メタリックガーディアン・プロミス 『桜の舞う島で』   作:戒炎

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この展開を熱いと取るか寒いと取るか。

あなた次第です(丸投げ


「PARTING」その2

第7幕

 

side-コウジ-

 

 あれから数日、俺はとある危機に追い込まれていた。

 学生には等しく訪れる、この魔物。厄介なのは、一人でしか退治できないことだ。

 道具は使えない。使えば更なる魔物を呼び寄せる結果となる。仲間を呼ぶことも同義。

 かといって負けることも許されない。やはり新たな魔物の餌食になってしまう。

 自由を手にするため、俺達は戦う。

 そう、『期末テスト』という魔物と。

「はいそこ間違えてる。」

「うい・・・。」

 現在休み時間を利用した復習中。テストまで後3日とない。

 いわゆる最後の追い込みだ。

「テストで赤点取ったら夏休みは補習漬けだからね~。」

 スクイハナインデスカ!?

「いい加減集中しろ。何のために僕達が見てやっていると思っている。」

「そうだよコウジ。補習なんかしてたら夏休みの部活も制限が掛かっちゃうだろ?今度こそスイーツ特集やるんだから!」

 マコトは大分気合入ってるな。いつの間にか部活バカになってるよ。

 マイケルはマコト目当てだ。間違いない。

「お前が部活に出れないとマコトが寂しがる(ボソッ)。」

 ほらその通りだよこのマコトバカ!聞こえてるっつうの。

「コウジ。歴史や語学では役に立てないが、理数系なら私に頼ってくれ!」

 ええ娘やシャナさんや・・・。

「しかしこの馬鹿はまずやる気が無い。やる気を見せれば成績は中くらいだろうに。」

 だれが馬鹿だ!ハイ俺です。だからそんなに睨まないで。

「なにかご褒美でもあればやる気がでるんじゃないかな?」

 マコト・・・。俺は人参吊るされた馬じゃないよ?

「・・・一問正解するたびに私の、その、む、胸に触れる・・・な、なんて・・・。」

「「「「「な、なんだってーーーーー」」」」

 外野うるせぇ!

 てか、え、シャナさん?マジで言ってんの?

 あ、ヤメテ。そんな顔真っ赤にしないで。

 俺の中の野獣が!

「・・・何を考えている、東屋。」

「いや、ちょっと位なら触ってもいいのかもしれない。」

「こいつ変態だーーーーーーー!?」

 うるさいマイケル。お前なんて頚動脈をこうだ!

 グキッ!

「グアッ!?」

 ふう、邪魔者は死んd

「コウジ~。ちょっとお話しようか~?」

 ・・・修羅や。修羅がおる。

 その後なにがあったかって?

 聞かないでくれるとオレタスカル。

 

 

 忌まわしき期末テストが終わり、憐れな犠牲者(補習受講者)の名前が廊下に貼り出される。

 そこに俺の名前は・・・。

「・・・無い。ない。ナイ。・・・イヨッシャーーーーーー!」

 救われた!わちき救われたよ!

 ありがとう!勉学の神様!俺もう少し貴方を信じるよ!少しだけ。

「喜んでるところに水を差すようだが、お前相当ギリギリだったらしいな。」

「うるへぇ!ギリギリでも赤点回避には変わらないもんね。」

 胸を張って答えるぜ。

 いや~辛かったなぁあの日々。漫画にでもしたら単行本20冊にはなろう。

 でも俺はソレを乗り越えた!自由を手に入れたんだ!

 夏休みは遊び倒すぞー。

「おめでとコウジ。これで部活に集中できるね。」

 遊び、倒すぞ。

「それだけじゃない。敵も力を増している以上、リンケージとして更なる自己鍛錬が必要だ。」

 遊び・・・。

「「それに課題はちゃんとやれ(やるんだ)よ。」」

「お前ら鬼か(;;)」

 折角、折角目を逸らしていた現実に・・・。クソゥ。

「まぁ、その。頑張れコウジ。」

 シャナ、お前まで俺を見放すか。

「宿題なんてみんなでやればすぐ終わるよ。なんてったってボクたちには成績優秀なマイケルが付いてるんだから。」

「お前なぁ。最初から他人任せでヒトのこと言えるのか?」

 マコトだってそこまで成績良く無いくせに。

「いや、今年は僕も手伝おう。さっきも言ったが、今年はやることが多い。課題など早く片付けるに越したことはないからな。」

 マイケル・・・、お前・・・。

「今お前が仏に見えるよ・・・。」

「見えなくていい。あと手を握るな気色悪い。」

 仏じゃなきゃ神様だよ。とんでもねぇアンタ神様だよ。

「見て!東屋君とダートン君が見つめ合ってる!」

「次のテーマはコレね!」

「夏コ○までに間に合わせるわよ!」

 なんか聞こえるけどいいや。今はマイケルにただただ感謝を。

「良くない!僕が良くない!いい加減に手を離せ!キラキラした瞳で僕を見るなぁ!!」

 

「良いなぁ、ダートン。」

「シャナ。君ホント変わったよね。」

 

 

 ギューンと日が経ち、夏休みに入って一週間。

 それだけで課題の問題集は全て終わった。というか終わらせられた。

 マイケルの鬼のような指導の下、俺、マコト、シャナは精神をすり減らしながら闘った。

 その結果、全員幽鬼の様になりながらも強敵を討つことに成功したのである。

 しかしあの野郎、女子陣には普通に教えるくせに俺が間違えると消しゴムを投げつけてくるとは。

 地味に痛かったぞちくせう。

 その間にも基地でシュミレーションを行ったり、海上防衛施設上で実際にガーディアンを動かしたりと大忙しだった。

 ブレイガストが飛べるようになったのは良いけど、あの時ほどうまく飛べない。

 この間なんか・・・。

 

『ブレイガスト、上昇!』

『東屋、馬鹿!何処まで上に行く気だ!』

『え?あ!ちょあっ!?』

『おいコウジ!そっちは海だ!そのままじゃ突っ込むぞ!?』

『ヒィ!?おわーーーーーーーー!!』

 ザブーーーーーーン!

