メタリックガーディアン・プロミス 『桜の舞う島で』   作:戒炎

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急展開乙。
あとなぜ高貴な女子というのはチョロインにしたくなるのだろう?
皆さんもそうですか?私だけですか?


「KNIGHT」その2

第7幕

 

side-フミカ-

 

 あれから数日。

 根っこの部分は素直なのか、コウジはようやく戦術と言うものを理解してくれた。

 一月前までただの高校生だったのに、成長は早いほうだろう。

 素質があったのか、それゆえにガーディアンに選ばれたのか。

 それでも性格が邪魔して中々素直にならなかったりしたが、そんな時は『お話』して素直になった。

 そして今はシュミレーション中。

 ルミエールがビームライフルを撃ち、敵を牽制する。

 バルサーガがその隙を狙い、斬っては離れを繰り返し、確実に消耗させる。

 そして。

『よし!今だ東屋!』

『おうよ!サンダーボンバー!!』

 ブレイガストが敵陣に突撃し、雷撃を放つ。

 それで消耗しきっていた敵機は壊滅した。

 単純なパターン。けれどこの3人だとこれが一番良くハマる。

 ここにアタシのアクセルギアの遠距離射撃が加われば、まぁ形にはなるだろう。

 と言っても、未だブレイガストはその装甲と攻撃力に頼った戦法しか取れない。

 何か改善案はないものか・・・。

 と、思案中に小僧2人と小娘1人がこちらにやってくる。

「どうよ。俺だってやればできるんだ。」

 鼻を高くしてふんぞり返るコウジ。やれやれ、まだまだガキだね。

「とはいえ、僕とシャナが作った隙に突撃というワンパターンしかないんだ。戦場で敵は思い通りに動いてくれないぞ。」

「それでも、俺とブレイガストのパワーならどんな敵も粉砕だぜ。」

「愚かな・・・。」

 シャナが呟く。随分冷たく言い放つもんだね。

「何だと!?」

「戦士ならばあらゆる状況でも戦える術を身につけるもの。貴様はただ暴れているだけだ。」

「あ、暴れてるって・・・」

「悔しいと思うのなら、『守る強さ』を身につけろ。それが貴様の課題だ。」

 そう言い放って訓練室からシャナは出て行く。

 やれやれ、こっちは相変わらずかい。

 コウジもさぞお冠、っておや?

「守る強さ、か・・・。」

 握った手を見つめ、コウジはシャナに言われたことを反芻する。

 てっきりまた怒鳴り散らすと思ったんだが。

 少年も大分成長してきたってことかな。

「東屋。」

「ん?なんだよマイケル。」

「またルミエールの新武装のテストに付き合って欲しい。重装甲のブレイガストなら威力を試すのにぴったりなんだ。」

「あぁいいぜ。いやー、男のロマンだよな、アレ。」

 こっちはこっちで仲良くやってるようで何よりだ。

 まぁあれだ。喧嘩するほど仲が良いんだよね、この二人。

 娘っ子のほうもそうなってくれればねぇ。

 そんな時、基地内にサイレンが鳴り響いた。 

 

side-コウジ-

 

「ディスティニーが現れたのかっ!?」

 俺達は司令部に駆けつける。シャナは既にそこにいた。

 モニターを見つめながら司令は俺達に状況を説明する。

「はい。それもこの一月の散発的な攻撃とは違います。ヴァライフに搭乗したザードを護衛機に、奈落獣を先導しています。数も揃えている

ようですね、十数機の機影を確認しました。」

 ヴァライフ?俺が首を傾げていると、

「いわゆる飛行ユニットのことだ。飛べるようになるだけでなく、機動力も向上する。厄介な相手だ。」

 マイケルから補足が入る。そうか、敵は全部飛んでるのか・・・・って。

「あれ?じゃあ俺今回どうすればいいの?」

 ブレイガストはブースターで多少跳びあがれるけど、飛行戦闘は出来ない。

 一発殴って着地、またジャンプの繰り返しはさすがに疲れるんだけど。

 司令が言葉を続ける。

「話がまだ途中です。敵ミーレスは厄介ですが、撃退できない相手ではありません。問題は奈落獣の方です。」

 すると別のモニターに映像が出る。

 亀に蝙蝠の翼が生えたような、妙な姿をしている。

「あのタイプの奈落獣は以前別のフォーチュン支部が遭遇しています。その際に付けられた識別名称は『アビスボマー』。」

 アビス、ボマー?

