擬似聖杯戦争   作:三代目盲打ちテイク

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0日目 盲打ち襲撃

 神降ろしを終えたキャスターが一息吐く。

 

「ふぅ、これで一応戦闘技術は覚えたけれど」

「なら、行くぞ」

「は? 行くって?」

「街中でエーテルが渦巻いちょる。こりゃあ、どこもかしこも召喚してるっちゅうこっちゃ」

「だったら普通様子見だと思うんだけど」

「そんな手で勝てるんなら、聖杯戦争は一回目で終わっちょる。なぁに、心配には及ばん。この俺の裏ァ誰にもとれんからのォ! というわけで、こっちじゃ」

「ちょ、ちょっと!?」

 

 何がそういうわけなのかまったくわからないが、キャスターを連れて盲打ちは夜の街へと繰り出す。からんころんと下駄を鳴らして煙管を吹かす。

 霊体化してついてくるキャスターは、色々と文句を言っているが盲打ちは馬耳東風。

 

「ここじゃのォ」

 

 適当に歩いていた盲打ち。彼は特に何か考えていたわけではない。ただ、適当に歩いてそこにあった家に入る。すると、そこに二人の少女が現れる。

 一人は学生だろう。もう一人はサーヴァントだ。弓を持ったサーヴァント。アーチャーだろう。彼女の隣には二匹の猟犬が出現する。

 

 もう一匹はマスターにもう一匹はアーチャーと共にキャスターと対峙している。

 

「おお、こりゃいきなりサーヴァントと遭遇かいな。たいぎぃのォ」

 

 キャスターが姿を現す。

 

「自分から、良そうなところに飛び込んでおいてなにいってんだかこの盲打ちは」

「なぁに、何も問題などありゃせんわ。このオレの裏ァ誰にもとれんからのォ。さあ、行こうや」

 

 盲打ちを中心に魔力が吹き荒れる。結界が張り巡らされていく。

 

三国相伝(さんごくそうでん)陰陽輨轄簠簋内伝(いんようかんかつほきないでん)

 

 ――急段・顕象――

 

 軍法持用(ぐんほうじよう)()金烏玉兎釈迦ノ掌(きんうぎょくとしゃかまんだら)ァァ――!!」

 

 盲打ちの大魔術が、アーチャーとそのマスターひがつちを呑み込む。生じた世界はさながら碁盤、いや将棋盤の如し。

 そして、変化は如実に現れる。

 

「え、なに、これ」

 

 ひがつちに起きた変化は如実だ。自分の身体が自分の身体でないかのような感覚。有体に言えば弱くなったと言える。

 さらに言えば、感覚が制限されて周りが良く見えない。ただ横への感覚が酷く広がっているように思えた。だが、前の感覚が酷く狭い。

 

 アーチャーとしては致命的な感覚の変化ではあるが、アーチャーとて英霊だ。この程度で戦えないほどではない。だが、問題は、相手だ。

 

「くそ、なんなんだ。身体が少しだけ軽いが、これは、あの男の魔術か」

「なんぞ、そっちのマスターはあまり良くないもん引いたらしいのォ。他に悪そうなんは、アーチャーの隣の猟犬だけかいな。ああ、こりゃたいぎぃのォ。そいで、どうや。お前さん、何に当たった」

「身体が軽いわ。くくく、此れは良いわ。あなた、面白いもの使うじゃないの。奔王、あなたがもつ最強の駒よ」

「カハハこりゃァ、うけるわ。横行に猛牛に仲人。まあ、今のお前ならいけるじゃろ」

「ええ、行けるわ。これもまたマッポーめいた予言の一つ。古事記にもそう書いた。ああ、身体が軽い。今なら、なんでもできそうだわ。行くわよ、アーチャー」

「――――っ!!」

 

 そう言って突っ込むキャスター。もはやキャスターとは思えないほどの速度。まさしく大英雄とも言えるような力でその漆黒の刀を振るう。

 剣を振るうだけで、大気が引き裂け、大地が揺れる。全ステータスAオーバー。アーチャーは、キャスターがキャスターには見えない。

 

「この力、お前、セイバーか!」

「さあ、どうでしょうね」

 

 口を開きながらも、アーチャーはキャスターを迎撃する。横に感覚が広いのであれば横打ちする。弓兵として呼ばれた英霊だ。 

 どのような体勢であろうとも矢を射ることができる。

 

 放たれた矢は真っ直ぐにキャスターに飛翔する。その矢を刀で切り裂き、距離を詰める。猟犬が襲ってくるが、釈迦の掌と呼ばれる盲打ちの魔術にて弱体化した猟犬など今の超強化されたキャスターの相手ではない。

 蹴り飛ばし、切り裂こうとして放たれた矢を躱す。

 

 一進一退の攻防。ここまでして攻めきれないのはアーチャーが巧みであるからか、キャスターが本職ではないからだろうか。

 

