メタリックガーディアン・プロミス 『桜の舞う島で』   作:戒炎

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書くときは・・・特に何も考えてないです・・・。

いまさらですけどドッグオブウォーの敵データ、改変されすぎじゃね?
強敵勢は軒並みレベルアップ。邪神のあの強さは何?


第4話「GUARDIAN」その1

第1幕

 

side-コウジ-

 

「ウラーーーーーーーーーーー!!!」

 近寄ってくる奈落獣を叩く。叩く。叩く。

 ただがむしゃらに叩き伏せる。もう二度と立ち上がって来れないように。

「コウジ、無茶は止せ!そんな戦い方じゃ持たないぞ!」

 シャナの声が聞こえる。それでも俺は攻撃を止めない。

 南東の海上施設。ココを抜かれたら、奈落獣の群れが島に押し寄せる。

 あそこにはみんなが、マコトが居るんだ!

 絶対に行かせねぇ!

「不味い!残りがそちらに向かったぞ!」

「好都合だ!!」

 こいよ、全部纏めて相手してやる。

 そう、そうだ。もっと集まって来い!

「くっ!私が追い込む。一撃で決めろ!」

 バルサーガが円の動きでブレイガストの周りを飛ぶ。

 それに引かれ、射程範囲外の奈落獣も集まってきた。

 今だ!

「サンダーボンバー!」

 拳を打ち鳴らし、雷撃を放出する。

 ブレイガストを中心に球状に展開する雷撃により、奈落獣は次々と爆発していく。

 これでいい。これで今回の襲撃も終わりだ。

 だが、原型を留めていた奈落獣が1匹施設上に落ちていく。

 まだ息があるか・・・。

 完璧にぶちのめす。

 ふとを見ると、何か筒状の物をこちらに向けて構えている。

(ハッハハハハハハハハハハハハハ)

 その姿が、奴とダブって視えた時、俺の中の何かが切れた。

「この、野郎がーーーーーーーっ!」

 全力で奈落獣に向い、その腕を掴み握り潰す。

 痛みで咆哮を上げる奈落獣。

 痛いか、お前ら化け物でも痛いか。

 アイツは、もうそれすら感じることが出来ないんだ!

「ウア!ウアッ!ウルアーーー!!!」

 奈落獣に対し容赦なく拳を叩き込む。

 もう片方の腕が千切れ飛ぶ。

 脚が破裂する。

 頭が消し飛ぶ。

 胴体に穴が開く。

 周囲には奈落獣のどす黒い、血液のようなものが飛び散る。

 それでも俺は、この拳を振るい続ける。何かをかき消すように。

「止めるんだコウジ!もうソイツは動かない!私達の勝利だ!」

 バルサーガに止められ、俺の動きも落ち着いた。

「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ・・・。」

 周囲だけじゃない。よく見るとブレイガストも敵の返り血でどす黒くなっている。

 ・・・まるで今の俺の心の中みたいだ。

 それでも俺は戦いを止めない。

 マコトを護るために。

 奴をこの世から抹殺するために。

 マイケルとの約束を、果たすために。

「司令。奈落獣は全滅させた。これより帰投する。」

『了解しました。・・・コウジさん、聞こえていますか?』

「あぁ・・・、聞こえてるよ。」

 俺達は戦場を後にした。

 

 マイケルが死んでから2週間が経った。

 俺達は悲しみに暮れる間も無く、敵との戦いを強いられている。

 今までと違うのは、敵機にガーディアンは居らず、全て奈落獣だという事だ。それも雑魚級ばかり。

「敵の動き、妙だね。単調と言うか、知能の低い奈落獣で、南東側からしか攻めて来ない。」

「彼らもこちらの戦力が著しく低下していることは理解しているはずです。それこそ多方面作戦に出られれば対処しきれません。」

 先生と司令が状況を分析している。

「いいじゃねぇか。アイツらが一ヶ所からしか来ないならこっちも守り易いだろ?」

「確かに現状はそうですが、あの敵指揮官、思考がまるで読めません。彼はこの島をどうしたいのでしょう。全力で制圧、破壊行動を行ったと思ったら今度はその手前で足踏み。正直薄気味悪いです。」

 敵の考えなんか知ったこっちゃない。

 要は来るモン全部ぶちのめせば良いだけだ。

「しかしフミカさんの新型や補充要員も来ないままでは桜花島防衛に支障をきたすのも確かです。そちらのほうも急がせているのですが。」

「そんなの要らねぇ。俺が全部の敵を討てばそれでいい。」

 俺の声は自分でも不思議なほど冷たかった。

「コウジ。気持ちは解るけどさぁ、少し落ち着きなって。さすがのブレイガストも何だか様子がおかしいって整備班から伝達が来てるよ。もうちょいと優しく扱ってあげないとお前さんもブレイガストもどうにかなっちまう。」

