メタリックガーディアン・プロミス 『桜の舞う島で』   作:戒炎

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最終戦もこれでラストです。


「SAKURA」その4

 最初に攻撃を仕掛けたのはテスタメント小隊。すぐにフォーメーションを組みなおし、一斉射撃を行う。

 狙いは奴のいる腹。それをラグシオンは腕でカバーする。

 さっきまでとは違う。血を噴き、明らかにダメージを負っている。

 トワイライトがそれに続き、ライフルを連射する。銃身が焼けるのも構わず、ただ急所を狙って。

 奴はもはや機械ではなく奈落獣。急所を狙われればダメージは必至。

 現に全てをカバーしきれず、着実にダメージを受けている。

 デカイせいで、傷を負って動きが鈍くなったせいでよく当たる。

「ッ!?頭痛になんて構っていられない!イグニス!」

 ラピス・ラズリがイグニスを放ちながら、ビームライフルを撃つ。

 イグニス全8基。それに加えてのライフル。計9門のビーム砲。しかも一つ一つが細かい動きをする。

 小さくも確実な傷が増えていく。

『鬱陶シイゼ!コノ虫ガ!』

 左腕から放たれたビームにより、イグニスが全て撃ち落された。

 だが、隙はできたな。

「コウジさん!シャナさん!」

「応!」

「往くぜ!」

 その隙を狙い、ブレイガストとバルサーガが突撃する。

 がら空きの腹をぶっ叩く!

 それも腕で防がれるが、その腕をバルサーガが斬りつける。

 大振りの攻撃をかわし、再び同じ攻撃を加える。

 それを受け止めても、また斬撃。

 そのコンビネーションを繰り返す。

 細かいが、確実にダメージを負わせている。

 理性を失っているグラフスには、この動きに対処できない。

 高速で動き回る2機を捉えられない。ましてや片方はファンタズム。機体が小さい分捕まえるのは容易じゃないだろう。

 撃ち落さんと、左腕からビームを撃とうとする。

 それが、一番の隙になっているんだよ!

「往け、シャナ!」

 シャナが上空で剣を大上段に構える。

 纏う魔法力が、柱に様に天を衝く。

「最大出力!ハイパーオーラ斬りだぁ!!」

 一気にラグシオンの左肩目掛けて、機体ごと剣を振り下ろす。

 剣は何の抵抗も無く肩から左腕を切り落とし、その左腕を切り刻む。

 くっ付けられないないように。もう二度と再生しないように。

『グガ!コウルサインダヨ!チョコマカト!』

 残った右腕で反撃する。

 その速度は、今までよりさらに速く、流石のバルサーガでも避けきれない。

「ぐあっ!?」

 まともに攻撃を受け、落下するバルサーガ。

 地面に激突する、まさにその時。

「あらよっと。」

 アクセルギアに抱きとめられる。

 衝撃はでかいだろうが、無防備に叩きつけられるよりましだろう。

 だがこれで、まともにダメージを与えられるのはブレイガスト・ノヴァだけとなった。

 奴も大分疲弊している。今が、最後のチャンスだ。

『バラバラデモカマワネェ!喰エバイイ!ソウスレバ、俺ノ勝チダッ!」

 右腕に高出力のエネルギーが集まる。

 さっきのファイナル・トール・スマッシャーもどきか。

 まともに喰らえばお終いだろうな。

「不味い!避けろコウジぃ!」

 避ける?馬鹿言うな。あれの後に隙が出来るのは、さっき喰らった時に確認済みだ。

 俺も、マコトも、もう後退のネジはとっくに外れてんだよ。

 さぁ、来い!

『ブッツブレロォォォ!!』

 右拳が迫る。今ならまだ避けられる。

 さらに迫る。もうここまできたら回避は間に合わない。

 拳が、ぶつか・・・らない。

 何かに阻まれるように、ラグシオンの拳が止まっている。

 見れば、AL粒子が壁となって攻撃を防いでいる。

「あれは、《ティール》・・・。絶対なる、守護の力。」

 

 明日の日を

      希望で照らす桜月

              平和の世のしるべとならん

 

『バ、バカナッ。』

 必殺の一撃だったのだろう。それを防がれ、明らかに動揺している。

 まずはその顔面に。

「ジェットナックルゥ!」

 頭部に直撃を受け、明らかに体勢を崩す。

 その間に、ブロッサムブラスターの準備を行う。

 今度はいつも通りじゃない、砲身のことさえ構わない一撃。

 マキシマムを超える、最強の砲撃を。

 だが頭を殴りつけただけでは、十分な時間は稼げなかった。

 右腕―といってももうそこしか残っていないが―を振り上げ、攻撃してこようとする。

 まだチャージは終わっていない。ここで撃つか?

