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とある施設内に夥しい迄の流血の跡が痛々しいくらいハッキリと残る床、壁にもそこかしこへと飛び散っているのか真っ赤な血痕が付着する。
マッドサイエンティスト、【無限の欲望】という二つ名……枷を時空管理局が最高評議会の面々により強制的に植え付けられた男、ドクター・ジェイル・スカリエッティの持っていた研究施設の一つと思しき場所が此処だった。
時空管理局の地上本部に所属する首都防衛隊の一つたるゼスト隊、ゼスト・グランガイツを隊長とする精鋭部隊であると云っても過言では無い。
ゼスト・グランガイツ本人がS+ランクの騎士であり、本局に戦力を吸い続けられている地上本部の中に在って引き抜きに決して応じない態度は、親友であるレジアス・ゲイズ少将との熱い友情の成せる技であると云えよう。
更には新たに地上本部が獲たライオットギアと名付けられた装備、単にセットアップをするだけで其処らの人間には敗けない強化が成される。
何しろ、大元は量産型の仮面ライダーファイズとでも云えるライオトルーパー、正しく怪人枠であるオルフェノクとも闘える存在だ。
闘える=斃せる訳では決して無い、事実として草加雅人が変身をした仮面ライダーカイザでさえオルフェノクに敗北した訳で、況んや量産型でしかないライオトルーパーが……となる。
まぁ、結局はオルフェノクもピンキリな訳だから弱い奴ならイケるであろうくらいか。
とはいえ、オーバーSランク騎士のゼスト・グランガイツがライオットギアを用いたのならば、間違い無く実力的にはSSSとか云われてもおかしくない戦闘力である筈が、敗れて殺されたという事は戦闘機人とは別の戦力が介入している事に。
(まさか、黄金聖衣持ちがこの戦闘に介入をしたのか? 目的はクイントやメガーヌか?)
子供は産んで無いけど既婚者で二児の母として生活するクイント・ナカジマ。
夫は後のVividからして居ないみたいだけれど、誰かしらと交わりを以て一歳の娘を持つメガーヌ・アルピーノ。
どちらも美女、処女・非処女に拘りが無いなら狙い目かもだし、ジェイル・スカリエッティであれば洗脳処置も容易い、それを狙ってスカリエッティに付いた黄金聖衣持ちも居るかも知れない。
或いは数の子狙いか?
見た目も性格も一筋縄ではいかないが間違い無く美女・美少女揃いの数の子、スカリエッティ側に付いて一二人の数の子を相手にハーレム万歳をしている可能性も有るだろう。
「兎に角、クイントは死亡後は放置されたからこそ遺体がナカジマ家に戻った」
即ち、メガーヌやゼストとは違ってレリックというか“聖王核”への適応が無かったのだろう。
聖王連合国が古代ベルカ時代、オリヴィエを使った“聖王のゆりかご”が空から消えて以降はどうなったか与り知らないが、恐らくは野に下り密やかに市勢に紛れた後に血族は分散されていって、聖王家の薄く薄くなった血を持つだけの一般人がミッドチルダには相当な数が居る筈。
そんな中でも極めて血を強く産まれた人間の中には強く成った者も居て、それがゼスト・グランガイツでありメガーヌ・アルピーノかも?
実際にシュトゥラ王国の血族としての自覚を持つストラトス家、雷帝家傍系の血筋を誇りに持って生きるダールグリュン家も居る。
ストラトス家は偶に覇王イングヴァルトの記憶をまるで呪いの如く受け継ぐ者が居る為であり、現代でもハイディ・アインハルト・ストラトス・イングヴァルトが記憶を受け継いでいる筈。
ヴィクトーリア・ダールグリュンとは違うのが純血統な事、傍系王族では無くてイングヴァルトの直系という事になる
尤も【魔法少女リリカルなのはVivid】の時でさえ一二歳なアインハルト、つまりは今現在であれば産まれて間もないか或いは産まれてもいない。
それは兎も角、抑々にして子を成してもいないオリヴィエの直系は閉ざされていても、聖王連合国というだけあって聖王の血筋は幅広く存在していたのだから、捜せば“聖王核”に適合が出来るであろう人間も見付かるものだ。
「っ! 見付けたぞ」
気配が在った。
