擬似聖杯戦争   作:三代目盲打ちテイク

4 / 12
0日目 同盟の夜

「話し合いの途中であろうが、失礼するぞ。我が名は征服王イスカンダル!! 此度の聖杯戦争では、ライダーのクラスを得て現界した」

「あ、俺は、紫蒼慧悟。猫好きね、よろしく」

 

 こいつら本当に聖杯戦争をやる気があるのだろうか。ひがつちは、キャスターと盲打ちに聞いた聖杯戦争の様子とあまりにも乖離したこのライダー陣営の在り方にまた混乱する。

 それと同時に、教科書に出ていた超有名な英雄の登場に心が躍った。

 

 そんな彼女の期待に応えてか、あるいは彼自身の気質か、彼は大仰な動作で、言葉を紡ぐ。尊大に、威厳と言う名の王気を放ち、我こそが征服王であると告げる。

 

「うぬらの戦い、見させてもらった。実に見事である。うぬらとは聖杯を求めて奪い合う間柄ではあるが、素直に賞賛すべき戦であった。

 特に、魔術師のサーヴァントよ。弓兵のサーヴァントに一歩も引かずに剣戟を合わせたその胆力と力、まっこと見事。弓兵もだ。察するに、そこなマスターの魔術によって感覚等を制限されて折ったのだろう。それでも退かず戦ったその技量、この征服王も感服したほどだ。

 そこでだ、うぬら我が軍門に下り、聖杯を余に譲る気はないか。さすれば余は貴様らを朋友として遇し、世界を征する快悦を共に分かち合う所存である」

 

 妄言と言うわけにはいかないだろう。このイスカンダルと名乗ったライダーは本気だ。

 

「ならば、私も名乗りましょう!」

 

 何やらキャスターは場の空気に当てられたらしい。

 

「我が名は稗田阿礼!! この国、最後の神秘を記した古事記を編纂した者なり!!」

 

 自称カッコイイポーズで名乗りを上げてから、自分が何をやったのか気が付いて赤くなってしゃがみこんだ。

 

「ああああ、私の馬鹿ー!!」

「ウハハハハハ。胸も尻も貧相じゃが、お前さん可愛いのォ。で、これはこれは、征服王イスカンダル。お初にお目にかかるのォ、俺は、この島をしきっちょる三代目盲打ちじゃ」

「うむ、名乗りに名乗りを返すとは良い気概よ。気に入った。で、どうだ? 我が軍門に下らんか。見果てぬ夢を共に見ようぞ稗田阿礼よ」

「……ぅ、ぅ、わ、私は、マスターに仕えるサーヴァント。女は男の夢に従う。それが私が古事記に記した大和撫子の在り様よ」

「だそうだが、キャスターのマスターよ」

「カハハ、おうおう。俺の夢ァの。そうじゃのォ、今はそこの女の夢が俺の夢かのォ」

 

 盲打ちは間髪入れずにそう答える。何か逡巡すら見せない。

 

「馬鹿の癖になにいってんだか。私の夢、ね。とりあえず、受肉して、古事記の再編集ね。それが終わったら、新しい歴史書を書く為にあなたについていくのも面白いかもしれないわね征服王さん。あなたといれば退屈な歴史を書かないで済みそうだわ」

「そういうことじゃ、いっちょ同盟と行こうや。征服王。俺らはお買い得じゃぞ。なにせ、この俺がおるんじゃ、神だろうと天魔だろうと、この俺の裏ァ、絶対取れんからのォ! 安心して、裏任せェ!!」

「ウハハハ! 神でも裏はとれんか。良い。実に良い。では、この征服王の朋友として共に見果てぬ夢の地平へと向かおうぞ!!」

 

 何やら話は進みライダーとキャスター陣営の同盟は成った。

 

