魔法少女リリカルなのは【魔を滅する転生砲】   作:月乃杜

53 / 100
第25話:モニタリング アースラ内の面々

.

 アースラのスタッフは、聖王教会からの使者であるカリム・グラシア達は……それ処かなのはやすずかや守護騎士は疎か、同じ転生した口である筈の相生呂守と相生璃亜までが唖然となっている。

 

 尚、ギル・グレアムに関しては魔傷に侵されてしまった武装局員を看るべく、このブリッジから既に出て医務室へと向かっていた。

 

 闇の神アプスとの戦闘、それはギリギリにまでも落とした速度にて見ても尚、見損ねる逸さである。

 

記録された映像をすぐにも万分の一の速度で再生し、それでもギリギリで見える速度、それは正に神なる逸さだと云えた。

 

 神速……カンピオーネの世界に於けるそれは謂わば雷速の事を云い、大凡そで秒速百五十キロ〜二百キロくらいの速度となる。

 

 だが、ユートとアプスのそれは明らかにそれを越えた速度であり、アースラに備え付けられた器機は優秀なれど、捉え切るにはまだ足りない程。

 

「光速……なのか?」

 

 未だに呂守が至れない、そんな世界が光速。

 

 黄金聖衣を持ちながら、然し未だに究極の小宇宙たるセブンセンシズに目覚めていないが故に、光速には至れない状態だった。

 

 黄金に輝く小宇宙を纏うユートが、アプスを相手に光速としか云えない速度で闘っている。

 

「呂守の考えは半分当たっている。今の兄貴は光速をも超克した速度だ」

 

「光速を超克?」

 

「そう、兄貴の肉体は既に常人のモノじゃない」

 

「カンピオーネ……か?」

 

「そう。神殺し、羅刹王、羅刹の君、時には堕天使とか呼ばれる。神を殺して、その神氣を獲て肉体を謂わば神の権能を操れる様にと改変された存在。皮膚は硬くて柔性に富み、骨はまるで鋼鉄の如く。肉体的には素で聖闘士並と言えば解り易いかな?」

 

「あ、ああ……俺はな」

 

 当然、聞いていた周りは置いてけぼりを喰う。

 

「更に常人の数百倍とも云われる呪力。そんな兄貴だから小宇宙の量も格段に増えているね。普通の人間が幾ら鍛えても辿り着けない高み、そんな兄貴が黄金聖闘士と同じセブンセンシズを持てば、黄金聖闘士を越えるのは当然の帰結だ」

 

「あ!」

 

「星矢さん達も光速だったけど、肉体的には常人が極限まで鍛えたレベルだし、素では兄貴に敵うべくもないのは当たり前」

 

 聖闘士の拳が空を裂き、蹴りが大地を割り、音速をも越える速度を出せるのは小宇宙を使えるから。

 

 破壊の根源を身に付ければ小宇宙無しで岩くらいは割れるが、LC版のテンマが崖崩れをどうにかしようと殴っても拳を痛めるだけだったのが、小宇宙を僅かに発露しただけで崩れていた崖を吹き飛ばした事からも明らかだろう。

 

 肉体は飽く迄も常人で、小宇宙が超人を作った。

 

 それが聖闘士。

 

 とはいえ、次の瞬間には有り得ないモノを見た気分になってしまう。

 

 ユートが右腕を一閃しただけで……

 

「莫迦な! 山が、山が斬れた……だとっっ!」

 

 スッパリと巨大な山を斬り裂いてしまった。

 

 クロノの絶叫は仕方がない話だろう。

 

「何だよあれは……」

 

村正抜刃(エクスカリバー)だよ、相生呂守」

 

「エ、エクスカリバー? 山羊座の必殺技かよ!? あんなん、規模がダンチじゃねーか!」

 

 本家本元である山羊座のシュラ、彼が使った場合は果たして山を斬れるか?

 

 呂守は青褪める。

 

 光速で空中戦闘をして、山が吹き飛び大地が抉れるともなれば、もうこいつは聖闘士星矢というかDBの世界だろう。

 

 相生呂守から見てもその闘いとは、星矢VSタナトスより悟空VS魔人ブウ。

 

 正に既知外である。

 

 とはいえ、神に対抗するべく小宇宙を燃焼させている今のユートは、阿頼耶識──エイトセンシズにまで高めているし、ほんの刹那の時間だが第九識にまでも高めたのだから、これくらいは当然ながら可能。

 

 ユートの認識からして、神々にはランクがある。

 

