メタリックガーディアン・プロミス 『桜の舞う島で』 作:戒炎
物語の始まりです。
基本的に「第○幕」「side-○○」で始まります。
いろいろ突っ込みどころはあるかもですが・・・
怒っちゃや~よ♪(イラッ
第1幕
side-東屋コウジ
吹き抜ける風。舞い散る桜の花びら。宵闇を照らす月明り。
目の前には島の名所、丘桜。
俺は今、夢を見ている。
でなければこんな時間、こんな場所に居るわけがない。
夢を夢だと自覚することを何と言ったか・・・駄目だ、忘れた。
とにかく、これは夢だ。誰が何と言おうと夢だ。出なければ俺が真夜中にわざわざ珍しくも無い桜を見るために徘徊する怪しい
男子高校生ということになってしまう。ソレは嫌だ。
だが何故、今更丘桜の夢など見るのだろう。
確かに思い出の一つや二つはある。それが大切なモノだという自覚もある。
ふと樹の下を見ると、人影を見つけた。
黒く長い髪、透き通るような白い肌、これまた真っ白なワンピースを着た、一人の少女。歳は俺と同じくらいだろうか。
月明りに照らされた彼女の姿は、何と言うか神々しく、その、正直見惚れるほど美しかった。まるでこの世のものとは思えない
ような、神秘的な雰囲気を纏っていた。
それでいて、幼い頃からずっと一緒だったような親近感と安心感。初めて見る少女のはずなのに。
形容する言葉が見当たらないほど、彼女は『異様』だった。
『異様』はまだ続く。
彼女の、正確には丘桜の後ろに、巨大な影が現れた。
それは人の形をした何か。膝を付き、少女に対して礼をとる様な姿の巨体がそこにあった。
その時、彼女が俺に手を差し伸べ、何事かを呟いた。
「目覚めなさい、コウジ。その王の腕に。」
俺に対し、呪文めいた何かを。
「目覚めなさい、コウジ。己が運命に。」
俺は吸い込まれるように、その手を・・・
「目覚めなさい・・・目覚めなさい・・・目覚めなさい・・・」
「起きろーーーーーーーー!!!!」
頭に響く怒鳴り声と共に夢は終わり、俺の一日は始まりを告げた。
「まったく、ボクが気を利かせなきゃ、どうせいつも通りに登校する気だったんだろ?」
「いつも通りの何が悪いんだよ。言っとくけど、初等部から皆勤賞なのが自慢だぞ?」
「そうじゃない!今一番忙しい時なんだから、皆早めに登校しようって決めたでしょう!?」
学校への登校中、俺の隣でがなり立てるのはこの俺、東屋コウジの幼馴染であるとことの神楽坂マコト。
家が隣通しな上親通しも幼馴染であり、自然と一緒に育った。
一見すると面倒見のいい、まぁ可愛い部類に入る少女だが、これがまた凶暴。
空手道場の娘で彼女自身も空手の有段者。怒ると口より先に手が出る(何故か俺限定)。
その一撃は壁を凹ませ、大男を投げ飛ばし、蹴れば木製バットを粉砕するという特A級危険生物っと。
軽く屈む。すると俺の顔があった場所に切れのある裏拳が飛んできた。
「何か失礼なこと考えてただろ?」
「別に?」
そんなことを駄弁りながら、桜並木を歩いていく。
イズモ特別区の離島、桜花島。およそ円形をしており、大きさは約7km。
どこにでもあるような島だが、不思議な所が一つある。
それは、一年中桜が咲き誇っていることだ。
春はもちろん、夏、秋、冬に至っても桜の花が消えることは無い。
本土でも有名らしく、時期になると花見のスポットとして紹介されることもある。
その調査の為、最近になりフォーチュンが支部を造り、島を調べている。
住人にとっては今更感があるし、危険でなければそれでいいと思う。
そうこうしている内に、我らが母校、桜花学園に着いた。
それなりに広いとはいえ離島は離島。学校はこの一校しかない。
初等部から高等部まで。生徒数は・・・どれぐらいだろう?数えたことも無い。だが一つの市とも言えるこの島。数千人は居るだろう。
基本的に中等部から高等部はエスカレーター式。時々本土の高校や専門学校に進学する奴も居るが、大抵はここを卒業する。