『あ~あ~。ダメだこりゃ。』

 

 なんてことがあったな。

 飛行か。折角なんだから、ちゃんと飛べるようになりたいな。

 あれもブレイガストの力なんだし、俺がちゃんと制御しなくちゃ!

「なにボーッとしてるのさ。」

 おっと。ちょいと自分の世界に浸っていたぜ。

 今日は部活で『次に来る!スイーツ祭り』とかいう記事を作るための取材だっけ?

「暑さで頭がやられたか。いや、元からだったな。」

 マイケル超ウゼ~!

「そ、その、コウジ。今日の私の服なんだが、どう、だ?」

 シャナが唐突に聞いてくる。

 ふむ。白のワンピースですか・・・。

「似合ってるんじゃないか?シャナの清楚っぽさが出てる気がする。綺麗というか、可愛いな。」

「そ、そうか。ありがとう////」

 俺にしては気が利いたことが言えたかな?

「む。コウジ。ボクはどう?」

 なんかマコトが怒った様に聞いてくる。なんで?

「お前はいつもの動きやすいパンツルックじゃないか。」

「そりゃそうだけどさぁ。」

「あ、でもそれ新しいやつか。中々似合ってるんじゃないか。お前黒以外も結構似合うのな。」

 こいつ大抵は黒で統一された服を着てるんだが、今日は白いシャツとグレーのパンツだ。

 やっぱりどこか男っぽいが、見慣れた格好で良く似合っていると思う。

「そうかな?え、えへへ。」

 なぜ照れる。

「・・・お前、よくそんなことが言えるな。」

 マイケルが目を丸くしていらっしゃる。

 まぁ当然だろう。俺みたいなガサツな男が女子の服装を褒めるなんて、自分でも驚く。

「前にマコトが色々な服装を試しててさ。一着ごとに感想聞いてくるもんだから、それなりに見れるようになっちまった。」

「そういえばクラスの女子の微妙な変化も言い当てたことがあったな。意外な特技だ。」

 自分でもそう思います。

「なぁ東屋。マコトには、ワンピースも結構似合うと思うんだが、どうだ?」

 マコトにワンピースねぇ。

 ん?なんか見たことがあるような。

 あれは、何年前だったかな?

 それこそ、あの遺跡の奥に行ったのような・・・。

 あれ?最近も見たことある気がしてきた。

 んん?なんか混乱してきたぞ?

「まぁマコトは何を着ても似合うがな。」

 結局落としどころはそこなんですね、マイケルさんや。

 さて、まだなんかもじもじしてる女子達の目を覚まして取材続行でも。

 と考えたところで、街に警報が鳴り響く。

 嘘だろ!?またディスティニーの攻撃かよ!?

「コウジ!ダートン!」

「判ってる!」

「こちらダートン!司令部、応答願います!」

 マイケルが基地に連絡を取る。

 最近知ったのだが、俺達が持つ『フォーチュン徽章』。これは通信機兼発信器になっているらしい。

 コレを身に着けていればいつでも基地と通信でき、俺達に対してガーディアンを緊急発進させることが可能だ。

『こちら伊達ミウコです。マイケルさん、コウジさん、シャナさんは一緒のようですね。』

「はい。状況はどうなっていますか?」

『敵は二方面から桜花島へ向かって来ています。確認できたのは、東北方面にミーレス部隊。そして。』

 司令の声が一度止まる。

『南東方面から先のクラッシャー級。それとデータに無いスーパー級が部隊を率いています。』

 二ヶ所同時に攻めてくるなんて!奴等味な真似してくれるぜ!

 しかも一方にはスーパー級だぁ!

 俺はブレイガストのパワーを思い出す。

 あんなのが敵にもいるのかよ!

「・・・司令。僕に一つ提案があります。」

『なんですか。』

「北東方面には僕のルミエールだけで向かいます。残りの3機は南東方面に向かわせてください。」

 な!?

「お前!一人で敵部隊と戦う気か!?」

 無茶にも程があるだろ!

「対多数戦は慣れている。それに敵はミーレスだ。それよりもあの死神と、敵スーパー級の方が脅威となる。お前達3人で当たってもどうなるか。」

『私もそれを言おうと思っていました。敵の新型のスペックは解りませんが、スーパー級である以上相当のパワーがあると考えられます。ブレイガストの力は必須でしょう。それ以外にも、クラッシャー級がいる以上激戦は免れません。』

 司令もマイケルも、淡々と状況と作戦を述べる。

「僕が即効でミーレス部隊を撃破し、お前達の援護に向かう。スーパー級が相手では、元々僕では力不足だ。現状、コレが最適と思われる。」

『アタシもそれしかないと思うよ。』

 先生まで・・・。

『どっちかを無視するなんて選択肢は無いんだ。アタシとコウジの鈍足組だけじゃ死神に翻弄されちまう。バルサーガの機動力が必要なんだ。』

 それしか、方法はないのか。

 俺は黙ってマイケルを見る。

「そんな顔をするな。勝算の無い提案はしない。大丈夫だ。すぐにお前達の助けに行ってやるさ。」

「何だよそりゃ。心配される側の台詞じゃなぇよ。」

 本人が腹を括ってるんだ。なら俺に出来ることは。

「お前の助けなんかいらねぇよ。逆にこっちから助けに行ってやる。」

「ふん。まぁ期待しないでおくとするよ。」

 不敵な顔で俺達は拳を合わせる。

 たく、最初に会った時は気に食わない奴だったのに。

 今じゃ頼もしく思えるぜ。

『そちらにガーディアンを緊急発進させます。急いで所定の位置に着いてください。』

「「「了解!!!」」」

 さぁて、今度の敵はどんな奴だ?