 所謂【まつろわぬ神】を天災級とし、自分の世界の冥王ハーデスや海皇ポセイドンや天帝ゼウスを惑星級としている。

 

 いずれにせよ、只人にはどうにもならない存在。

 

 尚、死の神のタナトスや眠りの神のヒュプノスといった惑星級の神に仕える神を衛星級としている。

 

 そして、闇の神アプスは能力的に衛星級よりやや上だと思われるが、何故だか明らかに惑星級として確固たる力を揮う。

 

 ユートの力が余り効いていない辺り、冥王ハーデスを思わせてくれた。

 

 流石に、突っ立っていて力を跳ね返す様な能力までは持たないが……

 

「あの、ユーキさん……でしたか?」

 

「何かな? カリム・グラシア」

 

 モニターに釘付けにしていた目を、カリム・グラシアへと向けて問う。

 

「あの方が使うのは星聖衣(スタークロス)……なのでしょうか?」

 

「さっきも言っていたね。どうして未だに兄貴がボク以外に閃姫にすら見せていない星聖衣を知ってる?」

 

「我が聖王教会では、最後の聖王が戦船を浮かべる際に纏っていた黄金に煌めく聖なる衣、星聖衣であると伝えられています。戦船と共に喪われてはいますが、絵画が遺されていまして」

 

 カリムが絵画の映像を見せてきた。

 

「……成程、確かにこの絵のオリヴィエ・ゼーゲブレヒトが纏っている鎧兜……双子座の黄金星聖衣だね」

 

 見覚えがある。

 

 兄が新たに造ったという星聖衣、勿論ながら三種類の階級からなるが絶対的に小宇宙が必須でもなくて、今までみたいなパワーアシストも付いていない。

 

 魔力や霊力や氣力や念力でも扱えて、小宇宙も当然ながら使える割と万能型。

 

 パワーアシストが無いから素人には扱い様もなく、然れどエネルギーを扱えるならデバイス代わりになる優れものでもあった。

 

 だけど、ユーキは見知っていたがまだ誰にも渡した事は無い筈で、況んや過去の人間が持ち得る訳も無いのだが、だけど似た事例を知ってるから性質が悪い。

 

「(〝また〟過去に跳ぶって訳だねぇ……)」

 

 再誕世界でも二十年以上のスパンで跳ばされた事があり、故にこそ大分裂戦争に参加して母親の若かりし日に出逢い、あの第三皇女様の幼き日に出逢った。

 

 アスガルド戦や海皇戦、冥王との最終聖戦や過去の冥王戦などに参加が出来たのもそのお陰。

 

 実に微妙な話である。

 

 苦しくも楽しいという、困った状況だったから。

 

 恐らくは跳んだ先にて、オリヴィエ・ゼーゲブレヒトやクラウス・G・S・イングヴァルトや当代のエレミアと出逢うのだろう。

 

「(あれ? エレミアって何だっけ?)」

 

 何と無く覚えているが、はっきりとではない。

 

「(ま、良いか)」

 

 もう随分と昔だったし、度忘れでもしたのだろう。

 

 それにオリヴィエ達と絡めて覚えていたのならば、古代ベルカの関係者。

 

 それだけ判れば充分だ。

 

「兄貴が造って誰にも渡した事は無いからねぇ」

 

「誰にも?」

 

「だからいずれ、過去にでも行くんじゃない?」

 

「そ、そんな……まさか」

 

「魔法を習う者なら誰もが知っている。過去を覆す事も死者を甦らせる事も……魔法では不可能だって?」

 

「は、はい」

 

 カリムばかりかクロノも頷いている。

 

「魔法でもある程度なら、時間操作も死者蘇生も可能だよ。現にボクは時粒子に干渉して多少の過去遡行が出来るし、兄貴も時の砂の呪文で多少の干渉が出来たりする。死者蘇生にしても条件付きで出来るからね。管理局の使う一般的な魔法──ミッドチルダ式に無いってだけで……ね」

 

「そんな事が?」

 

 やはりショックなのか、管理局組が呆然となった。

 

「時の砂の呪文って大賢者カダルが使っていた……」

 

「そうだよ。兄貴は、あの世界にも行った事がある。疑似転生で勇者アレルとは双子の弟になって、早々に爺さんから勘当されて旅に出たらしい。色々と旅をして最終的にジパングに住み着いたってさ」

 

「おいおい……」

 

「卑弥呼は間に合わなかったけど、卑弥呼の娘と良い仲になって魔王バラモスや大魔王ゾーマが倒れた後、大王になったから……ね。ロト紋のイヨって、兄貴の子孫に当たるんだよね」

