擬似聖杯戦争   作:三代目盲打ちテイク

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二日目 教会

「まずは急な訪問に謝罪を。そしてこちらには戦闘の意思はないことを理解してもらいたい。君にはただ、問いたいことがあって来たんだ」

 

 白騎士はそう言って話を切りだした。

 

「ハン、戦闘する気はない?……その言葉を信じろと?そう言って裏からグサっといく可能性があるか警戒すんだろうが。

 俺はお前のような輩をたくさん時計塔で見てんだよ。ひがつちや盲打ちはしらねぇが、俺はお前のことを信じちゃいねぇ。ひがつちが話に応じるなら俺はお前らの話し合いに文句は言わない。けど、ひがつちを害したら俺はありとあらゆる力を使ってお前に地獄を見せてやる。

 いいな、ひがつちに手を出したら潰すぞ」

 

 白騎士の言葉に幽鹿はそう返す。先ほどまでの緩んだ雰囲気はどこにもない。そこ立っていたのは紛れもなく時計塔におけるロードの位を戴く者だった。

 だが、白騎士にはその激情がわからない。

 

「……? 悪いね、君の言っている事が私には理解できない。それに、今までと随分雰囲気が違うな君は。それによく代わる…いや変えるの間違いかな。多重人格でも無さそうだが…状況によって自身の人格を任意で変化させているのか。

 そして、それが君の素か。先程の虚偽の姿が霞んでくるようだ。それに地獄と来たか。ただ、私は人並みの感性を持ち合わせていなくてね。それを地獄と認識できるのか、悪鬼羅刹となる君を恐怖できるかどうか。私には到底理解できそうないんだよ。…が、礼は言わせてほしい。欠陥だらけのこの身を人と同列視をしてくれたことに」

 

 そういって頭を下げる。

 

「さて、それでひがつち立ち話もなんだから、君らさえ良ければ続きは私の屋敷でと思うんだが。無理というなら、盲打ちに頼んで何処か適当な場所に転移しても構わないが」

「移動するなら言えや、移動させちゃる」

 

 白騎士はひがつちとの話し合いを希望している。

 

「そういうことですから、これからいっぱいお話しましょう。あ、後出来れば何か食べたいですね。私、さっきまで剣道やっててお腹空いちゃったんで……。

 あははは……」

 

 ひがつちはそれに了承した。

 これから盲打ちと共に移動するのだろう。

 

 幽鹿は盲打ちへと詰め寄る。

 

「盲打ち、もしも何かあったら俺を即座にこの二人の場所に転移させてくれ。いいか?」

「……まあ、ええじゃろ。なにかあればお前を転移させちゃる。しかしのォ、警戒するだけ無駄じゃぞ。あんなはまったく面白みのない男じゃけぇのォ。男ならどっしりと構えとけ。それが男の器っちゅうもんよ。それにのォ、俺の裏ァ絶対にとれん。いつもいっちょるじゃろうが」

「悪いな、度量のない男で……確かにお前の裏は取れねぇかもしれないけど、俺の裏は取られるかもしれないだろうが……。ランサー一応準備しとけ」

「重々承知」

「若いのォ。そんなに心配か。なら、キャスター、お前ここに残れ。んで、俺の魔術とお前の書で空間つなげてそこに投影しちゃる」

「はいはい、ンじゃ、適当なキャンパスノートにさらさらっと」

 

 道具作成スキルを使っての魔導書作成。単純に盲打ちのいる場所を覗けるというだけの代物を作る。

 

「ふむ……なあ、ロード。できれば君にも同席して貰いたい。私が信用できないというのならここで片腕を斬り落とそう」

「――チッ、良いよ。ったく。わかった。なら俺も行こう。ただし、令呪でバーサーカーを縛ってもらうぞ」

「再び感謝を、誰かを本気で想える、守れる君が羨ましいよ。令呪の使用に否はない。それと私のバーサーカーは歴代のバーサーカーと異なって狂化こそしているが、理性は確かで他のサーヴァントたちと何ら変わりはない。

 むやみにやたらと襲うことはない。それは彼の正義に反する。君らも彼を見てくれれば納得がいく筈だ。が、契約は契約だ。今回、私たちはこの場にいる全ての者たちには絶対に危害を加えない」

 

 そして白騎士は右手を掲げる。

 

「令呪をもって命ずる。バーサーカー、君にこの場全ての者たちへ危害を加えることを禁ずる」

 

 令呪一画が赤く輝き消える。それを確認し白騎士はバーサーカーに霊体化を解除させる。

 現れたのは日本において知らないものはいないであろう人物だった。

 時は幕末、動乱の時代。京都を中心に活躍した治安維持部隊。

 剣客集団として名を轟かせた『誠』の旗に集いし者。男はゆっくりと口を開く。

 