 その時、迫り来る右腕に向ってビームの束が当てられた。

 テスタメント小隊による攻撃で、奴の腕が止まったのだ。

『小賢シイ!小賢シイマネヲ!』

「小賢しいは褒め言葉さ。時間稼ぎにはなっただろう?」

 ばっちりだ!

「マコト!エネルギー120%、限界だ!この距離で外すなよ!」

「誰に言ってるのさ!照準、敵コックピット。ブロッサムブラスター、オーバードライブシュートーーーーー!!」

 最大威力のブロッサムブラスターだ!たっぷりと喰らうんだな!

 俺達は指の一欠けらまで、手前にくれてやらねぇ!

 だから、いい加減に倒れろ!

『ギ、ギグググググ、グガーーーーーーーッ!』

 桜色の渦が奴を飲み込む。

 見えているのは両脚と右腕のみ。

 その右腕で、強引にブロッサムブラスターを振りほどいた!

 まぁ、正直な所分かってた。コイツがこのくらいでくたばるはずが無いことは。

 トドメは、あれで。あの一撃で決める。

 最後の意地か、また右腕にエネルギーが集まる。

 攻撃は、奴の方が速い!

 だがエネルギーを溜めていた右拳が、突如放たれたビームキャノンによって攻撃、誘爆し、粉々に砕け散った。

 ビームを撃ったのはジョニー。意外な男が、最大の隙を作ってくれた。

『じょにぃーーーーー!オマエハ、オマエハヤハリ殺シテオクベキダッタァ!!』

「へ。今更なんだよ。決めろや坊主!嬢ちゃん!」

 ありがとう。たった一日の付き合いだけど、アンタが仲間で良かった。

「バインドストームッ!」

 ブレイガストの胸から磁力場が発生する。

 磁力場は満身創痍の巨体を包み、動きを封じる。

 正拳の構えをとり、狙いを完全に丸出しのグラフス本体に合わせる。

 外しはしない。皆が繋いだこの一撃。

 空間を、世界を揺るがすこの一撃を叩き込む。本当に、正真正銘最後の一撃だ。

 往くぞ!

「「ワールドデストラクション!!」」

 二人の声が重なる。

 全てを賭けた一撃。届け!

 空間を削りながら拳は走る。決着の為に。

 そして大きく空間が削れた時、ラグシオンに拳が届・・・かない!?

 見ると、ブレイガストとラグシオンの間にAL粒子の壁が展開していた。

 これは!

「そんな・・・。《ティール》。ここまで来て・・・。」

 嘘だろ。嘘だよな!嘘だと言ってくれ!?

 ここまできて、ここまできて届かないのかよ!?

『切リ札ハ、最後マデトッテオクモンダ・・・。』

 奴の顔が歪む。あれは笑みだ。逆転し、勝利を確信した笑みだ。

『コノ傷、貴様ヲ喰ッテ治ストシヨウ。サァ、諦メナ。』

 くそう。くそう!くそう!!

 届け!届いてくれ!

 もう少し。あとほんの少し!薄皮一枚じゃないか!

 皆が繋いだ、託してくれたこの拳!このままでいいのかよ!

「頼む!止まらないでくれブレイガスト!あと少し、勝利は目の前じゃないか!なんで進まない!頼む!俺達の想いに、応えてくれーーーーーっ!!」

「コウジ・・・。」

 もう最後は血を吐く思いだ。

 だが俺の喉と引き換えに奴を倒せるならいくらでも叫ぶ!泣けと言われればいくらでも泣く!だから!

 この一撃に、俺達の最後の一撃に!力を貸してくれぇ!

 

(まったく。僕がいないと君達は何もできないな。)

 

「え?」

 その声は、最後を見守っていたメイにも届いた。

 聞いたことの無い、それでいて懐かしく、心安らぐ声。

 この島から聞こえる、優しい声。

「今のは、一体・・・。」

 

 今の声、まさか!?