 腕が鳴るぜ!

「みんな・・・。ボクには何も出来ないけど、気を付けて。絶対、帰ってきてよ!何だか嫌な予感がする・・・。」

「マコト。私達を誰だと思っている?必ず無事に帰るさ。」

「そうだ。君は心配するより、僕たちの勝利を祈っていてくれ。」

「約束する。俺達は負けない!だからお前も、早くシェルターに。」

 俺達リンケージ組はみんな笑顔だ。

 そうさ。実戦は何度もこなしてきた。

 恐怖なんかない。負ける気がしない。

 俺達なら、どんな奴にでも勝てるさ!

「うん・・・。みんな、しっかり!部活は終わってないんだからね!」

「了解、部長!」

 みんなで手を合わせる。

 その時、ちょうど俺達のガーディアンが到着した。

「さぁ、往くぞ!」

「「応!!」」

 俺達は戦場へと向かう。

 

 

 

第8幕

 

side-マイケル-

 

 さて、北東の施設へ到着したわけだが、敵の動きがおかしい。

 進軍速度が妙に遅い。まるでこちらを待っていたかのようだ。

『ようファッキン小僧。今日はお仲間は一緒じゃないのかい?』

 敵の指揮官は、マーカー付きのヴィクラマ、あの時の奴!

「そっちこそ、5機程度で僕を墜とせると思うなよ。」

 そう、たった5機。敵の腕が良かろうと、マーカー付き以外は有象無象だ。

 全て叩き落すのみ。

『へ、怖いねぇ。作戦じゃなきゃ、ビビッて帰っちまうところだ。』

 作戦?奴ら、一体なんの狙いがあるんだ?

 ・・・まさか、こいつらは囮!?本命は南東か!

 だが、こいつらを放っておけない。僕が転進すれば後ろから撃つか、市街地に攻撃を仕掛ける。

 なら、当初の作戦通りに!

「ここでお前達を叩く!そして仲間の援護に向かう!それが僕の役目だ!」

 敵が固まっている今が狙い目だ。

 ヴィクラマ隊に向かい、ビームライフルを構えながら突撃する。

 ターゲット、マルチロック。

 良し、全機収まった!

「まずは、これで!」

 ビームを乱射する。

 ただ撃つだけじゃない。敵機がかわし難い状況に追い込む。

 ダメ押しのバルカンだ!

「受け取れ!」

 攻撃は、全弾命中。爆炎が空を覆う。

 一度距離を取り、再びライフルを構える。

 煙が晴れたそこには、幾らか傷付いたものの、まだ動いているヴィクラマの姿があった。

 あの隊長機の言葉が確かなら、奴らは僕を釘付けにするための囮。

 ビーム対策は多少してあるようだが、それでも4機はかなりダメージを負っている。

 もう一押しで、崩せる!

『ち!各機散開!纏まってたら一気に落とされるぞ!』

 遅い!

 ルミエールを一気に加速させ、敵陣中央へ。

 そのままビームサーベルを振り払う。

 敵機の散開は済んでしまったようだが、1機は捕らえた。

 首を落とし、蹴り飛ばす。 

 ヴァライフから落とされた首なしヴィクラマはそのまま海に墜ちていく。

 まずは一つ!

 残る機体が攻撃準備に入るが、それも遅い。

 マシンガンの隙間を縫うように近づき、さらに1機を切り払う。

「まだだ!」

 動揺したのか、動きが止まった一瞬を、僕は見逃さない。

 ライフルで近くの敵を、シールドミサイルで遠くの敵をロックする。

 コイツで、終わりだ!

 機関部を撃たれた両機は哀れ海中へ。

 それにしても全機、ちゃっかりとコックピットを避けていた。それだけの腕はあるのだろう。

 速攻を仕掛けなければ苦戦を強いられていたかもしれない。

『ヴィクラマ4機が、たったの1分。化け物か手前。』

「悪いが、約束があるんでね。こんなところでもたついてはいられないんだ!」

 ライフルを格納し、パイルバンカーの準備に入る。

 コイツにはビームが通用しないのは解っている。

「さっさと墜ちてもらうぞ!」

『舐めるなってんだよ、小僧!』

 

side-コウジ-

 

 俺達は南東の施設に上陸した。

 敵の姿は、まだ無い。

 レーダーに映ってから大分経つはずだけど、どうしたんだ?

 もしかして、何かトラブルが?

「・・・気に入らないね。」

 先生がそう呟く。

「奴さん、アタシらの到着を待っていたみたいだよ。スーパー級以外全機ヴァライフに乗ってるくせに、妙にゆっくりだ。」

 確かに、この前いたあの飛行ユニットは中々すばしっこかったのに。

 一体どういうことだ?

「司令。下手するとアタシ達、相手の掌の上で踊らされてるのかもね。」

『考えたくはありませんが、その可能性が出てきましたね。ですが。』

「あぁ、やることは同じさ。」

 アクセルギアが砲撃体制を取る。

 一発かます気か。

「シャナ、コウジ。敵がいつ突撃してきてもいいように構えてな。」

「了解。」

「おうよ。」

 敵をギリギリまで引きつける。

 なんだ、マコトじゃないけど、嫌な予感がする。

 この戦い、一筋縄じゃいかない、そんな予感が。

 それに、敵が。特に新型が近づいてくるにつれ、そのプレッシャーに気圧されそうになる。

 今までかいた事も無いような冷たい汗が背中を流れる。

 正直、気持ちが悪い。何だ、この感覚。

「コウジ、大丈夫か。」

 シャナが通信をかけてくる。

 そんな心配そうな顔するなよ。

「はは、なに。マイケルの奴がトチッてないか心配なだけさ。」

 そうだ。きっとそれだけだ。

「撃つよ。気ぃ引き締めな!」

 先生の声で、臨戦態勢を整える。

 それでも、冷たい汗は止まらなかった。

 

 砲撃は敵を1機撃ち落すことに成功。

 その瞬間、奴らの動きが加速した。

「敵の数は8。ブレイガストのいい餌食さね。」

 その通り!