「サーヴァント、バーサーカー。新撰組副長、土方 歳三 義豊 」

 

 『鬼の副長』として恐れられた男が今、姿を現した。

 

「なるほど新選組か。確認した。さて、盲打ちせっかく用意してくれたのは悪いが」

「まあ何かに使えるじゃろ」

 

 キャスターにノートを返して、盲打ち、白騎士とバーサーカー、紅 幽鹿とランサー、ひがつちとアーチャーは話し合いの場である教会へと移動する。

 図ったのか図らなかったのか、紅茶を飲んでいた監督役――クロエは突然現れた盲打ちたちのおかげで飲んでいた紅茶を取り落とし盛大に法衣を汚すことになった。

 

「まったく、来るなら先に言えとあれほど。お気に入りの法衣が滅茶苦茶だ」

「かははは、思い立ったら吉日反射神経で決めたことよ。事前に連絡なんぞできるわけないわい!」

「そうかそうか。死にたいか。しゃがめ、お前の頭握りつぶしてやろう。遠慮するな。お気に入りの法衣だが、もう汚れてしまったからには血で汚れるのも一緒だ」

 

 白髪に眼鏡をした法衣の女はこきこきと腕を鳴らしながら盲打ちへと詰め寄る。

 

「おうおう、なんぞ昔と変わらんのォ。でこうなったのは背とおっぱいだけか」

「よしそこになおれ。潰してやろう」

 

 クロエと盲打ちとは長い付き合い。

 主に神秘の秘匿とかそのあたりで、盲打ちの家系とは長い付き合いなのだ。

 というか、彼女の家系以外は盲打ち、絶対ヤダ! って言って逃げて彼女の家系しか監督役として来ないのだ。

 

 そんな感じに和やかではない場の空気。幽鹿は場の空気と和ませるために、何処からか取り出した猫耳をランサーと共に装着した。

 それをみた、クロエは殺気とも思えるほどに鋭い気を幽鹿へぶつける。

 

「おい、そこのロード。お前の噂は聞いているからその猫耳とかいうふざけた格好については何も言わん。だが、私の教会でサーヴァントの霊体化を解くな。殺したくなる。

 私は死んだくせしてこの世にのこの出てくる奴が心底嫌いだ。聖杯戦争中とこの話し合いの時だけは例外として見逃してやる。

 だが、霊体化していろ。それが条件だ。それ以外でこの教会でサーヴァントがうろつくのだけは我慢ならんからな。破るなら、殺す。いいな」

「おー、怖い怖い。殺したくなるなんて、何処ぞの殺人鬼のようなセリフを吐くなぁ。貴女の言う通りランサーは霊体化はさせますよ。ランサー」

「えぇ、了解しました。マスターお気をつけて」

 

 そう言って、ランサーはクロエに一礼をしてから霊体化しますね。

 

「いやぁ、貴女を不快にさせてしまって申し訳ない。けど……もう少し言葉に気をつけろよ、監督役。人の思考は様々だから貴女の言い分があるのは分かる。

 だが、相手は英雄だ。彼等がいたからこそ人類史は生きてるんだ。尊べよ。この……すまない、若輩者の分際で口が過ぎた。それとこの度は自分の信念を曲げてまでこの場を提供して戴き感謝する。……そこだけは、素直に尊敬する」

 

 クロエに深々と頭を下げますね。

 

「謝るなロード。お前は何も間違っちゃいないさ。言葉に気を使えなかったのは大人として情けない限りだ。それに関しては謝ろう。

 死んだくせにのこのここっちに出て来てるやるが嫌いなのは、私の至極個人的な感情だ。すまない。大人げなかった。

 英雄たちがいたから今の世がある。そんなこと先刻承知している。なにより英雄は好きだし、尊敬もしているし敬意だって払う。それが死者であるうちはな。

 お前の言い分も、よくわかるんだよ。だがな、どうしようもないんだ、この眼がある限りな。私はどうやっても死んだのに生きている連中が嫌いだ。こればかりはどうしようもない。すまないな、ロード」

 

 クロエは死んだのに、生きている、ものが嫌いだ。

 幽霊、英霊、死者蘇生された者、ゾンビ。

 生者は死ぬという理から外れたものが嫌いだ。

 

 彼女の言葉を聞いた瞬間、幽鹿は自分自身も彼女のタブーに触れていることに気がつく。

 

 ――この身は一度死んでいる。

 ――今の命は彼女が与えてくれた命だから。

 

 クロエの言葉に過剰に反応したのは、自分自身が言われているような気がしたからか、いや、関係ない。

 

 ――気にするな。気にしちゃ駄目だ。

 

 ――誰に何と言われても俺は生きる。彼女と誓った分まで生きる。

 

