メタリックガーディアン・プロミス 『桜の舞う島で』   作:戒炎

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ブレイガストの新技がEXルールブックの「オリハルコン級」の特技と名前が被っとりますが気にしないでください。
あくまで「ロケットパンチ」相当の技です。

同じ名前の特技が出るなんて思わなかったんや・・・orz

あと、前回切りどころを間違えたせいで今回がやたら長いです。


「GUARDIAN」その2

第6幕

 

side-コウジ-

 

 あれから4日。俺は丘桜の下に座っていた。ここにいればいつも大体の悩みは吹っ飛んじまうから。

 でも今日は駄目だ。頭の中がごちゃごちゃして、全然すっきりしない。

 頭を掻き毟っても、ゴロゴロと転がってみても意味が無かった。

 大体そんな奇行に走ってすっきりするモンなら親父さんに殴られた時に目が覚めてる。

「はぁ。」

 なんだかいきなり抜け殻になっちまったな。

(東屋・・・。東屋・・・。)

 あぁ、もう駄目だ。幻聴まで聞こえ始めた。

 もう、マイケルの声なんて聞こえるはず無いのに。

(東屋。聞こえているか東屋。)

 いや、幻聴なんかじゃない!頭の中に直接声が!

 ハハ、俺も末期かな?

(大丈夫だ東屋。幻聴なんかじゃない。スターゲイザーの能力の応用で、お前の心に直接話しかけてる。)

「スターゲイザーって、お前、あの時確かに死んだはずじゃ!?」

(何とか生き延びることが出来たんだ。そしてそのお陰でスターゲイザーとして覚醒できた。)

 じゃ、じゃあ本当に。

「生きているのか、マイケル・・・。」

(あぁ。もちろんだ。)

 思わず涙が溢れる。

 生きていた。あのマイケルが生きていた・・・!

(今僕は敵に囚われた状態にある。脱出は困難だ。)

「待ってろ!今すぐ助けに行く!」

(いや待て。今は時期じゃない。すぐにチャンスは訪れる。その時グハッ!)

 マイケル!?

(すまない・・・、これ以上の交信は出来ない。だが東屋、僕が残した言葉、忘れるな、ガハッ!)

「マイケル?マイケル!」

 それ以降、マイケルの声は聞こえなくなってしまった。

 くそ!早く助けに行かないと!

『コウジさん、聞こえますか?』

 ったくこんな時に!

『敵が迫って来ています。今回の行軍速度ではすぐに島に到達されてしまうでしょう。一度基地に戻ってください。』

 敵なんかに構っていられるか!俺は!

『敵影にラグシオンを発見しました。』

 ラグシオン。その名を聞いただけで、頭が憎悪でどうにかなりそうだった。

 変だな、マイケルは生きてるっていうのに、どうしてここまでやつが憎いんだろう。

 きっとあれだ。マイケルが味わったのと同じくらい痛めつけてやらないと気がすまないんだろう。

 俺はいつの間にかやってきていたフォーチュンの迎えの車に乗り込んだ。

 

「マイケルさんが生きている、ですって!?」

 基地に着いて早々、俺はさっきのやり取りを説明した。

「怪しすぎるね。罠なんじゃないかい?あの時確かにマイケルの生存反応はロストしたはずだ。」

「そんな!あれは確かにマイケルの声だった!聞き間違うはずがない!」

 何で誰も信じてくれないんだ!?

 アイツは今でも苦しんでいるかもしれないというのに。

「・・・マイケルさんの生死については後に。今は桜花島の防衛を優先します。」

 司令まで・・・。

「コウジさん。私だってマイケルさんが生きているとしたらそれを信じたい。ですがそれに気を取られて島を蹂躙されては元も子もありません。」

「そりゃそうだけど・・・。」

 助けられるチャンスがあるなら、助けたい。

 あの時出来なかった事を、やり直したいんだ。

「・・・敵の進軍速度は速く、島の内陸部南東で迎え撃つことになります。すぐ近くに住宅地も、存在します。十分に周囲に気を付けて戦ってください。

敵は、そんなことお構い無しでしょうが。」

 マイケル。俺は護る。この島も、マコトも、お前の事だって。

 だから、もう少しだけ待ってろよ。

「ところでシャナ、何だか傷だらけじゃないか。どうしたんだ?」

「なに。本場のカラテの洗礼を受けていただけさ。お陰で少しの間だったが、有意義な修行が出来た。」

 カラテ・・・。親父さんか?

 あの人女にも手加減なしだからな。本人曰く、この世で俺が敵わないのは二人だけとかなんとか。

「それにバルサーガにも新しい武装が搭載された。これでもう役立たずとは言わせん!」

「いやいや。誰もそんな事言ってないし。」

 なしてそんな被害妄想的な。

「・・・だって。私なんて毎回一撃で吹き飛ばされて。そのまま気絶して。気がついたら全部終わってて・・・。」

「あぁあぁ!そんなネガティブになるなよ!ほら、バルサーガは雑魚の殲滅が素早いじゃないか。」

「たったそれだけじゃないか・・・。雑魚の一掃はブレイガストのほうが向いてるし・・・。」

 あー、えー、どうしよう。

 シャナが完全ネガティブモードに入ってしまった。

「ほらほら。敵さんが来るよ。気を引き締めな。」

 先生の言葉で場が程よく緊張する。

「ん、んん。それに、私は今までの私ではない。陛下よりレムリアメダリオンを下賜された。これで私も魔法騎士として認められたことになる。」

 今度は調子よさそうに胸を張る。

「レムリアメダリオン?」

「ああ。上位神霊機の乗り手が使う魔法の一部を使えるようになる。今度見せてやろう。」

「丁度いい空気になったと思ったら今度はリラックスしすぎだよ・・・。」

「それでは皆さん。出撃してください!」

 

 

第7幕

 

side-シャナ-

 

 敵は奈落獣とガーディアンの混成部隊。

 いつもと違うところは・・・。

「あの肩のマーカー、例の機体か。」

 あのエースチームが居る事か。

 関係ない。私は敵を斬り裂き、打ち砕くまで。

 近づいてくる奈落獣を剣の一薙ぎで切り捨てる。

 バルサーガに搭載されたハイパワー魔導コンバーター。搭乗者の精神力を大きく削る代わりに、攻撃力を大幅に上げるオプション。

 以前の私ではこの精神力の衰退に耐えられなかったかもしれないが、今なら!