「なんだか爆弾みたいな名前だな。」

 俺がそう言うと司令が振り返り頷く。

「そう、この奈落獣はいわゆる特攻爆弾です。目標に向かい突撃し、自爆する。この基地程度なら簡単に消し飛ぶ破壊力でしょう。」

 で!?想像以上にヤバイ奴だったのか。

「もしかして、敵の狙いはこの基地かい?」

「おそらく。それも今回のアビスボマーはデータに無い部分があります。おそらく超奈落獣として改造されているのでしょう。」

「そんなモノがここで爆発したら、島は壊滅的被害を受けるのは確実ですね。」

 マイケルは落ち着いている体を取っているが、額に冷や汗が浮かんでいるのが見える。

 しかもそんな代物だとすると。

「近接攻撃主体の私のバルサーガやブレイガスト、ルミエールでは、たとえ撃破出来ても爆発に巻き込まれる・・・。」

 シャナの発言で、俺達の間に沈黙が流れる。

 近づいて殴る、斬るは危険。かといって島の上空まで来られたらお終い。

 陸地からじゃ、砲撃も届かない。万事休すか?

 あれ?そういえば・・・。

「そこで今回の作戦ですが、先日完成した海上施設で奈落獣を迎撃してもらいます。敵護衛機にはルミエールとバルサーガに対処していただき

ます。そしてアクセルギアの長距離砲撃で桜花島が爆発圏内に入る前に撃墜。その間、ブレイガストにはアクセルギアの護衛をお願いします。」

 俺が護衛?

「重装甲のブレイガストならそう簡単に戦闘不能に陥ることはないでしょう。コウジさんは護りに徹してください。」

「ちょ、ちょっと待ってくれ!そんな訓練受けてねぇよ!?」

 護衛任務なんて、しかも島の存亡が懸かった役目なんて、今の俺には出来ない。

「なんだ。臆したか。」

 シャナが俺に向かい呆れたような声を放つ。

 びびってる?この俺が?

 知らずに顔が引き攣っていたようだ。そこも見咎められる。

「どうしたそんな顔をして。戦士ならば一戦一戦が命のやり取り。常に本番だ。やったことがないではすまない。」

「おい二人とも。こんな時にやめるんだ。」

 マイケルが仲裁に入る。

 だが、俺の頭は熱くなっていない。

 むしろ今まで以上に冷静になっていくのが、自分でも解る。

「貴様が戦士、いや正義の味方を名乗りたいなら、やってみせろ。」

 正義の味方、か。

 あれ以来、言葉に出して無かったな。

 戦いに慣れてきて、心が弛んでたのかもしれない。

 冷たくなっていた頭に、少しずつ熱が入り始める。

 でもそれは怒りじゃない。

 自分でもよく解らないけど、とにかく熱い。

 頭ではなく、心が。

 正義の味方。そうだ。俺はまだ、それを捨てちゃいない。

 捨てられるわけ無い。それが俺の、原点にして、誇りなんだから。

(約束してください・・・)