 俺は敵に向かって飛ぶ。

 演習ではうまくいかなかったのに、今では思い通りに飛べる。

 これなら!

 敵も馬鹿じゃない。ミーレス達は散開し、ブレイガストの射程から逃れようとする。

「コウジ、もう少し上昇しろ!それで全機捉えられる!」

 シャナのアシストもあり、敵全機をロックする。

 それでも死神の動きは早く、捉えられない。

 スーパー級は・・・、防御しようともしない?

 その不気味さに押されそうになるが、まずは一撃!

「サンダーボンバァーーー!!」

 腕を打ち鳴らし、肩のパイルから一気に放電する。

 死神は、ダメだ。速すぎて雷撃圏内から抜けられちまった。

 だけど他の連中には大ダメージだ!ヴィクラマなんてフラフラしてるぜ。

 新型は、え?

「なん・・・、だと・・・。」

 防御した形跡も無いのに、ほとんど無傷。

 せいぜい装甲が焦げたくらいか。

 どんだけ頑丈なんだよ、アイツ。

『いいねぇ。思い切りのある動きだ。』

 スーパー級から男の声が聞こえてくる。

『だがそれじゃ無理だ。このラグシオンにゃ傷は付けられねぇ。』

 俺のブレイガストの攻撃を受けてびくともしない。

 あまつさえこの余裕、こいつ、化け物か!?

『もう少し待っててやる。そしたら遊ぼう。なぁ、坊や。』

 なんなんだよ、こいつ・・・。

 コイツの纏ってる雰囲気、普通じゃない。

 今までのどんな奴より、奈落獣より邪悪な何かを感じる・・・。

「コウジ!死神に抜かれた!近藤が狙われている!私達は雑魚を片付けて援護に向かうぞ!」

「り、了解!」

 危ねぇ。シャナの声が無かったらと思うと、ぞっとするぜ。

 今はマシンガンを構えているヴィクラマを片付けよう。

 早くしないと、先生のアクセルギアは近接戦は苦手なんだ。

 

side-フミカ-

 

 ち、頼むから簡単に抜かれないでおくれよ!

 あの死神とじゃ相性が悪いんだから。

 とりあえず接近戦用に火炎放射器を格納し、アームでの攻撃を準備する。

 もちろん、近づいてくる前に落とせれば御の字だけどね。

 ミサイルアーム、リニアカノン、大型ミサイルをフル動員で撃ちまくる。

「ああもう!一発くらい当たれってんだ!」

 死神はそれらの砲撃をすり抜け、こちらに向かってくる。

 それでもこの弾幕。簡単には。

「何だって!?」

 驚いた。命中したと思ったら、奴はヴァライフを盾にしやがった。

『捉えたわよ!近藤フミカ!』

 ち!

 死神のビームサイズをギリギリでかわし、体当たりをお見舞いする。

 だが、おそらくは高速型。それすらもひらりと避けられる。

『近藤フミカ!今日こそは戦友の仇、このグリム・リーパーで取らせてもらうわ!』

「前にも言ったけど、こちとら戦場を転々としててね!どこで恨みを買ったか解らないのさ!」

 サイズが振るわれる。

 それをすり抜け、タックルをかます。

 それが当たらない、の繰り返し。

 いい加減イライラする。

『アイワド島での貴女の行動、忘れたとは言わせない!』

「はぁ?アイワド島!?何言ってんのさ!アタシャそんなトコ行った覚えはないよ!」

『惚けるな!お前は、あの島を、私の仲間ごと焼き払ったんだ!』

 かぁ!話が噛み合わない!

 と言うか話にならん。

 さすがに覚えの無い恨みを買いたくはないよ。

『覚悟しなさい!この距離、ディザスター級では戦えないでしょう?』

「そうでもないさ。」

『何!?』

 ミサイルアームをグリム・リーパーに向ける。

 見せてやるよ。ディザスター級の接近戦を!

「コンタクトシュートってね!全弾もっていきな!!」

 さすがにこの距離、しかも攻撃モーション中に避けられないだろうよ。

 ミサイルアーム内の残弾を全て撃ちつくす。

『ぐぅ、うわーーーーー!?』

 見事に吹っ飛ばされたね。やっぱり装甲には難があるみたいだ。

「近藤、遅くなってすまない!」

「雑魚は片付けたぜ!後はボスと中ボスだけだ!」

 いいタイミングだ。

 敵は被弾して動きも鈍くなってる。

 畳み掛けるのは今か。

 だけど、いまだになんの動きも見せないラグシオンとかいうスーパー級。

 武装や外見からして、降魔爆装の1機みたいだけど。

『あーあー。聞こえるかセリーナ?お前もう下がってろ。』

『何故です中佐!?私はまだ戦えます!』

『前に言っただろう?』

 

『俺にも遊ばせろよ?』

 

 奴が声を発した瞬間、背中がゾクっとした。

 何だ、今の殺気・・・。人間が出せるものなのか?

『・・・了解しました。帰還します。』

 グリム・リーパーも素直に引く。

 奴は、一体・・・。

「コウジ?どうしたコウジ!?」

 こちらにも異変は起こった。

 通信を繋ぐと、コウジがコックピットの中で震えていた。

 いつもうるさいぐらい元気なコウジが、だ。

「どうした!?返事しなコウジ!?」

「だ、駄目だ。アイツは駄目だ。アイツは・・・。」

 ブレイガストがラグシオンに突撃を仕掛ける。

 不味い!コウジは今正常じゃない!

