メタリックガーディアン・プロミス 『桜の舞う島で』   作:戒炎

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既に完結させていたものを加筆、修正しながら投稿しています。
それでいてこの始末だよ・・・。

あとなんだか展開が駆け足です。


第2話「KNIGHT」その1

第二話 「KNIGHT」

 

第1幕

 

side-シャナ-

 

「シャナ・アティアイナです。よろしくお願いします。」

 今日からクラスメートとなる者達に頭を下げる。これで間違っていないはずだ。

 顔を上げ、教室を見渡すと見知った顔が3人。全員が驚いている。

 だが今一番驚いている、いや困惑しているのは私だ。

 

 あれは桜花島に襲撃してきた奈落獣を討伐した次の日。レムリア女王陛下に報告をしたところ、

 

『島に馴染むため、学園への編入手続きをしておきました。』

 

 と言われた。それから数日、あれよあれよと言う間に荷物が送られてきて、いつの間にか私は学生寮に住むことになった。

 あまりにも突然な事態。迅速に行われる引越し。編入の手続き。学生証など重要物の受け渡し。

 何だこの異常にスムーズな流れは。まるで誰かが裏で糸を引いているような・・・あぁ、陛下か。

 それにフォーチュンも関係しているのだろう。でなければ偶然この女が担任などありえない。

「ハーイ、喜べ男子共!美少女の転校生だぞ!レムリアから来たばかりで分からないことも多いだろうから、優しくしてやりな。ちなみにこの娘もリンケージな。」

 この女、近藤フミカ。本当に教師だったとは。戦場で見せた威圧や殺気がまるで感じられないぞ。あと騎士をそんなぞんざいに紹介す

るな。

 まぁそれも一般人に紛れるために隠しているのだろうが。

「それじゃアティアイナ・・・長い!シャナの席はっと。マコトの隣が空いてるわね。そこで。」

 何だか適当だ。というか教室の中心じゃないか。何故今まで空いていた。

 だが助かる。神楽坂マコトとは一度だけとはいえ顔を合わせている。いや、すでに友と言ってもいい。

 彼女の隣にはあの東屋コウジ。その前にはマイケル・ダートン。

 知人が集まりすぎている・・・。やはり作為的な何かを感じる。

 とりあえず席へと向かう。その途中、何故か多くの視線を感じた。

 悪意の類は感じない。むしろ好意的な視線を向けられ、少しこそばゆい。

「ビックリしたよ、シャナ。まさか編入してくるなんて。」

「私も未だに状況についていけない。何がなにやら・・・。」

 席に着くとさっそくマコトが話しかけてくる。

 この気さくさが、彼女の魅力なのだろう。数日前も、初対面なのに非常に話しやすかった。

 人に頼らず生きていこうと考えていた私だが、不思議と彼女には頼りたくなってしまう。

「勉学はともかく、イズモの文化にはまだ慣れていないんだ。そこを教えてくれると助かる。」

「うん、任せといてよ。じゃあ早速・・・。」

 ??何だ?

 

「じゃあ朝のHRはこれまで。あんた達、手加減しなさいよ♪」

 そう言って近藤フミカ、もとい近藤先生は教室を出て行く。

 すると、

「まずは転校生の洗礼を受けよっか♪」

 教室内が生徒だけになると、ほとんどの人間が私目掛けて飛んでくる。

 まて!何だこれは!?おい、座ったまま文字通り『跳んできた』奴がいたぞ!

「アティアイナさんってレムリアから来たんだよね?どんなところなの!?」

「アティアイナさん髪綺麗ー!」

「ポニーテールktkr!!」

「聞いたことある!レムリアのリンケージって騎士って呼ばれてるんでしょ!?」

「姫騎士hshs!!」

 こ、言葉が、言葉が濁流のように流れてくる!?

 これが噂に聞いた『転校生の試練』なのか!?

 待て、止めろ!一度にそんなに質問されても答えられん!それに途中変な輩がいるぞ!?

 悪意は感じないが、感じはしないが、これは立派な害だ!

 ハッ!?東屋にダートンめ!いつの間にか避難しているだと!?おのれ、戦友を見捨てるか!?

