メタリックガーディアン・プロミス 『桜の舞う島で』 作:戒炎
誰得?気にしない方向で。
幕間「HARMONY」
side-???-
とある島、洞窟を改装したディスティニーの秘密基地、と言うべきものの一つ。
そこでは3人の男女がカードに乗じていた。
いわゆる「ババ抜き」である。
他の人間は各自己の機体の整備をしている。
この3人は部隊の長と幹部。
長身の厳つい中年がボスで、美しい女性、それとガスマスクを被った男が幹部。
彼らの機体はすでに整備済みのため、こうして暇つぶしにゲームをしているわけである。
ちなみに、ガスマスクの男の連敗中。
「ところでさぁ。」
「あ?なんだい姐さん。」
女性、セリーナ・ハッダードがガスマスクに声を掛ける。
「あなた資料ではカバリエのリンケージらしいじゃない。なんでミーレスに乗ってるのよ。」
「ああ、そのことか・・・。元々のガーディアンは壊れちまってなぁ。」
ジョニーは自分の生まれも定かではない。
気が付けば戦場にいた。
物心ついたときには銃を手にしていたし、ガーディアンに乗れる事が判ってからは特に疑問も無く乗り込んだ。
戦って戦って、第2次大戦が終わった頃には何も無くなった。今チームを組んでいるミーレス乗りの仲間達を除いて。
最初は連邦軍やフォーチュンに入ろうかとも思ったが、その時はその気にならなかった。ただ何となくだ。
その後、ラーフ帝国、正確にはディスティニーと契約する傭兵になっていた。
自分が世間一般の悪だとは理解していたが、彼は戦いの中でしか生きられなかった。その時は。
今なら稼いだ金でゆっくりするのも悪くないと思うが、戦場からは離れられない。
そうこうしている内に、カバリエはボロボロ。修復も不可能になり、バラして売り飛ばすぐらいにしか使えなくなっていた。
ミーレスに乗るようになったのは、それからである。
「簡単な話さ。別に愛着があったわけでもないしな。」
「案外ドライなのね。あ、上がり。」
「おもしろくもねぇ話だ。おら。さっさと引け。」
すでにゲームは佳境。部隊長とガスマスクの一騎打ち。
大して面白くも無かったので割愛する。
結論から言おう。ガスマスクの負けである。これで10連敗だった。
「ファーーーーーーーーック!!」
「お前、もうゲームはやらないほうがいいぜ・・・。」
side-マイケル-
体育の時間。僕と東屋は時間を持て余し壁に寄り掛かって座っていた。
サボっているわけではない。
男子がバスケ、女子がバレーと、同じ体育館を片面ずつ使っている。
さらにバスケは一試合が10人。必然的に暇人が現れる。僕たちがいい例だ。
一試合数分の、リンケージからしたらお遊びにしかならないローテーションを終え、こうしている。
そして、同じような男子は誰もバスケを見ていない。
最近、大型の転校生がやってきた。彼らの目は彼女に釘付けになっている。
「大きいな、彼女は。」
「ああ、でかいな・・・。」
シャナ・アティアイナ。まだクラスに馴染みきれていない、というか我がクラスのテンションに付いていけていない。
だがその態度は徐々に軟化しつつあり、すっかり人気者だ。
その容姿も含めて。
長い髪をポニーテールに纏め、少しつり上がった目は厳しさと共に凛々しさを感じさせる。
鼻筋も整っており、間違いなく美少女と言えるだろう。
が、それだけでは無い。
彼女はいわゆる「巨乳」だった。激しく動くと揺れるほど。
クラスメイトの男子曰く、90は間違いなくあるらしい。何故解析できたのか。
「アタックの時の揺れ様・・・。すげぇな。」
東屋も彼女の胸に目が行っている。
この男、自分に近しい女の子がいるというのになにをしているのか。
「お前、大きいのが好きなのか?」
「好きってわけじゃないけど・・・、目は行くだろ、あんなに大きいとさ。」
嘆かわしい。
女性の価値は胸ではないというのに。
「マイケルは小さいのが好きだろ?」
「何故言い切る?」
「だってマコトは。」
小さい、と言いたいのか。
はっ!鼻で笑ってしまうよ。
「あの慎ましさがイズモの女性らしい所だろう?無駄に駄肉をぶら下げているより可愛らしいだろう?」
「ありゃただ平たい、栄養が筋肉にいっただけだ。脳や胸に大事な何かを送り忘れた憐れな身体だよ。」
「憐れ?あれこそ至高の肉体だろう。程よい筋肉に女子特有の軟らかい肌。完璧じゃないか!」
均整の取れた肉体とはああいうものの事を言うのだ。
大きな胸などただの飾りだ。相手が偉人だろうが愚者だろうがそこは譲れない!
大体東屋は贅沢すぎるのだ。
シャナにあきらかな好意を向けられ、さらにはマコトとも仲が良い。
クラスどころか学校中の男子を敵に回してもおかしくない。
いや、二人は女子からも人気があるから、彼女らも敵にすることになる。
その時になってから焦っても遅いのだ!
