メタリックガーディアン・プロミス 『桜の舞う島で』 作:戒炎
この辺りからオリジナル要素が含まれはじめます。
第3話「PARTING」
第1幕
side-マイケル-
アビスボマーとの戦い、そして我々の結束が固くなってからしばらく。暦は7月になっていた。
制服も完全に夏服に移行し、ジリジリと厳しい太陽熱が肌を焼く。
そんな日照だというのに、この島の桜は枯れることを知らない。今日も満開だ。
初めてこの島で夏を迎えたときはその異常な光景に戦慄まで覚えた記憶がある。今ではもう慣れたが。
散っては咲き、散っては咲きを繰り返す桜花島の桜。この花弁も、島の清掃員の方々が片付けなければどうなるのだろう。
そんな疑問はさておき、今日も学校が始まる。
「だーかーらー!今回は『街のスイーツ特集』にしようって言ってるじゃないか!!」
「そんなんじゃ『探検部』を名乗った意味が無ぇじゃねーか!!」
「そうだぞマコト。我々は島の謎を調査するのが目的だったではないか。」
教室について早々、騒がしい声が聞こえる。
もう誰か分かった。マコトと東屋だ。
まったく、この暑いのに朝から元気なことで。
「おぉ、ダートン君。お早う。」
「お早う。今日はいったい何があったんだ?」
近くにいたクラスメイトに挨拶を返し、そのまま状況を尋ねる。
まぁ、会話の内容で大体把握できているがな。
「次の部活の活動内容で揉めてるみたいだよ。神楽坂さんは島のスイーツを冊子にしたくて。」
「東屋はどうせ『とっとと遺跡を調べたい』と言っているんだろ。」
「そうそう。それで二人とも一歩も退かなくて。」
はぁ。そういうことは放課後にでもしてくれないかな。
朝から無駄なエネルギーを使いたくないんだ。
最近のシャナは妙に東屋に肩入れするし・・・惚れたか?
おかげで三人分の仲裁にはいらなくてはならない。
まぁ東屋の言いたいことも分からなくは無い。
桜花島探検部を立ち上げてから、桜や遺跡の調査など一度も行っていない。
島や街の歴史を校内に張り出したり、島の観光スポットを調べて港に掲載許可を貰いに行ったぐらいだ。
探検らしい活動など皆無だった。
まぁ部の発足目的が、シャナを学園に馴染ませるためだったのだから、当初の目的は達成されたと言っていい。
彼女はすっかりクラスに馴染み、編入当時よりも人気が増した。
まだまだ彼らの悪乗りには付いていけていない様子だが、それはいい。越えてはならない一線と言うものがある。
交際の申し込みも増えたようだが、彼女は東屋にべったりなので全て玉砕の憂き目を見ている。
・・・シャナがいるんだからマコトを寄こせ、と考えてしまうのは、僕も男だからだろうか。
そんなことを考えていると、二人はますますヒートアップしてきた。
「遺跡遺跡って、そんなに地面に潜りたいのかこのモグラ!」
「うるせぇ!そっちこそ男みたいな見た目でスイーツとか言ってんじゃねぇよ!」
その瞬間、教室の空気が凍った。
おかしい・・・。季節は夏。太陽も全力で紫外線を降り注いでいるのに。
身体中を冷たい汗が流れる。寒気がする。
その正体は、マコトだ。彼女から、何か殺意を帯びた波動を感じる。
男女共に人気がある神楽坂マコトだが、彼女にも欠点はある。否、コンプレックスと言おうか。
マコトは、僕の贔屓目に見て可愛い。だがそれ以上に『凛々しい』といった表現が似合う。
シャナのような生まれと育ちから来る凛々しさとは違う。中世的な顔立ちなのだ。女性特有の柔らかさは有るが。
身体は空手で鍛えて引き締まっているし、しかもプライベートでは動きやすさを重視しているためか、どこか男性的な服装になる。
さらに口調もボーイッシュであり、余計に男性的に見えてしまう。
彼女自身かなり気にしているようだ。クラスの女子に女の子っぽいモノについて訊いている。
そして何より、彼女に対して最大の禁句がある・・・。
「・・・コウジ、もう一回言ってよ・・・。」
あぁ東屋。お前は何処まで馬鹿なんだ。あの殺気に気付かないのか、幼馴染の癖に!