ユートがその気配に向かって転移をしてみれば長い銀髪、右目から血を流す見た目には一二歳か其処らの少女が紫色の長髪で顔が隠れているが、間違い無くメガーヌ・アルピーノであろう遺体を持ち上げている。
小さな声で『せめてドクターの役に立ってくれ』とか抜かしており、見た目からスカリエッティ・ナンバーズの五番だと判った。
「見付けたぞ、チ○コ!」
「誰が
女性に対しては間違い無くアウトな言葉で止められて、スカリエッティ・ナンバーズの五番である処の
「人の名前を間違える果てに……だ、男性器みたいに呼ぶとは!」
「人? ドクター・ジェイル・スカリエッティの道具であると肯定するスカリエッティ・ナンバーズの戦闘機人が、自身を人間の端くれだと宣うとは笑わせてくれるな?」
「っ!? ドクターの事や姉達、戦闘機人に付いても知っている?」
驚愕するチンク。
「何を驚く? 時空管理局の研究部門に嘗て所属をしていたテスタロッサ女史に記憶転写型
「っ! プレシア・テスタロッサ女史にドクターが与えたプレジェクトFか!?」
「ああ、そうともさ。そういう意味じゃスカリエッティにも、奴を造った最高評議会にも感謝してやるよ。お陰でフェイトとアリシア、若返らせたプレシアが手元に来てくれたからな」
「上から目線で言ってくれる」
苦々しい表情で言うチンク、しかも然り気無くスカリエッティと最高評議会の関係性に付いても言及をされているし。
「それに普通なら子持ちで年下なぞに目もくれないだろうメガーヌ・アルピーノ、彼女との交渉の余地が得られたから君にも感謝してやるともさ」
「なっ!?」
「僕は別に正義の味方じゃない。昔は
世界征服の野望に燃える祖父の夢を叶えるべく孫娘が悪の女幹部宜しく、痛々しいコスチュームを身に纏って正義の味方とドンパチしていたのを助け、正義の味方を故郷の星へと帰還せざるを得ないくらいに痛め付けてやり、正義の味方の正体を知らないヒロインの少女を捕らえてしまって、その後は御目々グルグルな感じにして世界征服を成し遂げる……正しく悪党極まる話。
「ドクターや姉達も悪の自覚は有るが、お前も相当な悪党に思えるぞ?」
「僕は『愛と平和を守る聖闘士』ではあるけど、『正義』とやらを守る訳じゃ無いのさ」
ユートは再誕世界に於いて戦女神アテナに仕える“アテナの聖闘士”をしていたし、何なら聖闘士の最高峰たる一二人の黄金聖衣を戴く双児宮が主として黄金聖闘士・双子座の優斗だった。
更に文字通り双子として優雅にも双子座の黄金聖闘士をして貰い、双児宮の守護を優雅に任せて自由自在に世界を動き回る役割を果たしたもの。
「セイント? ドクターの所に来た黄金の鎧を纏う女もそんな事を言っていたな」
「ほう、黄金聖衣の持ち主の一人か。女性だったのは悪くない情報だな」
百合百合しい女性でも無い限り数の子狙いじゃあるまいし、仮に百合百合しい女性だったとしてもそれはそれでアリと考えている。
BLは自分の居ない場所でなら勝手にしてくれとは思うが、決して自身をそんな悍ましい事には関わらせたいとは思わない。
顔立ちが女性系で細身で肉体的にも女性ならば生えていても良いし、何なら生やしてやっても構わないくらいには感性が壊れているけど、純粋に男が相手では流石にユートも勃たないのだ。
鮎川優奈や大喬みたいな生まれ付いての両性具有者や、ギャスパー・ヴラディやアストルフォや黒羽文弥みたいな後天的な両性具有や女性体ならば勃つのだが……
ユートが知るのは基本的に九九%が女性体にして一%の♂な部分を持った、或る意味で理想的な両性具有者だからこそ……ではある。
(スカリエッティ狙いかな?)
別の理由が有るかも知れないし、其処らの事情は本人にでも会って訊くしか他にあるまい。
「因みに何座と言っていた?」
「何座? ああ、守護星座とかいうやつか? 確か蠍座のエウラリアとか」
「エウラリアって、本人か?」
蠍座のミロが女体化をした様な容姿をしているものの、後ろ髪には巨大な赤いリボンを着けて考え方は間違い無く乙女のソレで、オタク程では無いにしても日本のサブカルチャーに詳しいなど中々に面白い娘、城戸沙織の次世代に当たるアテナの時代の蠍座を襲名していた。
本人か、若しくはエウラリアを識る誰かしらが彼女のガワと蠍座の黄金聖衣を獲たのか?
