魔法少女リリカルなのは【魔を滅する転生砲】   作:月乃杜

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 StS篇の方の1話となります。





StrikerS篇
第1話:覇王 求めるモノは真なる王〈前編〉


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「何が起きておるっ!?」

 

「わ、判りません!」

 

「然しながら行き成り顕れたと思しき碧銀の髪の毛、右目が紫で左目が青の虹彩異色の“男”が原因かと思われます!」

 

 第一世界ミッドチルダの首都クラナガン。

 

 今正に危機的状況となっており、時空管理局の地上本部ではレジアス・ゲイズを筆頭にてんやわんやで、その全てが対応に追われて慌てふためいていた。

 

 原因となっているのは、女性オペレーターが答えた様な容姿の男。

 

 碧銀――碧掛かった銀髪を短めにした、紫と青による虹彩異色の騎士だった。

 

 そう、騎士だ。

 

 彼が魔法らしきを使うと彼の髪の色に近い魔力光を湛えた魔法陣が顕れるが、その形状は三角形を基点とした謂わばベルカ式。

 

 それも最近になって使い手が増えた近代ベルカ式とは異なる、今は殆んどが喪われてしまった魔法体系の真正古代(エンシェント)なベルカ式である。

 

 “殆んど”というのが実はミソで、ある程度ながら生き残っているのだ。

 

 例えば、元【闇の書】の守護騎士やその主のはやてが受け継ぐモノ。

 

 或いは海底に眠りながらユートに拉致られており、覚醒に向けての調整が施されている真っ最中な少女、ガレア王国の冥府の炎王と呼ばれたイクスヴェリア。

 

 紫天ファミリー。

 

 本当に僅かながら生存が成されており、その知識を以て近代ベルカ式が再構築されてもいた。

 

 尚、ユートの魔法も実は真正古代ベルカ式。

 

 元々がハルケギニアにて使ったリリカル系魔法で、ベルカ式に適性があるのは判っていた事。

 

 因みに、同じく地球人の血を引いたシエスタが試したらミッド式だった。

 

 ベルカ式な上に戦乱時代のベルカに跳ばされるし、それで真正古代ベルカ式をユートが得ていない訳がなかったという。

 

「虹彩異色……古代ベルカの王族には居たな。聖王と覇王が有名だが」

 

 聖王家だと紅と翠の虹彩異色を持つ。

 

 ガレアの冥王や雷帝ダールグリュンなどは違うし、実在したかは定かではない真王も虹彩異色ではなかったらしいが……

 

「まさか、覇王だとでも云うのか?」

 

 覇王家は既に王族とかではなく、普通に市井に交じっての生活をしている。

 

 今更、いったい何だと云うのかが解らない。

 

「報告では魔法が全く効果を成さないと!」

 

「魔法が……だと?」

 

 そういえば何処かの管理外世界で、魔法が効かない人間が居ると報告書が提出されていた。

 

 少しだけ前の話だ。

 

 L級第八番艦アースラ、艦長のリンディ・ハラオウンが報告した内容。

 

 まあ尤も、リンディ・ハラオウンはその後に何故か自主退職をしているが……

 

 魔法が効かない人間が、管理外世界に存在する。

 

 第九七管理外世界。

 

 魔法至上主義な時空管理局や管理世界、主要世界といった管理局由来の世界からすれば脅威以外の何物でもないだろう。

 

 事実として魔法が封じられたら、管理局の魔導師はもう何も出来なくなる。

 

 だからこそレジアス・ゲイズは魔法に頼らぬ防護策が必要、彼がユートからの提案を受けたのもライオット・トルーパーの機能に惹かれたからである。

 

 ある意味で先進的な機能を持つライオットギア。

 

 前にユートがレジアスに見せたあれに、少し改良を加えたモノである。

 

 元々がライオトルーパーの物と変わらなかったが、ファイズやカイザなどと同じくドライバーとフォン、二基に分かれて使うタイプとなっていた。

 

 機能も僅かに上がって、前を二〇としたら今現在は二五くらい。

 

 尚、ファイズはノーマルで五〇くらいだと思ったら正解である。

 

 但し、それは同じ“人間”が変身した場合の戦力。

 

 ユートがファイズに変身をしたら、五〇の戦力処か五〇〇や一〇〇〇になる。

 