「男みたいな面して甘ったるいこと言うな!この《貧乳》!!」
(((((言ったぁーーーーーーーーーーーーーー!?!?!?)))))
教室内の緊張がピークに達する。
そう。彼女は同年代の女子と比べて、その、少ないのだ。
何が、とは恐ろしくてとても言えない。
近くにいるシャナがそこそこ大きいサイズなため、その差がよりはっきりと見えてしまう。
「・・・コウジ。」
「な、何だよ・・・。」
さすがの東屋も気配を察したようだが、遅い。遅すぎた。
「ボクは、女の子だぁーーーーーー!!」
「がぁーーーーーーー!?」
マコト、気持ちは分からなくも無いが、女子高生がバックブリーカーはどうかと思うぞ。
「東屋君、君の事は忘れないよ。」
「コウジ君、骨は拾ってやる。」
「ないわー。あれはないわー。」
君たちも止める気はないようだな。
だがこうなってはもう誰にも止められない。
東屋の死刑執行を見守るしかない。
「あだだだだだ!ヤメテ!裂けちゃう!折れちゃう!なんか出ちゃうぅ!!」
「お、おいマコト!コウジが苦しんでいる!その辺りで「あ”?」いえ、何でもないです・・・。」
凄い。レムリアの騎士を眼光だけで萎縮させた。
「ダ、ダートン。マコトが、マコトが恐い・・・。」
「あの状態の彼女には近づくな。」
命が惜しかったらな。
「ちょ、マジ!誰か助けてヘルプミーーーーーーー!!」
ベキッ!
「「「「「「「あ」」」」」」」
何だか鳴ってはいけない音がしたような・・・。
「フン!」
マコトはそのまま東屋を床に叩きつける。
ベシャッという音とともに動かなくなる東屋。
・・・ピクリともしないな。
全員で合掌し、僕たちはSHRに備え席に着いた。
「いや待て!コウジはどうするんだ!?」
シャナ・・・君も早く慣れろ・・・。
第2幕
side-フミカ-
「はい、本日は教室で殺人未遂が起きたぐらいで異常なし。」
『大事件ですよねソレ!?』
今日の報告を手っ取り早く済ませようとしたらなんか騒がれた。解せぬ。
「あれよ。いつもの二人の痴話喧嘩。去年から何度も報告してるでしょ。」
『あぁ、またですか。よく平気ですねコウジさん。』
頑丈なんだろうね。あの後普通に授業受けてたし。
まぁ少し痛そうにしてたけど。
本人曰く『慣れた』らしい。基地での訓練でも普通にしていた。
あれは若いって問題じゃないね。異常だよそれこそ。
「それと、今度の休み。いよいよ遺跡を調査することにしたから。」
放課後までコウジは粘った。
まだ怒りが残っていたマコトに対し頭を下げるのと同時に、遺跡に入ることを説得し続けた。
そしてついに、渋々ながら彼女(部長)の了承を得た。
本人は好奇心からの提案だったんだろうけど、それはアタシにも特になる。
シャナには魔術的な面から見てもらい、マイケルが情報を纏める。
コウジにいたっては、おそらく重要なファクターであるはずだ。
ブレイガストの謎はこの島の秘密に直結しているとアタシたちは踏んでいる。
この3人が入れば、きっと何がしかのデータが取れるはずなのだ。
マコトは・・・、危険が無いように部活メンバーで守ればいい。
そのために、引率としてアタシがいるのだ。
『そうですか。以前から彼らにも直接調査を頼みたいと思っていましたから、良い機会です。ですが一般人もいます。マコトさんに危険が無いよう、しっかり引率してください。』
「そりゃコウジたちは大丈夫って意味かい?」
『ええ。彼らは我が支部が誇るリンケージですから。信頼していますよ。』
まったく。どんどんいい性格になってるよ。
・・・ほんと、アイツに似てる。