 頭の中に、あの声が響く。

「・・・先生。」

「なんだい?コウジ。」

 フミカ先生は俺を見ている。ただまっすぐ、笑顔で。

 俺の決意など全てお見通しのように。

「先生は奈落獣に集中してくれ。その間、先生の事は俺が絶対に護る!」

「はっ!そういうのはもっといい男になってから言いな!ま、今回は護られてやるよ。」

「あぁ。約束する!」

 俺はシャナに向き直る。

 先程までの呆れ顔とは違う、真剣な瞳が俺を射抜く。 

 俺も負けじと正面から向き合う。

「俺は護れるもの全部護ってやる。約束だ。だからお前も、この任務が終わったら、俺を戦士として認めてくれ。」

 しばらく見詰め合う俺達。

 俺は本気だ。この手の中のモノ、全部護ってやる。たとえどれだけ傷付こうとも。

 シャナの顔に薄らと笑みが浮かぶ。それは今までの嘲笑や呆れではない、今まで見たことの無い表情だった。

「ああ、約束しよう。この戦いで、お前の戦士としての資質を見てやる。」

 お互いに笑みを向ける。

 つい先日、ついさっきまで罵倒を浴びせ、浴びせられる関係はもうなかった。

 今なら、俺はコイツを心から信頼できる。

「まったく。ヒヤヒヤさせないでくれ。作戦前に仲間割れが起きるんじゃないかと心配したぞ。」

「あ、居たの?マイケル?」

「この場で撃ち殺してやろうか?」

 俺とマイケルはいつも通りだった。

「では皆さん。敵は南東から向かってきています。南側の施設へと各機を射出します。では、作戦開始!」

「「「「了解!!」」」

 

 

第8幕

 

side-フミカ-

 

 あれから早速南の海上施設に移動した。

 海上施設と言っても、普段は海中に存在している。必要に応じてせり上がる仕組みだ。

 全長およそ300m。この上で戦うにはちょうどいい広さか。

「マイケル。レーダーはどうだい?」

「敵機の反応は捕らえています。もうすぐ視認できる位置に来るかと。」

 OK。なら姿が見えた瞬間一発お見舞いしようかね。

 アタシはアクセルギアの姿勢を超長距離砲撃用にする。

 目標の予測位置も万全。挨拶の準備は出来てるよ。

 自然と舌なめずりする。アタシは蛇かっての。

「接敵までおよそ10秒、9、8、7・・・。」

 カウントダウンが始まる。

 さぁおいで、獲物ちゃん・・・。

「5、4、3・・・!?近藤先生!レーダーに反応!後ろです!」

 マイケルが叫んだ瞬間、後方の海から何かが飛び出した!

 カメラを向けると、まるで何も無かった空間から突然現れたように、一機のガーディアンが姿を見せる。

 あれは、クラッシャー級のステルス機能!?

『GA-04アクセルギア、近藤フミカ。仲間の仇!』

 クラッシャー級から声が聞こえる。仇!?一体何のことだ!?

 その時、思わずレールキャノンの発射ボタンを押してしまう。

 ロックオンされていない砲弾は、まるで見当違いの方向へ飛んでいった。

 まずった!一発無駄にした!

 いやそれ以上まずいのはこの状況。

 射撃後の姿勢硬直で、アクセルギアは動けない。

 そんなアタシにお構いなしに、敵機はビームの鎌を振り上げる。

 漆黒のその姿は、まるで死神のよう。

 あぁ、ホントまずいわコレ。

 いきなり任務失敗ってか?まったく、こんなところで。

「近藤先生!!」

「近藤!!」

 マイケルとシャナの声が聞こえる。はは、最後に聞くのが教え子の声か。教師冥利に尽きるね。

『フミカさん!!』

 司令の、ミウコの声も聞こえるよ。は、こんな女の為にんな声出すんじゃないよ。

 アンタはこんな大人になるんじゃないよ。下手すりゃその資質があるんだからさ。

 ホント、こんなところで終わるのか、アタシ。

 こんなところで。こんな、こんなところで。

 こ、ん、な、と、こ、ろ、で!

「終われるかーーーーーー!」

 こちとらまだ29だ。散るには早すぎんだよ!

 それにあの島にも愛着がある。壊させて、たまるかよ!