「アイツは・・・、お前は!ココにいちゃいけないんだーーーー!」

 ブレイガストが渾身の拳をぶつける。

 

 ガキィンという音が響く。

 いつもならあの鉄の拳が敵を打ち砕く音のはずだが。

 ラグシオンは片手でブレイガストの拳を防いでいた。

「なんだと!?」

『気迫だけじゃ、俺は倒せないぜ?』

 

side-マイケル-

 

 このマーカー付き、やはり強い・・・。

 攻撃は当たっているものの、急所は的確にずらされている。

 それにカウンター気味にヒートハチェットで攻撃してくるものだから、装甲の薄いルミエールには恐ろしい。

 今はブレイク状態・・・。一撃で逆転されかねない。

 それに・・・この戦闘で脱出装置がイかれた。

『たく、とんだファッキン野郎だな手前。1機でココまで戦い抜くなんて、正真正銘の化け物だな。』

「お褒めにあずかり光栄だが、そろそろ終わりにさせてもらう。」

『あ?ちょっと待て。撤退?どういうこ・・・、あぁ、中佐が遊び始めたか。』

 敵の通信?何を言っているんだ?

『つーわけで、俺は引くわ。また会えるといいな、生きてたらの話だが。』

 撤退?ココまで来てか?

 それになんださっきの一言。遊び始めた?

『おい。早く行かねーと、お友達がみんな死んじまうぜ。』

「何!どういうことだ!?」

『そのままの意味さ。じゃあな、アディオス!』

 マーカー付きは本当にそのまま撤退してしまった。

 コレで北東は何とかなったが・・・。

『マイケルさん!?伊達です!至急南東地区に向かってください!』

 司令からの通信。だがかなり慌てている。

「一体何があったのですか。」

『敵指揮官のスーパー級により、フミカさんたちは壊滅状態です!そのまま援護をお願いします!』

 壊滅状態!?馬鹿な!

 先生はもちろん、東屋もシャナもリンケージとして相当の腕になっているはずだ。

 それを、まさか!

「了解しました!至急現場に向かいます!」

 頼む!間に合ってくれ!

 

side-コウジ-

 

「うわぁーーーーーーーーーー!!」

 掴まれた腕ごと投げ飛ばされる。

 なんてパワーだ!

『まずは、邪魔なモンを封じるとするか。』

 ラグシオンからAL粒子が巻き上がる。

「あれは、アンチALフィールド・・・。《スィン》か!」

《スィン》。たしか加護を封じる加護・・・マズイ!

「やらせないよ!これでもくらいな!」

 先生がAL粒子を纏った弾丸を射出する。

『意味ないねぇ!』

 それをやはりAL粒子の纏った機関砲で撃ち落す。

 あれは、《オーディン》を《オーディン》で打ち消した!?

「まだだ近藤、《ブラギ》で」

『甘い甘い甘い甘いねぇ』

 ラグシオンからさらにAL粒子が放出される。

 駄目だ。これじゃあシャナの《ブラギ》も効果を発揮できない!

『さぁ。これで純粋な力比べだ。まずは。』

 ラグシオンはスーパー級とは思えない速度でバルサーガに肉薄する。

 そして背中から巨大な剣を取り出した。

『お前さんからお寝んねしてな!』

「くっ、うわーーーーーーー!!」

 たったの一振りでバルサーガを海上施設の甲板に叩き付けた。

「シャナ、応答しろ!目ぇ覚ませシャナーーー!」

 駄目だ、完全に気絶してる・・・。

 耐久力のあるバルサーガを一撃で沈めるなんて。

 さっきの俺を投げ飛ばしたときは加減でもしてたってのか?

『次はお前だよ!』

「上等!近づけるもんなら近づいてみな!」

 先生は残った武装で総攻撃に出る。

 機体も輝き、ブレイク状態にあることが見て取れた。

 だが、今回に限ってはそれが悪手になった。

『痒いな~おい。」

「な、効いてない!?」

『今度はこっちの番だな。ほらよ!』

 再び見せた猛スピードの突撃に、アクセルギアは対処できていない。

 振り上げられた剣は無慈悲にも振り下ろされた。

 両断されるアクセルギア。

 一瞬遅れて、機体は爆散した。

『ーーーーーーーーーーーーーーッ!?』

 司令の声にならない悲鳴が聞こえる。

「先生!?」

「まだ、生きてるよ・・・。」

 よかった!何とか脱出できたのか!

『何処見てんだよ!』

「グウゥッ!?」

 くそ、こいつ!ただのパンチでもとんでもない威力だ。

『ソラソラソラソラソラソラソラソラ!』

 それも凄い速さでラッシュをかけてきやがる!

 このまま受けてたんじゃブレイガストの装甲でも持たない。

 なら!反撃あるのみ!

「そこだ!!」

 攻撃の合間を見て、拳を突き出す。

 顔面直撃コースだ。

『おっと。危ない危ない。』

 だがそれも、奴は片手で受け止める。

 ここまで実力差があるなんて・・・。

『その機体の力、そんなモンじゃねぇだろう?早く見せないと死んじまうぜ!』

 逆に顔面を掴まれ、海上施設に叩きつけられる。

 ヤバイ!今のでメインカメラが死んだ!?

『せっかく出張ってきたんだ。もっと遊ぼうぜ?なあスターゲイザーの小僧!』

「うわーーーー!?」

 野郎!目茶苦茶に蹴り転がしやがって!

 俺はサッカーボールじゃねぇんだぞ。

 そんな事を考えている間にも奴の攻撃、いや蹂躙は続く。

 無様に蹴り続けられるブレイガスト。

 腕や足の反応が弱くなり始め、抵抗も出来なくなってきている。

 こいつは、フミカ先生以上の暴力かな・・・。

 しかもコイツ、それを楽しんでる。このどS野郎め!

