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「何か、異様な光景だよな」
タラ~リと冷や汗を流しながら、五人の姿を視てヴィータが呟いた。
普段は特に訓練へと加わらずに、新人や準新人扱いなヴァイスの遣ってる訓練を見守る立場を崩さない、然しながらある程度の基礎が固まれば熱い内に叩けるだけ叩く心算だ。
シグナムにしても自身は古いタイプの騎士で、『届く距離まで近付いて斬れ、それだけだからな』などと言って憚らない。
フェイトは訓練を見たがるのは良いのだけど、時空管理局と無関係な地球でも仕事は割りと有るからか、余り訓練場に来れないから休みを利用しては訓練をしているスバル達にお土産を渡す。
故に原典では前線で闘う立場にして教導官でもあった高町なのは、通常の訓練を今現在付けているのは彼女一択にも近い状況だ。
普通に聖祥大学へと通うアリサとすずかは矢張りキャンパスライフが重要、それに聖祥大学附属小学校に通ってた頃から訓練していたから、今更ながら新人に併せた訓練をした処で特に意味も無かった。
かといって、高度な訓練を遣らせた結果として新人が自主練して怪我しました、そういう要らない事態はユートとしても要らないから。
尚、この二人も余り教導には向いていない。
教導に遣り甲斐を感じるなのは、スキル欄の中に【教導B】を持ったユートだからこそのもの。
ユートのこれは、遣る気と資質が有るのならば確実にスキルや魔法を修得が叶うし、正しい手順を教えている上で訓練をすれば強くなれる、そういうものだから目の前の新人には丁度良い塩梅。
だからこそ、キャロには出逢って間もない頃に少しずつ訓練を遣らせていたし、特に必要性が高いであろう召喚制御術は真っ先に教えた。
恐らくキャロは当時、ちゃんと覚えないと捨てられると勘違いをしていたのか、多少キツい訓練にも根を上げずに着いてきたものだ。
資質が無くとも遣る気さえ有れば修得は可能、然しながら逆に資質が有れど遣る気が無かったならば修得は不可能、ユートの【教導B】の効果はそういうモノだったからこそ、キャロは召喚制御術を確りと修得が出来ていた。
「で、ユート。こんな異様な光景を作った張本人としてどうなんだ?」
「そうは言ってもな。魔力式念能力を教えたんだから、普通の念能力も教えておきたいだろうに」
「は? 何でだよ?」
「クロノ、覚えてるか?」
ユートの質問に頷く。
「そりゃ、数年は会ってねーけど覚えているさ。アタシの記憶力を莫迦にすんじゃねーぞ!」
「以前、クロノから依頼されてね。なのは達に比べて自分の能力が低いってさ。その際にクロノに念能力も教えたんだ。ま、実際には咸卦法っていう氣力と魔力の合一法をだけどな。それによってクロノの戦闘能力は爆上がりしているからね」
「成程な」
魔力だけ氣力だけなら、同時に扱おうとしても反発して上手くはいかないのは織り込み済みで、なら融合して咸卦の氣に変換したら良いと。
「まぁ、新人共が将来的に使えんなら良いさ」
元々が魔力を物質化した存在であるヴィータ、彼女は飽く迄も人間をフル・エミュレートしているに過ぎず、その気になれば成長しないけど老いも無く、主からのリカバリーで多少のダメージは直ぐにも消える。
五感も有るから食事も愉しめる、何ならユートとの関係みたいな事だってヤろうと思えば可能。
だが当たり前だが氣は持たない、ヤる事をヤっても子供を授かる訳も無く、ヴィータだけでなくシグナムやシャマルやリインフォースⅠや同じくリインフォースⅡ、紫天ファミリーみたいな存在は昔は気にも留めなかった事ではあるのだけど、今は少しだけ気にしているみたいだ。
誕生して一〇年も経たないリインフォースⅡは大して気にしないが、実際に稼働年数の幾らかを経れば、いつしか気にする様に成るだろう。
「お~い、ヴィータ」
「んだよ、アギト?」
「シグナムが呼んでんぞ」
どうやらシグナムからの御呼びの伝言らしい。
「判った。んじゃ、ユート。アタシは行くから」
「ああ」
リインフォースⅡと似たり寄ったりな背丈で、赤毛に悪魔みたいな羽根を持つ妖精らしき少女に呼ばれ、ヴィータは手を振り歩いて行く。
アギト、原典ではゼスト・グランガイツが既に生ける屍に成った頃、違法な研究所から救い出してその後に自由に生きるより、自身を助けてくれた『旦那』やルーテシアの為にと動いていた、古代のベルカで生まれたユニゾンデバイス。