「その通りだぜ、フミカ先生!」

 何かがアクセルギアの脇を通り抜け、敵機を殴りつける。

 それは真紅に彩られた機体。アクセルギアより多少小柄なスーパー級。

 東屋コウジの、ブレイガスト。

『ぐうあ!?』

 のけぞる死神。すかさずミサイルアームの照準を・・・。

「駄目だ、先生!」

 合わせようとすると、ブレイガストがアクセルギアと死神の間に入る。

「先生は奈落獣に集中してくれ!約束しただろう!アンタは俺が護るって!」

 振り返りもせずに言い放つコウジの背中は、紛れも無く男の、戦士の姿だった。

 教え子に護ってもらうか。ブリーフィングでは想像もつかなかったけど、悪くないもんだ。

「ならソイツは任せたよ!アタシはアタシの仕事をさせてもらう!」

「応!」

 まったく、一月で良く成長してくれたもんだよ。

 

『待ちなさい近藤フミカ!貴女の相手は私よ!』

 死神から声が聞こえる声は、若い女の声か。

 仲間の仇とか言ってたっけ?

 最近まで復讐者だったアタシが言うのも悪いけどさ。

「こちとら長く戦場に居てね!どこでどんな恨みを買ってるか分からないのさ!」

 今度こそレールキャノンの照準をアビスボマーに合わせる。

 そして発射!

 音速の弾丸はまっすぐとアビスボマーに向かい、その頭部に命中した。

 まだまだ!どんどんいくよ!

 アクセルギアが輝きだす。アタシの闘志にALTIMAが反応している。

 リンケージはこの状態を『ブレイク状態』と呼ぶ。

 こうなると、ガーディアンは通常よりも高い性能を発揮する。

「さぁ!レッツ、パーティー!」

 

side-シャナ-

 

 接敵し、私とダートンは混戦状態に陥る。

 だが、バルサーガに数で勝負を挑むのは愚策。

 一対多の戦闘などとうに想定済みだ!

「オーラ・スラッシュ・バーストォ!!」

 オーラを纏った剣を握り、敵陣の中で回転し斬り抜ける。

 斬り抜けた後、爆発が起こる。

『な、なんて事をするんだお前は!?』

 まだ墜ちた機体はいないようだが、ダメージはあるはずだ。

 あの男が己の任を全うしようとしている。ならば私も遅れるわけにはいかん!

「レムリアの騎士、シャナ・アティアイナ、推して参る!」

 

side-マイケル-

 

 シャナが数機を相手に奮戦している中、僕は肩にエンブレムが着けられたザードと戦っていた。

 動きからして、奴が隊長機!あれを墜とせば、戦局は此方に有利になるはず。

 あの東屋が突撃せず、近藤先生の援護に徹している。

 僕も僕の仕事をするだけだ!

 隊長機に対し、ビームサーベルで斬りかかる。

『そう簡単にはいかねぇよ!』

 ザードが防御の姿勢を取ると、ビームが弾かれる。

 あれは対ビーム装甲、いやビームシールドか!

『ビームは手前の専売特許じゃないぜ。』

 そう言ってザードはビームマシンガンで攻撃してくる。

 だが遅い!ルミエールも先の戦いより進化している!

 僕はビームサーベルを仕舞いつつ、突撃する。

「ビームが通じないのなら!」

 敵の攻撃を掻い潜り、懐にもぐりこむ。

 その瞬間、ルミエールのシールドをしっかりと握りこみ、ザード目掛けて叩き込む!

 腕で防御されるが、コイツにとっては関係ない!

「これでぇ!」

 薬莢が排出されると同時に、鋼鉄の杭が敵の腕を粉砕した。

『ぬおぅ!?こんな武装聞いてねぇぞファッキン!』

 これがルミエールの新武装、パイルバンカー。

 ビームの効かない敵に対してシールドに仕込んでおいた秘密兵器だ。

 さぁ、続きを始めるぞ!

 

side-コウジ-

 

 俺は死神みたいな黒いガーディアンと対峙している。

 対峙と言っても、俺が一方的に攻撃を受けているだけだ。

 敵の動きが早すぎて、反撃の隙が無い。

 時々横を抜けてアクセルギアに向かおうとするのを、体当たりで止めるのが精一杯だ。

『くっ!なんてしつこい!』

 だがこれでいい。

 俺の仕事はあくまでアクセルギアの護衛。先生が奈落獣を倒すまでの時間稼ぎだ。

 幸い、マイケルとシャナがミーレスの相手をしてくれているので俺はこっちに集中できる。

 それにしても、こいつ!