 私は弧を描くように奈落獣に向っていき、撫で斬りにする。

 オーラを纏うまでもない。この程度、鎧袖一触。

 バルサーガが駆け抜けた後には、爆発四散する奈落獣たち。

『ファック!これだから頭の弱い奈落獣のお守りは嫌なんだ!お前ら、敵は近づかなきゃ怖くねぇ。撃ちまくれ!』

 敵ミーレス隊は手持ちのガトリングでバルサーガを攻撃する。

 近づかず、遠くから獲物をしとめる。今までの私には効果的だっただろう。

 だが、今は違う。今までの私ではない。

 イリュージョンバリアを張りながら、右手を天に掲げる。そこに浮かび上がる魔法陣。

 それと同じ魔法陣が空中に幾つも浮かび上がる。

 さぁ、生まれ変わったバルサーガ。バルサーガ・レイの力、御覧に入れよう!

 右手をサッっと振り下ろす。

「降り注げ、虚空の礫!メテオスォーム!」

 私の詠唱と共に、魔法陣から岩の塊が姿を現す。

 これぞ、宇宙に浮かぶ隕石を落とす召喚魔法『メテオスウォーム』。

 大きさや規模は小さいながら、広範囲を攻撃できる、中々の優れものだ。

 現に敵が固まっていてくれたお陰で大打撃を与えることが出来た。

 この魔法の弱点は地上では威力がそう高くないことだが、十分だ。

 隕石の衝突でよろけているヴィクラマに対し剣を振るい抜ける。

 それだけで敵は両断される。

『オイオイ。あのファンタズム級は離れてりゃ安心じゃなかったのかよ?』

「悪いな。私も日々成長している。」

 いつまでも情けない私だと思うな。

 それにお前達のような有象無象を相手にするのは慣れているのでな。

『俺が近距離で相手する。お前らは援護だ!』

 その一言で敵の動きが変わる。

 マーカー付きが私に近づき、燃える斧、ヒートハチェットで斬りかかる。

 それを剣で正面から受け止める。

 残る機体の射撃は考えない。もともとバルサーガは運動性と耐久性を併せ持った機体。こんな豆鉄砲など効かぬ!

 その間も剣と斧が火花を散らす。

 敵の攻撃は速い。

 だがそれ以上に、バルサーガの一撃が重いのだ。

 何合かすると、斧の動きが遅くなってきた。機体に負荷が掛かってきたのだろう。

『チッ!パワーじゃ差がありすぎるか!』

「ならスピードで勝負するか?量産型に遅れを取る気は無いぞ。」

『抜かせ、小娘ッッ!』

 蹴りを受け、一度機体同士が離れる。どうやら本当にスピード勝負がしたいようだ。

 だが奴のヴィクラマ、他より幾分か速い。

『シャナさん。敵の移動経路予測完了。ポイントKです。』

 司令から通信が入る。

 それを信用し、予測されたポイントへ飛ぶ。

『おわっち!?』

『今です!』

「食らえッ!オーラ斬りだ!」

 渾身のオーラ斬りを振り抜く。

 マーカー付きの左半身が見事に両断された。どうやら的確な攻撃ができるポイントに誘導してもらったようだ。

『ファック!予定変更!帰還する。命は大事に、だ!』

 マーカー付きは爆発したが、脱出装置と思わしき物が飛び出していった。

 止めをさそうか一瞬悩むが、今の戦場を何とかしよう。

 生き残ったヴィクラマ達がラグシオンへと合流していく。

 次は、近藤の援護が優先か。彼女はミーレスでクラッシャー級を相手取っている。

「気を付けろよ、コウジ。」

 私は次の戦場へ向った。

 

side-フミカ-

 

『どうした近藤フミカ!こんなものか!』

 ちっ、どうしたもこうしたも、慣れない機体じゃこんなもんだよ。

 完全に接近戦を許してしまっている。さらに右手を落とされるオマケ付き。

 よしとくれよ、この機体壊したら始末書じゃ済まないんだから。

「いよいしょっ!」

 隙を見つけては体当たりを仕掛ける。だが、はなからスピードが違う。

 簡単に避けられては返す刃で機体に傷を付けられる。

『こんなに簡単なんて。アクセルギアの無い貴女なんて赤子も同然ね。』

 悔しいが言い返せない。いつもならもっと動きが出来るのに。

 ベテランの先輩達に笑われちまいそうだ。

『これで、止めよ。刈られなさい!』

 今のは失点2。

「敵に一撃を予告しないこと!」

 レッグを全てフル稼働し、限界までしゃがむ。

 死神の鎌は頭があった部分を掠り、大きく横に振り回される。

『なっ!?』

「それと、大振りの空振りには注意することだね!」

 レッグを戻す勢いで、全力でタックルをぶちかます。

 機体の高低差のため少しジャンプしていた死神はそれを避けきれずまともに食らう。

『きゃああああッ!?く、舐めないでよ!!』

 死神はたたらを踏むだけに留まる。意外とタフだこと。

 そして一瞬姿がぶれたかと思うと、視界から姿を消した。

 レーダーにも映らない。目の前で起きたことなのに、アタシは完全に敵を見失った。

 不味い。こっちもいい加減限界が近い。次に奇襲を受けたら持たないかもしれない。

 一瞬の静寂。そして。

『シャナさん!後ろにカバーに入ってください!』

「了解だ!」

 バルサーガ、いや、生まれ変わったバルサーガ・レイとやらがアタシの背後に斬りかかろうとしていた死神の動きを止めた。

『馬鹿な!?私の姿が視えたというの!?』

『ただの状況予測ですよ。フミカさん、そのまま反転しながら後退!ミサイルを叩き込んで差し上げてください!』

「アイアイマム!」

 その言葉通りにグランヴラッシュを動かし、ありったけのミサイルを射出する。

 もちろんバルサーガが退避したのを確認してだ。

 まったく、部隊指揮にゃ体力も気力も使うだろうに。

 子供上司が無茶してんだ。大人の部下も無茶しなきゃね!