卒業後も本土の大学へ行くか、地元で就職かで別れる。本土に負けないくらい桜花島は発展しているので、就職先も多い。この島で一生を終える者も多い。かく言う俺も地元就職希望だ。
長くなったが我らが母校、もうすぐ学園祭なのである。
季節は5月。新学期から一月。学校全体がお祭りムードアーンド修羅場。
「ほら、早く早く。みんなもう作業してるよ。」
我らがクラスの実行委員であるマコトは意欲満タンガソリン満タン。
「って言っても演劇だろ?俺役者組からあぶれたし」
やる気はガタ落ち。毎日毎日大道具をトンテンカンテンやってれば疲れも出てくる。
「そんなこと言わずに。裏方だって大事なメンバーだよ。元気出して。張り切っていこう!」
まったく、元気娘はいいですな。
役者、やりたかったなぁ・・・。
第2幕
side-マイケル・ダートン
「突然呼び出して申し訳ありません。火急の事態ですので。」
僕の前、フォーチュン桜花島支部長の伊達ミウコ司令は話を切り出した。
彼女は9歳という幼さながら桜花島の調査、及び有事の際の防衛を任された才女だ。その能力に、支部の誰もが一目を置いている。
「任務、と言う事でよろしいのですね?」
僕は敬礼のまま尋ねた。
「はい。単刀直入に言いましょう。とある少女にアビスシードの反応が発見されました。」
アビスシード。アビスシードを開くための因子。これが解放されれば、アビスゲートが開かれる。
アビスゲートは開かれれば莫大なエネルギーを生むが、同時に周囲に多大な被害をもたらす。
都市の壊滅、奈落汚染、奈落獣の発生。アビスゲートの解放は、一国を滅ぼしたことさえあるという。
アビスシードの除去は、対テロリスト、対奈落獣に列を成すフォーチュンの任務だ。
「この島に来て1年。アビスシードの件は初めてですね。」
「はい、もともと我々はこの島の調査と防衛が主な仕事でしたから。」
桜花島最大の謎。枯れない桜。
フォーチュンや連邦は、以前はこの以上に対しあまり関心を示していなかった。
人員不足、というのもある。テロ組織『ディスティニー』によるテロ行為や奈落獣の出現で、イズモはもちろんフォーチュンや連邦全体から見れば、桜が枯れないというのは以上ではあるが、わざわざ足を運ぶものではなかった。
だが、1年程前から、この島をディスティニーが標的にし始めた。
その防衛、そして、彼らの目的を探るべく桜花島支部が設立された。
その後のことは今回の任務に関係ないので省略させていただく。
「しかし、アビスシード保有者の警護ならもっと適役が居るのでは?」
僕は率直な意見を述べる。別に自身が無いわけではないが、この支部のスタッフは優秀な人物が多い。たとえガーディアンに乗れなくてもだ。
「いえ、ディスティニーのガーディアンが出てこないとも限りません。ここは優秀なリンケージである貴方と『彼女』に任せるのが最も良い選択だと考えます。それに、貴方達が彼女に最も近い人間ですから。」
「彼女?」
そう聞き返した僕に対し、伊達司令は警護対象の資料を見せてくれた。
「な!?」
僕は驚愕した。そこに写っている写真の少女は、僕が良く知っている少女だったからだ。
神楽坂マコト。彼女は僕にとって、特別な存在と言えた。
1年前。僕は支部設立と同時に桜花学園に編入した。
イズモ本土では戦い通しであり、急な編入に正直と惑っていた。
リンケージと言うこともあり、どこか周囲と壁が出来てしまっていた当時の僕に積極的に声をかけてくれたのが、彼女だった。
『ねぇキミ、リンケージなんでしょ?すごいなぁ。』
屈託の無い笑顔で話しかけてくる少女。最初は馴れ馴れしいと思い、疎ましくも感じた。
『あ、ダートン君。次移動教室だよ。』
戦いと言うものからまるで遠い少女。少し眩しく見えた。
『ダートン君!?昨日テロリストと戦ってたんでしょ!?大丈夫?怪我は無い!?』
僕にとってはいつもの事。しかし彼女はどこまでも心配してくれた。本気で身を案じてもらえたのはいつ以来だろう?