 

 勿論、ユートが行ってきた世界に限っての話だ。

 

 その後、ロト紋そのものにも関わっている。

 

 合体魔法を極めるべく。

 

 更には無印やⅡにも関わりを持ち、やりたい放題をしていたユートだったが、その後は天空シリーズにも向かう事に。

 

 ターニアの大転生術で、彼女の魂がⅣとⅤのキャラに転生し、天空シリーズを共に駆け巡ったものだ。

 

 それは兎も角として……

 

「それに兄貴は魔法がダメなら他の力を使えば良いじゃないか? 何て言ってるくらいには色々と修得しているからねぇ」

 

「他の? あ、神の権能! 若しかしてその手の権能を持ってるのか?」

 

「ハイパークロックアップとか、ヘブンズ・キャンセラーとかだね」

 

「ハイパークロックアップって、仮面ライダーカブトのハイパーカブトか?」

 

「いや、ニャルラトホテプから簒奪した権能に付けた名前だよ」

 

「ニャルラトホテプ!? 俺と漓亜を転生させた!」

 

「知ってるだろ? ナイアが無限螺旋を生み出したって事を。時空間を乱す能力をナイアは持っていた」

 

「それが転じてか?」

 

 実際、【機神強襲デモンベイン】に於いてマスターテリオンと千日手となった男の歴史をリセット、なんて暴挙にも出ている。

 

「時の神クロノスや刻の神カイロスの権能も有る」

 

 刻の神カイロスの権能、【刻限の快楽神(カイロス・ジ・ゴッド)】。

 

 刻を留める権能としては──【素晴らしき停止時間(マーベラス・タイム)】を何度か使ったが、そいつは派生系の一つに過ぎない。

 

 物質を元の状態に戻す、生命体の時間を巻き戻すと似た様な権能だが、似て非なる権能として独立もしているのが有るし、単純に刻を進める事も出来た。

 

 そんな話を内々にしていると、栗毛を外はねさせた十六歳の少女オペレーターであるエイミィ・リミエッタが呆れながら、顔を青褪めさせながら右手で口元を押さえて呟く。

 

「ふわ、スゴい……」

 

「どうした、エイミィ?」

 

「クロノ君、彼の攻撃って只の一撃一撃がオーバーS越えの威力だよ!」

 

「なにぃ!?」

 

「必殺技でも何でも無い、単なるパンチがオーバーSの大威力砲撃を越えてる。若し、彼の今の一撃だったら余波でさえもクロノ君を蒸発させられるよ?」

 

「よ、余波だけで!?」

 

「うん、余波の煽りを喰らうだけで全力でシールドの魔法を使って防御一辺倒になっても、一瞬でシールドが破れて蒸発かな?」

 

「ば、莫迦な……」

 

 驚愕するクロノ。

 

 勿論、周りで聞いていたリンディやカリム達も驚愕をしているし、ユーキ以外は一様に同じ顔だ。

 

「あの戦場にクロノ君が入れば、一当てする前に木端微塵になって死んじゃうだけだよ」

 

「……」

 

 最早、言葉も無い。

 

「かといって、影響が及ばない程の遠方から砲撃(ブレイズ・キャノン)を撃ったとしても、多分だけど届く前に掻き消される……というより、届かないかな」

 有効射程距離は疎か限界射程すら程遠く、クロノの能力では全力でも当てる事さえ不可能だった。

 

 まあ、クロノの魔力量はなのはやフェイトに比べて遥かに劣るし、魔導師ランクAAA+は技術有りきのランクなのだから。

 

 実際、なのはもフェイトも魔力量に技術を足しての十年後は実にS+ランク、はやてなど総合だとはいえSSランクである。

 

 流石は平均発揮時魔力が一二七万の高町なのはと、一四三万のフェイト・テスタロッサだろうか?

 

 はやてはどうか判らないけれど、クロノは恐らくだが百万にも届くまい。

 

 因みに、呑気に会話をしている様にも見えてるが、基本的に地球の魔導師組やミッドチルダ組、聖王教会組などはマルチタスクによってモニタリングしているが故に、闘いの趨勢を見誤る事などは無かった。

 

 アリサとすずかは不完全なマルチタスクだからか、会話には参加していない。

 

 相生新也と相生兄妹も、マルチタスクは未修得だから会話は余り出来ず、辛うじて資質が母親譲りなのか兄妹は何とか付いていけている感じだ。

 

 その時である。

 

 斬っっ!