 だが私も一介の騎士、この程度の精神攻撃でやられは・・・

「シャンプー何使ってるの?」

「お肌もキレー!プニプニ!(つんつん」

「イズモ語できるんだ!頭いいの!」

「運動は得意!?どの部活に入るか決めてる!?」

「歓迎の胴上げだー!!!」

「「シャーナたん!!シャーナたん!!」」

 限界だ!?

 いきなり胴上げされて精神の持つ人間がいるか!

 も、もうダメだ。

「マ、マコト、助け、て・・・。」

「ほらほら、みんなそこまで。もうすぐ1時限目始まるよ。」

 その一言で私は降ろされ、皆蜘蛛の子を散らすように自席に戻る。

 なんだその一体感!?怖いぞお前達!?

「はいはいシャナ、そんな涙目にならなくても大丈夫だよ。次はもっと大人しいはずだから。」

「まだこの試練は続くと言うのか?」

「試練っていうか、儀式?」

 なんて恐ろしい儀式だ。

 

side-コウジ-

 

「おーおー、早速囲まれてる。」

 避難しておいて良かった。

 隣にはちゃっかり一緒に避難していたマイケルがいる。

 

 しかしシャナが編入してくるなんて驚いたぜ。

 騎士の生まれっていうから昔から英才教育だの何だので勉強は完璧ってイメージがあったんだけどな。

 フォーチュン支部内での立ち居振る舞いとか、ちょっと固いけどどこぞの姫様みたいな感じがしてたし。

「そこんトコどう思うよマイケル。」

「何いきなり話しかけてきてるんだ。」

 いちいちムカつく奴だなおい。

「シャナのことだよ。」

「あぁ。彼女はしばらくこの島で暮らすそうだ。そんな中騎士の格好は目立ちすぎる。大方、島にうまく溶け込む為の戦略だろう。」

 戦略って・・・。まぁこの島も常時戦闘態勢に入ってしまっているわけだけど。

「そんな堅苦しい理由には見えないんだけどなぁ。」

 あ、胴上げ始まった。

 いや、俺も目立つのは好きだけど、時々このクラスのテンションには着いていけない。

 何だか越えてはいけない一線を越えている気がする。

「僕の時はこうならなかったな。」

「そりゃお前、そこら中威嚇してたらさすがにあいつらでも引くって。」

 それでも根気良く話しかけてたのはマコトぐらいだったんじゃないか?

 俺はコイツの態度が気に食わなくて突っかかってただけだし。

「俺とマコトが居なかったら、お前今ボッチ確定だぞ。感謝しろよ。」

「そうか、今の僕がいるのはマコトのおかげか。悪くないな。」

「ナチュラルに俺を無視するな!」

 まったく。こいつの頭の中はマコトしかいないのか。

「それにしてもこのテンションは異常だろ。イズモではどこもこうなのか?」

「いや、ココって離島の学校だろ?外に出るのは珍しくなくても、転校や編入は珍しいんだよ。」

 まぁこのクラスが異常なだけだろうけど。

 

「ほらほら、みんなそこまで。もうすぐ1時限目始まるよ。」

 マコトの声でシャナを囲んでいた連中が一斉に席に着く。

 訓練されすぎだろこのクラス・・・。てかこういうのは委員長の役割じゃないか?

 あれ?このクラスの委員長って・・・。

 あぁ、後ろの席で一心不乱に何か描いてる藤枝サユキ(16)か。

 あいつ普段は真面目な委員長なのに時々妙な行動するんだよな。たまに俺とマイケルを見てにやけてるし。

 そん時はものすごい寒気を感じるんだよなぁ。何でだろう?

 

※藤枝さんはこの物語に一切関係ありません。

 

 そうこうしている内に一時限目、古文の教師が入ってくる。

「さぁ、僕達も授業の準備だ。」

「分かってるよ。」

 今日も憂鬱な授業が始まるのか。

 はぁ・・・。

 

 

第2幕

 

side-シャナ-

 

「酷く疲れた・・・。」

 あれから休み時間毎に人が集まり、朝と同じような状況になった。

 一つ一つ答えた、のが悪かったのか。彼らの質問はさらに勢いを増した。

 その度にマコトに助けられたよ。

 現在は昼休み。昼食の時間だそうだ。

 また取り囲まれる直前に、マコトに手を引かれどこかへ連れて行かれた。

 その時教室から『キマシタワーーーー!!』と聞こえたが、一体どういう意味だ?