 構うものかよ、そんなの。

「ついでに言わせて貰いたいんだが、バルサーガの調子も良くないんだ。なんだか反応が遅いと言うか。」

「レムリアの機体のことですと、我々は門外漢ですから。アチラに直接聞くしかありませんねぇ。」

 そうか、シャナも調子が悪いのか。

「丁度良いじゃないか。シャナも先生も、もう戦う必要は無いぜ。敵は全部俺が引き受ける。」

 そうさ。奈落獣もこれだけ撃退できた。

 ガーディアンが出てこようと問題ない。

 アイツが出てきたって、今度こそ・・・。

「ちょいと待ちな。コウジ、アンタちょっと調子に乗ってないか?」

 先生が眼を細め睨みつけてくる。

 だがちっとも怖くないね。

「ブレイガストの様子を見てくる。多分大丈夫だと思うけどさ。」

 俺はその場を後にした。

 

side-フミカ-

 

 コウジが退室した後、司令室は重苦しい空気に包まれる。

 原因は無論、コウジだ。

 アイツは別に調子に乗っている訳じゃない。それならそうと解りやすい男だ。

 アイツは今、自らを追い詰めている。

 自分がみんなを護るんだと。

 自分が敵を倒すのだと。

 マイケルが死んだのは、自分の所為なんだと。

 今のコウジに慰めの言葉は無意味だろう。完全に自分の殻に閉じこもっている。

 その殻を外から壊すのは、並大抵の事じゃない。

「近藤・・・。コウジは。」

「時間が解決、してくれそうもないね。」

 アタシとアイツじゃ性格も何もかもが違うから、どう声をかけたものか判らない。

 アタシの時は、ひたすらに泣いて泣いて、結局復讐者に成り下がっちまったからね。

 だれかアイツの心を溶かしてくれるような人間がいればいいんだけど。

 そうじゃなきゃコウジはこのまま壊れてしまう。

 早く何とかしないと。

「司令。私もバルサーガの様子を見てくる。」

「はい。それでは今回の会議はこれでお開きにしましょう。」

 その一言でシャナが退室し、司令室にはアタシと司令のみが残される。

「なぁ司令。アタシのアクセルギアはいつ直るんだい?」

「従来の機能をアップさせている途中ですし、新兵器の搭載もありますから、あと数週間は掛かるかと・・・。」

 それまで何も出来ないってのか。

 まったく、歯痒いね・・・。

 

第2幕

 

side-シャナ-

 

 ドックで私は、バルサーガの調整をしていた。

 駄目だ、どうしても私自身の感覚に機体が着いてきてくれない。

 どうしてしまったんだ、バルサーガ・・・。

 あの戦闘での傷は既に直っているのに。

 私を、見放してしまったのか?