『ダートン・・・うーん、他人行儀だなぁ。マイケル君って呼んでいい?友達は名前で呼びたいんだ。』
考えてみれば、戦友は居ても【友達】は居なかったな。
『マイケル君。みんなでお弁当食べよう。その方が美味しいよ?』
彼女が世話を焼いてくれて、友人と呼べる人間も増えていった。彼女のおかげで、僕は学園生活が『楽しい』と思えた。
正直に言おう。僕は彼女に特別な感情を抱いている。こんなことは初めてだ。僕は案外惚れやすい男なのだろうか。
一瞬思い出に浸っていたが、すぐに現実に帰ってくる。
「今日明日ゲートが開くというわけではありません。ですがディスティニーのテロ活動に巻き込まれる可能性は高いでしょう。」
神楽坂マコト。彼女に危機が迫っている。僕の大切な日常に。僕の大切な人に。
「我々はラーフとは違います。彼女の人権を尊重し、日常生活を送りながら護衛してください。出来ますね?」
出来る出来ないではない。かならず彼女を守り通す。
任務だからではない。僕がそうしたいからだ。
これではフォーチュン失格かもしれない。それでも、僕は僕の想いの為、何とでも戦おう。
「しかし司令。もう一人の護衛が『彼女』で大丈夫ですか?」
「・・・大丈夫。彼女も立派な、それも歴戦のリンケージです。必ずやり遂げてくれる、でしょう。」
司令は目を背けながら言った。うん、僕も不安だ。
彼女は腕は良い。だが正確に難が有り過ぎる。
「それとレムリアから騎士を一人、派遣して頂く事になりました。任務内容はこの島の調査と警護。それと神楽坂さんの護衛も手伝って
いただきます。数日後に合流することになりますので、よろしくお願いします。」
第3幕
side-シャナ・アティアイナ
レムリア王国宮殿謁見の間。私はそこに跪き、頭を垂れていた。
数歩先には玉座に座る偉大なる女王、サナート・レムリア陛下。
私はこの御方に召喚され、ここにいる。
私の名はシャナ・アティアイナ。魔法王国レムリアの誇り高き騎士。幼き頃より、アティアイナ家の次期当主となるため、様々な修練を積んできた。
全ては我が一族に伝わる神霊機バルサーガに選ばれるため。
剣はもちろん、魔法、体術、算術等々、あらゆる英才教育を受けてきた。
そして先日、遂にバルサーガは私を受け入れ、晴れて私は騎士となれた。
そう、今日は私の、騎士としての始めての任。
それも陛下直々の御下命である。内心浮かれている心を静めなければ。
「面を上げなさい、シャナ・アティアイナ。」
陛下は涼やかで、それでいて凛として威厳のある美しい声で私に促す。
「貴女はわが国の騎士となりました。そしてその実力も聞き及んでいます。」
面と向かって褒められると面映い。が、それを顔に出すことなく、次の言葉を待つ。
「そんな貴女に初の任を命じます。イズモ特別区にある桜花島、という場所を知っていますか?」
「・・・いえ、失礼ながら存じ上げませぬ。」
イズモのことは知っている。
多大な資源と遺跡の存在により、ラーフ帝国に狙われているという島国だ。
「その島に、イズモの国花であるサクラという樹があります。ですがそのサクラはイズモ本土の樹と違い、一年中花を咲かせているので
す。これを異常と呼ばずなんと呼びましょう。」
「失礼ながら申し上げます。そのサクラが異常なことと、我がレムリアとの関連性は無いのでは?」
率直な疑問を挙げさせていただいた。無礼は承知だが、解らない事はすぐに口に出る主義なのだ。
・・・自慢にならないな。
「あわてずにお聞きなさい。桜花島は今まで平和な島でしたが、いつの頃から、突如テロリストの標的となったのです。そしてどうやら