「くそ!動け、ブレイガスト!このままじゃ、やられちまうぞ!?」

 操縦桿を引けども押せども反応は無い。

 ブレイガストはもう奴のされるがままになっている。

 俺自身も衝撃で目の上を切ったか。血が流れて視界が赤い。

『たく。こんなのがこの島の守護神なのか?いや、まだ王の段階か。どっちにしてもこれで終わりか。』

 ラグシオンがその大剣を構える。

 畜生・・・。こんな所で、俺は。

(絶対、生きて帰ってきてよ。)

 あぁ、死にたくねぇなぁ。

 もっともっと、やりたいことは一杯あったのにな。

『じゃあな、小僧。一足先に逝っとけや。』

 くそう!もう何も出来ないのか?

 希望が消えかけた瞬間、奴の背中に対しビームが直撃する。

 あれは、まさか・・・。

 

「何を諦めている!!」

 細かな傷が目立つルミエールが現れる。

 あいつ、本当に一人で敵を片付けたのか!?

 いや、それよりも!

「やめろマイケル!そいつは今までの奴らと違う!傷付いたその機体じゃ勝ち目が無い!」

「お前らしくないな。お前はいつも馬鹿みたいに前を向いて、希望を捨てずにいただろうが。」

 それでも!駄目だ、勝てるわけが無い!

「シャナと先生を連れて退いてくれ!俺が囮になる!」

「そんな状態で囮も何もない。むしろお前が二人を連れて撤退しろ!殿は僕が受け持つ!」

『お友達が間に合ったかい。だが、物足りない。物足りないぞ!』

 ラグシオンはルミエールに向かい飛び上がる。さっきのダメージは無しかよ!

 奴の拳が振るわれる。

 だが、機動力はルミエールの方が上のようだ。紙一重でかわす。

 その時、ルミエールのブースターが一つ、爆音とともにパージされ海中に沈んでいった。

 やっぱりマイケルの奴、無理してやがる!機体はもうボロボロなんだ!

 動きが鈍くなったルミエールに、ラグシオンの拳が叩き込まれる。

 野郎!剣を使えば一瞬だろうに、遊んでやがるんだ!

『ほうら。こいつはどうだ?』

 まずコックピットを叩いて脱出装置を完全に殺した。

 その次は両足を握りつぶし、破壊する。

 そして同じ要領で腕を掴み、引き千切る。

 まるで子供が昆虫の腕や羽根をむしりとるかのように、残酷に。

 頼む、やめろ。やめてくれ!

「動け!動いてくれブレイガスト!マイケルが、仲間が、殺されちまう!今動かないで、何が!」

 何が正義の味方だよ!?

 頼むよ、ブレイガスト・・・。せめて、マイケルを助ける、そのために動いてくれ!

 無愛想で上から目線で、頭が良くて、いつも冷静で。俺とはまるで違う、気に食わない奴。

 だけど、俺はアイツを助けたい!仲間なんだ!友達なんだ!

 アイツは、親友なんだ!!

 だから。

「動いてくれよ!ブレイガストーーーー!!」

 それでも、コイツは動けない。

 全身から火花を巻き、まさに満身創痍だ。

 その間にも、ラグシオンはただ浮いているだけのルミエールを弄り続ける。

「・・・東屋、聴こえるか?」

 マイケルからの通信。もうスクリーンも死んだのか、声しか聞こえない。

「よく聴け。お前はまだまだだ。発展途上もいいところだ。」

 こんな時に嫌味言ってる場合か!

「だからこそ、まだまだ強くなる。僕が命懸けで保障しよう。」

 そんな・・・。そんなのって。

「東屋。僕からお前に遺す。それはお前を縛ることになってしまうかもしれない。」

 ・・・・・・。

「この島を、マコトを頼む。必ず護れ。」

 なんだよ・・・。それじゃまるで、

「遺言みたいなこと言ってんじゃねぇ!!」

「約束しろ!東屋コウジ!彼女を護ると!!」

 通信の合間から、装甲が叩き潰される音が聞こえる。

「そんなの、お前がやればいいだろ・・・。」

「ふん。お前は馬鹿で、能天気で、何も考えず猪突猛進で、そして、僕の欲しかったモノを全部持っていた。」

 なにを、言ってるんだ?

「初めて会った時から気に食わなかった。マコトを交えてからはさらに気に食わなくなった。それでも、いつも前を見続けるお前が、正直羨ましかった。」

 止めろよ、こんな時に。

「多くの友人が出来た。それでも、本気で言い合える相手はお前だけだ。今まで認めたくは無かったが、しかたない。お前は僕の」

 

「親友だ・・・。」

 

「だからお前にしか頼めないんだ。東屋。僕の全てを、お前に託す。」

 マイケル・・・!

「お前なら、出来る。お前にしか託せない。」

 ラグシオンが距離をあけ、銃のようなものを構える。

 マズイ!止めを刺す気だ!

『遺言は済んだかい?じゃあ今楽にしてやるよ!この奈落粒子砲でな!』

「伝えることは伝えた。だが、ただでこの命はくれてやらない!」

 ルミエールが最後の力を振り絞り、ラグシオンに向かっていく。

 アイツ、体当たりするつもりか!?

「待て、マイケル!」

 無常にも奈落粒子砲とやらの引き金は引かれた。

 黒いエネルギーの奔流がルミエールを、マイケルの命を蝕んでいく。

(約束、したぞ・・・。コウジ。)

 あと少し、あと少しで敵に届くという所で、ルミエールは爆発四散した・・・。

 

『ルミエールの爆散を確認。生体反応は・・・ありません・・・。』

 司令の言葉が聞こえてくる。

 嘘だ。

 マイケルが、死んだなんて。

 ウソだ。

「嘘だーーーーーーーーーー!!」

 あのマイケルが、死ぬわけない!