『くそ、猪口才な!』

 あらら、怒ってるわ。

「シャナ、コウジの方は大丈夫かい?」

「正直不安だが、戦況はこちらのほうが不利だ。速攻で片付けてコウジの援護に向いたい。」

 だね。まあそれも、死神さんが許してくれればの話だけど。

 無茶はするんじゃないよ、コウジ・・・。

 

side-コウジ-

 

 降魔爆装ラグシオン・・・。やっぱり強い。

 同じスーパー級のくせに動きが段違いで速い。

『この前よりかは楽しいじゃないの。なにかあったのかい?』

「けっ、うるせえよ!黙ってやられてろ!」

 何度目になるか。拳を打ち合う。

 奴は剣を抜いていない。まだまだ手加減している証拠だ。

 だがそっちがその気なら、俺は本気を出させる前にぶっ叩く!

「でぃりゃーーーーーーー!!」

『ホイサ!』

 また拳を打ち付けあう。互いに肉弾戦の状況だ。

 だがさっきも言ったが速さが違う。

 奴は俺の周りを周回しながら、恐ろしく速い拳を繰り出してくる。

 俺は何とかそれに反応して拳を突き出す。

 勢いのついたパンチと伸びきらないパンチ。破壊力の差は明確だ。

 このままじゃいつかブレイガストの拳は壊される。

『反応も威力も良くなってる。色が黒くなったのはそのお陰か?』

「黙れ!偽者けしかけるなんて小細工かましやがって!俺達を舐めてるのか!?」

『舐めてなんかいねぇさ。遊んではいるけどなぁ!』

 この野郎!

 野郎への憎悪がつのるにつれ、機体が黒く、邪悪な色になっていく。

 それでも関係ない!そうなる度に出力が上がってるんだ!このまま往く!

『ぬお!?今のは危なかったな。』

「余裕ぶっこいてられるのも今のうちだ!」

(そうだ!もっと負の心を捻り出せ!もっとだ!)

 嫌な念を受け、一瞬たじろぐも拳を止めない。

 気が付けば拳の応酬はブレイガストに軍配が上がってきた。

 往ける!このままなら!

 武器を使わなかった自分を呪うんだな!

「じぇりゃーーーーーーー!」

『ぐう!?』

 やった!とうとうクリーンヒットだ!

『やるじゃねぇか小僧。遊びは終わりだ。もっとギアを上げてかかってきな!』

 望むところだ!

 再び拳を合わせようとした所に、一条の光が俺達の間に走る。

 これはビームライフルの光!

 俺はビームの向ってきた方向を見た。

 そこには、あの時失ったはずのカバリエ、ルミエールの姿があった。

 

「マ、マイケル・・・。マイケルなのか?」

 俺の声は震えていた。

 もう二度と声を聞けないと、会うことが出来ないと思っていた、親友。

 その姿が、今、俺の目の前にあるのだ。

「心配かけたな、東屋。さぁ、もう大丈夫だ。」

 俺の心から、憎しみが消えていく。

 それに伴い、ブレイガストの色も黒から赤へと戻っていった。

『そんな、馬鹿な!?手前はあの時、俺が!』

「どうだ!これが、こいつが!正義の味方の奇跡ってやつだ!」

 俺の心に希望が宿る。

 今ならどんな敵でも倒せる。そう確信している。

 俺達なら、絶対にやれるさ!

「行こうぜ、マイケル!」

「あぁ。」

 ラグシオンに拳を向ける。

 同時にルミエールはライフルの銃口を。

「これで、最後だぁーー!」

『待ってくださいコウジさん!ルミエールには』

 ルミエールのビームが放たれた。

 ・・・ブレイガストの背中に向って。

 

「・・・え?」

 突然のことで、なにが何だか解らない。

 俺達がラグシオンに攻撃しようとして。

 マイケルが、俺を撃った。

「マイケル、何を・・・。」

 マイケルは何も答えない。答えてくれない。

「どうしちまったんだよ!まさか!誰かに操られてるのか!?」

 そうだとしたら許さねぇ!絶対にだ!

「何処だ!何処に居やがる!?出て来やがれ!」

 俺は姿の見えないそいつを必死に探した。

 その間、隙だらけの俺にラグシオンが何もしないことにも気付かずに。

「ふ、ふふふ」

「マイケル?」

 沈黙を保っていたマイケルが笑みをこぼす。

「ハハ、ハハハハハハハハハハハハハハハハ!!」

「マイケル、なにを笑って・・・」

『「な~~んてなぁ!」』

 突然、マイケルの声に奴の声が重なる。

 一体、どういう事だ!?