彼らの工作員がかの島のサクラを調査している事が判明しました。」
「サクラを、ですか。」
「えぇ。事態を重く見た連邦軍はフォーチュンに島の防衛を要請。支部が建設され、テロと戦うと同時に、島の調査を開始。それがこの
一年程の流れです。」
テロリスト、おそらく、否確実にラーフの特殊部隊ディスティニーのことだろう。
しかしフォーチュンが一年間調査して何も答えが出ていないと言うことは、だ。
「調査状況は芳しくない、ということですね。」
「はい。そこでフォーチュンは我々に魔術的な方面での調査を依頼してこられました。」
魔力、か。たしかに植物には魔力が通いやすい。それはこの世界でも同じだと学んだことがある。
「そこでシャナ。貴女に桜花島の調査、並びにフォーチュンへの出向を我が名において命じます。島の罪無き人々を護るのです。」
目的は島の調査。しかし、テロリストに狙われている島だ。住民もいつ襲い来るかもしれない恐怖と戦っているのだろう。
私は騎士。罪無き人々の盾。牙無き人々の剣。
正直調査というものには少々抵抗がある。鍛えた技を生かす事が出来そうにない。
だが島の守護と言うことなら話は別だ。騎士の本懐、遂げて見せよう。
何よりも、女王陛下直々の命。断ると言う選択肢は存在しない。
「は!このシャナ・アティアイナ、全身全霊をもって努めさせていただきます。」
私は強く、この世全てに捧げるようにそう誓った。
第4幕
side-近藤フミカ-
生きていくには必要なモノが存在する。
例えば金。金が無ければ服も買えない、普通の食事も取れない。怪我や病気にかかっても医療機関に駆け込めない。
どこかの誰かが言ったか『金は命よりも重い』。ちょっとは同意する。
例えば休息。人間休みなしで働き続ければ、いずれ倒れる。
そうでなくても精神的に追い込まれ、やがては人間として崩壊する。
そのために娯楽と言うものがある。まぁこれも金があって出来ることだが。
人によっては読書をする者もいるだろう。スポーツで汗を流すこともあろう。旅行をするのも素晴しい。
だが、それらではアタシは満たされない。疲れきったアタシの心を癒してくれるもの。それは・・・。
カシャッ、プシュッ! グビ、グビ、グビ。
「かぁ~~~ッ!!この為に生きてるわぁ!」
『『生きてるわぁ』じゃありません!!』
端末に映るのはちみっ子・・・もとい、アタシの上司でありフォーチュン桜花島支部長、伊達ミウコ。優秀だが生真面目。以上。
『何だか馬鹿にされたような気がします。』
「気のせいよ~、気のせい(グビ)。」
『だからお酒飲みながら話さないでください!!』
おいおい、いくら支部長でもアタシの清涼剤にケチつけるのは止めて欲しいわね。
だいたいそっちでしょうが。アタシの貴重な憩いの時を邪魔したの。
「こちとら島の調査に防衛。おまけにガキ共の子守なんてらしくないことしてんのよ。こんくらい許しなさいよぅ。」
『何で貴女みたいな人が教員免許を持っていたんですか・・・。じゃなくて、本日の報告をお願いします。』
ホント生真面目ねぇ、そんなんじゃ将来行き遅れるわよ・・・。
・・・ホント、マジな話、嫁に行けなくなるよ。こんな仕事してちゃ。
「花の命は短いのよ~;;」
『急に泣き出さないでください。反応に困りますから。』
おうおう、画面越しにオロオロしとるわ。まぁいじるのはこの辺にしとくか。
「本日も異常なし!以上!」
『簡潔すぎます!!』
そうは言っても、本当に異常無しだし。
桜花島の桜の謎は未だ不明。ディスティニーの工作員のお掃除もした。ガーディアンは攻めてこなかった。
もう平和そのもの、何も無し。これをどうしろと?
