魔法少女リリカルなのは【魔を滅する転生砲】   作:月乃杜

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第8話:陰謀 闇に消えるは暗き企み

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 先代アテナの時代、未だに神の領域に存在していたアテナは、人間として誕生する事によって器の人間を抑える作戦に出た。

 

 アテナの側仕え、眷属であるオウルのパルティータはそんなアテナに先駆け、常にアテナの傍に在る宿星の持ち主、天馬星座を世に出すべく人の身に堕ちて、日本人の杳馬と結ばれる事で天馬星座の魂を持つ子供を身籠る。

 

 子供の名前はテンマ。

 

 然し、杳馬は冥闘士たる天魁星メフィストフェレスとしての本性を露わに……

 

 歯車は歪みながら、然れど孤児としてテンマは宿星に従い、アテナの化身であるサーシャと、ハーデスの器のアローンと出逢う。

 

 後にテンマは天馬星座の聖闘士となり、サーシャの許へ馳せ参じてアローンと闘う道を選んだ。

 

 そして、父親の杳馬との邂逅や魔宮の一つ天王星を守護する冥闘士……オウルのパルティータとの出逢いを経験したのだ。

 

 人間としての杳馬は冥闘士だが、その魂は封ぜられし時の神カイロスとして、テンマ達の前に立つ。

 

 闘いの末、杳馬を封じるパルティータは消えた。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

「それで、パルティータがどうしてこの世界に?」

 

 屋上にパルティータを呼び出したユートは、詰問という訳ではないが訊ねる。

 

「私が再びアテナ様の眷属となるのは難しいけれど、その御加護に縋って人間としての転生は可能。貴方が面白そうな事をしていたので見に来たのですわ」

 

 そのはっちゃけた答えに天を仰ぎ見るユート。

 

「それにどうやら、貴方の敵が此方の世界にちょっかいを掛けておりますの」

 

「僕の……敵? 這い寄る混沌が?」

 

「ええ、何人かの人間を殺めて此方に転生させた様ですのよ」

 

「うわ……」

 

 何人かというのならば、一人や二人では済まないという事だろう。

 

「転生者を送り込むのは、自身が直にちょっかいを仕掛ける為の仕込みです」

 

「だとすれば、本人が仕掛けて来るのは10年後か」

 

 それまでの繋ぎとして、A'sから空白期に転生者をぶつけて来る気だと判断した。

 

「面倒な。踏み台は力の有無に拘わらず、空気を読まないから来て欲しくはないな……」

 

 切実に思うユート。

 

「既に二人ばかり捕捉しているわ。兄妹みたいね」

 

「早速か」

 

「現在、聖祥大付属小学校に転入する為に動いているから、その内に来るわよ」

 

「なら、待つしかないな。パルティータはこれからどうするんだ?」

 

「私は今、イタリアにあるセルシウス家の令嬢だし、実は此方に留学するに当たって、お父様と約束をしているのよ」

 

「約束……それはOGATAと関係有り?」

 

「御明察、貴方とのパイプ作りね。セルシウスを事業に加えて欲しいの」

 

 まあ、それが妥当な線かとユートはそう考えた。

 

「月村とバニングスの方にも訊かないと、直ぐに返事は出来ないよ?」

 

「構わないわ。それと聖衣を貰えると嬉しいわね」

 

「聖域に入るって事?」

 

「貴方が擁立したアテナ様にも興味あるもの」

 

「……了解した」

 

 溜息を吐きながら言う。

 

 嘗ては冥闘士として動いていたとはいえど、それはテンマの魂を神殺しの天馬星座として目覚めさせるのが目的だったからだ。

 

 彼女……パルティータは決して敵ではない。

 

 それに此方で擁立をした元まつろわぬアテナ、彼女も梟を眷属としていたし、仲違いはしないだろう。

 

 ……多分だが。

 

 然し、ユートにとっては厄介な話を聞いたものだ。

 

 あの銀髪アホ毛の少女型邪神、這い寄る混沌ナイアルラトホテップが来る。

 

 時期的には恐らくSTSの時代で、場所は間違いなくミッドチルダになる。

 

 とはいえ、ユートにそもそもミッドチルダを救うなんて義務は無い。

 

 這い寄る混沌が悪事を働くとはいっても、基本的にその世界の悪徳を助長する形に過ぎず、つまりは悪徳が無ければ這い寄る混沌に誑らかされる事もない。

 