「食らいなさい、この一撃を!」

「く、なんという力!」

 

 それでも徐々にアーチャーは押され始める。どうにも感覚が乱される上に、相手とのステータスの差が開きすぎている。そのため距離をとろうにも詰められる。

 近距離はアーチャーの射程ではない。矢を放っても斬り伏せられるか、躱される。

 

「え? え?」

 

 ともかく人間では到底捉えることの出来ない速度域での戦闘を目の当たりにしてひがつちは目を白黒させる。何が起きているのかわけがわからない。

 いきなり現れたアーチャーと名乗った少女が、いきなり現れた和服の女の子と戦っているし、この状況を作り出したであろう男は屋根の上に座って煙管吹かしている。

 

 わけがわからない。だが、とりあえず止めるべきだと思った。

 

「あ、あの!!」

 

 だから声を上げる。隣には猟犬がいる。少なくともなんとかなるかもと思いながら、盲打ちへと話しかける。

 

「だ、誰だか知りませんけど、戦いをやめてください! 私、何もわからなくて、えっと、なにが起きているのかも説明してください!」

 

 盲打ちはその言葉を聞いて、

 

「なんぞ、なんも知らんのか。まあええじゃろ。おう、キャスター、ノリノリのところ悪いが一時休戦じゃ」

「むぅ、せっかく楽しくなって来たのに。この我が牙を受けよー、とか、お前は既に死んでいるとか」

「それで黒歴史量産しとったら世話ないのォ」

「あ……」

「カハハ、そういうところがお前さんの可愛いところじゃ。で? そこのひよっことアーチャー、こちらは一時休戦じゃ。じゃけぇ、家にあげてもらっても構わんかのォ。立ち話もなんじゃしな」

「え、え、あ、は、はい!」

 

 まんまの家に侵入した盲打ち。

 

「余計なことをすれば撃ちぬく」

「おうおう、わかっちょる。行くぞ」

「はいはい」

 

 あの術は既に解けているが原理がわからない上に感覚も狂わされるという厄介さ加減だ。今度はやられる前に撃ちぬく必要があるだろう。

 だが、マスターが停戦と言った以上はアーチャーも従う。居間でテーブルを挟んで体面したひがつちに後ろに控える。

 

 尊大に、まるで家主のように座った盲打ちは横にキャスターをはべらせていた。

 

「えっと、聖杯戦争、でしたっけ」

「おうよ、魔術師七人の殺し合いじゃ」

 

 聖杯戦争。奇跡を欲するのなら、汝 自らの力を以って、最強を証明せよ。

 万能の願望器たる聖杯。その所有をめぐり一定のルールを設けて争いを繰り広げる争い、それが聖杯戦争である。

 

 勝者は聖杯を使って何でも願いを叶えられる事ができる。この争い全般を聖杯戦争と呼び、聖杯を求める戦いであるなら聖杯とされるものが出品されたオークションだって聖杯戦争と言える。

 この祇地島で行われる聖杯戦争は古来よりの聖杯戦争に習い殺し合いだ。七人のマスターと七騎のサーヴァントを用いたバトルロワイヤル。

 

 ルールは単純。

 聖杯によって選ばれたマスターとそのサーヴァントが生き残りを懸けて戦う。参加条件は聖杯に選ばれ令呪を宿し、サーヴァントを召喚すること。

 マスターは令呪を使うことで、サーヴァントに対して3回までどんな内容でも命令を強制できる。サーヴァントとして「英霊」が召喚され、その能力に応じてクラスが割り当てられる。

 

 クラスは「剣士」、「弓兵」、「槍兵」、「騎乗兵」、「魔術師」、「暗殺者」、「狂戦士」の7騎。

 

 その駒を使って戦ういわば将棋、いや、この場合は西洋将棋たるチェスと言うべきだろうか。

 

「えっ……と。あんまりよく分からなかったんですけど、よくある漫画みたいにサバイバルゲームに私が巻き込まれたってことですよね。

 それって確かに面白そうだなーとは思うんですけど、共闘とかってアリなんですかね? いきなりこんなこと言われても考えが纏まらないっていうか、それに盲打ちさん、ちゃんと話を聞いてくれていい人っぽいんであんまり戦いたくないんです」

 

 ひがつちの一言を聞いて盲打ちは笑う。こりゃ傑作の喜劇でも見たかのように。

 

「俺が良い人とはのォ。こりゃ傑作じゃわ。おうおう、どう思うキャスター」

「目が雲って――こほん。そうね、同盟。良いじゃない。あんたのあの博打魔術なんかに頼らなくても良いんだから。というか同盟しましょう。しないと負けそうだし」

「ええじゃろ。キャスターがそういうんなら同盟組もうや」

 

 そう言った瞬間――雷鳴と共に牛に引かれた戦車が突撃をかましてきた。戦車には偉丈夫と仔猫を抱いた男が乗っている。

 