地球に居る事からも判る通りで、この世界線でアギトを助けたのはユートだったからであろう、あの悪逆非道な研究所から自分を救い出してくれたユートに懐いているのは勿論だけど、共に動いていたメガーヌやクイントにも感謝をしている。
そして、普段はメガーヌの娘たるルーテシアの御供妖精だ。
ルーテシア・アルピーノはキャロの幼馴染み、そして彼女は普段だと【StrikerS】の四年後みたいにカルナージで、アルピーノ旅館を実際に経営しながら自然豊かな林間学校の拠点に近い場所として、アスレチックな訓練所を造ってしまった。
原典の頃のルーテシアでは無く、性格的に視れば【Vivid】の方。
直接的に【聖域】へ関わりはしない立ち位置、然しながらいつか合宿みたいに行く筈である。
ユートの訓練は模擬戦さえしなければ激しさや派手さに欠くが、着実に強くなれるのが実感的だったからか原典の様なは起きない見込み。
そういう意味では、なのはの派手な訓練に加えてアルピーノ旅館は良いバランスなのであろう。
「なぁ、ユート」
「どうした?」
「偶にゃ、ルールーん所にも顔を出してくれゃ」
「うん? そうか」
「アタシだって偶には相手して欲しいんだぜ?」
頬を朱に染めつつも言うアギト、ルーテシアの事が単なる言い訳とかでは無いのだけど、助けられた時にユートを視て遂々赤らめたものだ。
助けられた時、見た目がオッサンなゼスト・グランガイツだった原典だが、この世界線に於いてはそれなりに整った若い顔立ちなユートで、小さめなユニゾンデバイスであったアギトも、性質的な女という部分を刺激されたらしい。
とはいえ今は一〇歳なルーテシアは当然だが、アギトも別に今現在はそんな関係には無かった。
ユートは笑顔を浮かべてアギトの科白に首肯をする。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
再びスバル達の訓練を視た。
魔力で無くオーラによる【絶】、魔力を下手に使うと反発でどちらも使えなくなるだけである。
スバルやティアナやキャロやヴァイスの四人のみならず、【聖域】ミッドチルダ支部に出向をしていたギンガ同じくオーラの【纏】を。
「魔力で遣っていただけあってか、オーラでも確りと遣れているみたいで皆頼もしい限りだな」
「ユートさん!」
スバルが嬉しそうだが、それは全員が同じだ。
「そろそろヴァイスとギンガも水見式を行って、次のステップに移ろうかと思うがどうかな?」
「わぁ!」
「本当ですか?」
「やったー!」
「マジかよ」
「責任重大ね」
それは即ち認めて貰えたという事だったから。
早速とばかりに水見式を行ってみた結果だが、ヴァイスの場合は水の色が緑に、ギンガの場合は普通に水嵩が増えた事から放出系と強化系。
ちょっと順当に過ぎていた。
「さて、応用技に行く前に遣って貰う事が有る」
「遣って貰う事ですか?」
「オーラ、詰まり氣。これと魔力を一つにする」
「氣と魔力を一つに?」
スバルは首を傾げる。
「陰陽の合一。相反するモノを一つに纏める力、因みに言うとクロノはこれを修得しているから」
「クロノって、時空管理局の提督の人ですか?」
一応、ティアナもクロノについて知っている。
クロノ・ハラオウン、時空管理局の執務官という資格を持ったL級八番艦アースラの元艦長で、現在はXV級クラウディアの艦長で提督。
特に時空管理局に所属をしていたなら執務官の地位は憧れる。
現状で飛べないティアナは射撃一本の魔導師だから、上を目指すのなら執務官の地位は可成りの大きなアドバンテージに成るからだ。
飽く迄も、時空管理局の局員だったらだけど。
「それで、その遣り方を教えてくれるんスか?」
「そういう事だ、ヴァイス」
矢張りというか、ちょっと小者臭がする喋り方は笑いを誘う。
「けど、反発するモノを一つになんて不可能だと思いますけど? そんなの炎と氷を混ぜろって言っている様なものじゃないですか!?」
「成程、成程。ティアナの言いたい事も間違いないな。だからちょっと例題として見せようかね」
「……え?」
まるで簡単だと謂わんばかりで、ティアナはキョトンとなる。
「右手にはメラゾーマを、左手にはマヒャドを。二つの力を一つに……ゲム・ギル・ガン・ゴー・グフォ、デストルクティオー!」
命を意味する『ウィータ』で無く破壊を意味する言葉、本来は“ヘル&ヘブン”を使う際に口ずさむ言霊であり、敵の核をぶち抜く必殺技のモノではあるのだけれども、今回は純粋な破壊の為にのみ使うから破壊の言霊を入れてみた。