 私が弱いから・・・。

 機体から降りると、そこにはコウジが居た。

「バルサーガの調子はどうだ?」

「良くは無い。次の戦闘で、まともに動いてくれるかどうか。」

 つい弱音を吐いてしまう。そして後悔する。

 今この男の心は傷付いたままだ。

 そんな相手に弱さを見せるとは、騎士としてあるまじき失態。

「大丈夫だ、シャナ。」

 そっと肩に手を置かれる。

「無理に戦いに出る必要は無い。俺が護ってやる。」

 普段の彼に言われたら、思わず舞い上がってしまうであろう言葉。

 だが、その言葉を私は素直に受け入れられない。

 彼の瞳を視る。

 そこには今までの、強く、純粋で、美しい輝きは無い。

 どこか淀んでいる。そして、その淀みに私は覚えがあった。

「今のお前から、そんな事を言われたくない・・・。」

「え?」

 我がレムリアにおいてアビスに汚染されてしまった者達、オーク。

 邪悪の僕となり、破壊と略奪、殺戮を繰り返すヒトだったモノ。

 今のコウジの瞳は、奴らに近いものになっている。

 闇に呑まれかけた、哀しい瞳。

「・・・そっか。まだ俺の力じゃ頼りないか。」

「違うんだコウジ!そうじゃない!お前は十分に強い!」

 弱いのは私だ。

 碌に戦えず、守ってもらうばかりで。

 こうしている時も、お前の心に届く言葉が見つからなくて。

「なぁに!見てろよ。もっともっと強くなって、お前も、先生も、この基地も、桜花島も。全部護ってみせるさ。」

 ニッカリとコウジは笑う。

 違う。私が見たいのは、こんな上辺だけの笑顔じゃない。

 なにかあるたびにコロコロと表情が変わり、最後に見せる太陽のような笑み。

 強さだけじゃない。私が惹かれた、心からの笑顔が、見たい。

「ブレイガストの調子は良いみたいだ。これで次も出られる。俺に任せてくれよ。」

「・・・そうか。すまないな、お前に頼りっぱなしで。」

「いいってことよ。ただ気になるんだけど。」

 私達はブレイガストを見る。

 燃えるような真紅の機体が、少し黒ずんでいるような気がする。

 奈落獣の返り血は完全に落としたはずだ。

「新しく塗装してもすぐにあの色になっちまうんだ。まぁ機能に問題は無いけど。」

 ガーディアンの姿が変わる。

 それは二通りの意味を持つ。

 一つは戦いを通じ、機体がより強化されていくという事。

 もう一つは、レムリアの神霊機に稀に見られる現象、《アビスハイパー》。

 奈落の力に汚染され、精神が荒んだ者に起こるモノ。機体の強大化と引き換えに、乗り手の命を吸い尽くす、悪魔の法。

 今のブレイガストは、後者に近かった。

「コウジ。むしろお前が戦いに出ることを、私は反対する。なんだか嫌な雰囲気だ。」

 私の不安は、彼には届かない。

「色が変わったぐらいでそんなこと言うなよ。むしろパワーアップっぽい?」

 頼む。頼むからコウジ。

「・・・私には、弱音を吐いてくれ。」

「・・・何のことだか。俺は行くぜ。今のうちにシュミレーションしとかないと。」

 コウジは私に手を振りドッグを出て行く。

「なんて、情けないんだ。私は。」

 友に、想い人に掛ける言葉が無い。

 許してくれ、コウジ。私では、お前を包んでやれない。

 許してくれ、ダートン。お前の遺志を、私は果たせないかもしれない。

 バルサーガの脚を殴りつける。

 痛い。拳よりも、心が。

 涙が溢れて止まらない。あぁ、こんな情けない騎士が、他にいるだろうか。

 

(聴こえていますか?シャナ・アティアイナ。)

 陛下の念話!?不味い!念話といえど、涙で濡れた顔を晒すわけには。

「は、はい!申し訳ございません女王陛下!如何な御用でありましょうか。」

 できるだけ平静を保っておく。

(なにやら魔力に乱れを感じますが、息災ですか?)

 やはり鋭い。これは全て話してしまったほうがいいか?

 ・・・いや止めよう。個人的な話だ。陛下の御心を煩わせるわけにはいかない。

 それよりも、聴いておかなければならないことがある。

「陛下、バルサーガの調子が悪いのですが、原因が解りません。」

(ふむ・・・。)

 陛下はしばらく思案する。

(それはどのような不調ですか?)

「はい。なんと言いますか、私の思考や操縦に反応が遅れてしまうのです。今はまだ致命的ではありませんが、いずれは。」

 私の不安を述べる。

 陛下は神霊機においてもかなりの知識をお持ちだ。何かアドバイスを下さるかも。

(それは単純にバルサーガの性能を、貴女が超えてしまっただけです。)

「はい?」

(つまり、貴女の操縦技術が上がったのです。レベルアップしたのです。)

 は、はぁ。

 何だか軽く言われたような。

(バルサーガは未だ貴女と同調しきれていない。ちぐはぐの状態です。貴女の技量が、精神を上回ってしまった。貴女の魔力で動くバルサーガは、貴女の精神に左右されます。いわば、バランスがうまく取れていない状態なのです。)

 私の精神、心の問題か。

 確かに近頃精神修行を怠っていた気がする。

 そこへ来てダートンの死、コウジの暴走。

 心当たりがありすぎる。

「では陛下、精神を研ぎ澄ませれば、以前のように動けるという事ですか?」

(いえ、以前よりも良い動きが出来るようになるでしょう。)

 なんと。

(貴女にはとある物を送ります。それを使いこなせるかどうかは貴女次第。健闘を祈ります、我が臣、シャナ・アティアイナ。)

 そして念話は途切れた。

 ある物?バルサーガ用の兵装だろうか?

 だがそれ以上に、私に必要な物が解った。精神修行だ。

 しかし生半可なモノでは意味が無い。バルサーガの本当の力を解き放つには今まで以上の修行が必要だ。

 今の私に、やれるだろうか?

 

 

第3幕

 

side-フミカ-

 

 今日も懲りずに奈落獣は動き出す。

 しかもまた南東からだ。なんだい、敵さんの本拠地はそっちに有るのかい?