(詳細は会ってからだな)
それは扨置き、今は目の前で逃走をする隙を窺っているチンクをどうにかするべきだ。
「居るよな、地中にもう一人……ISディープダイバーか。ならばスカリエッティ・ナンバーズが六番――セイン」
「「っ!」」
セインの事も、況してやISの事も熟知している事にチンクは於ろか地中に潜むセインも驚愕。
チンクは逃げろと合図する。
「ふーん、逃がしたか」
「色々と此方の事情がバレているみたいだな? 何処からこんな情報を獲たのか教えて貰おう」
チャキン! と硬い金属音を鳴らせながら手には幾本かの短剣が握られていた。
見た目だけなら苦無にも見える六本の短剣には特に仕掛けは無く、これはチンクの持つ特殊能力であるインヒューレント・スキル――ISの方にこそ秘密が有る。
ISとは先天技能の事、戦闘機人を戦闘機人足らしめている様々な能力が発現していた。
例えば、タイプゼロ・セカンドとスカリエッティ陣から呼ばれているスバル・ナカジマ、彼女が謂わば戦闘機人モードに成ると“振動破砕”というISを発動する事が出来る様になる。
戦闘機人が一人に付き一つのIS、そして彼女――チンクも当然ながらそれを持っていた。
IS“ランブルデトネイター”――その能力とは金属に爆発を引き起こすというものだ。
つまりは彼女の手の
ユートは現在の状況から幾らかを察しており、原典では確かチンクとゼストが闘って彼は敗れて死亡、チンク自身は右目に損傷を受けて戒めにか傷の再生はしないでアイパッチを着けていたが、ゼストの遺体が無いのと彼が着けていたであろうライオットギアらしき灰、そして原典の通り右目に損傷を受けている目の前のチンクという状況、ライオットギア付きのゼストはチンクでは相手に出来ず、蠍座のエウラリアが彼を斃して遺体を持ち去ったのだと理解が出来る。
チンクは後片付けか? 多少の道筋が変わった様で、恐らくは仮死状態なメガーヌ・アルピーノの遺体を運ぶ手筈だったのだろう。
(ゼストの遺体は持ち去られてしまったみたいだけど、クイントは原典の通り置き去りでメガーヌも今此処に。更に戦闘機人であるチンクまでもを手に入れるチャンスと来たもんだ)
チンクは見た目が幼いけど、一応はナカジマ家に養子に成った際には次女扱いだったのだから、少なくとも大人の心算はあるのだろう。
「此方としては知り合いの知り合いという感じではあるが、その知り合いにとっては正しく無二の親友らしいからな。それを殺害してくれたんだ、酷い目に遭う覚悟は出来ているだろうな?」
「此方はドクターからの要望でね、理由など知る必要性はあるまいよ」
「レリック・ウェポンの素材だろ? 知らないと思うなよ!」
「っ! どうやらお前は此方の事を知り過ぎているみたいだな」
短剣――チンクの固有武装であるスティンガーを持つ力が強くなる。
「知らないという罪と知り過ぎる罠、はてさて? どちらがマシなのか……ねっ!」
投擲されたスティンガー、頭を軽く反らす事で紙一重の隙間程度にユートは躱した。
カカッと柱や壁や天井に突き刺さるスティンガーはアトランダムに刺さった感じはしないから、恐らくはユートを誘導して爆発に巻き込む心算での投擲なのだろうと推察が出来る。
初見殺し、確かに初見ならばユートでも割かし引っ掛かったかも知れない。
「ふむ」
中には避ける事が叶わない絶妙な位置にまでも投擲をしており、罠は飽く迄も罠でしかないのだという闘い慣れを感じさせる。
「“
「莫迦な!? 高濃度のAMF内で? 否、違う、魔力反応が無い……だと?」
端から視れば成程、魔法障壁を展開して防いだ様にも見えたのであろうが、スカリエッティ陣営大好きなAMF――アンチ・マギリング・フィールドという魔力結合を阻害するフィールド系魔法、これを機械式にて展開させる事に成功をしているからこそ魔導師殺し足り得るのだから。
だけど生憎とこれはユートの念能力――破壊神之左掌という、ジェネシックガオガイガーの能力を生身で扱える様に再現した防御技。
通常のガオガイガーの技ならガオファイガーの技より攻撃力や防御力は下回るが、イメージ的にユートが使っているのはガオファイガーより上なジェネシックガオガイガーのモノだ。
ファントムリングやウォールリングを用いた技である処の、ブロークンファントムやプロテクトウォールよりも高い攻撃力や防御力を誇る。
また、ガオガイガーのブロークンマグナムとは高速回転させた腕を二の腕から切り離して撃ち放つ技だが、ジェネシックガオガイガーのブロークンマグナムは拳のみを高速回転させて撃つ。
丁度、今のユートの如く。
「“
放たれた拳、だけど当たり前の事ながら本当にユートの拳が切り離された訳では決して無い。
飽く迄もオーラを拳の形にして放っただけで、ユートの本当の拳は普通に付いている。
チンクはその回転しながら迫るピンクの拳を視て即座に察した。
(これは受けたら拙い!)