『ヒャハハハハハハ!!まだ解らねぇか?それとも理解するのを拒否してやがんのか?』

 ラグシオンがルミエールの隣に移動し、剣でルミエールを割る。

「!?」

 両断されたルミエール。その両端を持ち、奴は断面を俺に見せ付けた。

 そこには、機体と一緒に両断されたマイケルが居た。

 正確には、マイケルの姿をした、何かが蠢いていた。

 直感で理解した。あれは、奈落獣だと。

「そ、そんな・・・。」

『手前ら、前に俺のコピーを相手にしたろ?それと全く同じ、ただの器さ。』

 奈落獣はそのまま動きを止める。

 どうやら、絶命したようだ。

 でも、それじゃあ・・・。

「あの、マイケルの声は・・・。」

『鈍いな。こいつに喋らせてただけさ。苦労したぜ、話し方の癖まで再現させるのはな。』

「スターゲイザーに、覚醒したって・・・。」

『俺も少々特殊でね。念波をお前に送ったのさ。普段のお前なら異常さに気付いただろうが、傷心中のお前ならと思ってやってみたが、お前ときたら、気持ちいいぐらいにはまってくれるんだもんなぁ。』

 こいつ・・・。

『心配かけたな、東屋。って、こんなことぐらいで騙されてよ。あいつが死ぬ瞬間はお前も見てたろうが!』

 この・・・。

『見てて最高だったぜ。親友が生き返ったと思い込んだ大馬鹿君。ハッハハハハハハハアハハハハハハ!!」

 この・・・。

「このド外道がーーーーーーーーーーーーーー!!!!」

 希望に染まりかけた心が一気に憎悪一色に変わる。

 それと同時に、真紅の色を取り戻していたブレイガストも闇色に変化する。

 拳はまるで鉤爪のように。

 背中のフライングユニットからは悪魔のような翼が。

 頭部も鬼の角のようなものが生え、顔も邪悪な貌へと変貌する。

 だが、それがどうした。

 コイツをバラバラに引き千切れるのなら、悪魔でも構わない!

「死ぃねぇぇーーーーーーーーーーーーーーー!!」

 翼を羽ばたかせ、あの巨悪へ向う。

 アイツは、アイツだけは。この世に残しちゃいけない!

 俺の命に代えても、消滅させてやる!

『おっと。捕獲部隊、出番だぜ。』

 その言葉と同時に、ブレイガストに何かが絡みつく。

 その正体は、巨大なネット。

 それがどうした!こんなモノ、今のブレイガストなら簡単に引き裂いて。

『やれ。』

 その一言で、ネットに電流が走る。

 機体だけじゃない。中の俺にも電流と熱が伝わる。

「がぁーーーーーーーーーーーーーーーーーー!?」

『ほうれ。最後の鍵よ。早く来ないと王が丸焼きになっちまうぜ?いや、今は魔神かな?』

 

 

第7幕

 

side-マコト-

 

 避難所からは、外での戦闘の様子がモニターで流れていた。

 あの捕まってる機体、コウジが言ってた・・・。

 そう、ブレイガスト!写真で見せてくれたことがある。

 いつも自慢げに話してたっけ。

 でも、写真で見た時はあんな禍々しい姿じゃなかった。

 もっと堂々とした、真紅に彩られていたはずなのに。

 いや、今はそんなことはどうでもいい。

 このままじゃコウジが死んでしまう!

 嫌だ!もう、誰かが目の前から居なくなるなんて嫌だ!

 でも、ボクには何の力も無い。ここで見ていることしか出来ない。

 嫌だ!嫌だ!嫌だ!嫌だ!

 お願いだよ!誰でもいい!ボクに力を貸してくれ!

 もう、守られてばかりなのは嫌なんだ!

 

「コウジ、嫌だよ。死なないでよ・・・。」

 知らぬうちに涙が溢れてきた。

 もし、もし神様がいるなら、お願いします。

 ボクの願いを聞いて下さい。

 ボクに、力を下さい。

 みんなと一緒に戦える力を。

 みんなを護れる力を。

 ・・・コウジを護り、癒せる力を、ボクに下さい・・・。

 ボクは必死に祈った。こんなに祈ったのは生まれて初めてかもしれない。

 でも、現実は非情。結局何も起こらない・・・。

 自分だけ安全な場所で、祈りを捧げるだけ。

 ボクは、無力だ。でもそんな悲劇のヒロインになんてなりたくない。

 本当になりたいのは、ヒーローと一緒に戦う姿。

 

(力を、欲しますか?)

 もう祈るのも疲れ果てた時、誰かの声が聞こえた。

 お母さんじゃない。さっきのボク同様、祈りの手を組んでいる。

 じゃあ、一体誰が・・・。

 

(力を、欲しますか?)

 また聞こえた・・・。

 この声、何処かで聞いたことがある。

 そうだ、あの遺跡の一番奥で見た女の子の声だ!

 でも、何処から?

 辺りを見回しても、あの時の少女の姿は何処にもない。

 でも、何故か確信できる。

 この声は、ボクに対して向けられているって。

 

(力を、欲しますか?)

(うん。ボクに、力を。)

(その力を、正しく使えますか?)

(ボクはただ、護りたいんだ。命を懸けて戦うみんなを。)

(そのために、自らの命を犠牲にしても?)

(ボクは死なない。大好きなみんながいるから。絶対に死なない。死んでたまるもんか。)

(・・・分かりました。今から貴女をこちらに呼びます。目を閉じて、呼吸を穏やかに・・・。)

 言われた通りにする。

 両目を閉じて、深呼吸・・・。

 すると、ボクの体が淡く光りだした。

 ボクはすっと立ち上がる。

「マコト?どうしたのあなた!?」

「・・・。」

 お母さんは大慌てで、お父さんは静かにボクを見る。

「お父さん、お母さん。」

 ボクは強く、はっきりと伝えた。想いを込めた表情で。

「行って来ます!」

 そして、ボクの姿は避難所から消え去った。

 

「マコト!?あぁ、そんな!あなた、マコトが、マコトが!!」

「落ち着けよ。」

「落ち着いていられる!?あの娘、一体何処に!?」

「大方、惚れた男を助けに往ったんだろうよ。」

(本人にゃまだ自覚がねぇみてぇだがな。)

 

 目を開けると、ボクは丘桜の下にいた。

 戦闘地帯が近いのか、激戦の音がここにも響いている。

 少し丘の端まで行けば、黒いブレイガストが捕らわれているのが視える。

 こうしちゃいられない!早くなんとかしないと!