 そして今、私は今マコトに連れられある空間に来ていた。その空間の入り口に掛けられた看板には何かが書いてあった。確か・・・。

「ここが学食。生徒がご飯を食べるところって言えば解りやすいかな。」

 ここが学食・・・。周りを見ると大分混雑しているようだ。

 あのカウンターらしき場所にはかなりの列が出来ている。

「せっかくの編入初日だから、学園のご飯食べてみようか。なんて、本当はボクがお弁当作るの忘れただけなんだけど。」

 ウインクしながらマコトは言う。

 確かに私は弁当を持参していない。昼食をどうしようか悩んでいた。

 そこにこの誘いは嬉しい。

 だがおかしい。マコトの机には弁当らしきものが有った筈だ。

 ・・・まさか彼女は、私の為に学食を案内してくれているのか?

 そうだとしたら、お節介が過ぎる。

 それでも、嬉しいと感じてしまうのは彼女の行為に邪なモノが一点もないからだろう。

「そういえばマコト。今日は世話になりっぱなしだったな。」

 イズモの古典なぞ私にはまるで理解できん。

 他の教科も、家庭教師に習ったものとは教え方や細かい部分が違っていて難儀したが、その都度マコトに助けられた。

「いいのいいの。困った時はお互い様。友達だろ?」

 彼女はにこやかに返すのだった。

 

 そのまま『食券』の買い方を教えてもらい、列に並んだ。

 少々時間がかかったが、何とか昼食を受け取る。

 ちなみにマコトはカレー、私はオムレツを頼んだ。

「ウチの学食は人気高いよ。安くて美味いを掲げてるだけあって、味はそこいらのレストランより上で、値段もリーズナブル♪」

「あぁ、見ただけで分かる。これは絶対に美味だ。」

 オムレツから立ち上るかすかな湯気、それに乗ってくるほのかな香り。

 自慢じゃないが、私はオムレツには目がない。

 あのスプーンを入れた瞬間のふわっとした感触。あれを含めてのオムレツだ。

 今回頼んだケチャップソース。ちょうど良い酸味と甘さが漂ってきて、匂いからして合格点、いや満点だ。

 そうなると味も相当なものに違いない。早くこれを味わいたい!

「あ、いたいた。ごめん、お待たせ。」

「やっと来たか。ラーメン伸びちまうよ。」

「なに、多少待ったところで食事は逃げない。」

 私がオムレツに想いを馳せていると、テーブルに到着した。

 マコトに促され着席すると、目の前には東屋コウジとマイケル・ダートンが座っていた。

 

「今日は学食って言われたときは何かと思ったけど、シャナの為だったのか。」

「いやいや。今日お弁当忘れちゃって。シャナも巻き込んじゃった。」

 まだ言うか。本心はばれているぞ。

「はははは、馬鹿だなぁ。」

 馬鹿はお前だ東屋コウジ。

 案の定マコトの拳が顔面に飛ぶ。本当に突き刺さっているように見える。

 本当に良い突きだ。よほど鍛えこんでいると見える。彼女の実家のカラテ道場にますます興味がわいた。

「なんで俺、こんな目に?」

「自業自得って言葉、知ってるか?」

「うるせぇよ!」

 なんだ男二人で騒いで。これがイズモのマンザイか?

「そんなことより、早く食べちゃおう。ボクたちが待たせちゃったし。」

「そうだな。では。」

 えぇと、イズモでは食事の前は・・・

「「「「いただきます」」」」

 これであっているはずだ。・・・何だお前達、そのその『良く出来ました』みたいな顔は。

 それはともかく、待望のオムレツだ。

 すっ、とスプーンを入れる。するとふわぁ、と開き、中のとろとろの卵が顔を出した。

 この時点で食欲をそそられる。そして一口掬い、口の中へ・・・。

 !!!!これは!!!!!

