団により襲撃を受ける。高速魔法の逆転魔法、範囲内の存在全ての速度を一万分の一にまでに減速させるそれは圧倒的なまでの力を誇り、市民局員を合わせて死傷者が1000人を越える大事件となった。
後に襲った48人の存在が『Project Fate』の完成体、『フェイト・T・ハラウオン』の素体『アリシア・テスタロッサ』から生まれたクローン体であることが判明。
『ミットチルダ黄昏事件』と呼ばれるようになった事件の時、遅延魔法の影響を受けずに平常通りに動き、赤き戦士と共に戦った『フェイト・T・ハラウオン』は局員栄誉賞を授賞、化け物のごとき姿へと変貌する金髪集団『ファット・イー』と呼称とされる彼女たちの撲滅を命じられる。
◆◆◆
「――それが今から、二年前……ね」
どことなく埃っぽい部屋の中央、城壁のように積み上げられた無数の本の塔、その真ん中に彼は座していた。白いフード付きのパーカー。背骨に沿うように走る赤い日本のラインは、どことなくバイクスーツを意識させるデザイン。胸のみならず袖にまで描かれた『Go!』の文字がどこか急かしているようにも見える。
うんうんと唸りながらも本を捲っていく彼に、誰かが声をかける。
「ゴウ。熱心になるのはいいが、回しすぎるんじゃあないぞ」
「分かってるよ博士。でも今日が約束の『襲撃の時』なんだ、どこが襲われるかぐらい知っておきたいじゃないか」
「ゴウ、焦りは禁物だ。"彼ら"も街を監視している。何かあっても、すぐに分かるさ」
「……わかったよ。博士の言う通りだ」
ゴウと呼ばれた青年はから回しを始める前に、言われた通りブレーキをかけるようにぐっと背伸び。息を大きく吐きながら意気を落としていく。本に埋め尽くされた部屋に青年が倒れるように横たわる音が響く、長く伸ばしすぎたポニーにくくった髪を鬱陶しがりながら毛先を弄る。
今まで手に入れた情報は青年にとって大体が、二年前から知っている公が周知の情報でしかない。彼女達を止める物になるものは何一つない、それでも少しでも情報をかき集める自分を動かすのは、きっとあの日に点火された尽きることのないこの想いなのだろう。
さてどうしようかと窓から日差しを眺めていると、窓の隅にバイクのオモチャがあることに気づく。じっと見ていると、それは窓をつつくようにコツコツと体当たりをする。自分を呼んでいるのだと気づいた青年は、同時にその理由についても気づいた。
「ゴウ、彼らからの連絡が入った」
「いよいよ始まった。ってことか!」
その言葉を置き去りに、青年は加速を始める。その速度は、肩に背負った二つ名に恥じぬかのよう。数秒がたつ頃、部屋には青年がいた形跡は何一つ残されていなかった。
◆◆◆
新歴0079年、首都ミットチルダ。第86管理外世界時間基準でいう四月六日、デバイスを扱う、デバイス専門のショッピングセンターである『バイ・マイ・デバイス』は今日も多くの声に包まれていた。
15を越える店先に並ぶのは最新技術をのせた高価なデバイスから、最低限の性能だけ乗せた初心者用のデバイス、果てにはフレームやチップのようなジャンク品まで。ここで揃わぬのならどこでも揃わないと言わんばかりのラインナップは、店を構える者達の自信を表していた。
最新デバイスを求めるのは従者を連れた壮年の男、繋がりを結んでおこうとたくらむ店主との話の内容は自身の息子のことのようだ。
初心者用デバイスを求めるのは親子連れだ。子供が満開の笑顔を見せる度に、若い夫婦も互いの顔を見合わせては笑っている。
ジャンク品を求めるのは向上心の高い者達だ。どこか研究者気質の者と訓練校に通っているであろう学生達があーではないこーではないと言い争っているのを、店主はどこか迷惑そうに頭をかいている。
そうして少し時間がたって、学生の一人が呆れてトイレという名目をはって店から脱出する。あの様子ではしばらく時間がかかるだろうとふんだ彼は、折角だから何か飲み物でも買おうかと自販機を探しキョロキョロとしたその時、異様な存在感が目に入った。
それは半袖ホットパンツといった格好、しかもスタイル抜群ともなればいかにも援交してますと言わんばかりの意を感じ取れる少女だった。髪は金色に輝き、赤い瞳はつまらさそうな色で手元で弄っている携帯端末へと向けられている。
周りの人も彼女には興味も持っているようだが、その人形のような美しさの前に尻込みをしている。声をかけるには、少し次元が違いすぎるような気もするのだろう。
学生の少年は違った。元々そういうのが好みであったというのもあるのだろうが、少女を彼女に出来たらどれほどいいのだろうという妄想が今の彼を動かしていた。
「なぁ、ちょっといい?」
「んー?」
気だるそうに手元から視線を学生に向ける少女。その瞳が物語っているのは先程と何も代わりがない退屈そうなもの。これは相手にされていないなぁと彼はなんとなくに感じ取れたが、まだ一言しかかけていないのだ。諦めるにはまだ早すぎるというものだろう。
「なんか暇そうだね。誰か、待ってるの?」
「んー、まぁ待ってるっちゃあ待ってるけど。人ではないかな」
そう言ってまた視線を携帯端末へと戻す。しかし学生はそこにほんの少しのつけいる隙を感じた。
「じゃあさ、わざわざここでなくともいいじゃね? 良かったら、喫茶店とかいかない?」
「……? なに、お兄さん。もしかして私に興味津々なの?」
「バリバリ興味津々」
ふぅん、と彼女はなにとなしに漏らした。
「面白いね、お兄さん。でも、もう時間だから」
「え?」