 ミッドチルダが混沌に堕ちるなら、それはあの世界の悪徳故の事なのだ。

 

 そして、ミッドチルダには充分な悪徳が存在する。

 

 故にこそ、這い寄る混沌に弄ばれる事になろう。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 ユートはコロコロと菱形の碧い石を、テーブルの上で転がしていた。

 

 なのは、アリサ、すずかに加えて、パルティータとフェイトとアリシアも一緒に居るし、ユーノとアテナもお茶を飲んでいる。

 

「そ、それ!」

 

「ジュエルシード?」

 

 驚愕をしたのはなのはとユーノの二人。

 

「管理局に上げたって言っていたのに?」

 

「上げたよ。本物のジュエルシードを21個」

 

 ガチガチに封印されて、使用は疎か解析すら叶わない代物となっているが……

 

「〝本物〟って、それじゃそのジュエルシードは?」

 

「レプリカだ。機能の幾つかをオミットした……な」

 

「どういう事ですか?」

 

 学者気質なユーノには、随分と興味深い話らしくて身を乗り出して訊ねる。

 

「そもそも、ジュエルシードが危険な古代遺失物として存在したのは何故だ?」

 

「それはエネルギーの暴走を引き起こし、触れた者の願いを読み取って歪んだ形で叶えようとするから」

 

「正にその通りだよ」

 

 だから、ユートは自分の目的にそぐわない機能に関してオミットし、ある意味で安全なジュエルシードを造り出した。

 

「オミットしたのは願望器として、願いを叶えようとする機能。アレが暴走したエネルギーを使い、思念体やらジュエルシード・モンスターを生み出していた。それとジュエルシードには無制限に次元世界のエネルギーを吸い上げ、貯めておく機能がある」

 

「無制限に?」

 

「器の限界を超えても更にエネルギーを吸い上げる。それ故に器からはみ出て、暴発して次元震や次元断層を引き起こす」

 

「その通りですね」

 

 そこら辺はユーノも理解しており、発動したジュエルシードの危険性を示唆していた理由でもある。

 

「だからこれには制限を設けた。器が90%までエネルギーを貯めたら自動的に吸い上げを停止する様に」

 

 残り10%は安全の為のマージンだ。

 

「最後に、連結して使えない様に共振機能も付けてはいない。並行励起で爆発的なエネルギーの高まりを見せているし、単体でのみの運用しか出来ない」

 

「願望器でなく、汲み上げるエネルギーは90%で、共振もしないか。理想的なエネルギー集積器ですね」

 

「ジュエルシードの魅力を削ったから、魔力集積器としてならば兎も角として、それ以外は何の意味も為さないけどね」

 

 必要だったのは次元空間からエネルギーを汲み上げる機能のみで、他の機能はユートには不要だった。

 

 獅子の心臓(コル・レニオス)より小型で、それと似た機能を持つ魔導炉。

 

 デバイスや鋼鉄聖衣へと取り付ければ、ある意味で制限付きの永久機関だ。

 

「確か、ノエルとファリンは夜中に充電する事で日中に活動していたよね?」

 

「あ、はい」

 

「そうですよ〜♪」

 

 水を向けられたノエルとファリンが答えた。

 

「これを組み込めば、常にエネルギーを汲み上げて、充電の必要性も無くなる。それに、エネルギーは魔力に準じるから魔法も扱える様になる筈だ」

 

「! そんな事が……」

 

「すごいですぅ!」

 

 組み込む組み込まないは忍が決める事だが、大きな力を得るならばノエルとしては欲しいと思う。

 

 月村家のメイドであり、忍の護衛役としては……

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 【時空管理局本局】

 

 次元の海に浮かぶ巨大なステーション、それを想像すればとても解り易いであろう。

 

 大きな次元航行艦を何十隻も抱え、メンテナンスドッグも存在しており、何万という職員が暮らしているコロニーみたいなモノだ。

 

 リンディ・ハラオウンは上官に呼び出され、執務室へとやって来ていた。

 

 上官のデスクの上には、ジュエルシードが入っているトランクが載っている。

 

「ハラオウン提督、これは何だね?」

 

「はっ! 本艦アースラが第97管理外世界に事故でバラ撒かれた為、回収任務に就いて手に入れて来ましたジュエルシードです」

 