 でも、どうやって?

「また、会いましたね。」

 気が付くと、背後に白いワンピース姿の少女が立っていた。

 あの時の娘だと、すぐに分かった。

「さぁ、最後の鍵の封印を解きましょう。」

 少女が手をかざすと、一陣の風が吹き桜の花弁を舞い散らせる。

 あまりの勢いに目を開けていられない。

「これが、この島の守護神の、最後の鍵です。」

 風が止み、少女の声に目を開けると、丘桜の前には。

「これ・・・、ガーディアン?」

 そこには、桜色のガーディアンが鎮座していた。

 胸のコックピットは開き、腕をボクに差し出した姿で。

 まるで主を待ちわびるかのように。

「その子の名はタリスマン。王を護り、王の咆哮となり、王の癒しとなるもの。」

 少女が指差す。

《タリスマン》・・・。《護符》・・・。

「これがあれば、みんなを助けられるの?」

「そのための存在です。」

 ・・・。

 ボクはゆっくりと、タリスマンが差し出した手に乗る。

 すると《彼女》は大事にボクを胸に抱え、コックピットへ誘った。

 初めて座るはずのシート。

 初めて握るはずの操縦桿。

 見慣れない機械たち。

 それでも、それらが何なのか頭の中に入ってくる。

 すぐにでもこの子を動かせそうだ。

「王の心には今、憎悪と絶望が巣食っています。彼を助けられるのは。」

「ボクとこの子だけ、って言いたいんでしょ?」

 少女はニコリと微笑む。

 ボクも釣られて笑う。

 あれ?この顔、何処かで見たことがある。

 いつだったっけ。たしか写真で。

「お願いします。彼らを、この島を、護って。」

 少女の声に我に返る。

「うん。それじゃあ、行ってきます。」

 ボクはブースターを噴かせ、戦場へと赴いた。

 傷付いた大切な友達を、助けるために。

 

side-コウジ-

 

 くそ!完全に身動きが取れねぇ!

 ネットの電磁波が、コックピットにまで伝わって、熱さと電流で気が遠くなる。

『・・・。来ねぇな。俺の見立て違いか。』

 野郎・・・!余裕ぶっこきやがって!

 いますぐその面ぶん殴って!

『おらよ。』

「ぐう!?」

 コイツ、ブレイガストを足蹴に!

『王は間違った形に進化し、それでも碌に戦えず、最後の鍵も現れない。ちょっと遊んでみたが、これじゃつまらん。飽きた。』

 奴は脚を退け、数歩下がる。

 すると周りのヴィクラマ達が一斉に銃口をこちらに向けた。

『冥途の土産だ。俺の名前はグラフス。グラフス・エイベロン。地獄でも忘れんじゃねぇぞ。』

 俺、ここで死ぬのか・・・。

 こんな所で死んで、マイケルの奴怒るかな?

 情けねぇなぁ・・・。

 本当に情けねぇ。

 護ると決めたもの一つ護れず、約束も果たせないで。

 ブレイガスト。お前がそんな姿になったのも俺の所為なんだろ?

 ゴメンな。情けねぇ相棒で。

 あぁ、なんだか意識も霞んできた・・・。

「コウジ!諦めるな!すぐ助けに」

『行かせると思う?』

「ち!邪魔なんだよ、いい加減!』

 シャナ、先生。死神相手に苦戦してるな。

(それでも男かーーーー!!)

 悪いな親父さん。こんな男で。

 もう全部諦めたよ・・・。

 

 諦めかけたところで、マコトの顔が浮かんだ。

 なんて顔してんだよ。そんな怒った面して。

 最期くらい笑ってくれよ。

 じゃないと、俺。

「・・・死にたくねぇ。」

 逝けないじゃないか。

「・・・死にたくねぇぞ。」

 操縦桿を握る腕に、勝手に力が入る。

「あぁ、死にたくない。死にたくない!死んでたまるかコンチクショウ!!」

 そうかい、俺の体。まだまだこの世に未練たらたらかい。

「ブレイガスト。最期の最期まで付き合ってくれ。俺は往生際が悪いんだ。」

 相棒の目にもまだ力が残っている。

 それでもこの絶望的な状況は変わらない。

 あの男、グラフスもラグシオンの銃口を向ける。

 畜生が!もう何も出来ないのかよ!

 ・・・ここまで無様晒したんだ。もう一度、晒してもいい。

 誰でもいい。誰か。

「誰か、助けてくれよ・・・!」

 俺の声が空しく響く。

『ハハハハハ、本当に無様な最期だなぁ、おい!』

 駄目か!?本当にもう駄目なのか!?

『全機、撃て。』

 そして・・・。

 上空から光の弾丸が降り注いだ。

 

『なんだと!?』

 ヴィクラマ達は突然の攻撃に攻撃姿勢を解き、回避に専念する。

 そして光の弾丸―ビームの雨はブレイガストを捕らえていたネットをも千切る。

 残る力を使い、立ち上がりバックステップを踏む。

 この攻撃、一体誰が?攻撃の向ってきた方向を見る。

 そこには翼のような背部ブースターを持った、桜色の細身のガーディアンがいた。

 俺を、助けてくれたのか?

『は、ナイスタイミングで驚いたが、ようやくご登場か!最後の鍵ぃ!!』

 降りてきたガーディアンに対し、ラグシオンが剣を振りかざし斬りかかる。

 あわや一閃、という所で謎のガーディアンは紙一重でかわす。

 その際、胸と横っ腹に掌底と拳をぶつけていく。

『ごはぁ!』

 ラグシオンが身を屈めた。おそらく急所を的確に捉えたのだろう。

 あの動き、見たことがある。

 親父さんが昔、俺に稽古をつけた時に叩き込んできた動きだ。

「はぁーーーーーーー!!」

 その後もガーディアンはラグシオンに拳足の連撃を穿つ。

 拳を腹に数発、肘打ちを横顔に、蹴りを横っ腹に、掌底を顎に。

 あれも全て、親父さんが考案した神楽坂流空手の動き。

 しかも今聞こえた声は!?