『悪いがホントだ。』

 !?

『あのカバリエ級の小僧は死んだ。もういない。俺が殺した。』

 こいつ・・・。

『しっかし何しにきたんだろうなぁ。ただでさえボロボロだったのに。』

 黙れよ。

『ま、いい退屈しのぎにはなったか?ハッハハハハハハハハハ!!』

 その口を。

「その汚ねぇ口を、閉じろぉ!」

 ブレイガストの瞳が輝く。

 まだ往けるだろ、相棒。

 あのクソ野郎を、同じ目に合わせてやらなきゃいけねぇ!

 俺の残る力、全部持っていけ!

「うぅぅおぉぉぉーーーーーーーーーーー!!」

 ブレイガストは翔ぶ。

 あの野郎めがけ、拳を振りかぶる。

 全力全開の!

「ファイナル・トール・スマッシャーーーーー!!!!」

『だから効かね・・・何!?』

 初めてラグシオンが両腕で防御する。

 構わない。その防御ごと、ぶち抜いてやる!

「おおおーーーーーーーー!!」

『ぬぅーーーーーーーーー!!』

 ブレイガストの腕にヒビがはいる。

 構うものか!あっちの腕にも同じことが起きてる!

 このまま、押し切ってや・る・・

 

side-グラフス-

 

 ブレイガストが落下していく。

 外も中も限界だったのだろう。

 まぁよく持ったほうか。

 それにしても・・・。

「グラフス中佐。無事か?」

「ジョニーか。御覧の有様だぜ。」

 ラグシオンの両腕の罅を見せる。

 パキパキと音がすると思ったら、そのまま砕け散った。

 コックピット上にも微かに傷がある。

 あの小僧、この俺に届きやがったか。

 いいねぇ。そうでなくちゃ。

「中佐。このまま敵を掃討しますか?」

 セリーナが無粋な提案をしてくる。もちろんNOだ。

 他の2匹はともかく、やっとこさ王が真の覚醒の兆しを見せたんだ。

「このまま撤退し、フォーチュンの出方を見る。」

「しかし、桜花島を占拠するには絶好の機会ですよ!?」

「今そんな事をしても意味が無ぇんだよ。あの島にはちゃんと目を醒ましてもらわんとな。」

「は?」

 解らないのならそれでいい。

 俺の目的は今の桜花島を手にすることじゃない。

「次は楽しみにしてるぜ。スターゲイザー君。」

 今度会う時は全て目覚めてくれていると嬉しいんだがね。

 

 

第9幕

 

side-フミカ-

 

 司令室は重苦しい空気で包まれていた。

 厳しい顔の伊達司令。

 悔しそうに顔を歪めるシャナ。

 無表情のアタシ。

 そして、俯いたまま顔を上げないコウジ。

 後一人は、もういない。

「大敗、ですね。」

 司令が口を開く。

 そうだ。アタシ達は負けた。たった1機のガーディアンに。完膚なきまでに。

 長いこと戦場にいるが、こんな負け方はギルガーンの時以来だ。

 いや、自分のガーディアンを失ってしまった点を考えればそれ以上か。

 それにしても、慣れるもんじゃないね。

 仲間を、失うのは。

「それでも、皆さんの懸命なる戦いにより敵は撤退。島に敵を入れずにすみました。ご苦労様です。」

 幼い少女の淡々とした声が響く。

「ブレイガストとバルサーガは幸い原型を留めているため修理は可能です。フミカさんの機体は、新型を用意する予定です。」

「助かるよ。またアイツらが攻めてきた時に何も出来ないのは嫌だからね。」

 アクセルギアのデータは残っている。それを流用すれば、時間は掛かるかもしれないが新型に期待できる。

 どうせなら同じディザスター級が良い。アタシの性に合ってる。

「それとマイケルさんの抜けた穴も考慮しなければなりませんね。彼はあらゆる面で優秀な人材でしたから。」

「なんだよ・・・、そりゃ。」

 話がマイケルの事になった途端、コウジが口を開く。

「そのままの意味です。4人で倒せなかった相手に、3人で挑もうと言うのですか?それに情報処理の方面でも」

「そういう事じゃねぇ!マイケルが死んだんだぞ!?アンタは何も感じないのかよ!?」

「いえ。彼には感謝しています。彼がヴィクラマ隊を引き付けてくれていなければより苦しい状況に置かれていました。最悪、基地の防衛システムだけで敵を相手取らなければなりませんでしたからね。」

「アイツは!俺達を護って死んだんだ!それをモノのように言うんじゃねぇ!!」

「やめろコウジ!」

 今にも司令に掴みかかろうとするコウジを、シャナが止める。

 ・・・気持ちは理解できる。アタシも初めて仲間を失った時は錯乱したもんだ。

 でもね。

「司令に怒鳴ったところで、マイケルは帰ってこないよ。事実を受け止めな。アイツは、もういない。」

 泣こうが喚こうが、死人は生き返らない。

「解ってるよ、そんな事!」

「いいえ。貴方は解っていません。リンケージとは、常に命の危険に晒されています。彼は言っていませんでしたか?何かを失う覚悟を持てと。今

 がその時です。私達はマイケルさんの死を乗り越えなければなりません。」

「アンタ達は俺達の後ろでただ見てるだけだろうが!!」

 その言葉を聞いた時、アタシの体は動いていた。

 コウジの顔面を全力で殴り飛ばす。

 不意を撃たれた形になったコウジは壁に叩きつけられた。

 すかさずシャナが介抱する。

「コウジ!近藤、何を!」

「口を慎めよ小僧。マイケルとはね、アンタよりむしろアタシや司令たちの方が付き合いが長い。辛いのが自分だけだと思うなよ。」

 アタシは冷たく言い放つ。

 だが、これは本心だ。マイケルを失ったことは、基地内の全ての人間の心に影を落とした。

「悲しい事があった。だからといって歩みを止め、この島を護ることを放棄してしまえば、それこそ彼の想いを裏切ることになります。私達はもう止まることは許されないのです。」