『御先祖様を責めないで。幽鹿自身を責めないで。これは私が決めたことだから幽鹿に生きて欲しいから私から進んで捧げたの。だからお願い、そんなに暗い表情で生きないで、私の分まで明るく楽しく生を謳歌して。私、幽鹿の笑顔好きだから……先に天上で待ってるから……楽しく生きて、そしてコッチに来た時にそのお話沢山聞かせてね……』

 

 思い出すのは彼女との最期の会話。

 

 ――この時彼女の魂に誓ったんだ、俺は彼女の分まで生きると……だから気にするな。

 

 ――さあ、顔を上げたらいつもの俺だ。

 

「いや、やはり此方の方に非がある。すまない。そして、この話し合いが終わるまでこの教会に俺がいることを許して欲しい」

 

 クロエは別に死を想えとか高尚な事を言うつもりはない。死を克服することも悪いとは言わない。嫌いなのはな、死んだ奴が、生き返ることだ。

 オルフェウスになって冥界を下り愛する者を救う。そんな奇跡も私は否定しない。だがな、淀むんだ。どうしようもなく。生が淀む。

 

 万物にはほころびがある。一度ほころんだものを結び直したところで、それはもう元通りにはならないのさ。どんなに精巧に元通りに見えたとしても。

 そして、淀む。それがクロエには見えてしまう。だから彼女は解けて、また結び直したっていう死んで生き返ったやつらが嫌いだ。それは結局、生きていた者への冒涜だ。

 

「……そう言うな。お前に関しては、特別に許可してやる。好きにいろ。ただし、あまり私の眼に触れてくれるな。こればかりはすまんとしか言いようがない。

 それと、決して私はお前に言ったわけじゃない。気にするな。生きるのだろう。そう決めたのなら、そう思えるのなら、お前は、まだ淀んじゃいないさ」

「感謝します。そして、貴女のことを本当に尊敬する」

 

 言われた通り、幽鹿はあまり視界に入らないようにしながら尊敬の眼差しで、クロエを見る。

 

 なんて高潔な人なのだろう。

 自らの禁忌(タブー)に触れている自分をそれでもここにいていいと言えるにはどれほどの経験を積む必要があるのか。

 

 少なくともまだ幽鹿にはできそうになかった。

 

 

 クロエと幽鹿の会話を聞いていてなんとも言えなくなるひがつち。

 当然だ、彼女は今まで光の当たる場所にいて、死者である両親の事故でさえ記憶があまりない。それでも、死者(サーヴァント)逹の当事者(マスター)であるが故に思う所があって。

 

「私には、あんまり難しいことは分かんないし、綻びがどうとかも分からないですけど、死者は蘇っちゃいけない強くは言えませんけど、それでも彼らの意志とか願いを蔑ろにしちゃいけないと思うんです。

 死んだ後でもやりたかった事があって、それがだれかのためになって、未来に繋がるんだったら今を生きたっていいんじゃないかと思うんです。

 あ、でもむやみやたらに生き返ればいいってことではないんです! だって命はそんなに軽いものじゃないんですから。

 ……ごめんなさい、私の言うこと分からないですよね。自分でもすごく矛盾してるのは分かってるんですけど」

 

 ひがつちは言葉にする。光の中に生きていた彼女は大まかなことしかわからない。だがそれでも言わなければと思った。

 

「やれやれ。ロードに尊敬されるとはね。

 ――良い、気にするなひがつち。お前の言いたいことはわかるし。私が言っていることが極論だということもわかっているつもりだ。

 でも、これが私の信条でね。英霊が抱く願いは崇高だろうし、尊いものもあるだろう。だが、それところとは話は別なのさ。

 ただ、そう言えるその思いは大事にしろ。この世界から抜け出すにしろ、このままはまり込むにしろどちらを選んだとしても、その思いだけはお前という存在をお前というままにしてくれる。

 間違っても、私のようにはなってくれるな。さあ、話し合いだ」

 

 クロエは全体を見渡せる位置に監督役は下がって、腕を組んで見守っている。

 

 それには無論幽鹿のことも含まれていた。彼は禁忌に触れている。しかし、マスターとして確定した時に調べたのでその生い立ちをクロエは知っていた。

 ゆえに、露骨に嫌うということはなく、気にかけている。

 

 視界に入るなと言いながら自分から視界に入れて見守る。

 

 どうか彼もまた幸せになってほしいと思うのだ。

 

「えっと、話し合いに来たのに前置きというか、違う話が入っちゃってごめんなさい。

それで、白騎士さんが私に聞きたい事ってなんですか?」

 




監督役クロエ登場。
魔眼持ち。

その場で作り上げたキャラながらイイキャラになった。
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