『いい加減に、墜ちろ!』

「うわあぁぁぁ!!」

 高速で光の鎌が振り回される。

 その刃は確実にブレイガストの装甲を切り刻んでいた。

 クラッシャー級って、こんなに速いのかよ・・・。

 でも、倒れるわけにはいかねぇ。

 約束したんだ・・・。

 絶対に、護るって。

 振るわれる鎌を、腕を交差させて受け止める。

『しつこい子は嫌われるわよ!』

「アンタに嫌われても構わねぇよ!」

 もう一撃を受ける。だが、それまでだった。

「そんな、ブレイガスト!」

 操縦桿をいくら動かしても、ブレイガストは反応しない。

 瞳からは光が無くなり、機体も膝を付く。

『ようやく終わりね。安心なさい。楽に逝かせてあげるから。』

 死神が鎌を振り上げる。

 振り下ろされるのが、ひどく遅く感じた。は、これが死ぬ直前の感覚ってか。

 頭の中に子供の頃の思い出が映る。走馬灯まで流れ始めたか。もう駄目かな。

 でも、時間は稼げただろうな。後はマイケルたちに、任せて・・・。

(貴様が戦士、いや正義の味方を名乗りたいなら、やってみせろ。)

 正義の味方か・・・。

 やっぱ俺には無理だったのかな?

 なぁシャナ、俺は戦士と呼べるかな?

 こんな俺でも、こんな終わり方でも。

 こんな。

 こんな終わり方で。

 

「いいわきゃねぇだろーーー!!!」

 俺は叫んだ。心の底から、声が枯れるほど。

「動け、動いてくれブレイガスト!俺達はまだ、なにも出来ちゃいない!」

 操縦桿をしっかりと握る。

「俺達は正義の味方になれちゃいない!約束を、果たしていないんだーーー!」

 その瞬間、機体が真紅の光に包まれた。

 そして死神の腕を掴み、刃を止める。

 ブレイガストが、動いた。

『何!?』

「うぅぅおぉぉぉぉーーーー!《ハード・ナッコォォォ》!」

 死神を捕らえたまま、空いた腕で思い切りぶん殴る。

『きゃあぁぁぁ!』

 その衝撃で死神は吹っ飛ばされる。

 あわや海へ落ちる直前で踏みとどまった。そのまま落ちてりゃいいものを。

 それにしても、この力。これがフミカ先生の言ってた。

「これが、ブレイク・・・。」

 機体の損傷は僅かに回復し、エネルギーはマックスを振り切っている。

 それに、俺の心が、まるでブレイガストのALTIMAと同調しているようだ。

 今まで以上の力が湧いてくる!

 その時、機体の損傷ゲージが回復していくのが見えた。

「コウジ!今《イドゥン》でALTIMAを活性化させた。まだ動けるはずだよ!」

 砲撃を続けながらも、先生は俺を援護してくれた。

 まったく、護るつもりが助けられちまったな。

 死神を見るとすでに態勢を整え終えていた。

 それだけじゃない。奴の機体も白い輝きを放っている。

 どうやらあちらさんもブレイク状態ってわけね。

「よっしゃあ!まだまだ来いや!」

 先生は、絶対にやらせねぇぞ!

 

 

side-フミカ-

 

 ガキ共が身体張ってるんだ。ココが勝負所だろうよ。

 アビスボマーは見るからに傷付き、その飛行速度はガタ落ち。

 近づく前にミサイルの雨をぶち込む。

 前足がもげて、翼にも穴が開いてるっていうのに、よく粘るね。

 でもこの距離なら超長距離姿勢も要らない。

 アンタの弱い所が丸見えだよ。

 世に言う《ブルズアイ》ってやつさね。

 さぁ、これで終いといこうじゃないか。

「アクセルギア、フルファイア!!」

 残る武器を全てアビスボマーに叩き込む。

「こちらの砲撃武装では非力ですが、援護します!」

 ルミエールのミサイルが火を噴く。

『やらせはしねぇ!』

「それはこちらの台詞だ!」

 残ったザードを、バルサーガが足止めする。

 これは、最高のチャンスだ!