「アーチャーはどうだ」

「私もマスターに従う」

「えっと、盲打ちさんが同盟するなら、私もかな」

「今日は良き日だ。新たな朋友を二人、いや四人も得ることが出来た。征服王の新たなる門出、その記念すべき日としては上々!」

 

 イスカンダルが戦車を降りる。

 

「では、新たなる朋友たちよ、共に夢を語り合おうぞ。酒がないのがちと寂しいが――」

「ああ、それなら任せりィ。酒なら、俺が用意しちゃろう」

 

 何事かの魔術を行使すると、盲打ちがその場から掻き消え、次の瞬間には酒樽を持って立っていた。

 

「え? え?」

「へぇ、空間移動か。これが最高峰の空間支配者の力ってわけだ。でもま、勝つのは俺だ」

「ウハハハ、こんなもん単純じゃわ。さあ、安酒じゃが量はある。どうじゃ、征服王、これが一先ずの同盟の対価よ」

「うむ、大義である。では、みな飲み明かそうではないか!」

 

 酒宴が始まる。

 

「さて、マスターよ。忘れておったが、お主が聖杯にかける願いとはなんだ」

 

 イスカンダルが紫蒼慧悟へと問う。

 

「俺は特に叶えたい願いはないな。在るとすれば生きて帰るぐらいだし」

「欲がないのォ。そらハーレムやらなんやらと男なら言ってみんかい!」

「キャスターのマスターは良いこというのう。アーチャーはどうだ?」

「ふむ。私は夢というわけではないだろうが、やはり強者との闘いであろうよ。

 ……あぁ、それに関しては別に気に病むことはないぞ、マスター。弱体化しようとこれはこれでやりようがある。生前でも劣勢からであったしな。

 時にライダー。部下になるという訳ではないが、肩を並べて共に世界を回ると言うのであれば私も吝かではないぞ? 現代には連携をとる戦闘集団がいると聞く。奴等と狩りの腕を競うというのも一興なのでな」

「えっと、私はね、叶えたいこととか無いなぁ。私も生きて帰ることぐらいかも。

 あ! それはそれとして後で皆さんサイン貰えません? ライダーさんもキャスターさんも有名人じゃないですか!? 授業で習いましたよ! 特にライダーさんなんてあのアレキサンダー大王なんですよね? スッゴくすごい人じゃないですか!」

 

 サーヴァントにサインをねだるマスター。

 それに豪快に笑ってサインに応じるイスカンダル。ひがつちちゃんという名前まで付け加えているあたり流石なのだろう。

 キャスター阿礼の方は、しぶしぶと言った感じでサインを書く。達筆すぎて何が書いてあるのかわからないが、ひがつちにとってはそれで良いようだった。

 

 そんな風に和気あいあいと酒宴を過ごしていると、盲打ちが何かに気が付いたかのように立ち上がる。彼の後ろに阿礼は何も言わずについて行く。

 彼が向かったのは、この家からほど近い場所だった。そこには男女がいる。

 

「なんぞ、そこにおるんはサーヴァントかいな。まったくたいぎぃのォ。こそこそと嗅ぎまわちょるんなら、アサシンってとこか。まあ、なんでもええわ。良し、そんなも来い。お前も俺のチームにいれちゃろう」

 

 そう言って彼は何か言おうとしている二人を連れて戻る。それを見た、紫蒼慧悟はマスターとサーヴァントだとアサシンだと察したのだろう。

 おそらくはアサシンということも察した。同盟を提案している盲打ちをよそに、ひがつちへと耳打ちする。

 

「アサシンのマスターはさっきまで覗き見してた覗き魔だけど本当に同盟しても大丈夫か?