『どうしました?報告は以上ですか?』
「うい。とりあえず、当日はアタシもオフってことで。」
スクランブルには応じるけど、教師としても活動しないとね。
『分かりました。では本日はコレで。』
「お休み、司令。」
さて、せっかく訓練も無くデスクワークからも解放されるんだ。
何も収穫無しじゃ、つまらないよね。
アタシは飲みかけだったビールを飲み干した。
しかし、いつも一人で飲むのはつまらない。
こういう時はっと。
アタシは2階のとある人物の部屋に行く。
トントン。ノックしてもしも~し。
「開けるわよ、シャナ。」
「もう開けているでわないか・・・。なんの用だ、近藤。」
いやんもう!シャナちゃんたらそんな冷たい眼で見ちゃって。
アタシはワインの瓶を見せながら言う。
「アンタ、イケる口?」
「ワインか。祖国で嗜むくらいは飲んだが、この国では20歳未満の飲酒は御法度じゃなかったか?」
「保護者がいれば良いのよ。」
「そうか。」
※もちろん駄目です。
「普段はこんなの飲まないんだけど、たまには趣向を変えてみたいのよ。付き合いなさいな。」
ズカズカと部屋に入り込み、グラスを用意する。
む、良いの使ってんじゃないの。こんなボロアパートには似合わないわよ?
冷蔵庫にはっと。あ、さ○るチーズがある。これでいっか。
「いい大人が人の部屋を漁るな!」
「ええやんええやん別に。ほら、飲も飲も!」
さ○るチーズを出し、グラスにワインを注ぐ。ふふふ、もう逃げられまい。
「はぁ・・・。少しだけだぞ。」
「さっすがぁ!話がわかる!」
こうしてアタシたちの酒宴は《朝まで》続いた。
※未成年の飲酒、ダメ、ゼッタイ!
side-ミウコ-
「ふぅ。」
「お疲れ様です司令。紅茶をどうぞ。」
「ありがとうございます。」
副司令の淹れた紅茶を飲んで一息。
うん。相変わらず美味しいです。
今からこの味を覚えてしまって、将来普通のお茶が飲めますかねぇ。
しかしこの人は・・・。私が通信中もずっと隣に居たのにいつの間に紅茶を淹れたんでしょう?
白髪まじりの髪を後ろになでつけ、直立不動のその姿。
基地副司令というより執事と言ったほうが似合っていますね。以前似たようなことでもしていたんでしょうか?
「しかし、不甲斐ないものです。」
「何がですか?」
「我々大人がやらなければならないことを、全て若者達に託してしまっている。戦闘然り、調査然りです。」
溜息とともに彼が零す。
珍しい。いつも飄々としているこの人がこんなことを言うなんて。
「仕方ありません。人間にはどうしても出来ないことというのがあります。彼らは私達に出来ないことが出来る。それに頼りましょう。」
私も何も出来ないのが心苦しいですが。
「何もリンケージの方々だけではございません。貴女もまだお若い。ソレなのに支部の全てを任せてしまい・・・。」
副司令は申し訳なさそうに言う。
何だ、そんなことですか。
「今言ったばかりですよ。私にしか出来ないことがある。だから私がやるんです。」
それがこの支部を任された私の使命です。
それで私がどうなろうと、構いません。
そして、何かを失うことになろうとも、覚悟は出来ています。
「それにしても、貴方が突然フラッといなくならなければ、私の負担も減るのですが?」
「いやっはっはっはっはっはっは。」
「笑ってごまかさないで下さい!」
そうして、今日も桜花島の夜は更けていく・・・。
・・・眠い・・・。
第3幕
side-シャナ-
あ~・・・頭がガンガンする・・・。
まさか朝までつき合わされるとは・・・。近藤の体はどうなっているんだ?