「「全弾、持っていけーーーー!!」」

 2方向からのミサイル連射をまともに受ける奈落獣。

『KWAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!』

 悲鳴を上げ、姿勢がぐら付く。

「全機離れな!巻き込まれるよ!」

 そのまま落ちるように大爆発を・・・しなかった。

「え?」

 思わず間抜けな声を出してしまう。

 情報ではこんなちんけな爆発じゃなくて、もっと派手でどデカイ爆発のはず。

 だが、奴は普通のミーレス程度の爆発で収まってしまった。

 だから油断したのだろうか。

 その爆発の中から、筒状の何かが飛び出したのを一瞬理解出来なかった。

『皆さん!アビスボマーは囮です!本命は、奴の体内の巨大ミサイルです!』

 ミウコの声で意識が戻ってくる。

『計算では、あの巨大ミサイルこそアビスボマーの爆発を引き起こす相当の代物です!あれを止めてください!』

 マイケルはミサイルを撃ち尽くしてしまったようだ。

 シャナはそもそも砲撃武装を持っていない。

 アタシは全弾撃ちつくし、機体の冷却中。次の動作まで時間がかかる。

 なんだよこりゃ・・・。

 ココまで来て、こんなのって無いだろう。

 頭の中で悪魔が高笑いをしている姿が浮かぶ。

 思わずコックピットを殴りつける。

 そんな絶望に支配されたアタシたちの中で、ただ一人、希望を失わない奴がいた。

 そいつは空中に飛び上がるとミサイルの前に立ちはだかった。

 ブースターだけで飛ぶ姿は、敵に切り刻まれてボロボロのその姿は、なんとも情けない。

 それでも。

 

 

side-シャナ-

 

 絶望に沈む心を強引に引き上げられた感覚を覚えた。

 アイツは満身創痍の機体でミサイルの前に立ちはだかる。

 その背中には、先程までとは違う形のブースターが付いていた。

 そこから虹色の粒子を噴出し、確かに飛行していた。

「アイツの軌道をずらす・・・。」

 静かに語る東屋の声からは、一片の迷いも感じられなかった。

「無茶だ!ブレイガストはもうボロボロだ、衝撃に耐えられるはずが無い!それに最悪触れた瞬間爆発するぞ!」

「やれる可能性があるなら、俺はそれに賭ける!!」

 ブレイガストは掌を前に突き出す。本当に受け止めるつもりだ。

「止めろ東屋コウジ!貴様が戦士の心を持っていることは分かった!だから!」

「引けねぇんだよ。」

 私の言葉は奴の声に止められる。

「護るって、約束したんだ。この手の中のモノ全部。だから。」

「駄目だ!そんな奇跡でも起こらない限り、あれは止められない!」

 私は叫ぶ。

 だが、奴は言い放った。

「じゃあ、起こしてやるよ。奇跡ってやつをな!」

 ミサイルが、ブレイガストの手の中に突っ込む。

 爆発は、起こらない。まずそれだけでも奇跡だった。

 だが、まだ終わらない。ミサイルはブレイガストの手の中で暴れ狂う。私には、それがまるで邪悪な魔獣のように見えた。

 怖い。怖くてたまらない。なのに、何故奴は立ち向かえる・・・。

 あまりの無謀。あまりの暴挙。それなのに、私はその姿に魅入っていた。

 それはまるで、幼い頃に読んだ物語の英雄のようで。

 己の傷も省みないその姿は、まさに勇者のようで。

 