『はぁ・・・。いいですかフミカさん。島の防衛は私たちの主任務ですが、調査も怠ってはいけませんよ。』
「だぁかぁらぁ、そっちの報告も無いの。あんたんとこの情報部も同じでしょ?」
『そうではありますが、貴女やマイケルさんにしか解らないこともあるんですよ。例えばALTIMAのこととか。』
そう、ALTIMA。イズモ特別区には大量のALTIMAが眠っているという。
我々フォーチュンは連邦の要請で、この島にALTIMAが存在するかどうかを調べに着た。
まぁ在るには在るだろう。だが、それがどれほどの規模かが不明。
何せ年中桜を咲かせ続けるなんて異常な島だ。本当に異常な土壌か、ALTIMAが関係しているかと、大方の予想は立てられる。
ラーフ側はアビスエネルギーの可能性も考えているが、奈落獣の発生状況からするとその線は無いだろう。
この一年で片手で数えるぐらいしか遭遇してないし。後はテロ屋のガーディアンだけ。
それがアタシとマイケル坊やの二人だけで防衛に成功している理由なんだけど。
しかし、最近は敵のガーディアンの数が増えてきた。そろそろ人員補充とかしてくれないかなぁ。
『遺跡の調査は未だ完全ではありません。貴女方リンケージの勘が頼りになることもあるんです。』
「あいあい。ところで、そろそろ人増やしてくんない?二人じゃ厳しいよ?(グビ)」
『そのことですが、レムリアから騎士を一人派遣してもらえる事になりました。調査も手伝っていただく予定です。』
お、そいつはありがたい。ファンタズム級が来てくれるなら一機でも十分だわ。
『それと、新たな任務です。』
「え~~!?『黙って聞く!』はい。」
『つい先日、桜花学園の神楽坂マコトという女生徒にアビスシードの反応が確認されました。その護衛を頼みます。』
「ちょっとちょっと!?アタシとマイケルのクラスの子じゃない!」
厄介だわ・・・。内心恐れてたのよね。アビスシードの反応。
護衛も大変だわ、ディスティニーも活発になるわ、アフターケアも必要だわ・・・。
まぁ芯の強い子だからメンタル面は大丈夫かもしれないけど。
『お願いしますよ。我々はラーフとは違います。出来るだけいつも通りの生活をさせてあげてください。』
「マイケル坊やにも伝えてあるんでしょ?なら大丈夫よ。」
あいつその娘に惚れてるし、躍起になって仕事するでしょ。
アタシは普段通り、先生と生徒として接するだけよ。
『それともうひとつ。奈落獣ギルガーンと思わしき反応をキャッチしました。』
グシャ!!という音と共に、アタシの手の中のビール缶が潰れる。
『貴女からデータを頂いていて助かりました。まだ島には近づいていないようですから、気をつけましょう。』
奈落獣、ギルガーン。懐かしい名前を聞いたわ。
そう、またアイツが現れるの。
仲間の仇・・・。
今度は、逃がさない・・・。必ず、撃ち落す!
『・・・気にするなと言うほうが無理なのは解ります。ですが冷静になってください。貴女はいわばこの島の防衛隊長なんですよ。』
「大丈夫、大丈夫よ。頭は怖いくらいクールだわ。」
『そうですか。では、護衛の件、お願いします・・・が。』
が?