 だが調子に乗ってられるのもこれまでさ。

 ミウコ司令が緊急で用意してくれたディザスター・ミーレス《M3G1 グランヴラッシュ》。所謂多脚型戦車ってやつだ。

 これでしばらくはやれる。

 司令は『壊すな』って言ってたけど、多少の傷は勘弁願いたいね。こちとらキャタピラに慣れてんだ。

「先生!慣れてない機体なら下がってていいぜ!」

「阿呆!そっちこそ、機体色がますます黒くなってないかい?」

 懸念事項はこれ。ブレイガストの色。

 この機体は以前から『進化』を続けてきた。

 今回のカラーチェンジがその兆候なら、見逃すわけにはいかない。

 コウジの精神状態を考えると、あまりよくない。

「各機!作戦はいつも通りツートップ!アタシは今回は援護に徹する!」

「了解!」

「・・・。」

 ん?

「コウジ、返事はどうし「ウオーーーーーー!!」な!?」

 あの馬鹿!?単独で飛んでいきやがった!

「シャナ、コウジを頼む!ミーレスなもんでいい砲撃武装が無いんだ!」

「解った!」

 だぁもう世話の焼ける坊やだこって!

 

 ブレイガストは確実に奈落獣を葬っている。それも過激なやり方で。

 頭部やコアを徹底的に狙い、グチャグチャになっても攻撃を止めない。敵の原形が無くなるまで。

 そのおかげで何度も隙が出来、アタシやシャナに援護される場面も多くなってきた。

 あのお馬鹿、頭に血が上って周りが見えなくなってやがる。

「シャナ、敵影5匹補足!3匹は任せた!」

「応!」

 それにしても雑魚ばかりだが、いかんせん数が多い。

 ちと疲れてきた。弾薬も残り少ない。

 そろそろ打ち止めになってくれないと、ん?敵影1・・・あれは、そんな!?

 

side-シャナ-

 

「はぁ!」

 裂帛の気合と共に剣を振るう。

 それだけで奈落獣は真っ二つになり消滅した。

(まだ動きが重い。)

 問題は私の精神にあると陛下は仰った。

 私が落ち着けば、バルサーガは今まで通り戦える。いや、それ以上にも。

 待っていろ、我が鎧にして剣にして相棒。すぐに100%にしてやる。

 その間にも寄ってくる奈落獣を斬り落とす。

 コウジは、くそ!また無茶を!

 サンダーボンバーまで使い切り、敵に囲まれるブレイガスト。

「コウジ!待っていろ、すぐに行く!」

「いらねえよ!」

 そういうとブレイガストは奈落獣の頭を掴み、振り回すという荒業にでた。

 その奈落獣がボロボロになると次の奈落獣へ。またボロボロになったら次へを繰り返す。

 正直、惨劇と言える状況だった。敵を振り回し、頭を握り潰し、皮を剥ぐ。

 まるで悪魔のような所業。

 ブレイガストの顔、今まで戦いの中で表情を変えていたが。

 今は、嗤っているように見えた。

「ぐぅっ!?」

 機体に衝撃が走る。敵に遠距離から攻撃されたのだ。

 全力で敵に追い縋ろうと飛行する。その間、何発か被弾してしまった。

 動きが鈍いタイプなのだろう、接近すると、敵は碌に逃げることも出来ず斬滅された。

 遠距離用の戦闘方法が欲しい。これも今後の課題か。

 奈落獣はほぼ壊滅できた。

 ブレイガストの姿は、嘗て見た勇者の姿ではなく、魔王のそれのように見える。

 コウジ・・・、駄目なのか?私では、隣で戦えないのか?

 む?接近する敵影1・・・そんな馬鹿な!?

 

side-コウジ-

 

「でぇりゃあ!」

 奈落獣の頭を殴り飛ばす。

 数ばかり揃えてきやがって、鬱陶しい。

 でも、やらなくちゃならない。

 今の俺には、護らなくちゃいけない理由がある。

「手前らなんぞにやられてる場合じゃないんだよ!」

 強くなってる。確実に強くなってる。

 俺は、あの時の俺じゃない!ブレイガストも同じだ!

 強くなってる。その証拠に、今回の戦闘ではかすり傷も負っていない。

 往けるな、ブレイガスト!

 順調に敵の数を減らしていく。

 全滅は目の前だ。

 あ?レーダーに反応、数は・・・1?

 舐めてんじゃねぇぞ。たった1匹で俺の相手がつとまるわけ・・・。

「なん・・・、だと?」

 スクリーンに映った敵の姿を見て、俺の中の何かが切れた。

 アイツを、あの姿を、忘れるはずがない!