 口どけ柔らかく、まるで蕩けるような食感だ。

 ソースも酸味がありつつ、ほのかな甘味がまた飽きさせない!

 なんと、こんな小さな島にこれほどのオムレツを作れる人間が居たとは!

 レシピを教えて、いやシェフごとレムリアに連れて帰りたい!陛下に頼めば許可して下さるだろうか?

「・・ナ。シャナ!」

 私がこの極上オムレツにひたっていると、横から名を呼ばれる。

 マコトか。もう少し味合わせてもらえると助かるのだが。

「シャナもリンケージってことは、あの時の白い機体がそうなの?」

「白い?バルサーガのことか?確かにあれは私の神霊機だが。」

 何故いきなりそんなことを?

「あの時、奈落獣に捕まったボクを助けてくれたよね。そのお礼がまだだったから。ありがとう。」

 屈託のない笑顔でそういう。

 なんだかオムレツのことなど頭から吹き飛んでしまったようだ。

 どうして彼女はこんなにも純粋なのだろうか。

「何、騎士として当然の事をしたまでだ。まぁ、あまり役には立てなかったがな。」

「それでも、だよ。今こうしていられるのはみんなのお陰なんだよ?」

 そこまで言われると、何だ。

 照れてしまうじゃないか。

 どうして彼女はそんなことを心のままに言えるのだ?

 顔が熱くなったまま、それを隠そうとオムレツを食べる。

「そういや奈落獣に吹っ飛ばされてばっかりだったな、シャナは。」

「どうやらお前にはデリカシーという言葉も知らないらしい。」

 男二人のマンザイはまだ続いていたか。

「東屋コウジ。」

「何だ?」

 奴はらあめんを啜りながら答える。

「私はまだ、お前を戦士として認めていない。」

「・・・はい?」

「お前の戦い方はただ我武者羅に手足を振り回しているだけだ。あんなもの戦いとは呼べん。

 だらしなく口を空けて呆けていたが、表情を変えると箸を置いた。

「言ってくれるじゃねぇか。そっちこそ近づいて剣で斬るくらいしか出来ないくせに。」

「私のバルサーガは機動力を活かしての一撃離脱の戦法だ。敵の撹乱も戦術の一つ。機体に振り回されているわけではない。」

 二人の間に剣呑な空気が流れる。

 いわゆる一触即発っというものだ。

 どうやら辺りにもその空気が移ってしまったらしい。

 周りの生徒がこちらを見ている。

「ま、まぁまぁ。今はご飯を食べちゃおう。お昼休みが終わっちゃうといけないし、ね?」

「・・・ふん。」

「・・・けっ。」

 マコトの一言で、とりあえず昼食を再開した。

 だが、決して和やかな雰囲気ではなかった。

「やれやれ。どうしてウチの支部には癖の強い連中しか集まらないんだ・・・。」

 ダートンがなにやら溜息をついている。

 だが、私の知ったことではない。

 こうして奇妙な空気のまま、昼休みは過ぎていった。

 

 

第3幕

 

side-フミカ-

 