『一体何本飲めば気が済むんですかぁ!?』
気が付くと部屋のそこら中に空缶が転がっている。
「べ~けやろう、こんなのまだまだ序の口よぉ!あ、これ経費で落としといたから」
『ちょっと!?』
そう言って通信を切る。
待ってなさいよギルガーン。次に会う時が、あんたの命日よ・・・。
sideout
「うぅ~~。何でこんな癖のある人ばかり揃っちゃったんでしょう・・・。」
小さな司令官、ミウコは溜息を漏らす。
優秀なスタッフに恵まれたという自覚はある。同時に、問題児が集められたような気がする。
調査部もブリッジメンバーも何か変な写真のやり取りをしている。
彼女は知らない。それらが自分の仕事モードやプライベートの写真の即売会などとは・・・。
「まぁこれも司令の人徳の賜物でしょうな。」
「一番の問題人物が何を言いますか!?」
頭に白いものが見え始めた初老の男性、副司令が言う。名前はころころ変わるため、誰も本名を知らない。
「おやおや伊達司令、溜息や大声は美容の敵ですぞ?」
「まだそんな歳じゃありません!ていうか誰のせいですか!!」
ミウコの激昂にも、副司令はニコニコ笑顔。まるで意に介しません。
司令部のスタッフも同様。この光景はいつものこと。
「あうぅ~~、ウサちゃ~ん。」
半泣きで傍らのウサギ人形に抱きつく姿に威厳は皆無。
それでもみんなほっこり顔。この光景もいつものこと。
だれもミウコを慰めてはくれない。むしろ煽るだけ。
彼女の味方はウサちゃんだけ。
今日も桜花島は平和です。
第5幕
今日も学校が始まる。
生徒達は学園祭の準備を朝早くから始めていた。
ここ桜花学園は進学校でもなく、特殊な環境にある学校のため、大きな行事が迫ると学業よりもそちらを優先する傾向がある。
とは言っても、始業が遅くなることと、放課後が早く訪れるくらいだが。
それは2-1でも変わらない。
「おーしお前ら、HR始めッぞー。」
「げ、フミちゃん先生来た!?」
「早く片付け片付け!?」
とまぁ、朝は大忙し。
そして放課後ともなるとさらに忙しくなる。
このクラスの出し物は演劇。とある少年少女の恋模様を描いたありがちな恋愛劇。
役者組は台詞や動きの練習。
裏方組もそれぞれの作業に移っている。
そんな中、トンテンカンテンと音がする。コウジが大道具に釘を打つ音だ。
だがどう見てもやる気があるようには見えない。何か上の空なのが丸解りだ。
「もっと気合を入れろ。途中で壊れたら皆に迷惑が掛かるんだ。」
そんな背中に蹴りを入れるマイケル。当然コウジは反抗した。
「痛ぇな!人の背中に何してんだ!」
「お前が気の抜けた姿で作業をしているからだろう。」
そう言って隣に座り、同じく釘うちの作業に入る。わざわざコウジが打った所から、だ。
この二人、出会った頃から反りが合わない。
方や猪突猛進の熱血漢、方やクールで皮肉屋。仲良くしろというほうが難しい。
この一年、衝突を繰り返してきた。
だが、あまりにも正反対なためか、はたまた根っこの部分は同じなのか、たまに妙な連帯感を見せる。
罵り合ったり殴りあったりしながらも、やることはきっちりこなしてきた。
今やクラスの名物となっている。
「へっ。相変わらず嫌味な奴。」
「僕は人に対して接し方を変えているだけだ。お前にはこれで十分なんだよ。」
「言ったなこの野郎!!」
コウジがマイケルに殴りかかる。
そして見事に決まるクロスカウンター。勝者マイケル。
「ぐえぇ・・・。」
「お前、僕がリンケージだっていうこと忘れてないか?そんなパンチが当たるような訓練は受けてないぞ。」
心底呆れ顔である。それがまたコウジの怒りを増幅させる。
あわや大喧嘩か、と周囲が身構えた瞬間、怒鳴り声が聞こえる。
クラスのもう一人の名物生徒、神楽坂マコトだ。
「こら!喧嘩してないで、とっとと作業に戻る!」
「「だってこいつが」」
「喧嘩両成敗!コウジはもっとしっかり作業して!マイケルも挑発しない。」
マコトに怒られ、縮こまる二人。
これもいつもの光景。
ぶつかるコウジとマイケル。それを止めるマコト。
一年間ですっかり日常となった光景に、クラスメイトも苦笑する。