 概算に過ぎないが……

 

「クッ! 何とかせねばなるまいが……」

 

 碧銀の髪の毛を持つ男、真正古代ベルカ式の者。

 

 余りにも強い。

 

 しかも魔法が効かないとなれば、管理局の魔導師は翼をもがれた鳥も同然。

 

 エラを持たない魚。

 

 電池を抜かれたミニ四駆と云っても過言ではない。

 

 実際にあの碧銀の髪の毛の男を相手に、管理局本局の魔導師でさえ全く敵にはなっていなかった。

 

 中にはA処かAAAという魔導師ランクも居る中、魔法弾を撃っても防御すらせず弾き、砲撃を撃ってもやはり防御せず弾く。

 

 ダメダメだ。

 

 あっという間に接近を許してしまい、近接攻撃手段が無いに等しい局員達は、一撃を貰って昏倒をさせられてしまう。

 

「ゼスト隊を動かせ!」

 

「ハッ!」

 

 首都防衛隊に所属をするオーバーSランク騎士――ゼスト・グランガイツ。

 

 割と最近になって管理局へと持ち込まれた術式が、近代ベルカ式というミッドチルダ式を土台に復活させたのだと云う。

 

 これも【OGATA】から提供されたモノだ。

 

 この近代ベルカ式に巧くハマったのが、ゼスト隊の隊長たるゼスト・グランガイツであるし、女性の隊員たるクイント・ナカジマとメガーヌ・アルピーノ。

 

 また、近代ベルカ式用に調整をされたカートリッジシステム。

 

 これすら【OGATA】が提供をした代物。

 

 因みに原典よりも遥かに高効率で負担も少なくて、扱い易い物に仕上がっているのは云うまでもない。

 

 ゼスト・グランガイツも愛用の槍型デバイスに搭載をして、使い勝手の良さに舌を巻く程だとか。

 

 クイント・ナカジマも、愛用していたデバイスから新しく導入、【リボルバーナックル】という非人格型デバイスに切り替えた。

 

 まあ、前のデバイスとて非人格型だったけど。

 

 召喚術師でありサポート型のメガーヌ・アルピーノの場合、ブーストデバイスという事もあったからか、流石にカートリッジシステムは搭載していない。

 

 他の隊員もある程度なら戦えるが、この三人に至っては通常よりも近接戦闘が行い易かった。

 

 近代ベルカ式の騎士であるゼストは何を況んやで、クイント・ナカジマの場合は純ストライカーな気質の格闘家系統。

 

 メガーヌ・アルピーノはサポート型ではあるけど、召喚蟲を使って近接戦闘をさせる事が可能だ。

 

 特に人型蟲のガリュー、究極の一たる白天王。

 

 使役をする召喚蟲こそ、メガーヌの本領である。

 

「待て!」

 

「おや? 今度は変わった方が来たね」

 

 余裕の表れか碧銀の青年はにこやかな表情であり、難しい顔で接するゼストと対称的に見える。

 

 因みに、この場に居るのは三人だけだったり。

 

 理由は簡単。

 

 近代ベルカ式な三人が、近接戦闘に関わるスキルを持つから。

 

 他はミッド式なのだ。

 

 また、メガーヌ本人は別に直接戦闘はしない。

 

 隣にガリュー、丸っきりダークヒーローを体現した黒い人型甲蟲が立つ。

 

「君達が次の御相手かな? ならばベルカの王の一人として名乗ろう!」

 

 ベルカの騎士は名乗りが割とデフォらしい。

 

覇王流(カイザーアーツ)創始者……クラウス・G・S・イングヴァルト。覇王を名乗らせて貰っている」

 

 それは奇しくも、本来の歴史で十年以上後に子孫たる少女が、クイントの細胞から造られた少女に名乗った時と似ていたと云う。

 

「覇王……流……? イングヴァルト? 真正古代ベルカの列強たる王の一人を名乗ると云うのか!?」

 

 ミッド式を下敷きとして再構築をされた紛い物――近代ベルカ式とは全く違う正に本物のベルカ式。

 

 それを扱う王の一人……騙りか子孫なのか?