 アレは、ラグシオン!!

「!?ガアァーーーーーーー!!」

 体が勝手に動き、奴に向って突撃する。

 あの野郎!あの野郎!よくものこのこ俺の前に現れやがったな!

 今度は逃がさねぇ!ギッタギタにして海の藻屑にしてやる!

「落ち着けコウジ!何だか様子が変だ!」

 煩い!今こうしてマイケルの仇がいるんだ!

 何が何でも、ブチ殺す!!

「オラァ!!」

 ラグシオンの顔面に一撃。それを機に攻撃を開始する。

「ダララララララララララララララララァ!!!!」

 叩き込む拳の雨。こんなもんじゃない。こんなもんじゃ、済ませない!

「痛いか!?痛いか!?痛いか!?お前でも痛いのかぁ!!」

 ラグシオンはまるで反撃してこない。

 それどころか、俺の攻撃を防御しようともしない。

「どうした!?何もしないのか!?何も出来ないのか!?」

 それでもいい!ここで奴を沈めてやる!

 俺はボロボロになった奴の腕を掴み振り回す。

 その勢いを殺さないまま、海上施設の甲板に叩きつけた。

 無様に倒れるラグシオン。だがまだ起き上がらせねぇ!

 叩く!殴る!蹴る!引き裂く!

 叩く!殴る!蹴る!引き裂く!

 叩く!殴る!蹴る!引き裂く!

 ただただ我武者羅に攻撃を仕掛ける。

 奴の血のようなオイルがブレイガストを黒く染め上げる。俺の心の憎悪と同じように。

「止めなコウジ!」

 ディザスターの大きな手がブレイガストの肩を掴む。

「離せ!止めるな!もう少しでコイツを始末できる!」

「そいつをよく見てみろ!そいつは違うんだ!」

 先生に言われ胸の辺りを見る。

 そこには誰も乗っていない。つまりコイツは。

「無人機・・・?」

「ああ。しかもかなりの劣化版の様だねぇ。形はそっくりでも中身は見た目通り空っぽさ。」

 じゃあ、俺は偽者相手にムキになって・・・。

「奴ら、いったい何がしたいんだ。」

「さあね。ちょっと見てみたが自爆装置の一つも無い。」

「おちょくってるんだ・・・。」

 あの男の嗤い声が頭に響く。

 俺達が慌てて、恐れて、怒る様子を見て愉しんでるんだ・・・。

「おぉぉーーーーーーーーーーーー!!!」

 俺とブレイガストの咆哮が重なる。

 ポツリと、何かがあたる。

 空は暗雲に包まれ、急に雨が降ってきた。

 奈落獣は既にいない。

 それでも俺は叫び続ける。

 ブレイガストに付いた返り血(オイル)は、流れることは無かった。

 

第4幕

 

side-コウジ-

 

 昨日の出来事が頭にこびり付いて離れない。

 完全に馬鹿にされている。

 クソッ!顔が分かってれば紙にでも描いてサンドバックにしてやるのに!

 折角休日を貰えたのに、イライラが収まらない。

 やっぱり基地でシュミレーションでもやってくるか・・・。

「コウジ~。マコトちゃん来たわよ~。」

 母ちゃんの声が聞こえる。

 マコトか・・・。マコト!?

 そういや今日はマコトの無事を確認してなかった。

 あいつは誘拐された事もある。普段でも油断できない。

「さぁさぁ、上がって上がって。」

「はい。お邪魔します。」

 って何勝手に上げてんだよ母ちゃん!?

「お早う。なにぐうたらしてるんだよ。」

「別に、そんなわけじゃねぇ。」

 ・・・。

「その、今日は大丈夫か?」

 恐る恐る聞いてみる。

「・・・コウジ。最近ボクに対して過保護じゃない?別に病気になってるわけでもないんだし。」

 そうなんだけどよ・・・。

 俺にとって、お前の無事は何よりも大事な約束なんだ。

 ホントなら四六時中見張ってたいくらいに。

「ちゃんと会話してないよね?」

「何が?」

「・・・マイケルが、居なくなってから。」

 俺の心臓に杭でも打ち込まれたような衝撃が走る。

 そう。マコトを護るとか言いながら、事実マコトを避けていた。

 腫れ物に触るように。傷一つ付けないように。

 何より、今の俺の姿を、あまり見てもらいたくなくて。

「・・・ねぇ。最近無茶ばっかりしてるんだって?」

「・・・してねぇよ。」

「嘘だ。シャナから聞いてる。」

 アイツめ、余計なことを。

「別に無茶してるわけじゃない。俺に出来ることをやってるだけだ。」

「・・・。」

 ・・・沈黙が痛い。

 思えば、こんな沈黙が走るとマイケルがさりげなく間に入ってくれていた。

 でも、マイケルはもういない。

「あのさ、お父さんが用事があるんだって。」

「なんだよ、突然。」

「いいから。来て。」

 マコトは俺の腕を引っ張って立たせようとする。

 痛い痛い、分かった。着いていけばいいんだろ?