「く、ぐうぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!」

 勇者の腕が悲鳴を上げる。

 今にもその両の腕は砕けそうだ。

 私は自分でも知らないうちに、その腕に手を添えていた。

「シャナ?」

「私にも《イドゥン》は使える。一度きりだが、ブレイガストの傷を治せる。」

 私の魔力を、勇者の身体に流す。

 砕け散りそうになっていた勇者の肉体が癒えていく。だがまだだ。

「私も、最後まで手伝おう。いや、手伝わせてくれ。」

「シャナ・・・。」

「僕もいることを忘れるなよ。」

 反対側の腕をルミエールが支える。

「僕の機体は非力だ。だが、お前を支えるだけの力は有るつもりだ。」

 ダートンが通信越しに微笑むのが見える。

 その顔が、私達2人にうつり、3人で笑う。

 こんな絶望的状況だというのに、先程まで恐怖に縛られていたのに。

 今は、何も怖くない。どんなことでも出来そうだ。

「そうさ。俺達が力を合わせりゃ、出来ないことは何も無い!」

 周囲を見れば、敵だった者たちも私達をただ見ていた。

 そして、奇跡が、起きた。

「「「うぅぅぅおぉりゃーーーーーーーーーーーー!!!」」」

 暴れ狂う魔獣は徐々に天を向き、そして解き放たれた。

 それでも魔獣は意思を持つかのように、島へと向かおうとする。

「今だ!フミカ先生!!」

「あいよ!!」

 アクセルギアの渾身の一弾が、魔獣の、いやミサイルの弾頭を捉えた。

 私達3人は全力で避難する。

 最後の咆哮とばかりに爆炎を放つミサイル。

 その咆哮は、ついぞ私達を捉えることは無かった。

 

「全く、無茶をする。」

 ブレイガストは動かない。どうやら奴は気絶してしまったようだ。

 たとえあれがAL粒子の、《ガイア》の起こした奇跡だとしても、あんな無茶はコイツでなければ出来ない。

 つまり、あれは東屋コウジだからこそ反応した《ガイア》なのだろう。

 私はバルサーガとルミエールで抱える、奇跡の勇者を見つめた。

「東屋、コウジ。」

 何故だろう。その名を口にすると、暖かい何かが心を満たした。

 

 

side-ディスティニー-

 

「まさか、虎の子がこうも簡単に・・・。」

 死神、グリム・リーパーを駆る女、セリーナ・ハッダードは呟いた。

 己の仇が、既に動きを止めているのにも関わらず、それを護るものがもういないにも関わらず。

「姐さん、撤退命令だ。退くぜ。」

「あぁ・・・。」

 セリーナはただ頷くことしか出来なかった。

 仇を取れなかったからではない。

 若者の、人の革新を見た。そんな気分だった。

 

 

 

第9幕

 

side-コウジ-

 

 あの戦いから、俺は二日も寝ていたらしい。

 身体は大丈夫だってのに、検査の為とかいってさらに一日入院することになった。

 授業に遅れたらどうするんだよ・・・。マコトの勉強会って面倒なんだぜ。

 そうぼやきながら俺は午後の通学路を歩き学校に向かう。

 病院から解放されたのが今日の午前中だったのだ。

 休んでもよかったが、あまり長く休んでみんなを心配させるのも・・・アイツラじゃ心配なんかしないか。

 

 ちょうど昼休み時に学校に到着する。

 教室に入ると。

「おお!東屋君だ!」

「心配したんだぞ!コウジ君!」

「怪我したんだって!?大丈夫東屋君!?」

 一応心配はしてくれていたらしい。

 ただなんか鬱陶しい。なんで教室の端からジャンプして来るんだよ。

 本当に人間か?こいつら。

「傷はもう良いようだな、東屋。」

 マイケルも珍しく真剣な顔で体調を尋ねてくる。

「お前に心配されるとなんか怖いんだけど。」

「馬鹿を言え。お前が再起不能になったら誰がブレイガストを動かすんだ。僕はその心配をしている。」

 あぁそうですかい。いつも通りで逆に安心したよ。

「コウジ。休んでた分のノート、取っておいたからね。放課後にでも勉強会だよ。」

 イヤーン。俺病み上がりよ?少しは手加減してくれよ。

「コウジは甘やかすと駄目になるから、ちゃんと躾けないと。」

「犬か何かですか俺は。」

 もうちょっと優しくしてくれよぅ。

「・・・コウジ。」

 ん?今の誰?