 時間は夜。本日の報告の為、アタシはミウコ司令に通信を入れた。すると、

『ふあい?』

「ぶっ!!」

 思わずビールを噴出す。

 司令はパジャマ姿にいつも傍に置いてあるウサギのぬいぐるみを抱いて、寝ぼけ眼で通信に応じたのだ。

 こんな姿は初めて見・・・いや、諜報部員の写真集で見たことがあったか。

 それにしても、久しぶりに真面目な話をしようと思った矢先にこの始末☆

 ちょっと連絡時間が遅くなってしまったか・・・。

 どうしよう・・・。

『司令。伊達司令。近藤様より通信ですぞ。』

『ん~~~、ふぁ~~。何ですか?こんな時間、に・・・。』

 だんだんと眼が覚めてきたのか、こちらと目が合う。

 じょじょに顔が赤くなり、遂には頭から煙を噴出した。

『しょ、少々お待ちください!』

 

~~~数分後~~~

 

『こほん。では本日の報告を。』

 まぁアタシも女だからね。さっきのことは忘れるよ。うん。

「シャナの編入。突然だったけど、アンタは知らされてた?」

『ハイ。話自体は前回の戦いの後にあちらから報告がありました。ですが今日いきなりとは。』

 司令もモニターの向こうで苦笑している。

 そりゃそうだ。自分とこの戦力の動向が不明だったんだから。本心は文句の一つでも言いたいのかもしれない。

「癖が強すぎて纏めるのが大変よ。特にコウジとの相性が悪いみたい。マコトちゃんが間に立ってくれてるから何も起こらなかったけど。」

『そうですか。基地内でも二人はあまり仲が良いとは言えませんでしたからね。監視は怠らないでください。最悪国際問題になりかねません

からね。』

「そうならないことを祈るよ。」

 話を変え、こちらから質問する。

「遺跡の調査はどうなってるんだい?」

『調査部が人の通れる場所を発見しました。』

 お、進展ありか!?

『ですが本人達曰く、何処をどう通っても入り口に戻って来てしまうらしいのです。まるで何かに拒まれているようだと。』

 あー、オカルト関係かぁ。面倒なんだよね。そういうの。

「今度シャナでも連れて入ってみるかね。何か発見がありそうだ。」

『此方からもお願いします。今回の調査で、この島には確実に何かあるということだけは判りましたから。』

「りょーかい。ま、しばらくは戦闘訓練を続けたいけどね。あの二人、連携のれの字も解ってないんだから。」

『クスッ。お願いしますね教官さん。それと、島の外周に海上施設を造ることが決まりました。』

 海上施設?なんじゃそりゃ?

『普段は海中に設置し、必要に応じて浮上させるシステムです。これで飛行できない機体でも海上で戦えますし、小規模ながら補給施設も兼ね

ています。滑走路代わりにも使用できます。一月後には四基ほど設置できる予定です。』

 一月で四基!?随分急ピッチだねぇ。

 出来るだけ島外で戦闘を行いたいんだろうけど、こういうのって大抵突破されるんだよね。

『信用してませんね?防衛機能としてマシンキャノンも搭載されています。鉄壁の守りですよ!』

 あのね、そういうのをフラグって言うんだよ?

「ま、いいか。本日の報告は以上。そっちは?」

『こちらからも以上です。それでは、お休みなさい。』

「お休み、ベイビー。」

 そういって通信を切る。

 変に興奮してたけど、こんな時間までよくやるよ。たかだか9歳の小娘が。

 ホント・・・。

「・・・誰に似たんだか・・・。」

 ポツリとこぼし、アタシは晩酌を続ける。

 

 

第4幕

 

side-マイケル-

 

 シャナが学園に編入してからあっという間に一ヶ月が経ち、6月も半ばになった。

 彼女は元々学が高く、授業の飲み込みも良かった。

 運動神経も良く、今ではすっかりクラスの人気者となっている。

 だが彼女自身の性格の固さゆえか、一方的に壁を作っているように思える。

 まぁその壁が崩れ去るのも時間の問題だ。

 あのクラスにはマコトという最上級のお節介がいるし、クラスメイト達も心の壁なんて強引によじ登ってくる連中だらけだ。

 学園に馴染むのも早いだろう。彼女は僕とは違い、心にゆとりがある。

 

 さらり幸いなことに、ディスティニーや奈落獣の襲撃がほとんど無かったことだ。

 一月で2回。これは今までで最小の襲撃回数だ。

 前回の戦いで戦力を出しつくしたのか。それならこちらも喜ばしいかぎりだ。