 

 よもや本人という筈などあるまいと、ゼスト達による念話が繰り広げられる。

 

「ふふ、数百年が経過しているみたいだけど、随分と鈍った連中がやって来たから正直、ガッカリしていた処だったんだよ」

 

「むぅ……」

 

 即ち、本局の魔導師達はイングヴァルトに何ら痛痒を与えなかったという事。

 

「君らは歯応えが少しはありそうだよ」

 

「俺は時空管理局地上本部所属の首都防衛隊、ゼスト隊の隊長……ゼスト・グランガイツだ」

 

「ほう? 時空管理局とは先程の連中も名乗ったな。本局とか何とか」

 

「我々の任務は首都クラナガンの防衛が主だ」

 

 首都防衛隊なだけに。

 

 本局は主要世界や管理世界を護るのが仕事であり、一応は管轄外ながら任務は間違っていない。

 

 各都市を護る部隊とも違うのが首都防衛隊。

 

 というか、警邏隊が普通に存在してもいる。

 

「つまり時空管理局とやらが今現在、世界の安定を司る組織……なのかな?」

 

「……そうだ」

 

 まるで世情に疎いみたいな問い掛けに訝しむ。

 

「成程、……の言っ……りにな……るん……な」

 

 何やら呟いたみたいだがよく聴こえなかった。

 

「イングヴァルトと言ったな? お前の目的が何かは知らんが、きちんと話すなら我々管理局も聞く用意はある。何故、世界を騒がす真似をしている?」

 

 本来の未来では逆の立場で聞こうともしなかった男だが、やはり本来の歴史でヴィータが似た様な事を言っていたりする訳で、然し【闇の書事件】で彼女らが時空管理局を信じるなどは無かったり。

 

「おかしな事を聞くね? 僕は単に道を歩んでいるに過ぎないのに、君らが勝手に攻撃を仕掛けて来ているだけじゃないか?」

 

「――何?」

 

 とはいっても、歩く古代遺失物レベルな呪力を撒き散らす存在、警戒をされても仕方がないのだが……

 

「降り掛かる火の粉は誰だって払うものだろう?」

 

 だからといって攻撃をされたら反撃もする。

 

 彼はそう言っていた。

 

「だいたい、止まれと言うから止まって上げたのに、目的やらロストロギアやら訳の判らない事を訊いてくるんだ。目的は人に会う事だって言ったし、ロストロギアなんて持っていないと言っても攻撃をしてくる。僕にどうしろと?」

 

 ふてぶてしい態度だが、イングヴァルトの言う通りならば、局員が難癖を付けて攻撃をした事になる。

 

 周囲を見てみると野次馬と言うべきか、民衆の視線が物語っていた。

 

 イングヴァルトが正しいのだ……と。

 

 何しろ民衆は正義である筈の局員、自分達を非難して責める視線を向ける。

 

 口より雄弁な目だ。

 

「君らも僕と闘うのなら、それは受けよう。若し僕を殺せたら“我が力を獲られるやも”知れないぞ?」

 

「何だと!?」

 

 驚くゼスト。

 

 後ろのクイントやメガーヌも顔を見合わせる。

 

「僕こそ、嘗てシュトゥラにて覇を唱えし覇王イングヴァルト! まつろわぬ神たるイングヴァルト也!」

 

「まつろわぬ神?」

 

 その言葉も知っている。

 

 リンディ・ハラオウンが退職前に残した報告書に、【まつろわぬ神】といった単語と、【カンピオーネ】という単語が出てきた。

 

「君らの区分でいうなら、僕は【鋼】の英雄神ってのになるんだろうね」

 

「くっ!」

 

「キャッ!?」

 

「ううっ?」

 

 凄まじいまでの呪力が、先程などより激しく吹き荒れている。

 

「最後に教えろ!」

 

「何だい?」

 

「お前が捜すのは誰だ?」

 

「ああ、真王だよ」

 

「「「なっ!?」」」

 

 有り得ないとばかりに、三人は驚愕をした。

 

 真王もまた、覇王や聖王や雷帝などと同じくベルカに名だたる列強の王。

 

 つまりは数百年前の人物であり、とっくに亡くなっているのが彼らの認識。

 

「真王はベルカの王だ! 疾うに亡くなっている」

 

「そんな筈はない、彼から聞いていたんだ。真王……彼は新暦六六年から過去へと遡ったのだと」

 

「――は?」

 

「僕らの旧暦の時代にね」

 