一人で5本のワインを空にするとは。しかもあれで抑えたほうらしい。
まぁ、私も私で調子に乗って丸々1本空けてしまったわけだが。
・・・ここに着たばかりの私なら、どうしていただろう・・・。
おそらく、力ずくでも近藤を追い出していただろうな。
それが法を破ってまで晩酌などと。
変われば変わるものだな、人というのは。
これも今の私を取り巻く人間達のお蔭か。
たった一月でこうまで染まった。
コレは喜ばしいことなのだろうか。陛下が聞いたらどう思われるか。
とりあえず飲酒の件は黙っておこう。確実に怒られる。
・・・うぷ。真面目な事を考えていたらまた吐き気が。
私はあまり酒に強くないのだろうか。
あぁ、朝から憂鬱だ・・・。
やっと教室にたどり着く。
う~。この騒がしさ・・・。頭に響く。
「どうしたの?シャナ。」
「マコトか・・・。いやなに。昨夜色々あってな。深くは聴かないでくれ。」
法に触れるから。
「おいおい。大丈夫かシャナ?具合悪いなら保健室行けよ。」
コウジ・・・。お前の優しさが身に染みる・・・。さすが私の見込んだ男。
「大丈夫だ。コレぐらいならしばらくすれば何とも無い。」
「だといいけどよ。辛くなったら俺達に言えよ。コレでも保健委員だから。」
「コウジの場合は寝てて勝手に決められたんでしょうが。」
「たはは・・・。」
二人のやり取りは心が休まる。ん?
「二人は喧嘩をしていたんじゃなかったか?」
昨日の朝はマコトの技でノックアウトまでされていたのに。
「あぁ、だって今更だし。よくあることだし。」
「昨日のうちに謝ったからな。もうチャラだ。」
「それでまたボクを怒らせる、の繰り返しだろ?少しは学習してよ。」
「いやぁ、長年の付き合いだとどうしても、ほら。」
二人のやり取りは、心が休まる。
だが、こう仲の良いところを見ると、少し。ほんの少し憂鬱になる。
何故だろう。私はこの二人のこういう所が好きなのに。
私が間に入れない。それぐらい二人の仲は良いように見える。
私は、その輪に入るだけで良いのだろうか。
答えは出ないまま心が悶々とする。いや、頭がガンガンする・・・。
「お早う。いつも通り賑やか、じゃ無いな。一人死んでいる。」
ダートン・・・。朝から言ってくれるじゃないか。
そういえばダートンはいつもギリギリに来るな。
優等生として通っているはずだが。
率直に聞いてみた。
「僕は戦闘や模擬戦のデータを纏めているんだ。本来なら先生がやるはずなんだが、彼女も仕事が多いらしくてね。戦闘状況、各機の動き、それによる結果、その他諸々、纏められるのは前線組では僕だけだろう。細かく書くとこれが時間が掛かってね。朝もギリギリまで書類作りだよ。」
確かに。そんなこと私やコウジでは出来ん。現にコウジなんて今の話を聴いてポカンとしている。
しかしダートンがリンケージと並行してそんな事をしていたとは。
兵士には兵士にしか解らない事もある、ということなのだな。
だが、近藤に仕事が多いというなら、朝まで呑むのはどうかと思う。
教師とリンケージ部隊の隊長の二束の草鞋をしている大変さは理解できるが、あれの後だと優秀な人間にはとても見えん。
そう思っていると、ダートンはドリンク瓶を差し出した。
「その様子だと、先生に付きあわされたんだろう。僕にも経験がある。足しになるか分からないが飲んでおけ。」
コレが人情か・・・。身に染みるぞ・・・。
「グッドモーニング生徒諸君!今日も張り切って行くわよ!」
・・・あの女は人間じゃない・・・。
時は過ぎ、放課後。
私達桜花島探検部は教室に残り、明後日の遺跡探検について話していた。
「遺跡って危険なの?」
「今のところ危険は無い。というより先に進めない以上、危険かどうかも判らないんだ。」
「足場が悪くても、一応俺達全員鍛えてるから何とかなるんじゃね?」