 周りを見回すとシャナがこちらに歩いてくる。

 もしかして、コイツが呼んだの?俺の『名前』を。

「コウジ。」

 そうこうしているとシャナがこちらに近づいてくるって!

 なんか近い近い!真剣な顔が相まって怖いよ?

 そして俺と彼女の距離はほぼ0。

 え?何?俺なんか悪いことした?

 混乱していると、突然シャナが俺の背中に手を回し、抱きしめる。

 ・・・はい?

「「「「「「何ーーーーーーーーーーー!?」」」」」

 クラスに大音量が響き渡る。

 マイケルもマコトも開いた口が塞がらない様子。

 一番分けわかんないのは俺。何これ。

「あの戦い、皆が絶望に沈む中、お前だけが希望を捨てなかった。コウジ。私はその姿に真の騎士の姿を見たんだ。」

 俺を抱きしめたまま、シャナは続ける。あの、お胸が、ちょっと。

「認めよう。お前は戦士だ。正義の味方だ。・・・私の、希望だ。」

 あれ~、なんか顔が熱くなってきましたよ~。

「ちょ、ちょっとシャナ!?」

「ああマコト。この間の部活の件だが、私も参加させてもらおう。」

「そうじゃなくて!ほ、ほら。コウジも病みあがりだし、そろそろ放してあげたほうが。」

「何だ。コウジと私が仲良くなるのはマコトも望んでいたことだろう?」

「そうだけど~~!」

 いやまじなにこの状況。誰か何とかして。

 オイお前ら!面白そうに見てるんじゃない!

 マイケル、は駄目だ。まだ現実に帰ってきてない。

 こうなったら最後の手段!出でよフミカ先生!

「は~いHR始めるよ~席について。」

 ホントに来た!?

 でも助かった!フミカ先生は大人だからこの状況も何とかしてくれるはず!

 俺と先生の目が合う。

 二人は頷いた。

「ごめ~ん。配るはずのプリント忘れたから取りにいってくるわ。」

 オイィィィィィィィィィィ!?今プリント持ってただろう!?

 大人なんて信用できねー!

 誰か何とかして~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!!

 

side-ミウコ-

 

「それで、あのユニットは突然現れたのですか?」

「はい。映像で確認しましたが、何度、どこからどう見ても突然ブレイガストの背面に出現したとしか。

 副長との会話内容は先の戦闘でのブレイガストのこと。

 巨大ミサイルを受け止める際、その背中にはそれまでの戦闘では確認できなかったユニットが現れた。

 能力や機体の調査等を鑑みるに、フライングユニットであると断定できる。

 だが何故、突然出現するような事態が起きたのか。これが全くの謎である。

 そもそもブレイガストそのものが謎に包まれたスーパー級なのだ。

 だれが、いつ、何のために作ったのかも判明していない。

 まぁ遺跡から発掘されたガーディアンの大半は未だ謎だらけの機体が多いのですが。

 はぁ、やれやれ。強力とは言え、厄介なガーディアンを引き受けてしまいました。

「それと司令。ブレイガストの構造上判明した僅かばかりのことなのですが。」

「なんですか?」

「はい。背面にはさらにパーツが装着できるようになっています。ですが既存のオプションパーツでは規格が合わず、専用ユニットが存在する可能

性が出てまいりました。」

「・・・まだこの島に何かが存在していると?」

「そうとしか考えられませんな。」

 ふむ。

「遺跡の調査と平行に、機体の調査を急がせてください。ブレイガストは、おそらくこの島の中枢に関係しているはずです。」

「かしこまりました。」

 本当に、頭が痛くなってきますよ。

 

 

side-ディスティニー-

 

「中佐自らが、ですか?」

「ああ、俺の機体も少しは動かしとかねぇと、鈍っちまうからな。」

「ですが、中佐が出るほどの相手ですか?たしかにあのスーパー級は強敵ですが。」

「お前の攻撃に耐え切って見せたんだろ?それに《ガイア》まで発動させた。面白そうじゃねぇか。」

 

「俺にも遊ばせてくれよ・・・。」

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