 なんなら、ライダーに撥ね飛ばさせるよ?」

「誰が覗き魔ですって? へえ、使い魔こちらを観ていたなんて、そんな与太事を誰が信じると思っているのです? まるで子供の妄想のよう。余りしつこいようでしたら、名誉毀損で訴えますよ」

「そう、まあ、そういうなら良いけどね。勝つのは俺だから」

「うむ、暗殺者のサーヴァントか。こうして表の出て来るその気概は良いな。どうだ、こやつらには問うたが、お主も我が軍門に下らんか?」

「かの有名な征服王の軍門。確かに魅力的ではありますが、現状、私が使えるのかこの方なので」

「そうか、では気が変わったらぜひこちらに来てくれ」

 

 アサシンとイスカンダルの会話もそれなりに友好的なものであった。

 

 その間、有部理生はひがつちに勝ってきたアイスクリームなどを渡す。

 

「遅れてごめんなさい。大きな魔力の高まりを感じ、無辜の民が犠牲にならぬよう駆けつけるつもりがおそくなって。本当はもっと早く伺えれば良かったのですが、色々とアクシデント続きでしたので。まあ、ご無事なようで何よりです。家は残念でしたが、良ければ修復のお手伝いをしますが」

「いえ、盲打ちさんも話せばわかってくれる良い人でしたし。あの、ありがとうございます、こんなに貰っちゃって。

 あ、アサシンさんもどこかの有名人さんなんですよね! サイン貰ってもいいですか?」

「聖杯戦争が終わったら良いわよ」

「わかりました!」

 

 それから盲打ちへと向き直る。

 

「同盟は吝かではありませんが、先約が無いわけじゃないのです。あ、ここに来たのはそちらとは関係の無い私たち独自の判断ですよ。それで、その先約に連絡をとりたいのですが良いですか?」

「おうおう、いいでよ。先約があるんなら、どこぞなりへ連絡せェ。俺は構わん。どんな相手じゃろうと懐へ入れる器くらいならもっとるでかい男じゃけェのォ。うはははは――」

 

 盲打ちはそんなこと気にしない。どこへなりとも連絡すればいいという。有部理生は、

 

「ありがとうございます!」

「ああ、そうじゃ。それからのォ、言っておくわい。俺の女の名じゃ。同盟の手向けに教えておいてやるわ。こいつはのォ、稗田阿礼、古事記を編纂した女よ。相手にも伝えるとええじゃろ。そっちの方が面白そうじゃけェの!」

 

 少し離れて連絡符を取り出し、ランサー陣営に連絡をとる。

 

「盲打ちに同盟を申し込まれました。個人的には情報の譲与の点でも、そちらとの同盟を継続した上で受けたいと思っています。また、そちらの情報をどこまで開示して良いかお聞かせください。なお、魔術師殺しのライダー陣営、真名イスカンダルと、巻き込まれマスターのアーチャー陣営が現在盲打ちと同盟、ここで宴会を開いてます」

「了解した。俺の方の情報はランサーのクラス以外は全部開示してもらっても良い。別に困るようなものもないしな。だが、俺の性格の方は僕の方の……不真面目そうな方を伝えてくれ。」

 

――しかし、魔術師殺しにイスカンダルか……あとで、イスカンダルの写メ撮ってエルさんに送っとくか。

 

「そんじゃ宴会場に行こうか。オン」

「分かりました。マスター」

 

 ランサーは現代服から甲冑姿に戻って、隠形の術を使って一般人に知覚されずに、ランサーとロードは式神の馬に乗って宴会場に向かう。

 

「あっ、キャスターの真名伝え忘れた……」

 

 まあいいか、彼らもこちらに来るそうだし、と有部理生は肩を竦める。

 

「ふざけた感じの時計塔のロードがこっちに遊びに来るって言ってまーす!」

 

 うん、必要事項は伝え終えたぞ。少女はなにか一仕事終えたような顔をしている。

 そんな中、アサシンはキャスターに興味を持ったようだ。

 