「熱くなって語ってるなぁ・・・。お前そんなキャラだったkゲバルッ!?」
隣から奇声が聞こえてくる。
見るとバレーボールを顔面に貼り付けている東屋の姿が。
一向に落ちる気配が無く、煙が噴出している。
「楽しそうな話してるねぇ、ふ・た・り・と・も♪」
目の前には笑顔のマコトが立っていた。目は全く笑っていなかったが。
後ろに阿修羅が見える。その気迫だけで人を殺せるだろう。
現に僕の身体は動かない。
戦場の恐怖を知っているこのマイケル・ダートンが立ち上がることすら出来ない。
逃げ出したくとも出来ない。
「い、いやな、マコト。別にお前が平らのマコトだの平たい胸族だの言ってるわけじゃ。」
「言ってるじゃないかーーっ!!」
顔にバレーボールを貼り付けたままの東屋の顔を、ボールの上から思い切り蹴る。
後頭部を強かに打ちつけて、東屋は今度こそ気絶した。うっすらと壁に血が付いているのは気のせいだろう。
「ダートン・・・。お前にも言いたい事がある。」
シャナが立っている。満面の笑みで。
マコトと違い、目も笑っている。なのに恐怖しか感じない。
聞いたことがある。笑顔とは本来攻撃的なものだと。
「誰の胸が駄肉かぁーーーっ!!」
シャナの拳が迫ってくる。
次の瞬間、僕の意識は途切れた。
余談だが、彼女達は授業中に問題を起こしたという事で体育教師にこってり絞られた。いい気味だと思ったのは内緒だ。
side-フミカ-
最近酒の量が増えてきた気がする。
まあ以前からしこたま飲んでたんだが、最近は特にそう思う。
理由として考えられるのは、フォーチュン支部に新しいメンバーが増えたことと、我がクラスに転校生が来た事。
そのうちの一人、シャナは頭は固いが真面目で良い娘だ。クラスにも馴染んできている。
だが、真面目すぎて相手をするこちらの方が気を遣う。
それはアタシが不真面目な所為だと言われるが、そんな事はないだろう。
もう一人、新人リンケージのコウジ。
コイツには二度も危機を救われた。だがいまだに訓練でも実戦でも無茶をする。
機体性能上、殴ることしか出来ないので敵の攻撃に曝されるのは仕方が無い。
そのためのフォーメーションを組む事も仕方が無い。
だが、それを考えるのは誰だ。現場リーダーのアタシだ。
ミウコ司令は戦局を見据える事は得意だが、戦術はまだまだだ。
その分の負担が全部アタシに来ている。今まで通りの仕事もあるし。
ストレス発散のため、飲酒量が増えるのは当然なのだろうか。
というわけで。
「酒代、経費で落としといて。」
『無理に決まっているでしょう!!』
通信越しに司令が大声を出す。そんなに怒鳴らなくても。
子供の頃から怒ってばかりだと歳を取ってから苦労するよ。
『大体仲間の仇を取ってからというもの、気が緩みすぎです。アビスボマーの件もコウジさんがいなかったらどうなっていたか。』
「そう言わないでよ、いい美容法教えるからさあ。」
『まだ必要ありません!』
ほう・・・。言うじゃあないかい。
そんなこと言ってると将来嘆く事になるよ。
歳を取るなんてあっという間なんだから。
特に20を過ぎてからが早い。あっという間さ。
気が付けばアタシも29。いい歳だよ。
独り身で恋人は酒・・・。おや?アタシって駄目人間?
そ、そんなことはない。アタシもまだまだだ!
酒だって寂しさを紛らわせてくれる大事な存在さね。だから。
「酒代おくれ。」
『話の流れを戻さないでください!!』
ちぇ。
そもそも優秀なスタッフが揃っているくせにアタシやマイケルに負担が大きすぎるんだよ。
なんでリンケージが島の調査や侵入者の確保に排除、経理なんかをやらなくちゃいけないんだ。
仕事が多すぎる。それでいて給料を上げないなんてブラック過ぎる!
『そもそもフォーチュンはPMC(民間軍事会社)ですよ。ホワイトなのは学生相手だけです。』
「それだって学校の単位の保障ってくらいだろうに。あんたらはアタシらリンケージをもっと優遇するべきで。」
『あんまり五月蝿いとお給料減らしますよ?』
あ、すんませんそれだけは勘弁してください・・・。
ちなみに、こんな会話はコウジとシャナがフォーチュンに加入する前から続いている。
いわゆる会話のネタだ。
アタシにはこの娘の人生を見守る義務がある。責任とも言うべきか。
たとえ司令のストレスの元になろうと、鉄面皮な人間に育たないように。
子供といい大人の会話に見えなくても、せめて感情豊かな人間になってほしい。
それだけが、今のアタシの願いだ。