俺にだけ「手鏡」のアイテムが配布されなかったんだが   作:杉山杉崎杉田

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28話 ストーキングイリュージョン

 

 

翌日、目が覚めると、あたしは寝惚けた表情のまま起き上がった。

ポケーッとしながらハナクソをほじりつつ、アイテムストレージから飲み物を取り出して一口。で、またベッドに寝転がった。

 

『おい、バカ』

 

「む、いきなりバカとは何さ」

 

『観察されてんぞ』

 

「へっ?」

 

マジで?とあたしは窓の外を見る。すると、サッと物陰に隠れた人影が見えた。

あたしは伸びをしながら欠伸をして、部屋に戻った。

 

「何あれ、誰あれ?」

 

『分からん。大体見当はついてるけどな』

 

「は?誰?」

 

『お前が昨日無用心にサインしたからこうなるんだよ』

 

「へ……?あっ……」

 

『あいつ今頃、「ふへへ、か、カンザキたんは僕にだけサインくれたんだ……ハァハァ、僕のことが好きに違いない……ハァハァ」とかなってるぞ』

 

「うえっ……マージで?どうする?」

 

『引っ越せ。とにかくあの変態に気付かれないように。エギル……いや、アスナとかに協力してもらって』

 

「なんでアスナ?エギルの方がツテはありそうだけど……」

 

『あの手のストーカーは嫉妬が激しい。エギルとかキリト殺されっかもよ』

 

「なーるほど……」

 

『まぁ、そーゆうわけだからしばらくは男との接触を控えろ』

 

「………あたしが男だってバレたらマジで殺されそうだよね」

 

『それな』

 

そんな話をしながら、あたしはとりあえず変装して部屋を出た。

 

*

 

なるべく、あたしはクラディールから逃げるように移動したつもりだろうけど、多分逃げきれてない。ストーカーとはそういうものだ。

 

『変わるぜ』

 

「『お兄ちゃん』」

 

たらららーん。

 

「ッ」

 

索敵スキルをフル活用した。後ろからきてるな……。俺は結晶アイテムを取り出した。

そして、曲がり角を曲がりながら大声で言った。

 

「転移、リンダース!」

 

そう大声で言ってから、物陰で隠れた。すると、後ろからも転移アイテムを使ったのが見えた。ちなみに俺の手に持ってるのは別の結晶アイテムです。

 

『どゆこと?』

 

「ストーカーなら絶対に先回りしようとするだろ。だからそれを利用した。さて、血盟騎士団本部に行きましょうか」

 

俺は転移結晶を取り出して、グランザムに飛んだ。

 

*

 

血盟騎士団本部。副団長様を探すならここだろう。それに、ここならクラディールの防止にもなる。流石に自分の職場でストーカー行為に及ぶことはないだろう。

 

「変わるぞ、『カンザキ』」

 

たらららーん。

 

「んっ……」

 

前から思ってたけど、「たらららーん」って何?意味あんのそれ?まぁいいけど。やるならもう少しカッコいい効果音にしようよ

 

『例えば?』

 

「卍、解‼︎」

 

『効果音でもなんでもないじゃん』

 

そんなどうでもいい話をしながらも、グランザムにお邪魔した。

 

「すみませーん、副団長いますか?」

 

「なんだ貴様。何者か知らないが、あの方は今……」

 

断られそうだったので、人差し指を立てながらウィンクして、サングラスと帽子を取った。

 

「失礼しました。どうぞ」

 

「ありがと」

 

いいながらサインを渡して通った。

 

『だからホイホイサインするなっての』

 

「ごめんごめん」

 

流した謝罪と共に中に入った。さて、副団長様はどこかなーっと……、

 

「あ、カンザキ様」

 

「はい?」

 

さっきの門番さんが声をかけてきた。

 

「アスナ様は今日は非番のため、ここにはいらっしゃいません」

 

「え、まじ?」

 

「はい」

 

「そっか……ありがと」

 

そう言うと、私はグランザムから出た。

 

『というか、フレンドなんだからそっから探せや』

 

「あ、それもそうか。えーっと、アスナは……迷宮区だね」

 

てなわけで、あたしは転移結晶を使って最前線に向かった。

 

*

 

最前線の迷宮区。出てくるモンスターを倒しながら進んでると、ようやく栗色の長髪を見つけた。

 

「あ、おーい!アスナさ……!」

 

声をかけようとしたところで、あたしの視界に入って来たのはキリトの姿だ。

おそらく手作り弁当を二人で仲良く食べている。

 

「……………」

 

イラっとした。それと共に、あんな幸せそうなアスナの顔を見れば、アスナもキリトの事が好きであることはすぐに分かってしまった。

 

「……………」

 

引き返そう。そう思った。あたしはキリトとは結ばれない。なら、アスナに譲るべき……そう思った。

 

「あり?カンザキちゃん?」

 

「………クライン、さん」

 

風林火山の面々を連れたクラインさんが立っていた。

 

「何してんだ?」

 

「いえ、これから帰ろうと……」

 

「お?あそこにいるのはキリの字じゃねぇか?」

 

こいつ!目はいいのか⁉︎

 

「行こうぜ、おーい!」

 

あたしはクラインに引き摺られる形で、二人のラブラブワールドに突撃した。

 

 

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