特に喧騒が起こるわけでもない平和な時間、何事もなく今日を終えることを信じて疑わぬ人たちが作り出す幸せの空間。
それを嘲笑ったのは神か悪魔か、それとも怪物か。硝子のくだけ散る音が平穏を切り裂くように響き渡る。ショッピングセンターの硝子天井が撃ち抜かれた音でもあったそれの後に、降り落ちてくる硝子の破片から逃れる人々達が彼女を中心に離れていく。
何があったのかと店内に残っていた学生も外に出ると、囲むようにしたまま凍りついた人々と同じようにそれを見てしまう。
金髪の少女が、その片腕から禍々しい紫色の雷が迸っている光景を。
「……ふぁ、『ファット・イー』だぁあッ!」
そんな悲鳴が上がると同時に、人の波が顔色を変えて絶望叫喚をあげる。それが何とも楽しいのか、少女は口が裂けたような笑みを浮かべる。
「ファット・イー、なんて。酷いなぁ、そんなのだと太ってるみたいじゃんか」
『――――――』
「分かってるよフレーム、今すぐ始めるから」
キハッと笑うと、紫電が少女の体を包んでいく。くぐもったような雄叫びが辺りを揺らす同時に、少女を組み替えていた紫電が霧のように晴れる。
「アハッ、これ最っっっっ高ッ!」
そこに残ったのは先程のような可憐な姿など幻術だったのではと思わせるほどの、醜く穢らわしい化け物が一つ。軽く首を鳴らし、肩を回して姿に慣らしてから、魔法を行使する。
瞬間、世界が鈍重となる。喧騒は鳴り止み、声という声が遮られた。まるでショッピングセンターだけが世界に切り離されたかのように、その空間の動きは全てスローモーションであった。ただ一人、少女であったものだけを除いて。
"サブロウ・イタガキ"は、時空監理局に就職する局員の一人である。自分も含めた周りの存在全てがスローとなって意識だけが等速であるこの状況に、とてつもない違和感からくる気持ちの悪さを感じていた。
――これが、重加速魔法。発動者と打ち消す用の加速魔法がなければ満足に動くことすら許さないSSS級魔法……っ!
局員である彼は市民を守ることこそが使命である。そうであれと父親に教えられてもきた、母親にも誇り高くあれと口酸っぱくして言われてきた。今こそ、その教えと使命を果たす時であると言うのに彼の体に巡る電気信号すら遅延している。
ファット・イーが喋り出す。
「さてと、じゃあ始めよっか」
彼女の右腕に紫電が走る。上げられた指先の向こうにいるのは、デバイスを求めていた若い夫婦とその子供。重加速魔法を受けているままでは、まばたき一つ許されず焼き殺されてしまうだろう。
それでも、それだというのにイタガキの体は満足に動くことを許してはくれない。
「まず、三人」
斯くして紫電は放たれる。理不尽の塊として、親子の命を奪うために。誰もが目を背けたくなった、命を奪われる瞬間など見たくはないと。それでもやはり、体は動くことを忘れているかのようだった。
またミッドチルダから命が三つ消える。
そんな時だった。
《ゼンリンシューター!》
外国人鈍りのミッドチルダ語が等速に響くと同時に、魔力弾のようなものが紫電と相討つ。
「ッ! 誰だっ!」
「そう大声出すなよ」
上からの声に、ファット・イーはハッとして顔を上げる。そこに居たのは、これもまた異形であった。
しかし醜いファット・イーとは違ってそのフォルムは洗練されており、まるでアニメに登場する味方側のような清く正しい造形であった。
純白の装甲に赤いラインと青い装飾がよく映え、靡くマフラーは正義を表しているかのようにも思える。
腰に取り付けられたベルトは、装甲に塗られた青い装飾と同じ明るい意味で取れる青。所々に見えるシルバーが太陽光に照って反射し輝いている。
ここまで非の打ち所がないデザインだったが、ここで一つの違和感が出てくる。右肩前面に取り付けてあるタイヤのようなシールド、それに気味の悪さにも似た違和感を持った。しかしそれもまたアクセントと見ればなんら問題はない、むしろ良い。
「この魔法の中で動けるなんて……あんた一体何者?」
「赤い戦士の末裔、とでも言っておこうかな」
赤い戦士。フェイト・T・ハラウオンと共闘し、ファット・イーを退けた存在の一つ。苦杯を舐めさせられた記憶に、ファット・イーの拳に力が入る。
それを見てか、白い存在は軽く笑って声を張り上げる。
「レディース、アーンジェントルメーン!」
「……はぁ? なんだこいつ」
「安心していいですよ、俺が来たからにはもう心配はいらない。この化け物は、俺が信条を持ってぶっ倒す!」
上の階から飛び下り、ファット・イーの前に着地。そうして立ち上がってから、指をファット・イーに突きつける。
「追跡」
胸の前で拳を手のひらに叩きつけ、音を出す。
「撲滅」
周りの人間に沿うように手を流す。さながらそれは観客への同意を求めるかのよう。
「いずれも~~?」
再び拳を叩きつける。
「マッ、ハーっ!」
ぐるぐると腕を回し言葉を貯める。そうして決めポーズと共に放たれるは己が肩に乗る誇り高き名前。
「仮面ライダー~~……」
「マッハァーッ!」
覚えていってね、と指でサインを向ける。向けられた先には観客と一人と化した美少女。
「……さっきからくっそつまんないもの見せて、しかも私を倒すって?」
ハンッ、と笑う。
「やってみろよォォォッ!」
その逆上の叫びにマッハは答えない。ただ無言でベルト上部に取り付けられたスイッチを四回押すだけ。するとバイクのアクセルを捻った時のような加速音と同時に、声が響く。
《ずーっと、マッハ!》
両者がぶつかり合うのは、同時だった。
失踪します