『舐めてんじゃねぇぞ、こらぁ!』

 大振りだが素早いラグシオンの拳を、ガーディアンはひらりとかわしブレイガストの横に立つ。

 まさか、こいつは。

「おまたせ。助けに来たよ、コウジ。」

「お前、マコト、なのか?」

「それ以外誰がいるのさ。」

 通信モニターが展開される。

 そこには間違いなくマコトの姿があった。

「お前、ガーディアンなんかに乗って!自分が何してんのか解ってるのか!?」

「解ってる。コウジを、みんなを護りに来た。」

 そんな!これじゃあ、アイツとの約束が!

「助けてくれたのには感謝する。でもお前は下がってろ!アイツは俺が倒す!」

 そうだ、俺はマコトを護るんだ。

 それなのにマコトが戦いに出たら、意味が無いじゃないか。

「それじゃあ意味が無いんだよ!ボクは、コウジを助けたい!守りたい!だからこのタリスマンに乗ったんだ!」

 タリスマン、それがそのガーディアンの名前か。

「駄目だ!俺にはマイケルとの約束がある!お前を危険に巻き込むわけにはいかない!」

「それでも!!」

 俺の言葉をかき消すかのように、マコトが叫ぶ。

 馬鹿騒ぎしたことはあったけど、コイツがここまで大声を出すのは初めてだ。

「マイケルと君の間に何があったかは知らない。それでもボクは、もうみんなの、コウジの後ろで護られてるだけじゃいやだ!ボクも一緒に戦う!背中を見るんじゃない。隣に立つんだ!」

 マコト、お前・・・。

 マコトの言葉に、俺の中に渦巻いていた暗い何かが晴れていく。

 そういえばいつもそうだった。まだコイツが弱かった小さい頃も、めっきり強くなって俺を痛めつける今も、俺はコイツの言葉に背中を押されて進ん

で来た。コイツの言葉は何故か俺に勇気をくれた。

 それに今は、昔以上にマコトの想いが胸に染み渡っていく。なんだろう、この感覚は。

 温かくて、優しい。それでいて心強い。

 まるで心と心が繋がっているような、そんな感覚を覚える。

 黒く、邪悪な姿に変貌してしまっていたブレイガストが、元の真紅の姿に戻っていく。

「コウジ。一緒に戦わせて。足手まといにはならないから。」

「マコト・・・。」

「ていうか、コウジはボクがいないと何にも出来ないでしょ。」

 コイツ、余計なことを・・・。

 マイケル、すまん。マコトを危険に巻き込むことになる。

 でも、今の俺にはコイツを止められる気がしないよ。

 祟ってもいい。枕元に立ってもいい。だから許してくれ。

 俺は、マコトと一緒に戦う!

(なら、護り通してみせろよ、バカヤロウ・・・。)

 何処かで、マイケルの声が聞こえた気がした。

『お話は終わったかよ。死に掛けのスーパー級と細身のガーディアン。それだけで俺とヴィクラマの包囲網を抜け出せると思うのか!』

「どうかな?」

「やってみなくちゃわかんねぇ!」

 その時、コンソールが輝きだした。

 コンソールだけじゃない。コックピットも、機体全体もだ。

 見るとタリスマンも同じように輝いている。

 そして、ある一文が浮かび上がった。

「これは・・・。」

「マコト!考えるな!多分この機体たちは、そのためにいる!」

「・・・うん!」

 俺達は上空高く飛び上がる。

「「ユナイト、ガーーディアン!!!」」

 俺達の叫びが重なった。

 ブレイガストの姿ははそのままだが、タリスマンに変化が起こった。

 人型から飛行機型に変形し、ブレイガストの周りを飛び回る。

『中佐!攻撃を!』

『いいや待ちな。』

 飛行機形態になったタリスマンは両脚を変形させブレイガストの肩に。

 本体はそのまま背中に合体し、翼のようになる。

 その際の余剰パーツが両腕に集まり、ガントレットのように。

 頭部パーツ同士が結合し、王冠のように。

 そしてパイロットであるマコトはブレイガストの中、つまり俺の下にコックピットごと現れる。

 これが、ブレイガストとタリスマンが一つになった、ブレイガストの真の姿・・・。

「「ブレイガスト・ノヴァ!轟誕!!」」

 スゲェ・・・。死に掛けだったブレイガストのエネルギーが、今までにないほど高い数値を示している。

 腕一つ振るうだけで今まで以上のパワーを叩きだせる。

 これは、とんでもねぇ!

『く。そんなこけおどしにぃ!』

 ヴィクラマの1機が斧で斬りかかる。

 俺は拳を振りかぶり・・・。

「ジェット・ナックルゥ!」

 ガントレット状になっていたパーツが火を噴き、右拳ごと飛び出した。 

 所謂ロケットパンチ。あわれヴィクラマはそれをまともに受け、大穴を空けて爆発した。

 今までにない威力に、俺の方が戦慄する。

「はは、マジかよ。」

「このまま一気に叩くよ、コウジ!」

 おうよ!

 

side-シャナ-

 

「あの、姿は・・・。」

「マコトが乗ってきたガーディアン。まさかユニオン級だったとはね。」

『余所見をしている暇があるの!?』

 死神はビームサイズを振りかぶり、私達に斬りかかる。

 だが、仕留めたいなら声を発するのはいただけないな。

「オーラ斬りっ!」

『くっ!』

 オーラを纏い受け止める。

 一合当てる度に姿を消して再び斬りかかろうという魂胆だろうが、させはしない!