鍛えているとはいえ、マコトは一般人だ。確かに良い筋肉はしているが。
私達が護りながら進むことになるだろう。
私としても、このチャンスは逃せない。
この島の桜は丘桜を中心に流れている。その丘桜の地下からは、さらに大きなナニかの気配がした。
それを調べる良い機会だ。
「それじゃあ準備はこんなモノでいいかな。何か不足があったらまた明日話し合おう。」
マコトの一言でお開きとなる。
「コウジ、マコト。必要な物を揃えに行かないか?早いに越したことは無いだろう」
「そうだね。今出来ることは今やっちゃおう。」
「マイケルはどうするんだよ。」
「すまないがまだ模擬戦のレポートを提出していないんだ。準備はみんなにお願いできるかな?」
そういうことなら仕方ない。
「そうなると俺が荷物持ちですか・・・。」
「そう腐るなコウジ。私も手伝おう。」
「いや、ココは男の俺がやるべきところだ!任せろ!」
無理をして。可笑しな奴だ。
だが、そういう所はしっかり男なのだな。
「じゃあボクたちは繁華街に出発!」
「「おーーー!!」」
大事な調査のはずなのに、なんだかワクワクしている自分がいる。
大切な友といられることが、嬉しくてたまらない。
申し訳ございません陛下。
シャナは、少し弱くなってしまったようです。
ですが不思議と、後悔はありません。
第4幕
side-マイケル-
最近の戦闘データを確認し、判った事がある。
東屋のブレイガスト。あれはまだ本当の力の半分も出していないということだ。
そしてその力は、戦闘の度、正確には『島の危機』の度に増大している。
本来スーパー級もガーディアン。整備や改修などで強化されるのだが、あの機体は強化というより進化している。
前回のアビスボマー戦が最も良い例だ。
専用のフライングユニットが開発されたのではなく、突如出現した。
まるで東屋の想いに応えるように。
人が手を加えなくとも、どんどん強化されていくガーディアン。
遺跡で発見されたガーディアンは謎が多いというが、あの機体もその類だ。
東屋のリンケージとしての腕前が上がっているのもそうだが、ブレイガストはまるで生物のようだ。
鋼鉄の身体を持つ生物・・・それは果たしてスーパー級なのか?
それだけではない。東屋自身にも変化が訪れている。
あれは模擬戦の際に起こったことだ。
仮想敵の攻撃がブレイガストを直撃するかと思った瞬間、本来ならありえない動きでソレを避けてみせた。
その後もマシンガンの雨を、まるで軌道が解っているかのように避けたり、敵の回避先に割り込んで一撃を叩き込んだこともあった。
本人曰く『先の動きが良く見える時がある』らしい。
僕たちも偶然、敵の攻撃を回避したり、敵の急所に攻撃が当たったりするが、明確に敵の動きが見えているわけではない。
それに、最近やけに勘が働くことがあるという。
彼の言葉を掻い摘んで言うと、人のうわべの言葉から真意、つまり本音が感じ取れるという。
そんな存在に心当たりがあった。
『スターゲイザー』。『星をみる人』とも称される、かつて新人類とも謳われた存在。
彼がそんな存在に進化しつつあるのかは解らない。
そもそもスターゲイザーのこともほとんどよく解っていないのだ。
軍には非人道的手段で生み出された『強化人間』という人工スターゲイザーがいるという。
フォーチュンにも在籍しているらしいが、僕は未だ出会ったことは無い。
・・・話が逸れた。
とにかくブレイガストはこの島、しいては遺跡に大いに関係ある存在だと考えられる。
かつて2回、桜花島が危機に陥った際にアレは力を発揮しているのだから。
今はレポートを纏めよう。
もしもの時の為、整備班が動けるよう。
司令が適切にブレイガストを運用できるよう。
何よりアイツが、守りたいモノを守れるよう。