両手を組むと炎と氷のエネルギーがバチバチとスパーク、魔力的な相転移を引き起こす事により性質が変化して消滅呪文に変転をする。
その格好は矢を番えるアーチャーみたいであるけれど、その肝心の矢は消滅エネルギーであるという物騒な事この上無いモノだった。
そしてユートはアギトに目配せ、それを受けて予め決めてあった二〇機ものガジェットを出す。
「
撃ち放たれた消滅エネルギーが、ガジェットを一気に二〇機在るその全てを消滅させてしまう。
ポカ~ンとなる五人。
「これが相反するエネルギーの合一ってやつだ。君らに遣って貰うのはこれとまた別物な技術で、咸卦法と呼ばれている。その効果は肉体強化に、物理・魔法防御、加速、鼓舞、耐熱、耐寒、耐毒その他諸々の効果を得るって万能性なもんだ」
『『『なっ!?』』』
説明をされてまるでチート級な余りの効果に、そんな話を聴かされていたスバル達は一様に驚愕をする。
「実際に咸卦法を使えるだけの一四歳の少女が、寒い雪山で過ごしていて生き抜けるんだからな」
「おいおい、マジなのか?」
単なる中学二年生か三年生の少女でしかない、そんな人間が咸卦法を使えるだけでそんなだとかジョークにしか思えない話に、最早ヴァイスは呆れるしかなくて困る。
尚、それは原典に於ける神楽坂明日菜の事だ。
「あの!」
「キャロか、どうした?」
「ユートさんが唱えてたのは詠唱でしょうか?」
「うん? 違うな。あの呪文みたいなのは確かに言霊を含むけど、あれは“ヘル&ヘブン”っていう攻撃エネルギーと防御エネルギーなんて相反するモノ、それを一つにして爆発的な力を獲る必殺技を使う為の言霊。それに最後の部分にしても、本来であるならば“デストルクティオー”じゃなくって“ウィータ”だしな」
「そうなんですね」
どうやらキャロも納得したらしく頷いている。
「で、これが咸卦法だっ!」
ユートは右手に魔力、左手に氣力を発してやると柏手を一つ打って溢れた相反する力を混ぜた。
その瞬間、咸卦の氣に全身が包まれてユートが輝く。
「これが咸卦法?」
ティアナは感じる力に我知らず固唾を呑んだ。
ティアナは……否、誰しも個々人で違いこそあるにせよ何らかの理由から力を求めているもの。
勿論、力の種類は異なる。
例えば野球選手で打者なら打撃力が欲しいし、アイドルであるならば
まぁ、アイドルが筋力とか獲ても噛み合わないから要らないが。
「附加される能力は高い、然し欠点が無いって訳でもなくてね。高出力で氣力と魔力を滾らせる、詰まりはガス欠するのが当然早いんだ」
然もありなんと頷く五人。
因みに【閃姫】がこれを遣ってもガス欠に成ったりはしない、何故なら彼女達は恒星で数個分の莫大なる純粋エネルギーを使えるからだ。
抑々、恒星が一個分でも【閃姫】の全員が千年くらい使い続けても尽きない程のエネルギーで、個人での内部魔力だけでは無いのである。
ユートのエネルギーは外部から取り込む事などもしているし、ユートの場合は通常のMPが一時的に増えるのではなく、最大MPの方が上がっているから取り込む度にユートのエネルギー値は上がっていく。
更に“無限”に取り込めるユート、決してパンクしたりはしないから既に相当なエネルギー量だ。
この“無限”の素養が、無限の龍神オーフィスに刺さったらしい。
どうでも良いが、オーフィスは基本的にユートの精神領域に棲み付いており、外に出ていないから異世界でも何ら問題も無く存在してる。
普段はユートの精神領域内の静寂に身を任せながら、闘いなどでその必要性があってユートが喚べばその召喚に応じて喚ばれていた。
それ以外でも静に身を浸すのに飽いたならば、性に身を任せる為に外へと勝手に出て来る事も。
「さて、始めようか」
『『『ハイッ!』』』
「二つの力を一つに! ゲム・ギル・ガン・ゴー・グフォ……」
早速だと、スバルがユートに倣って言霊を呟きながら両手を組む。
その右手には魔力を宿し、左手には氣力を宿しての陰陽合一法。
「うわっ!?」
相反する故に、中途半端なエネルギーでは対消滅を余儀無くされた。
「存外と難しいわね……キャッ!? 上手くいかない!」
割と器用なティアナも失敗する。
ヴァイスとギンガも失敗をして、唯一キャロのみが一瞬だけ成功。
「ふぅ……」
「す、凄いよキャロ!」
スバルが笑顔で誉めた。
僅か一秒間の成功では実戦に使える筈も無い、然し失敗した訳では無いからには後は長く時間を保つだけであり、キャロとしても早期の成功者としては上手く遣りたい処。