「はーい、一先ず休憩にしよう。」
クラスの進行役であるマコトの一声で、全員が張り詰めていた空気を弛緩させる。
現在午後5時。授業が終わってから働き通しだった。
みんなに予め用意されていた飲み物が渡される。
大道具組も休憩に入った。皆道具を置き力を抜いている。
「それにしてもマイケル、お前なんで役者組じゃないんだよ。」
休憩時間、コウジは以前からの疑問を聞いてみた。
「興味が無い。それだけだ。」
たった一言、そう答える。
実際彼には興味が無かった。マコトがヒロインでも無ければ役者でもないのだ。
彼のモチベーションはいつもマコトの存在によって変わる。
「勿体ないなぁ、お前顔は良いのに。」
「引っ掛かる言い方だな。逆に聞くが、お前最初は役者志望だったそうじゃないか。何故だ?」
「そりゃお前、目立てるじゃないか!」
至極単純な理由である。
だが、東屋コウジにとっては重大な要素なのだ。
彼はいわゆる目立ちたがりな部分があった。
よく空回りするが、それで笑いが取れるなら彼も多少満たされた。
コウジは昔からヒーロー、正義の味方に憧れを持っていた。
悪人から人々を護る、スーパーヒーロー。
少年の頃の憧れは、未だ彼の心の中に燃えていた。
マイケルに対抗意識を持つのは、そのためかもしれない。
スーパーロボット、ガーディアン。それに乗り、悪の組織と戦うリンケージ。
コウジが思い描いていた理想の場所に、マイケルはすでに居るのだ。
「コウジはそんなに役者がやりたかったの?」
二人の会話を聞き、マコトも話しかける。
「あぁ、恋愛ものってのは背中が痒くなるけど、やっぱり主役ってのはいいよな。」
この男、どこまでも単純である。
「ふ~ん、そ。」
どこか不機嫌な声で答える。マコト自身、何故こんなにモヤモヤするのか解っていない。
それでも、彼が誰かと、演技でも恋愛をするのは、面白くなかった。
「そういえば、最近道場に顔出してないよね。父さん待ってるよ。」
「うへ、親父さん厳しいんだよなぁ。」
一転、身内の話で盛り上がる二人。
コウジもかつては隣の空手道場に足を運んでいたのだが、最近は疎遠になっていた。
マコトの父と顔を合わせる度に道場に誘われているが、断っている。
厳しい特訓を避けているようでは、彼のヒーローへの道は遠そうだ。
「・・・・・・」
一方で、マイケルの心中も穏やかではなかった。
彼自身で自覚し、友人達も気が付いているように、彼は神楽坂マコトに恋心を抱いていた。
彼女ともっと話をしたい。
彼女の笑顔が見たい。
彼女の、隣に居たい。
彼が望む全てを、東屋コウジという少年は持っていた。
ただ幼い頃から一緒なだけで、
ただ家が隣同士なだけで、
ただ、いつも一緒なだけで・・・。
だが、いつも彼女を見ていた彼には解っていた。
彼女が、ただそれだけで彼の隣に居るわけではないことを。
おそらく、彼女は、彼を・・・。
「ういーす、みんな。差し入れ持ってきたわよ。」
突如教室のドアが開き、フミカがお菓子を持って現れる。
「うわ、さすがフミちゃん先生!」
「タイミング良く差し入れなんて!」
「そこに痺れる憧れるぅ!」
「あっはっはっは!もっと褒めなさい崇めなさーい。」
この教師にしてこの生徒ありである。
だが、近藤フミカにとってここは憩いの場であった。
長い戦いの日々の中で、荒みかけた心を彼らの純粋な好意が潤してくれた。
疲れはするが、酒以外の楽しみは彼らとの触れ合いの中にあった。
時折年齢のギャップに苦しむことはあるが、それもまた人生。
そんな時は、酒!飲まずにいられない!!
「フミカ先生、朝は気付きませんでしたけど、昨日、飲みました?」
顔をしかめながらマコトがフミカに詰め寄る。
が、彼女が反省するわけもなく、
「うん、たらふく飲んだ。匂う?」
「匂いますよ!この時間まで匂うって、どれくらい飲んだんですか!?」
「大丈夫大丈夫、酒代はフォーチュンの付けだから。」
「大丈夫なところが一つも無い!?」
「諦めろマコト。この人は常にこうだ。」
驚愕するマコト。もはや諦めたマイケル。
緊急避難警報が鳴ったのは、その時だった。