第5幕
side-マイケル-
日は経って、今日は遺跡の調査日。
今更だが、僕はまだここに入ったことがなかったな。
中に入れることが判った時点で潜入してみるべきだったか。
「はーいボーイズ&ガールズ。ここから先はフォーチュンでも解明出来てない部分だから気を付ける様に。」
そうこうしている間に、フォーチュン調査部ですら匙を投げた地点までたどり着く。
道が幾つも分かれていて、ただでさえ迷いやすそうである。
「シャナ。ナニか感じるか?」
「・・・想定外だ。遺跡中に高濃度の魔力が満ちている。おかげで特別な物が特定できん。」
そうか。だがそれだけでも情報の一つだ。
「おいおい。そこら中にALTIMAの気配がするぞ。どうなってんだココ。」
「何?東屋、お前ALTIMAの反応が判るのか。」
「え?普通判るもんなんじゃねぇの?」
驚いたな。ALTIMAは超古代文明の遺産とも言われている、ガーディアンを形成するいわば金属だ。
金属に明確な「気配」なんてものは無い。探知機でも使えば話は別だが、ALTIMAはそんな単純な物ではない。
いまだ謎の多い物質である。
イズモはそんなALTIMAの大量産地だ。そしてALTIMAを生産できるのは現在レムリアのみ。
「東屋、例えば何処から感じる。」
「何処って。多すぎて判らねぇよ。例えば、あそこ?」
そう言って指差した場所の岩を削る。
すると其処には確かにALTIMAが見つかった。間違いない、かつて加工前の物を見せてもらったことがある。
「オイオイ、マジかい?」
「間違いない、ALTIMAだ。生産過程を見せていただいたことがある。」
2人も驚いている。
何の『加護』も発していないALTIMAのAL粒子を感じたのだとしたら。
その流れを感じる、または目視できるのだとしたら。
東屋は紛れも無く『スターゲイザー』の資質があるのかもしれない。
「それはともかくだ。どうすりゃ奥に行けるんだよ。このまま立ち往生でハイ終わりなんて嫌だぜ。」
「お~い、どうしたの~。こっちだよ~。」
「「「「え!?」」」」
マコトが既に一本の道を選び、僕らを呼んでいる。
「ちょい待ちなマコト!一人で歩くなって!危険だよ!」
「大丈夫ですよ先生。ボク奥までの道知ってますから。」
その一言で、今度こそ僕の頭はフリーズした。
「桜花島の調査部だぞ・・・。イズモ内でも屈指の調査力だぞ・・・。それが、それが・・・。」
「まぁ、その、マイケル。気にしちゃいけないよ。アタシらとあの子じゃ土地勘が違うんだ。そう思うことにしようよ・・・。」
僕の復活を待ってもらい、その後はマコトの案内でするすると進んでいく。
既にフォーチュンが調べた地点から大分奥まで来ている。入り口に戻っている気配もない。
「魔力の濃度がさらに濃くなった。間違いなく先に進んでいる。」
今はやめてくれシャナ。フォーチュン隊員としての意地が維持できない・・・。我ながら寒い・・・。
「それにしてもマコト。よく道知ってるな。」
「何行ってるんだよコウジ。昔よく二人で探検したじゃないか。その時のことを思い出したんだよ。」
「あれ?そうだっけ?」
「ちょっっっと待てぃぃぃぃぃぃ!!!」
ああ、もう限界だ!
「うわ!?どうしたマイケル!?」
「じゃあ何ですか!?お二人は我がフォーチュンが一年以上経っても解らない場所を子供のときに踏破していたわけですか!?子供の足で行ける場所で大の大人が四苦八苦してたわけですか!?冗談じゃねぇよコンチクショウ!?」
僕たちの存在意義は何だったんだ!
「落ち着きなってマイケル!ほら、アンタの好きなビーフジャーキーだよ~。」
「ガルルルルルル!!」
「こんなダートンは初めて見たぞ・・・。」
「俺も。」
「ボクも。」
キシャーーーーーーーーーーーーーー!