 

 モニターの向こう側で、ユートの右腕が闇の刃にて斬り落とされた。

 

「兄貴!」

 

 ギリィッ!

 

 先程からユートが攻撃を受ける度、表情には出ないものの掌の皮が破れるくらいの力で手を握り締めていたのだが、遂には〝破れるくらい〟ではなく破れて血が滴り落ちていく。

 

 表情もアプスを憎悪の瞳で睨む程に歪めて、今にも飛び出しそうな雰囲気だ。

 

 それでも本気で飛び出したりしなかったユーキは、ユートがこの程度で参る様なタマではないと理解をしており、何よりも致命的なダメージを負ってしまった訳でもないから。

 

 事実、ユートは小さく某かを口ずさむ。

 

「在りし姿を取り戻せ……【輝ける刻の追想(リターン・オブ・タイム)】」

 

 エイミィが唇の動きからアースラのコンピューターに解析させ、それで判った文言は権能の聖句。

 

 【刻限の快楽神(カイロス・ジ・ゴッド)】の派生系となる権能で、云ってみれば草薙護堂の使う権能──【東方の軍神(ザ・ペルシアン・ウォーロード)】に十の派生権能が有る様なものだろう。

 

 尤も、黄金の剣に怪力に雷速に加護に雷撃に灼熱に脚力に復活に神獣に召喚に……と、てんでんばらばらな能力ではなく、飽く迄も【刻】に関する権能であると統一されてはいるが……

 

「な、何だと!?」

 

 クロノは驚愕に目を見張るが、それも仕方がない事なのだろうか……実際に、識っているユーキ以外だとやはり驚いている。

 

 まるでビデオの巻き戻しを観るかの如く、ユートの右腕がくっ付いたのだ。

 

 聖衣の切断部分の損傷も無くなっていた。

 

「何だよありゃ……」

 

 呟く相生呂守に答えるかの如くユーキが口を開く。

 

「先程も話題に出した刻の神カイロスの権能だよ」

 

「カイロスの?」

 

「そう、識っているかもだけど【聖闘士星矢LC】に於いて、天魁星メフィストフェレスの杳馬はカイロスの化身ってか、人間の杳馬の肉体に縫い付けられた……そうだね、シャブラニグドゥの人間体に近い感じに封印されていた状態かな。そんか刻の神カイロスは、刻を留めたり戻したりなんて真似をしていた訳だね。兄貴の権能はそのイメージから構築されているんだ」

 

 未だに手からポタポタと血を流しながら、それでも顔は平然とした侭に話す。

 

 そんなユーキの手を取ったアイラは、急ぎ治療魔法を掛けてやる。

 

「ん? ああ、ありがと」

 

「余り自分を傷付けちゃあ駄目よ?」

 

「了解」

 

 自傷行為の心算も無かったのだが、やはりユートが傷付くのは嫌なのだろう、無意識にやらかした。

 

「鈴鹿御前の権能を使う暇があれば、多少のパワーダウンは出来そうだけど」

 

「鈴鹿御前の権能?」

 

「鈴鹿御前が持っていたとされる三振りの剣、大通連は草薙護堂の権能【戦士】と似た智慧の剣だからね。来歴を詳細に明かしてやれば斬れるんだけど……」

 

「聖句を詠む暇が無いか」

 

「それなりに長いからね。カイロスの権能は短いから使えたけどさ」

 

 今や秒速で六十万キロの速度に達し接近戦をしているだけに、短いカイロスの権能は未だしも、他の権能は少しばかり使い難い。

 

「っていうか、アプスにしちゃ強過ぎないか?」

 

「はぁ?」

 

「いや〜、だってよぅ……黄金聖衣とはいえボロボロだった射手座を纏った光牙が単独撃破した程度だし、幾ら何でもあれは強過ぎにしか思えないんだが?」

 

「っ! チィッ、やられたかも……」

 

「どういう意味だよ?」

 

「アプスはニャルラトホテプに強化されてるんだ!」

 

「なっ!?」

 

「こうなれば、兄貴単独で闘うのは難しいかな?」

 

 苦々しい表情で言う。

 

「だけど……兄貴の顔は」

 

 ユーキがモニターの向こうのユートを観た限りで、決して絶望に囚われた表情ではなく、何処か何かしらを狙ったものに見える。

 

「兄貴、何を企んでる?」

 

 義妹として、ユートの囲う閃姫の一人として永らく共に在ったユーキだけど、その考えを推し量るのにはまだ足りなかった。

 

 

.




 一応は予定通りに進めたとはいえ、早くリリカルな成分を戻したいかも……


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。