「・・・クソッ!」

 立ち上がり、勢いのまま司令室を飛び出していくコウジ。

「シャナ。コウジを頼んだよ。」

「・・・あぁ。」

 コウジの後を追い、シャナも出て行く。

 何か言いたそうだったが、コッチの事情も察してくれた様子だ。

 コウジの奴も時間を置けば少しは落ち着くだろう。

 アイツは馬鹿だけど人の心には聡い。司令の本心も解ってくれるはずさ。

 さて、と。

 

「悪いね。憎まれ役を押し付けちまって。」

「いえ。それが基地司令の役割ですから。」

 あぁ、もう。たくこの子は。

 司令室の椅子まで近づき、ミウコの頭を抱きしめる。

「・・・もう、誰もいないよ。」

 ミウコは、何も言わない。

 ただアタシの胸に顔を埋めているだけ。

「吐き出しちまいな。アンタの心。アタシが全部受け止めるから。」

 肩が震えだす。彼女はアタシの服をくしゃりと握った。

「う、うぅ・・・。えぐ。」

 次第に声が、嗚咽が漏れ出す。

 そして、ダムは決壊した。

「う”わ”あ”あ”あ”あ”あ”ぁ!!マイケルさん!マイケルさーーーーん!!」

 歳相応の子供のように、彼女は泣いた。泣き叫んだ。

 部下の、戦友の死を悲しんだ。

 コウジだけじゃない。この娘も、誰かを失うのは初めてなんだよ・・・。

「ゴメンナサイ、ゴメンナサイ。私が、もっとしっかりしてれば。ゴメンナサイ・・・。」

「謝るのはアンタじゃないよ。」

 本当はアタシ達大人の役目なんだ。

 それなのに、こんな小さな体に全部背負わせて。

 部下に非情な言葉を投げつけさせて、アタシ達は平気な顔して。

 最低だね、ホント。こんなんだから、この娘とアタシは歪な関係のままだ。

 今だ泣きじゃくるミウコを優しく抱きしめる。

 許してくれ。今のアタシには、これ以上優しい言葉は掛けられない。

 マイケル・・・、アンタも、アタシのこの姿を許せないかい?

 アタシも、もっと強くならなきゃね。

 せめて、この子達を包んでやれるくらいには。

 

side-コウジ-

 

 マイケルには肉親がいないらしい。

 後日、基地で葬儀が行われた。

 葬儀には学校関係者も多く訪れた。

 アイツは編入直後はともかく、学校に慣れてきてからは意外と面倒見も良く、その死を多くの生徒が悲しんだ。

 特にウチのクラスの連中は、ひどい有様だった。

 呆然としている奴、泣きじゃくる奴、取り乱し暴れる奴までいた。

 俺は・・・、何故だろう。涙が出てこない。

 葬儀の途中から、大粒の雨が降り出した。

 まるで、俺の代わりに泣いてくれているようで、煩わしい。

 

 葬儀が終わり、みんなそれぞれ家路に着く。

 最後までいる必要は無かったのに、それだけアイツの人望が厚かった証拠だろう。

 ドシャ降りの雨の中、俺は傘も差さずにただ突っ立っていた。

 どうしていいか解らなかった。

 あの時、俺がもっと早く動いていれば、結果は違っていたかもしれない。

 そんなことばかりが頭の中を駆け巡る。

「コウジ・・・。」

 ふと後ろから声が掛けられた。

 マコトと、シャナ。二人とも傘を差し俺を哀しい眼で見つめている。

 ・・・やめてくれ。そんな眼で俺を見るな。

「コウジ、それ以上濡れると身体に障る。さぁ、この傘を使え。」

「・・・要らない。」

 シャナが用意してくれた傘を突っぱねる。

 ここまで濡れたんだ。もう変わらない。

「コウジ、お前は悪くない。私とて、たった一撃で気を失った愚かな騎士だ。」

 違う、そんな言葉をかけてほしいんじゃない。

「護れなかった・・・。」

 小さく呟く。

「この手の中のモノ、全部護るって言ったのに。護れなかった。」

 うわ言の様に繰り返す。

 他に言葉が出てこない。

 約束したのに。護ってみせるって。

 そんな俺に、あの野郎。約束を果たせって。

 今の俺に何が出来るってんだよ。

 俺は、自分が許せない。アイツの遺志を継ぐ資格なんて、ない。

 そっと、誰かに後ろから抱きしめられる。

「・・・濡れるぞ、マコト。」

 彼女は離れない。俺の背中を包み込むように、雨でびしょ濡れになるのも構わず。

「泣いて、いいんだよ。」

 マコト・・・。

「溜め込む必要なんか、ない。全部吐き出してよ。」

 でも俺は。

「このままじゃ、コウジが潰れちゃう。そんなの見たくないよ。」

 駄目だ。俺に、泣く資格なんか。

「ボクが居る。ボクが支えててあげる。だから、君は今泣いていいんだ。」

 駄目だ。もう・・・。

「う・・・、うぅ。」

「うん。」

「う、ち”く”しょおぉーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」

 限界だった。もう、止められない。

「何で!何でなんだよ!何でアイツが死ななきゃならない!!」

 泣いた。泣き叫んだ。涙なのか雨なのか判らない水が、俺の顔を濡らす。

「う”わ”ああああああああああああああああああ!!!」

 マコトはただただ、俺の背を抱いていてくれた。

 ずっと、ずっと。

 

 高二の夏。俺達は、大切なモノを失った。




正直マイケルの退場は早すぎるとも思いました。
でもこういう話嫌いじゃないんです。

切る所が分からなくて長くなってしまった・・・。
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