 だが、嵐の前の静けさとも言う。戦力を溜め込み、再び大攻撃に出てくることも考えられる。

 しかし一月と言う時間は此方にも利が有った。桜花島周辺の四ヶ所に海上補給施設が完成した。

 これで敵の襲撃にも対応が容易となった。基地から離れてしまうため、援護を受けられない難点は有るが、地上用機体が海上でも戦えるの

は大きなメリットだ。

 問題があるとすれば・・・。

『東屋コウジ!突出しすぎだと言っている!』

『うるせぇ!これがブレイガストの戦い方だ!』

 この二人だ・・・。

 先のギルガーンとの戦いでは良い連携をしてみせたものだが、それ以降はまるで噛み合わない。

 どちらも近接戦闘を主体とする機体故、相性は良いはずだが、中の人間が馬が合わない。

 東屋はいまだブレイガストのパワーに振り回されている状態だ。とにかく突撃しか頭に無い。

 今行っているのは各機の連携を強化するためのものだが、奴の動きには正直僕もイライラさせられる。

『東屋、邪魔だ!敵と重なるな!』

『だぁもう!!前衛もっとちゃんとしな!敵ごと撃っちまうよ!』

 僕自身も奴に影響され、感情的になってしまう。そこを近藤先生に怒られる。この繰り返しだ。

 正直、敵の襲来が少なくて助かっているのはこの部分だ。

 各機の性能の高さ、リーダーや司令の戦術の巧みさでなんとか保っているが、これでは部隊とは言えない。

 最後の一機を撃破し、シュミレーションは終了する。

「ほら見ろ。何とかなったじゃねぇか。」

「なんとかなった、では駄目だと何回言わせる気だ!」

 仮想コックピットから出てきた東屋に怒鳴り込む。

 コイツは・・・。もっと戦況や戦術というものを考えられないのか?

「まったく。話にならない。私はもう辞めさせてもらう。」

 そう言いながら、シャナは訓練室から出て行く。

 彼女は彼女で協調性が低いな・・・。

 本当に頭が痛い。

「コウジ。残りの時間は戦略についてじっくり講義といこうか。」

「ちょっ!?何で俺だけ!?シャナだって突っ込むことしかしないじゃないか!?」

「あの娘はアンタより連携ってものを考えてるからまた今度。今はアンタが一番問題だよ。」

「安心しろ東屋。先生だけにお手間は取らせん。僕もみっちりと講義してやる。」

「ひえーーーーー!?」

 はぁ・・・。こんなことで大丈夫なのか?

 

 

第5幕

 

side-マコト-

 

 シャナが編入してきてもう一ヶ月。彼女は完全にクラスの人気者だ。だけど・・・。

「シャナさんって何でも出来るよね。頭も良いし。」

「それに運動だって。100m11秒台なんて!もう陸上部に入るべきだよ!」

「いやいやぜひともわがバスケ部に!」「なんの!柔道部に!」

 と周りから賞賛されても、

「騎士として育ったからには当然のことだ。それに部活には入る気は無い。」

 とにべも無く冷たい反応が返ってくる。

 ウチのクラスはポジティブだからこれくらいじゃ挫けないけど、学園には人が大勢いる。

 聞いた話では、彼女はこの一月で既に何人からも告白をされたらしい。だが、全て突き放すように断ったそうだ。

 付いたあだ名が氷の姫騎士。まんまじゃないかと笑いかけたが、ことはそう単純じゃない。

 これで彼女が学園から孤立してしまったら、せっかくの学園生活が楽しめなくなってしまう。

 これはどうしたらいいものか。

「あ~~、シャナの奴!いつか見てろ・・・。」

 と、そこにやって来たコウジ。

 そうだ!

「ねぇコウジ。コウジはシャナのこと嫌い?」

「いや唐突過ぎるだろ。なんだよ一体「嫌い?」無視かよ・・・。別に嫌いじゃないぜ。ただ馬が合わないって言うのか?それだよ。」

 うん。これなら大丈夫だ。

 なんてったってマイケルに対しても同じ事を言って、結構良い仲になってるし。

 コウジにも協力してもらおう。

「コウジ。ちょっと頼みたいことがあるんだけど。」

「お前は何に対しても突然だよな。まぁ馴れたけど。で、頼みって?」

 それはね・・・。

 

「「部活を作る?」」

「うん。その名も桜花島探検部。」

 放課後、早速マイケルとシャナに提案してみる。

 ただの思いつきだけど、部活に入ればシャナも少しは変わるんじゃないかと。

 部活を通して他の生徒とも交流できるし、シャナの壁も低くなるはず!