「なっ、莫迦な!? 魔法を習う者ならば誰でも知っている! 魔法では時間の移動も死人の蘇生も叶わぬ願いだと!」

 

 本来の歴史では、魔導のアイテムで彼も蘇生をしていたけど。

 

「確かにね。だから僕も、ちょっとした保険を掛けて動いたんだし」

 

 それは子孫への記憶継承の事であるが、ゼスト達にはそれを察する情報などが一切無かった。

 

「さあ、始めよう」

 

「むぅっ!」

 

「っと、その前に……君らの名前も僕に教えてくれるかい? 御嬢さん方」

 

「御嬢さん? 若く見えるのは嬉しいのだけれどね、これでも私は人妻よ! 私はシューティングアーツ、クイント・ナカジマ!」

 

 バッと長い青髪を一撫でしながら名乗る。

 

「召喚師……メガーヌ・アルピーノ。此方は私の召喚蟲のガリュー」

 

 メガーヌも名乗った。

 

「へぇ、召喚師か。珍しいスキルを持っているね……ならば僕も喚ぼうか」

 

「……え?」

 

 やはりニコニコしつつ、召喚のテンプレートではなくベルカ式のモノを顕現、其処にはシュトゥラに生息をしていた雪原豹。

 

「征くよ、アスティオン」

 

『ガウッ!』

 

 呼び掛けに応える雪原豹――アスティオン。

 

「それは?」

 

「僕の神使たる神獣さ」

 

 嘗ての頃に、クラウスとオリヴィエが死産してしまった雪原豹の子供に付けようとした名前。

 

 そして、二人が好きだった小さな英雄物語の主人公の名前でもある。

 

 【まつろわぬ神】となったクラウスの神使となった雪原豹の神獣、アスティオンと名付けたのはあの頃に出来なかった情景の名残なのだろうか?

 

 

「改めて始めようか」

 

 結界を張って周辺住民に迷惑が掛からない様に準備をした【まつろわぬイングヴァルト】、それに苦々しく思いながらもゼストが槍を構え、クイントが構えて……メガーヌは強化魔法を二人やガリューに掛ける。

 

 ガリューはアスティオンに向かうべく構えた。

 

「覇王流イングヴァルト、推して参る!」

 

「オオオオッ!」

 

「ハァァッ!」

 

「ガリュー!」

 

 イングヴァルトに対してゼストがメインで攻撃を仕掛け、クイントはサポートを担当している。

 

 ガリューは単体でアスティオンへと攻撃。

 

 だが然し、オーバーSのゼストと陸戦AAなクイントの実力をよく知る局員達は映像を観て愕然となる。

 

「ゼスト……」

 

「そんな?」

 

 イングヴァルトに翻弄をされ、強烈な一撃を喰らわされて沈んだのだ。

 

『覇王! 断っ空っ拳!』

 

『ガハァァッ!』

 

 槍型アームドデバイスも折られ、肋骨も砕ける勢いな覇王断空拳が極った。

 

 サポートのクイントも、既に斃されている。

 

 更には……

 

『そんな――ガリュー処か白天王すら相手にならないと云うの!?』

 

 ガリューをアスティオンに斃されたメガーヌだが、巨体の白天王を召喚しての攻撃も往なされ、そして斃されてしまったのである。

 

 ゼストは地上本部に於ける最高のストライカー。

 

 オーバーSランクというのも伊達ではない。

 

 それが全く敵わないとなると、レジアスには最早打てる手が無かった。

 

「中将、連絡が……」

 

「こんな時に何だ!?」

 

 最近、エリート官僚枠で管理局入りした愛娘であるオーリス・ゲイズ三尉。

 

 魔導師でもあるが故に、最速で佐官になると目されている彼女は、既にトップに位置するレジアスの右腕的な立場。

 

 そんな彼女が何処からかの連絡を持ってきた。

 

「誰だ!?」

 

 連絡用デバイスを引ったくりながら叫ぶ。

 

〔お久し振りです〕

 

 映っていたのは長い黒髪を二本の三つ編みお下げにした眼鏡の娘、少しばかり前に【OGATA】からの使者の秘書として、レジアスと会っている人物だ。

 

「貴様は確か……ほむほむ……だったか?」

 

 愉快な渾名に娘が画面の向こう側でずっこける。

 