「聞こえた・・・。」

「ボクにも・・・。」

 幻聴じゃない。はっきりと聞こえた。

 懐かしい、毎日馬鹿を言い合った、あの声。

 この島で喪われた命は、桜に還る。

 単なる御伽噺だと思っていた。

 でも、そうか。

 いつも見守ってくれていたんだな。

『ナ、ナニ!?』

 粒子の壁に亀裂が走る。

 それは最初は小さく、だんだんと大きくなり、やがては壁全体に広がった。

「これは、《オーディン》?でも、もう誰も使えないはずじゃ。」

「これが・・・。これも、《奇跡(ガイア)》の力?」

 グラフスよ。お前は強かったよ。

 一人で俺達を壊滅寸前に追い込んだんだからな。

 でも、たった一人の力じゃたかが知れてる。

 俺は、マコトと、シャナと、フミカ先生と、メイと、テスタメント小隊と、ジョニーと。

 基地の皆と、この島を故郷に持つ全ての人の想いと共に戦っている。

 そしてまた、ここに一人。大馬鹿野郎が駆けつけてくれたよ。

 そして、粒子の壁は砕け散る。

『アリエナイ!《ティール》ハ絶対ノ壁ダ!砕ケルコトナド!』

「想いの込められていない。そんな壁に、俺達を止めることは出来ない。」

 全力で拳をぶつける。奴目掛け、一直線に。

「これで、最後だぁーーーーーーー!!」

『認メルカ!俺ハ、人間ヲ超エ、GUYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!」

 拳は何の抵抗も受けず、腹に、グラフス本体に叩き込まれる。

 そのまま空間を削り取りながら、ブレイガストはラグシオンを殴りぬける。

 

 厚き壁

    打ち砕かんとす金剛桜

              望み絶えし道をなお進まん

 

 削られた空間が元に戻る。

 そのエネルギーに巻き込まれ、ラグシオンは完全に消滅した。

 余剰エネルギーが、周囲に飛び散る。

 それは、ちらちらと舞う桜の花弁のようだった。

 

 今度こそ。今度こそ力が抜ける。

 シートからずり落ちそうになるほどに。

 プレッシャーは完全に消え去った。もう奈落の気配は無い。

「もう何が出てきても戦わないぞ、俺は・・・。」

「大丈夫だよ。これで、本当に終わり。」

「本当だろうな。」

「それなら自分で見回ってきなよ。ボクはもう動けないから。」

 冗談。俺だってもう動けねぇよ。

 なんの感情も湧かない。あれほど苦しい戦いだったのに。

 そんな気も失せるほど疲労しているのか、それとも・・・。

 いや、今は何でもイイや。

 皆が駆けつけてくれるのが見える。

 助かる。ホント、腕一本動かすのも一苦労なんだ。今は操縦も出来ない。

「・・・勝ったんだね。」

「あぁ。」

「・・・終わったんだ。」

「あぁ。」

「・・・守れたんだ。」

「・・・あぁ、そうだな。」

 二人して当たり前のことを言う。だが、それが心地良い。

 疲れが、微妙に取れていく。微妙にだけど。

 

(偉大なる守護者達に、祝福を・・・)

 

「・・・聞こえたか?」

「うん。聞こえた。」

「そうか・・・。」

 なんだか、それだけで今までの戦いが報われたような気がするよ。

「帰ろう。帰って寝て飯食って、それでまた学校で、馬鹿騒ぎしよう。」

「そうだね。帰ろう。そして避難した皆を迎えにいかないと。」

 あの騒がしい日々が、たまらなく愛おしい。

 さぁ、帰ろう。

 

side-メイ-

 

「これで、終わったんですね。」

 彼らの因縁も、終焉を迎えた。

 勝ったのは私たち。いえ、私たちは手伝ったに過ぎない。

 怒りと憎しみを越えた、その先にあるもの。彼らはそれを見つけた。

 そして、勝利を掴み取った。

 破壊と狂気に彩られたグラフスではなく、世界は希望に満ち溢れたコウジさんとマコトさんを選んだ。

 さぁ、二人を迎えに行きましょう。

 桜花島を救った、もしかしたら世界をも救ったかも知れない英雄を。

「ん?レーダーに生体反応?・・・そんな、まさか!?」

 私はその場所に向った。

 これも、もしかしたら奇跡の産物。

 そう、ちょっとした奇跡の。

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