 

 マコトに連れられ、こいつの家の道場にやってきた。

 そこにはマコトの親父さんが道着を着て仁王立ちしている。

 正直むっちゃ怖い。

 一体この人に何度殴られたことか。何度投げられたことか。

 何かある度俺を怒るのは、父ちゃんじゃなくこの人だった。

 のほほんとした母ちゃんと同じくらいのんびりした父ちゃんでは俺を叱りきれない。

 よって、両親と仲が良い親父さんが俺を叱る。

 お陰で幼少期から少々トラウマとなっている人物である。

「来たか、小僧。」

「いい加減小僧呼ばわりは止めてくれよ、親父さん。」

「はん!お前なんぞ小僧で十分だ。」

 相変わらず豪気で横柄なお方で。

「何の用だよ。俺これでも忙しいんだ、下らないことなら今度にしてくれ。」

「お前、あのマイケルとか言う小僧が亡くなってから変わったな。」

 その名前に、ピクリと反応する。

「・・・あんたには関係ないだろ。」

 心が冷たく、頭が熱くなっていくのを感じる。

 自分でもやばいと思う。だが止められない。

「関係ある。娘の友達だったんだからな。」

 それだけじゃないか。あんた自身は何も関係ないじゃないか。

 喉元まで言葉が出掛かる。

「あの小僧は最期まで戦った。この島の為に。お前達の為に。俺を含めて全部を護って、死んでいった。」

 やめろよ。

「俺にだって出来るかどうか分からねぇ。前時代的な言葉だが、立派だった。」

 やめてくれ。何のつもりだよ。

「だが後を託したのがこんな腑抜けじゃなぁ。アイツも草葉の陰で泣いてらぁ。」

 あぁ駄目だ。俺はこんなに沸点が低かっただろうか。

 今ので、切れた。

 俺は親父さんに掴みかかっていた。

「あんたに何が解る!?アイツは、マイケルは、死にたくて死んだんじゃないんだぞ!?」

「当たり前だ。死にたがりが本物の軍人なんかになれるか。」

 だったらなんでそんなことが言える!?