「そこだ!」

 剣を振るう。

 確かな手応え。私の剣は確かに死神の鎌を受け止めていた。

 それを数度繰り返す。敵の速度も上がってきているが、こちらもトップギアだ。

 なにより、あんなにも神々しい姿をコウジたちに魅せられたんだ。

 私も無様を晒すわけにはいかない!

 重い一撃を合わせた後、互いに距離を取る。

 その瞬間を逃しはしない!

「往け!メテオスウォーム!!」

 渾身の魔法を繰り出す。

『ふん。こんなモノ!』

 避けるかグリム・リーパー。だがな。

「そこはアタシの間合いだよ!」

『!?しま』

「最後のミサイルだ。全弾持っていきな!」

『くぅああぁぁーーー!!』

 近藤の放ったミサイル数発が奴の機体を直撃する。

『これ以上の戦闘は不可能。撤退する。近藤フミカ!次こそは!』

 ボロボロの機体でなお姿を消し逃げようとする。

「追撃を!」

「放っておきな。こっちもカツカツなんだ。それに今はアイツらの援護だよ。」

 確かに。

 私達はブレイガストの援護へと向った。

 

side-コウジ-

 

「おらおら!後は手前だけだ!」

 ブレイガスト・ノヴァの前に敵は無く、ヴィクラマ隊は瞬く間に全滅。

 残るはラグシオン、グラフスの野郎だ。

『・・・ク、ククククク。』

 なんだ。奴の様子がおかしい。

『ヒャーハハハハハハハ!凄ぇ、凄ぇじゃねぇか!それが王を超えた守護神の力か!』

 王?守護神?なんのことだ?

 そういえばコイツは何度かそういったことを口にしていたな。

「王だの守護神だの、訳の分からないこと言ってないで早く降参しなよ!」

 マコトは元気ですなぁ。実は俺さっきのダメージが残っててフラフラなんですけど。

『ククク。そうだな。大サービスで教えてやる。王ってのはブレイガストのこと、守護神てのは今の状態のことだ。』

「いや、それだけじゃ何が何やら。」

『だったら後は自分で調べな!』

 飛び上がるラグシオン。

 置いていかれるわけにはいかない。すぐに追いかける。

 舞台は空中戦となったわけだが・・・うお!?

 あの野郎、俺達が上がってきた途端あの奈落粒子砲とか言うのを撃ち始めやがった!

『そらそら!踊れ踊れ!』

 く、調子に乗りやがって!

 避けるのに精一杯だ。

 そうこうしていると奴はさらに上空に飛んだ。

 どういうつもり・・・。まさか!?

『そうらフルチャージだ。避けても良いんだぜ、島がどうなってもいいならな!』

 考えやがったな、畜生!

「大丈夫。」

「え?」

「ブレイガストを信じて、そのまま受け止めて。」

 受け止めるって、あれを食らったらさすがにやばいぞ!?

「大丈夫。この子達は、あんな物に屈したりしない。」

 マコトの落ち着き様、一体何を確信してるんだ?

 だが、コイツが信じてるんだ。

 来い!受け止めてやる!

『阿呆が!砕け散れ!』

 特大の粒子砲がブレイガストを襲う。

 直撃しそうになったその時、奈落粒子が目の前で四散した。

 ブレイガストの目の前に、AL粒子の壁が出来ている。それが俺達を護っていた。

『《ティール》!?新たな加護を目覚めさせたというのか!?』

「これはボクたちの、護るという意思の表れ。この壁は、絶対に壊れない!」

 俺も驚いた。ブレイガストが、ここまで進化していたなんて。

 いや違うか。マコトの言葉を借りるなら、これは俺達の心に反応した力だ。

「コウジ!エネルギーを、全部ボクの方にまわして!」

「何があんだか知らんが了解!」

 ブレイガストの操縦権を一時的にマコトに任せる。

 すると、タリスマンの脚が変形した両肩の砲塔にエネルギーが集まる。

「上に飛んだのが間違いだったね。行け!必殺、ブロッサムブラスター!!」

 桜色の極大ビームがラグシオン向って飛んでいく。

 距離は近い。かわしきれないだろうが!

『ぐ、ぐぬぅぅ、うおーーーーーーーー!!』

 ビームの渦に飲み込まれ、姿が掻き消える。

 これまたとんでもない威力だな。

 ん?まだ反応がある。

 煙が晴れた後には、右腕と左脚が無く、ボロボロの姿のラグシオンがいた。

『ひゃ、ひゃはははは。やるじゃねぇか、クソ餓鬼ども。』

「死に体で何言っても説得力ないぜ?」

『うるせぇよ。ま、今回は俺の負けにしといてやる。次までにもっと強くなってろや。あばよ!』

 突如爆発が起こり、ラグシオンの姿を見失う。

「え?何これ?」

「ダミーの爆発だ!野郎逃げやがった!」

 とはいえ、こっちも結構ギリギリだったからな。

 逃げてくれて正直助かったぜ。

 

「にしてもマコト。ブロッサムブラスターってネーミングはどうかと思うぞ?」

「え?いいじゃないか、可愛くて。」

「いやいやだって『桜砲』だぞ!?なんか力が抜けないか?」

「そういうコウジこそ、『ジェットナックル』ってそのままじゃないか!」

「あ、あれは良いんだよ!ロマンがあって。」

「じゃあブロッサムブラスターもロマンがあっていいよね。」

「いやそれはさぁ!」

「あーあー、二人とも。仲が良いのは置いといて、先に基地に帰還といこうか。あのユニオン級のことも聞きたいし。」

 う、なんだか恥ずかしい・・・。

 

side-グラフス-

 