 まずは仲間内で部活を立ち上げて、そこから人の輪に慣れていこうという作戦。

「探検部、ていうけど、何をするんだい?」

「まだ未定。」

 3人が同時にこける。しょうがないじゃないか、さっき思いついたんだから。

「お前、実は俺より馬鹿だろヘブシッ!?」

 失礼な幼馴染に一撃入れながら、残る二人を見る。

 マイケルは何かを思案しているけど・・・。

「それは桜花島のことを調べる部活、ということでいいのかな?」

「え?あ、うん。そうなるのかな?」

 何か不味いことだったかな?

「正直に言うけど、その件はフォーチュンで調査中なんだ。それでも解らないだらけなのに、一高校生に出来るかな?」

 あう。痛い所を突かれる。で、でも負けない!

「科学的な調査じゃなくてもいいんだよ。例えば島の各スポットを紹介したり、歴史を纏めたりして、それを発表するんだ。調査結果を港に

張り出させてもらったり、校内新聞に載せてもらったりするんだ。観光スポットのある学校じゃどこもやってるよ。」

 てテレビや本で見たことがある。

 マイケルは相変わらず何か考えてる。

 うう。その沈黙が痛い。

「・・・そうだね。その程度のことなら仕事に差し支えない。部活の勧誘も煩わしかったし、僕はその提案に乗ってもいいよ。」

 よし!マイケルゲットだぜ!

 マイケルは授業でも情報を纏めるのが得意だから是が非でも協力してもらいたかったんだ。

 横で悶絶してるお馬鹿さんは強制加入として、あとは一番の目的・・・。

「申し訳ないが、私は辞退させてもらう。」

 え?今何て・・・。

「マコトには悪いが、私はそこに転がっている男を信頼も信用もしていない。そんな人間と何かを成す気にはなれない。」

「何だとこのヤロー!もう一度言ってみろ!」

 あ、復活した。

「何度でも言う。私はお前を認めていない。部活に誘いたいなら、せめて信用に足る男になれ。では、さらばだ。」

 そういって教室を後にするシャナ。

 まいったなぁ。向こうは完全にコウジを嫌ってるみたいだ。

 なんとか二人を仲良くさせないと。

 二人を、仲良く?

 あれ、良い事のはずなのに、胸の奥がうずく。

 なんていうか、こう、黒いような感じの何かが・・・。なんだろう、これ。

「ちきしょー!ぜってぇ認めさせてやるからなーーー!!」

「お前は少し静かに出来ないのか?」

 複雑な感情を抱えたまま、この日はお開きになった。ホント、なんだろう・・・?

「ところでマコト。顧問は誰に頼むつもりなんだ?」

「え?フミカ先生だけど?」

「探検部っていうよりフォーチュン部って感じだな・・・。」

 

 

第6幕

 

side-???-

 

「これでどうだ!スペードのフラッシュ!」

「ハートのストレートフラッシュっす。」

「ファーーーーーーーーーック!!!!」

 そこではガスマスクを着けた男達がポーカーに興じていた。

 ここはディスティニー桜花島攻略基地。つまるところ彼らもテロリストなわけだが、まるで緊張感が無い。

 どこぞの溜まり場のような、ガラの悪いだけの場所のようだ。

 そのリーダーらしき男はたった今部下に負け、チップを全て失った。

「いやー、わるいっすねぇ、リーダー。今度の飲み会、ゴチになります!」

「「「「ゴチになります!!」」」」

「テメーらマジでファッキン・・・。」

 表情は見えないが、リーダーはかなり落胆している。

 当然だろう。この手のギャンブルで彼が勝った回数は片手で数えられるほどしかないのだから。

「またやってるの?懲りないわね、貴方達。」

 そこに一人の女が入ってくる。

 髪を短く切っているが女性らしさを失っていないのは、その顔のつくり故だろう。

 大き目の眼。筋の通った鼻。ぷっくりとした唇。

 街を歩けば誰もが振り返りそうな美人である。

 だが、天は二物を与えず。女性の象徴はかなりぺったん

「誰か失礼な事考えなかった?」

 全員が首を横に全力で振る。彼女から発せられた殺気ゆえか。

「それよりどうしたんですかい姐さん。」

「中佐から命令よ。近日中に超奈落獣を使った作戦を決行する。準備を怠るな、だそうよ。」

 男の問いに、女は答える。

 女もディスティニーの一員。

 そして、復讐者である。

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