「俺はアイツに約束したんだ!護るって!大事なもの全部護るって!」

「腑抜けて前も後ろも右も左も視えてねぇ餓鬼がか?」

 だって、だって。

「・・・あの時、俺が動けていれば結果は変わっていたかもしれない。アイツは死なずに済んだかもしれない。そう思うと、何かに押しつぶされそうになるんだ・・・。」

「・・・。」

 アイツがなぶり殺しにされているのを、見ていることしかできなかった。

 俺は、護るなんて息巻いているけど、本当は。

「怖いんだ。目の前で大切な何かが壊れるのが。何かを失うのが。」

「・・・。」

 知らずに涙が溢れてくる。最近の俺は随分泣き虫になった。

 でも、一度失ったからこそ、二度と失いたくない。それは間違っていないはずだ。

「寝る時、毎晩あの時の事を思い出す。そしてその度に思うんだ。全部無駄なんじゃないかって。」

 親父さんは何も言わない。ただ黙って俺の言葉を聞いている。

「それでも、俺は戦わなくちゃいけない。アイツの遺志を、守らなくちゃいけない。たとえ、この身がどうなろうと。」

 視界の端でマコトの哀しそうな顔が見える。

 本音を吐き出したことなんて、今まで無かった。

 でも本気だ。

 俺だって、命を投げ出して何かを護ろうとする思いくらい。

「コウジ・・・。」

 親父さんがゆっくりと口を開く。

「手前・・・、それでも男かぁーーーー!!」

「!!」

 急に突き出された正拳が俺の鳩尾を捉える。

 野獣と戦ったと言われる親父さんの拳をまともに食らい、俺は道場の端まで吹っ飛ぶ。

 肺の中の酸素が全て吐き出され、体中に激痛が走る。

「お父さん!?」

「お前は黙ってろ!」

 親父さんはマコトに一喝すると、倒れこむ俺に近寄り無理やり立たせる。

「今の手前自身を鏡に映して客観視してみろ!」

 俺を道場の中心に無理やり放り投げる。

 正拳の痛みが残っていた俺は受身も取れず床に叩きつけられる。

 再び襲う激痛。身体を丸め悶える俺に、親父さんはゆっくりと近づいてくる。

「情けなくないのか!?情けなくて情けなさ過ぎて、怒りが沸いてこないか!?」

「ッ!」

「聞いたぜ。手前、『手の中のモノ全部』護るって言ったそうだな。そのくせ今度は自分がどうなろうと構わねぇってか。」

 俺、は・・・。

「『俺の心は真っ赤に燃えてる』。手前が餓鬼の時分の話だが、立派な男になるとふんでたんだぜ、俺ぁ。」

 ホント、昔の話だよ、そんなの。 

 自分でも忘れちまった。

「手前の心はそんなモンか?手前の拳はそんなモンか!?立ち上がってみせろ、東屋コウジ!!」

 うるせぇよ・・・。痛くて立てねんだよ。

 それでも、俺の体が勝手に立とうとする。

 拳を構える。そして。

 ペシン。

 なんとも情けない音で、親父さんの顔を殴った。

「解ってる・・・。解ってるんだよ・・・!」

 だけど、それでも!

 俺はそのまま道場を飛び出した。

「コウジ!」

「追うな!」

 後ろから声が聞こえる。

 振り返らずに俺は走った。

 解ってるさ。今の俺の姿が間違ってるって。

 でも、消えないんだ。あの時の後悔も。あの野郎への憎しみも。

 だから、間違っていると解っていても、俺は戦うんだ。戦わなくちゃいけないんだ。

 この身も心も、全部使って。

 ただ、一つだけ。一つだけ我侭を言わせてくれるとしたら。

「だれか、俺を助けてくれよ・・・。」

 

side-マコト-

 

「お父さん!言い過ぎだよ!今のコウジの状態解ってるでしょ!?」

 ボクはお父さんに怒鳴りつける。

 この人は本当に加減を知らない。

 コウジ、思いつめなくちゃいいけど。

「はん。あの小僧がこれぐらいで潰れるタマかよ。こんぐらい喝入れとかねぇとな。」

 ほんとにもう。

 でも、道場を飛び出した時のコウジの顔。泣きそうだった。

 大丈夫かなぁ・・・。

「頼もうーーー!」

 入り口から女性の声がする。この声は。

「シャナ!どうしたんだよ突然。」

「カラテ道場に用事なんだ。一つしかないだろう。」

 え?まさか。

 シャナはお父さんの近くまで歩き、突飛な行動に出た。

「頼む!ほんの少しの間でもいい!私を鍛えてくれ!」

 土下座。誇り高きレムリアの騎士が。

「顔を上げな。男だろうが女だろうが、簡単にその姿を晒すんじゃねぇ。」

「簡単なんかじゃない!私の、騎士としての明日が掛かっているんだ!」

 どういうことだろう?

 

 話を要約すると、シャナのガーディアンを強化するには彼女自身の精神力が高くならないといけないらしい。

 シャナも強くなろうと必死なんだ。

「お前さんとは何度か顔を合わせてるが、いい胆力持ってるじゃねぇか。それでも駄目なのかい。」

「ああ。今度送られてくるパーツは特に私の精神力を持っていくらしい。それを使いこなすためにも修行が必要だ。」

 お父さんは難しい顔で天井を仰ぎ、頭を掻く。

「そのパーツとやらはいつごろ来るんだ?」

「3日後に。」

 いや3日て。

 それだけで強い精神を培えたら全国の武道家が泣くよ。

「よし。3日だな。ならやるだけやってみるか。」

 お父さん、軽いよ!?

「有り難い!・・・これでコウジと共に戦える。彼を護る強さを得られる。」

 シャナ・・・。

「かぁ~、あの小僧。ホント一人で戦ってる気でいやがるとは。ホントに情けねぇ。」

 シャナはコウジの隣で、コウジを護ろうとしている。

 正直に言えば羨ましい。

 ボクはいつも護られる側だから。

 ボクにも力が欲しい。みんなを、コウジを護る力が。

(目覚めの時は、すぐそこに。)

 え!?

 今確かに声が。

 お父さん達は何か話している。

 ボクだけに聞こえたのかな?