 いつつ。派手にやられちまったもんだぜ。

 だがまぁ、こんなもん、すぐに治る。

「中佐。大丈夫か?ボロボロじゃねぇか。」

「ク、クククク。なぁジョニー、楽しいよなぁ。」

「・・・何がだよ。」

「自分の思い通りにことが進むのがだよ。」

 これで桜花島は覚醒した。

 後は機をみて丘桜を支配すれば。

 ク、クククク。笑いがとまらねぇ。

「ヒャーハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!」

(相変わらず不気味なお人だぜ。ファッキン。)

 

 

第8幕

 

side-ミウコ-

 

「つまり貴女は、例の少女に導かれてタリスマンというガーディアンに乗り込んだ訳ですね。」

「は、はい。」

 マコトさんが不思議そうに私を眺めている。

 えぇいいですよ。そんな反応慣れてますから。

 良いじゃないですか子供が基地司令やってても。

 事実は小説より奇なり、ならば小説や漫画見たいな事があってもいいでしょう。

 そんなことより、今はマコトさんとタリスマンの処遇をどうしましょう。

 彼女は一般人。このまま戦わせる訳にもいかない。

 ただしコウジさんという前例が有る。彼女の意思しだいではフォーチュンに協力してもらうという手もあります。

 ですが、どうしてもタイミングが悪い。

 二度も続けて謎だらけの機体を編入させるなんて。ただでさえブレイガストという爆弾を抱えてるのにそれが2倍ですか。

 さらに、鳳市からの補充要員がもうすぐ到着予定なんです。

 戦力増強申請しておいて自前で戦力、しかもユニオン級なんて仕入れたら上からなんて言われるか。

 あぁ、お腹痛い。

「それにしてもマコト、見事な戦いぶりだったな。まさかDLS無しでカラテを再現するとは思わなかった。」

「いやぁ、あの時は夢中で。」

「その夢中で何かあったらどうする気だったんだよ。気が気じゃなかったぜまったく。」

「ん~何々?心配してくれてたの?コウジの癖に?」

「癖にってなんだよ!」

 コウジさん、憑き物が落ちたような顔をしてますね。

 あぁ、若いっていいですね、何も考えてなくて。

 あ、私の方が若いんでした。最近自分の年齢が分からなくなってきましたよ。

「とりあえず、今の所調べるのはその白い少女のことだね。その娘が全てを握っている。」

 フミカさんの言葉で場に沈黙が下りる。

 コウジさんとマコトさん。二人をリンケージとして導いた白い少女。

 敵との交信記録から考えると、やはり《アバター》の可能性が出てきます。

 しかしそんなもの報告書に書いても誰も信じないでしょうね。

 これは、出来れば近いうちに彼女と再び接触してみなければ。

 出来れば私も交えて、ね。

「司令。テスタメント少佐達がお見えになりました。」

「もう到着したのですか。さすがに速いですね。司令室にお通ししてください。」

「かしこまりました。」

 さて、まずは挨拶が大事ですね。

 まぁ、どうせ子ども扱いされるのが落ちでしょうがね、ふふ・・・。

「ちょい待ち司令。今テスタメント少佐って聞こえたけど、まさかあの?」

「はい。あのテスタメント少佐です。」

 その名を聞くとフミカさんの顔からダラダラと汗が流れる。

 えぇそうでしょう。貴女はよ~く知っていますからね。

「あれ?ねぇコウジ・・・。」

「あぁ。なんか変な感覚がする。」

 お二人は何か感じ取ったようですね。

 これでお二人のスターゲイザー疑惑はさらに増しましたね。

 いえもう確信と言っていいでしょう。

「ど~も、失礼しますよっと。」

「・・・。」

 司令室に無精髭を生やした中年男性と、中学生ほどの少女、それと4人のパイロットスーツに身を包んだ男性達が入室する。

 その瞬間、フミカさんがバッと敬礼をする。ふふ、珍しいものが見れました。

「ユラード・テスタメント少佐、霧咲メイ少尉、及びテスタメント小隊、着任しましたよ。」

 無精髭の男性、テスタメント少佐が敬礼で口上を述べる。

「遠路はるばる感謝します。私がこの支部を任されている伊達ミウコです。」

「お噂はかねがね聞いてますよ。フォーチュンきっての天才少女。敏腕支部長だってね。」

 そこまで持ち上げられると、逆に照れますね。

「それと、フミカ嬢ちゃん。」

「ハイ!」

 背筋がビシっとのびる。

「俺から解放されたからって、訓練サボってなかったろうね?」

「ハイ!粉骨砕身、頑張らせていただいております!」

 学生組はフミカさんの態度に驚いている。

 まぁ無理も無いでしょう。訓練は厳しいものの、普段は飲んだくれ教師ですからね。

「皆さん。テスタメント少佐はフミカさんの教官だったお人なんですよ。」

 よっぽどトラウマがあるんでしょうね。完全に固まってますよ。

 おや、霧咲少尉、コウジさんとマコトさんを視ていますね。

 ・・・そうでした、確か彼女は。

 と、彼女のほうから二人に近づいていきました。

「こら、メイ。あまり失礼な事は。」

「貴方達は。」

「「??」」

「貴方達は自然に生まれたスターゲイザーですね。」

「自然?スターゲイザー?」

「・・・ねぇ君、どうしたの?何か変な感じがするよ?」

 お二人は大分戸惑っているようすですね。

 一つ講釈しておきましょうか。

「スターゲイザー。優れた直感能力や空間把握能力、ALTIMAに近い脳量子波通信、洞察力を持つ、新しい人類の姿。詳しいことは後日お伝えしますが、今は勘が良い、他者の真意を読み取ることに長けている人間、とだけ覚えてください。」

 あまり詳しく話しすぎると長くなりますし、お二人の精神衛生上よろしくないですからね。

「彼女は人工的に生み出されたスターゲイザー、強化人間です。」

 また面倒なメンバーが揃ってしまいました・・・。

 

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