(矢張りもっと幼い頃からこの技術に触れてきた熟練者だったからな、キャロも流石に長持ちしなかったとはいえ成功したから喜ぶべきだ)
「あの、成功の秘訣とかって無いもんっスかね」
考え事をしてたらヴァイスがふと訊ねて来る。
「虚無に身を委ねろ」
「……へ?」
「何も要らん事を考えず、心を無にして咸卦法を行え」
「んな、無茶苦茶な……」
ヴァイスは言うが神楽坂明日菜も似た様な事を言っていたのだから、恐らくは間違いは無い筈であろう。
結局、咸卦法を初めて訓練をした最中に成功した者はキャロのみで、キャロも成功はしているものの矢張り時間という意味では短いものだ。
(仕方が無いとはいえ、矢張り難しい技術かね)
嘗て、ユートに『強くなりたい』と教えを請いに来たクロノ・ハラオウンにしても、咸卦法を教えて直ぐに修得をする事など出来なかった。
訓練も終了、夜に成って食事も摂って勉強も終わった為に、ユートはヴィータと共に風呂に入り閨へ向かうと、互いを慰め合いながらヴィータは何度も何度も何度も絶頂へと導かれてイッたのだと云う。
この時ばかりは男勝りな口調では無くなって、まるで
恐らくは古代ベルカの誰かしらな人間の少女をフル・エミュレートしている為、オリジナルである少女の特徴をも受け継いでいるのだろう。
守護獣たるザフィーラは兎も角、シグナムとシャマルは矢張りオリジナルが居たと思われる。
「相変わらず夜の性活がつえーよな、ユートは」
「そういう風に鍛えてますから」
何処ぞの鬼みたいなポーズを決めながら言う。
「鍛えて何とか成るんかね?」
存外と寂しがりなのか、ヴィータは終わった後のピロートークの時もユートに肢体を擦り付けてくる。
お陰でJr.が復活して困った。
「にしても、新人連中で咸卦法? あれをきちんと修得した奴は誰一人居なかったみたいだが?」
「キャロが漸く四秒保っていた程度だからな~」
「んなん、使いもんに成らねーよ」
「一日でモノに成る訳も無いさね。クロノだって“精神と時の部屋”的な場所で一年間も修業をしてやっと、咸卦法を修得したんだしな」
「…………ユートはどのくらいで覚えたんだ?」
「ソッコー」
「駄目じゃねーか!?」
ユートは元より前々世で【緒方逸真流喪失技法・錬術】で氣力の扱いをしており、転生をしてからは魔力を扱ってきた上に混沌の力を内包していた為、複数の力を混ぜるのも実は可成り御手の物である。
実際にユートが小宇宙の修得をする事が出来たのも、氣力と魔力と霊力と念力を融合昇華する事によって源流である小宇宙に変換したから。
故に咸卦法もあっという間に修得してしまう。
「まぁ、確かに一朝一夕とはいかねーんだよな」
ヴィータも難しいのは理解をしているらしい、彼女は基本的に使える力がインストールされているから、技術を覚える手間が有った訳では無かったのであの物言いだったけど。
翌朝、ヴィータは欠伸をしながら起き上がる。
「ふわぁ~」
「御早う、ヴィータ」
「はよ~」
原典では年頃の男が居なかった――クロノ・ハラオウンには相手が居たし、ユーノ・スクライアは仕事人間で余り傍に居なかった――為、同い年の少年が居たキャロは兎も角として、他の女性陣に男の影は全く以て無かった。
然しこの世界ではユートが居て、更にヴィータは於ろか他の女性陣も色々と救われていた訳で、結局はユーノも殆んど地球には居なかった事もあってか、こうしてだいたいの娘とイチャイチャと出来てしまう仲に成ってしまっていたのだ。
シグナム、ヴィータ、シャマルにしてみても、主である八神はやてを救われているからだろう、元より仲好くしていたからこんな関係に。
特になのは達が小学生だった事も手伝ってか、成年として設定されていたヴィータ? 達が相手をして、ユートの性欲を解消して貰った。
「んじゃ、アタシは爺ちゃん達とゲートボールに行ってくっから」
「頑張ってくれ、ヴィータ」
「応よ!」
ユートの激励に応えるヴィータ、時空管理局とは違って【聖域】では休みを確りと与えている。
拠点が日本なだけに、ブラック企業も真っ青な企業体質では居られないから、週休二日制というのは難しいし、全員が一度には休めない。
まぁ、自衛隊とか思えばおかしくはなかったりもするのだが、【聖域】は軍隊でも自衛隊でも無い言うなれば傭兵団体な企業に近い。
従って、そんな体質には出来ないのであった。
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