 でも、目覚めの時って、いったい・・・。

「マコト!道着はお前のがあったろ。貸してやれ。」

「あ、うん。」

 考えても仕方ない。

 ボクには、なんの力も無いのだから・・・。

 

「マコト、胸の辺りがきつい。」

「あ~、やっぱそこかぁ。」

「二人とも、そこに直れ。」

 

第5幕

 

side-ミウコ-

 

「先日の偽ラグシオン、ただのコピー機体ではなく奈落獣によって形成されたようですね。」

 奈落獣にそんな事例は聞いたことが無い。おそらく新種だろう。

 しかし今回の新種といい、ギルガーンやアビスボマーといった強力な奈落獣、はては力の弱い種類まで、敵の戦力は一体どれほどなんでしょう。

 さらにそれだけの数を生産、操作するとなるとかなり骨がいるはず。

 この近海には奈落に汚染された地域は無いので自然発生したとは考えられない。

 ならば彼らの本拠地が観測されていない汚染地区?いえ、それでは彼らが奈落獣の被害を受けてしまう。

 もしや自分たちで産み出している?彼らにそこまでの技術力と設備があると?

 ですが最近の奈落獣の発生数からするとそれしか考えられません。

 ディスティニーにとって、この島はそこまでして手に入れなければならない島なのでしょうか。

 本来なら取るに足らないイズモの小島。放って置いてもいい場所のはず。

 この島の地下に大量のALTIMAが眠っていることが知れたのはごく最近のはず。

 敵はそのことを最初から知っていた?ならば何故戦力が整う前に私達を叩かなかった。彼らに今の戦力が有れば造作もないこと。

 そもそもあの指揮官機、ラグシオンという降魔爆装がいたのなら、勝負にならなかったはず。

 それを、わざわざ戦力が整うまで待って・・・。

 

 戦力が整う?

 そういえば、敵の激しい攻撃が始まったのはブレイガストが現れてから。

 コウジさんとブレイガストが戦線に現れてから、奈落獣やガーディアンの攻撃は本格化した。

 戦いの都度、彼らは心身共に強くなっていった。浜辺で暴れていたのが見違えるほどに。

 ブレイガストは戦いの度何かに目覚めていった。武装で然り、機能然り。

 それにコウジさん自身にも顕れている。

 私はマイケルさんの残したレポートに目を通した。

 東屋コウジ。スターゲイザーの可能性有り。

 ALTIMAやAL粒子を常人より感じ取れる存在、そしてまだまだ謎多きスターゲイザー。

 今までの戦いが、全て彼らを覚醒させるためにあったとしたら。

 

 それにコウジさんが出会ったという謎の少女。

 彼女に導かれ、コウジさんはブレイガストと出会った。

 彼女の正体、一つだけ心当たりが有る。

『アバター』。ALTIMAが人間とコンタクトする際、それに非常に良く似た形態を取るという、所謂都市伝説。

 確証もなく報告例も無いことだが、その存在は今の私の思考をざわつかせる。

 

「ふぅ。」

 溜息一つ。少し思考の海に入りすぎたか。

「お疲れのようですな司令。」

 紅茶を持ち現れる副司令。今足音しませんでしたよね?

「疲れている時には甘い物が一番ですぞ。ささ、鳳市土産のカステラなんていかがですかな?」

 そう言って箱から取り出したのは見事黄金に輝くカステラって。

「鳳市まで行ってきたんですか!?無許可で!?」

「いやぁ、はっはっはっはっ。補充要員のことで少々。これがその結果です。」

 笑って誤魔化しながら書類の束を渡してくる。

 本当にこの人は神出鬼没なんですから・・・。

 ええっと、新しく配属されるリンケージは、っと・・・、はい?

「マジですか?」

「大マジです。」

 副司令はにっこりと微笑む。いやいやいや。

「よくこんな人たち寄越してくれましたね!?一人は教導隊員じゃないですか!?」

 あまりに衝撃的な人事に思わず声が出る。

 出来るだけの戦力強化を、と頼んだはずだが、これでは。

「逆に戦力過多だって他の支部から叩かれますよ・・・。」

「いやなに。これも司令の人徳と言うものですな。あっはっはっは。」

 笑い事じゃありません!

 ただでさえブレイガストの出現時にも上から色々言われたのに。

 はぁ。私まだ9歳なんですよ?まだ蕾なんですよ?

 水をください。だれか優しく水をください。

 ウサちゃんを抱いて寝室へ行く。

「今日は疲れました・・・。先に休ませていただきます。」

「お休みなさいませ伊達司令。」

 そうして私は床についた。

 しかし彼は一体どうやってあの二人を引っ張ってきたのだろう。

 教導隊の大ベテランとその教え子にしてエース。

 普通簡単に手放すだろうか。それも激戦区の鳳市が。

 交渉なのか人脈なのか。全く彼は謎が多すぎます。

 それにしても頭を使いすぎたようだ。

 眠気はすぐにやってきた。

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