「我が名は征服王イスカンダル。此度の聖杯戦争では、ライダーのクラスを得て現界した」

 

 あろうことかその上、この偉丈夫は、そう名乗りを上げたのだ――。

 

 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

「では、他の陣営の実力の把握をすることと、同盟をつくることが今後の方針でよろしいですか?」

「いいよーそれと、クラスを錯乱させる為に戦闘の方は基本的に、式神の馬に乗って弓を使って闘って、軽く戦闘したら馬を乗り捨て槍に切り替えて戦うって感じでどう?」

「ええ、良いかと思います」

「良し、じゃあ、基本的なことも決まったし。デートしよう!」

「は? あ、いえ、え?」

 

 何を言っているのだろうか、この紅幽鹿(マスター)は? 聖杯戦争が始まるというのに夜の街にデートなどと何を言うのだろう。

 

「遊びに行くんじゃないぞ、ぶらぶらして、突っかかってきた奴がいたら、そいつと話し合いをしてみたりするわけだ」

「なるほど」

「そういうわけで行こう」

「そういうことでしたら、お付き合いいたします」

 

 ランサー陣営は、こうして夜の街へと繰り出して行った。

 

 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

「マスター! 起きるのだマスター!! 寝ている場合ではないぞ!!」

 

 セイバーは眠ってしまったマスターをたたき起こす。

 

「なんだよぉ」

「…………」

 

 青筋をたてながらも紳士的にセイバーは、情報交換を切りだす。

 

「あー、わかったよ。じゃあ、拠点に移動してからな」

 

 道中も色々とセイバーは質問をしていたが、交換する気がないのか受けてばかりだった。特にセイバーに聞くこともないらしい。

 そして、拠点についたところで、直感的にクーマンは、結界を感知する。

 

「元気だなぁ」

 

 どこかの誰かが戦いを始めたのだろう。セイバーは気が付いていない。クーマンは特に言う気もなく、ベッドに入る。

 

「待つのだ。まだ、知りたいことが」

「じゃあ、これで調べたら」

 

 そう言ってセイバーに渡すのはスマホだ。

 

「おい、なんだこれは? おい、マスターって、もう眠ったのか?!」

 

 一晩中、セイバーはスマホ片手に悩み続けることになる。

 

 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

「戦いがあってるっぽいね、見える?」

 

 アサシンとともに有部理生は、凄まじいまでの魔力を感じて付近に一般人に紛れて戦いの様子をうかがっていた。

 

「ああ、凄まじいなあの少女」

 

 視覚を共有して見るのは刀を持った和装の少女がアーチャーらしき少女を圧倒しているところだ。ステータスはどれもこれもAランクを越えている。

 まさに大英雄といったところだ。剣技も巧み。セイバーかと思えるが、

 

「うーん、キャスターも剣持つし、あの人がマスターってことは、キャスターかな」

「キャスタ-、つまりは魔術師ですか。魔術師があのように戦えるものなのですか」

「あー、どーだろ、あのマスターの力かも」

 

 周囲に展開された結果。明らかに尋常ではない魔力が働いている。固有結界に近いほどだ。

 

「あ、戦闘が終わりましたよ。どうやら休戦のようですね。家に入って行きます」

「よかった」

 

 大事なくてほっと胸をなでおろす。一先ず、此れから先どうなるかわからないので、使い魔を放ち二組を監視する。

 

 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 日が沈むまで工房でバーサーカーと戦闘においての方針を決めて工房を出ると静かになった玄関を眺め、近づき開ける。

 そこには放置した女が血塗れで倒れていた。白騎士は「常識的」に考えて、玄関先に血塗れで倒れていたら駄目だと結論に至り、荷物をバーサーカーに彼女を自分が抱き、屋敷の彼女の部屋へと運ぶ。

 

 手当てをし服を着替えさせベッドへ寝かせた。その寝姿を少しだけ見てから部屋を出る。

 その時、膨大な魔力反応を感知した。その方角を眺める。

 

「………どうした」

「速いね……もしかしたら彼かな?」

「…………?」

「まあ、いずれ分かるよ」

「…………そうか」

「そう」

 

 バーサーカーが消えた。霊体化したのだと分かり、隣の自室へと入り、件の方角へと意識を飛ばし観測を始める。

 そこでは、御三家の一角である盲打ちが戦っているところだった。

 

「セイバー、いや、あの盲打ちがそんな最強の手をうつはずない」

 

 常に反射で動き、面白そうという理由だけで生きてきた男だ。盲打ちとはそういう男。それを考慮すると「最弱のサーヴァントで戦ったら面白い」と経緯を予想しセイバーである考えを否定する。

 そこに戦車に乗ったサーヴァントが突っ込んでいくをの観測した。

 




いきなりかます盲打ち。全部ダイス結果なんですよ。不正なんてないです。それで、なぜこうなる!
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