〔ほむらです! 私の名前は暁美ほ・む・らっ!〕

 

「お、応っ!」

 

 両腕を真横に伸ばして拳を握り、上下にバタバタと振りながら叫んだほむらの剣幕に、然しものレジアスも引き気味に頷いた。

 

〔コホン! どうも管理局は今回の事態に対応が成されていない御様子ですね〕

 

「む! まぁな……」

 

〔そこで我が社より戦力を出し、事態の収拾に努めたいと思います〕

 

「な、なにぃ!?」

 

〔時空管理局地上本部には御了承を頂きたいのです〕

 

「……ライオットを差し向けても無理なのか?」

 

〔あれは飽く迄も通常犯罪に対する部隊単位の装備、究極の一を相手にするには向きません〕

 

「そうか……」

 

 理解はしていた。

 

 一応は訊いてみたのが、やはり否定されただけ。

 

〔我々は地上本部から要請を受け、事の対処に臨むという形を取ります〕

 

「! 正気か? それでは貴様らに何の得が!」

 

〔代わりに【まつろわぬイングヴァルト】の依代を、我々が内々で確保する事の許可を頂きたいのです〕

 

「依代……だと?」

 

〔彼の【まつろわぬ神】はどうやら依代に憑依して、それにより顕現をしている事が調査の結果、判明しているのです。彼を斃したら当然ながら依代は残る事でしょうが、管理局に確保をされるのは具合が悪くて〕

 

 困った表情で言う。

 

「貴様らなら地上を護れると云うのだな?」

 

〔お任せを〕

 

「良かろう」

 

「中将? 宜しいので?」

 

「構わん! ゼスト隊が敗れた以上は最早、儂らには奴を斃す戦力が無いのだ。儂はミッド地上を護る為なら手段なぞ厭わん!」

 

 その結果が本来の世界線での彼是であった。

 

「解りました」

 

 オーリスもレジアスから覚悟の程を聞いて頷く。

 

「一つ訊きたい」

 

〔何なりと〕

 

「依代とは誰だ?」

 

〔覇王イングヴァルトを降ろすに足る器、それは彼の遺伝子を資質をそして――記憶すらも十全に受け継ぐ子孫……です〕

 

「そうか、了解した」

 

 通信が終わってすぐにも暁美ほむらは動く。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

「ふむ、大した事も無かったな。先程からの連中よりはマシだったが……」

 

 再び歩を進めようとするイングヴァルト。

 

 だが、目の前には少女の姿が在って歩みを止めた。

 

「今度は誰かな?」

 

「久し振りですクラウス」

 

「君は……ホムホム!」

 

 ズコーッ!

 

「ほむらです!」

 

 どいつもこいつもと文句を言いたくなる。

 

「ああ、そうだったね」

 

「やはり、私の記憶も在るみたいですね」

 

「まあね」

 

「彼の予想通りですか……あの神の、這い寄る混沌の干渉!」

 

「いずれにせよ、乗っかったのは僕自身さ」

 

「クラウス……貴方の目的はやはり?」

 

「真王だよ、勿論ね」

 

「……いずれ彼はやって来ます。それまでは私が相手をしましょう」

 

「それも面白いね。黄昏の魔女……ホムラ!」

 

 紫の宝玉を手にほむらは軽く口付け。

 

 黒いカチューシャを頭に着けて、ちょっとした制服っぽい魔導衣を身に付け、左腕にはバックラーを兼任する魔法具。

 

 魔法少女モードである。

 

 そしてベルトを勢いよく巻き付け、カイザフォンにコードを入力していく。

 

 【9】【1】【3】……【ENTER】。

 

《STANDING BY》

 

「変身っ!」

 

 草加の角度でドライバーのバックルへ装填。

 

《COMPLETE!》

 

 Χをモチーフにした仮面を被り、紫色のアルティメットファインダーが輝く。

 

 全身を奔るフォトンブラッドは黄色、エネルギーの流動経路は高出力フォトンブラッドの安定供給を図る為に二本に分けてマウントされたダブルストリームを採用している。

 

「仮面ライダーカイザ!」

 

 右腰にカイザブレイガンを装備、左腰にカイザショットを装備、後ろにカイザポインターを装備している仮面ライダーカイザ。

 

 推参というやつだった。

 

 

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