何とか躱そうと身を捻るも……
「ぐあっ!」
右の二の腕に直撃してチンクは腕を破壊されてしまう。
戦闘機人の腕や脚は機械化されているが故に、痛みは有れど致命的なダメージでは無いのかも知れないが、それでもダメージはダメージなだけに戦闘の真っ只中ではキツい。
尚、子を産む機能は生身の侭で損なわれていないので妊娠と出産は可能だ。
(片腕にしたからマッスルリベンジャーやマッスルスパークは難しいな。マッスルインフェルノなら可能だけど……)
マッスルリベンジャーやマッスルスパークは、両腕を極める性質上から腕が無ければ使えない。
マッスルインフェルノはサーフボードに乗るかの如く、背中に乗った形で空を飛んでド頭を壁へとぶつけるちょっと雑な奥義である。
とはいえ、見た目だけなら単に背中に乗るだけである為に腕など無くても構わない技だ。
どうでも良いが、ユートがマッスルリベンジャーを女性相手に仕掛けると何故か、股座の部位が弾け飛んで大切な所が丸見えに成った挙げ句に気絶して括約筋が弛むらしく、目の前で失禁をしてくれるくらいにマニアックな状態に成る。
幸いなのは、ナニがとは云わないがユートに掛かったりしない事か。
ユートは壁を天井を床を蹴り上げるくらいの勢いで素早く動き、チンクの背後を取ると背中を蹴って勢いよく上へ舞い上がり、彼女をサーフボードにして飛翔をしていた。
「マッスルインフェルノッ!」
「うわぁぁぁぁぁぁああああああああっ!?」
ズドンッと轟音と共に壁に頭から突っ込まされたチンク、暫くは水平を保っていたけどピクピクと痙攣をしたかと思えばガックリと力を喪って、両脚が重力に任せてグッタリと落ちた。
ジョロジョロと温かな水分が流れているけど、スカリエッティの戦闘機人が着ている服装のお陰で外にまで粗相は見えていない。
尤も、後から治療ポッドに入れるべく全裸にした時の臭いから失禁をユートにバレたけど。
「よし、終わったな」
仮死状態で倒れたメガーヌと、気絶して壁の愉快なオブジェと化したチンクを抱えるとクイントの遺体を捜し、見付けたら此方も抱えて転移をして星帝ユニクロンの内部たる医務室へと向かう。
死んだクイント・ナカジマは扨置き、仮死状態のメガーヌはポッドに入れてしまえば肉体を修復して甦生も叶う、チンクも機械化されているから腕は後程に修理するとして、生身の部分の怪我に関してはポッドで治療も出来るから此方も取り敢えずは放り込んでおく。
「クイントを生き返らせるか。今の僕なら普通に黄泉返らせる事も叶うだろうが……残念ながら僕は対価無しに何かをしてやる事は無いんだ」
クイントの亡骸を見詰めながら薄暗い笑みを浮かべながら呟くユート。
「『我は願う。それは深淵の底より来る者、忌むべきはその非道の行い。我が下僕となりて死界の穴より這い上がれ、その威名を以て我はクイントに命じよう……』」
それは聖句、神を神足らしめている力――権能を神々より簒奪した
相手の名前を識っていれば遣り易い。
「『
権能の名前、ユートが自ら名付けたその威名は【とある魔術の禁書目録】に登場するカエル顔の医者に付けられた二つ名、生きてさえいれば必ず戻して見せると豪語する“冥土帰し”のもの。
この権能は冥王ハーデスから獲た三つの権能の中でも一番弱い、何故なら“冥王の箱庭の掟”と“
天輪する一〇八の魔星”は冥王ハーデスが本体を以て或いはそれに近しい状態で神氣を獲たけど、この権能は【聖闘士星矢~NEXT DIMENSION~】に於いて、アローンに宿って彼の意志が強く働いていた時期に神氣を喰らった為に量も質も前者の権能に劣るのだ。
その効力は一二時間限りの甦生。
冥王軍が聖闘士を手駒に加える際に聖闘士達に与えたシャバの空気を吸える時間、云ってみれば一時的な甦生期間を与えるだけの権能である。
「うっ……んん……」
艶かしい声を上げながら、然し死んで血の気が失せて真っ白だった肌には血が通い始めたのか、生きている人間としての脈動感に溢れる肌色に戻っているものだった。
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なのは撃墜事件は存在しなくなるから、せめてこれをやっておかないとStrikerSが始まらない。
とはいえ、情報が余り無いから可成り適当に覚えている部分のみ抜粋をした感じですが……