思わず暴走してしまった。みんなにはその、恥ずかしい所を見られてしまった。
「あぁ、マコト。東屋とココに来ていたって言うのは本当かい?」
「うん。小さい頃この場所を見つけて、二人で秘密基地みたいにしてたんだ。」
「そうだっけ。記憶に無いなぁ。」
「小学校に上がったばかりの頃だったかな。忘れるの早すぎじゃない?」
どうやら本当にこの場所を知っているようだ。
東屋が忘れていたのは、馬鹿だからだろう。
「大人達に隠れて遊んでたんだけど、ホントに覚えてない?」
「う~ん。そういえばそんなことがあったような・・・。」
「コウジと二人の思い出・・・。羨ましい・・・。」
シャナ。欲が出てるぞ。
分かれ道も少なくなっていく。
その代わり、大分悪路になってきた。
これは、子供にとっては大冒険になったんじゃないか?
「あー思い出した。マコトよく転んで泣いてたよな。」
「思い出さなくてもいい事思い出して・・・。いいじゃないか、子供の頃なんだし。」
「そのせいで俺は親父さんと父さんの二人に拳骨食らったんだよ。親父さんなんか本気で殴りやがんの。」
「あはは・・・。それは申し訳ないことを・・・。」
二人の思い出、か。
シャナではないが、少し嫉妬してしまうな。
「あ、もうすぐ最深部だよ。」
と、もうすぐか。
鬼が出るか蛇がでるか。
遺跡の最深部に到着した僕たちを待っていたのは、ライトニング級が入れそうなほどの空間と、巨大な植物の根だった。
数メートルは伸びた根は、まるで僕たちを待ち構えていたかのようだった。
「たしか、ちょうど丘桜の真下になるはずだよ。」
丘桜の?確かに大きな樹だが、こんな風に根が張るとは思えない。
まるで何かを覆っているような、そんな不自然で、まっすぐに伸びた根。
それが島のシンボルから伸びているというのは、偶然とは思えない。
「魔力量が、今までの場所とは段違いだ・・・。それに、とても澄んでいる。」
「空気も、ココだけ妙に澄んでるね。さっきまでの道のりは多少淀んでたのに。」
シャナと先生もこの場所に何か引っ掛かるものを感じるらしい。
ココまで異常な空間なら、僕らでも何かを感じ取れるだろう。
だが、それが何かがいまいち解らない。
「奥にあるのはコレだけだよ。変わってないな~。」
マコト?
「ココに来るとね、何だか暖かい気持ちになれるんだ。」
「あぁ。まるで何かに守られてるような気分なんだよ。」
東屋も・・・。
僕たちはそこまで感じないが。
いやまて。東屋には『スターゲイザー』の資質があると思われる。
僕たちとは違う何かを見ているのかもしれない。
だがそうなると、マコトはどうだ?
東屋と同じものを感じているというのなら、まさか彼女も・・・。
side-マコト-
マイケルもシャナも先生も、何だか難しい顔をしている。
ボク、いいやボクたちにとってここは、思い出の場所。
コウジとの、二人だけの場所だった。
まだ弱虫だったボク。でも、好奇心だけはコウジにも負けなかった。
そんな当時のボクが見つけた、遺跡の入り口。
今では名物の一つになっているけど、あの頃は遺跡なんて思わなくて。
二人で何度も入って、何度も迷って。
途中で転んで怪我をしたボクを、コウジがおぶって家まで送ってくれた。
そのせいでお父さん達にこっ酷く叱られたけど。
でもあの時、泣きじゃくってたボクを励ましながら歩いたコウジの背中は、とても頼もしくて、暖かくて。
って何を考えてるんだボク!
とにかく、懲りずに探検した最後の場所がココだった。
さっきも言ったけど、ここの空気は好きだ。
暖かくて気持ちよくて、まるで誰かに護られているみたい。
いつの間にか来ることは無くなったけど、一番の思い出の場所。
探検部を作ろうと言ったのは、シャナの為だけじゃなくて、この場所を知ってもらいたかったから。
でも、みんな難しい顔や怖い顔をしたまま。
そんなに変な場所かな、ココ?
(目覚めの時が、近づいています。)
!?
急に頭の中に声が!