「そんな事を訊いているのではない! 研究員が解析しようとしても無反応で、魔力を流してもうんともすんとも言わん! いったいどうなっているのかね?」

 

「それは、現地組織の方の協力で封印されましたが、その封印の影響かと」

 

「封印の解除は?」

 

「実質、不可能と聞いております!」

 

「チッ、解った。古代遺失物保管庫に持って行きたまえ……」

 

「ハッ! 失礼しました」

 

 リンディはトランクを手にし、古代遺失物保管庫へと持っていく。

 

 厳重な巨大金庫みたいな場所で、常に厳戒体制だと云っても過言ではない。

 

「彼の言う通り、解析は出来なかった……か」

 

 保管庫に来ると、トランクを職員に渡して次に行くべき場所へと向かった。

 

 ギル・グレアムの執務室である。

 

「提督、今は宜しいでしょうか?」

 

「入りたまえ」

 

 お伺いを立てると、扉がスライドして開く。

 

「失礼致します!」

 

 敬礼しながら執務室へと入るリンディ。

 

「どうしたかね?」

 

「? はい、少し提督にお訊きしたい事が」

 

 何処か焦燥感を滲ませているグレアムに疑問を懐きながら、リンディは訊くべき事を訊ねる。

 

「提督は第97管理外世界の出身でしたね、エピメテウスの落とし子という言葉を御存知でしょうか?」

 

「いや、知らないがな……エピメテウスというのは、確か始まりの女性パンドラを妻とした、プロメテウスの弟神だったか。後の知恵という意味で、愚鈍な者だったとされているな。兄弟に自らの力を奪われたとか謂れがあったが」

 

「そう……ですか」

 

「どうかしたかね?」

 

「いえ、第97管理外世界へと任務で赴きましたが、エピメテウスの落とし子を名乗る少年に一泡吹かせられまして、管理世界の少年がエピメテウスがギリシア神話の神だと言ってましたので、提督が御存知かと」

 

「ふむ? 残念だが寡聞にして聞いた事がないな」

 

「そうですか、魔法が効かない存在でしたので、有名なのかと思いましたが」

 

「なに?」

 

 リンディの言葉は流石に聞き捨てならず、グレアムは表情を変える。

 

「それでは聖域という組織やアテナの聖闘士は?」

 

「いや、聞かないな」

 

 先日からリーゼ達の連絡が途絶えている。

 

 最後の通信で、『魔法が効かない』とあった。

 

 こうなったら已むを得無しと、八神はやての確保の為に戦力を人事部に気付かれない様に、自身の親派を使って送り込んだが、早まったかも知れないと嫌な汗を流す。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 夜中、武装隊の数十名が八神はやて確保の為に動いていた。

 

「行くぞ!」

 

『『『『ハッ!』』』』

 

 地球に近付いた時点で、既にユートに気付かれているとは知らないで、武装隊の隊員達は動く。

 

 結界を展開……

 

 武装の持ち込み、魔法の使用、誘拐〝未遂〟は赦されざる犯罪だ。

 

 それを確認したユートは権能を使う為に動いた。

 

 はやてを狙った時点で、誰の差し金かは解る。

 

「小さな女の子を永遠に眠らせようってんだ、お前らがそうされても文句は無いんだよね?」

 

 ユートはそう呟き右腕を天に掲げ、左腕を地に向けて権能を発動させた。

 

「永遠睡眠(エターナル・ドラウジネス)!」

 

 眠りの神ヒュプノスを弑奉り、その神氣を喰らって獲た権能の一つ。

 

 エピメテウスの落とし子になるまでは、これらの力を使えなかったユート。

 

 今は普通に使えていた。

 

 次々と眠りに落ちていく武装隊員。

 

 最早、ユートが術を解くか神の御技に頼るかしない限り、武装隊員達が目覚める事は有り得ない。

 

「複雑ですわね、嘗ての敵の力を使うなんて……」

 

「パルティータか。割かし便利ではあるんだよ」

 

「解りますけど……」

 

 国を一つ、丸々と眠らせた事すらあるユートには、これを使うのに躊躇う理由自体が見当たらない。

 

「それじゃ、連中を拘置所に送ってくれる?」

 

〔了解〕

 

 リスティに頼むと、手早く武装隊員を連れて行ってしまった。

 

 

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