でも何でだろう。この声、知っているような気がする。
どこかで、聞いた声。
「おいマコト!あそこ!」
コウジが声を上げた。その方向を見る。
そこには、この場所には似つかわしくない、真っ白い帽子とワンピースの女の子が居た。
あの娘、前に夢で見た・・・!
「王の翼は既に目覚めました。後は、その鎧と咆哮。王が上げる、轟き。」
何を、言っているの?
でも、何故か解らないけど、あの娘の言葉が、胸に響く。
まるで自分に対して言われているように。
「お前、一体誰だ。何なんだよ!」
ボクを庇うようにコウジが前に出る。
「王は真の姿に。守護神へと昇華します。『星を見るひと』たち。貴方達の目覚めを待っています。」
『星を見るひと』たち?
「どうか護ってください。この場所を。この島を。あの悪魔の手から。」
そう言って女の子の姿は消えていく。
「待って!一体どういうこと!?」
「俺達にも解るように説明しろ!」
その叫びも空しく、その姿は虚空に消えていった。
一体なんだったんだろう、あの娘・・・。
「アンタたち、一体何してるんだい?」
先生、それにみんなも・・・。
ボクたちは今の出来事を伝える。
しかし・・・。
「女の子?シャナ、マイケル。そんなのいた?」
「いえ、僕は見ていませんが。」
「私もだ。気配も感じなかったぞ。」
そんな。さっきまでそこにいたのに。
コウジと目が合う。コウジも戸惑っている様子だった。
「俺達だけが、視えた?一体、何で・・・。」
不気味な話。だけど、彼女からは不快感など感じなかった。
むしろ懐かしい。いや、いつも一緒にいたような、不思議な気持ち。
「それより、とんでもないことが判った。」
さっきから根を調べていたシャナが言う。
とんでもないこと?
「この根、正確には『根の中』には、巨大なALTIMAが存在している。それも嘗て無いほど高純度の魔力をもつ物が、だ。」
そんなの、学校新聞に載せられないなぁ。
第6幕
side-ミウコ-
「高純度のALTIMA、ですか。」
フミカさんから上がってきた報告書は、驚きの連続だった。
一般人のはずのマコトさんが道案内になったのはともかく、遺跡中がALTIMAの宝庫らしい。
連邦本部に知られたらあの遺跡は掘りつくされてしまうんじゃないですかね。
そして最深部。おそらく丘桜の根の部分。
曰く、見たこともないほど巨大で高純度のALTIMAを覆っているとのこと。
おそらくソレがこの島の最大の秘密。
続いてコウジさんの証言。白い少女の言葉。
王の翼は目覚めた。これはもしや先の戦いでブレイガストにフライングユニットが出現したことを指すのでしょう。
つまり王、または守護神とはブレイガストのこと。ブレイガストはこの島、正確には丘桜を護るために生まれた存在。
では誰が?あれの製造年は判っていません。
もっと古代からあった?それこそALTIMAを生み出した超古代文明が。
では何から護ろうとした?少女の言う悪魔から?悪魔とはいったい・・・。
「はぁ。結局謎が増えただけですね。」
司令室で一人溜息をつく。それにしても。
「コウジさんと同じものを確認したマコトさん。彼女は一体・・・。」
ただの高校生と思っていましたが、彼女にも何かありそうですね。
しかし、二人とも経歴はいたって普通。この島生まれのこの島育ち。
一族にも変わった人間は居ませんでした。
「コウジさんに『スターゲイザー』の疑いがあるとすると、まさか彼女も?」
東屋コウジ、神楽坂マコト。貴方達は一体何者なんですか。
私達の味方ですか?それとも、ただ桜花島の味方ですか?
はぁ。頭がパンクしそうですよ。
「あの人はまた、どこに行っているんでしょうね・・・。」
自分で淹れたコーヒーを啜りながら、今ここにいない副司令のことを考える。
フラッといなくなったと思えばフラッと帰ってきて情報を持ってきたりする。
あの人も何なんでしょうね?
それにしても。
「・・・苦い。」
砂糖とミルク、入れればよかった・・・。