「貴女がこの国の神話を編纂なさった方ですか? 神話等に目が無いもので、宜しければ、詳しくお話ししません?」

「神話、まあ、歴史ですけど。それくらいなら。ええ、どうしても知りたいというのなら、ええ、お教えいたしますとも! 我が国最強のビーム放つ大蛇とか、巨大なイカとか、ニンジャとか、それはもうたくさんありますとも。この私が編纂した古事記に、書かれていないことなどないのです。むふん…………ぁ」

 

 自慢げに言ったキャスターであったが、自分が何を言ったのかに気が付いて顔を赤くする。

 古事記は恥ずべきもの。黒歴史だ。事実を乗せたがその書き方が今思うとアレだし、何より変なものとか結構生み出してしまったような気がする。アイサツとか! だからそんな恥ずべきものは編集あるのみ。

 

 そう思ってはいるのだが、自分の作ったものが褒められるのは悪い気がしないのは創作家の習性。だからこうやって自慢をやめられない。

 これでは盲打ちに笑われる。ちらりとそちらを見ると、どうやら聞かれていない様子。いや――にやりと笑ったのが見えた。聞こえている。

 

「うぅ、ばかぁ。私のばかぁ。なんで、あんなこと書いたのよぉ」

 

 もっとまともに書いておけばよかった。だからこそこうやって聖杯戦争に参加しているわけなのだが。

 

「どの宗教もそれぞれ素晴らしいところがあるものですが、一際華やかで良いですね。僕も記憶力には自信があるのですが、流石に貴女には負けそうですよ」

「私は、一度見た物、聞いたものは絶対に忘れないから」

「おお、それはすごい」

 

 そんな風に話していると、自然に入ってきた紅幽鹿が古事記にも書かれている挨拶をする。

 

「いつもジロジロ、あなたの後ろに這い寄る魔術師、紅幽鹿です!」

「です!」

 

 ランサーと二人で自称かっこいいポーズをとる。それを見てキャスターが頭を抱えていた。

 

「これが噂に名高い合コン!そこのお嬢さん、むさ苦し野郎共とじゃなくて、ピチピチの僕とお茶しない?」

 

 それから、紅幽鹿はひがつちをナンパする。

 赤面しながら、

 

「ふぇ!?ひ、ひとまずお友達からお願いします……?」

 

 彼女は恥ずかしがりながら好意的に受けとったようだった。

 ひがつちの反応に心配を覚えながら

 

「お、つまり脈アリかな?かな?あ、これ電話番号と布教用の古事記。どうぞ」

 

 それで、渡す時にひがつちさんの耳元で

 

「あんまり簡単に人を信用しちゃダメだぜ、レディ?」

 

 と、心配からの忠告を呟いて、盲打ちに握手をイスカンダルさんに写メを求めます。

 

「写メとな、よかろう。かっこよくとるが良い!」

 

 写メを取れたらⅡ世へ送る。

 

「なんぞ、俺なんかと握手かいな。ほれ、阿礼も」

「阿礼? もしかして、稗田阿礼?!」

「おう、そうじゃ。俺の女よ」

「…………もぅ」

「サインを下さい!」

「うぇ?!」

 

 紅幽鹿は買ってきた大量の古事記にサインを求め、時計塔に古事記を広めた事を伝える。

 

「…………」

 

 嬉しそうなにしながらこの世の終わりのような絶望したような器用な表情を浮かべてサインをしていく阿礼。

 

「これで自慢できる!」

「…………」

 

 そんなことをしていると、なぜかランサーがいじけていた。アーチャーと言って、宥めると、

 

「次やったら、アイアンクローですからね」

「あ、はい」

 

 物凄い怖かった。

 

「ふむ、良き主従のようだ。どうだ、うぬらも我が軍門に下らんか」

「悪いが、その誘い断らせて貰う。こんな状況になってくるとランサーの願いが叶えられないしな。……いや、ランサーだけがライダーについて行くのもアリか? ……どうするランサー? そうするんだったら俺は令呪をキャスターに譲るが?」

「マスター、御冗談を。征服王殿、私の願いは主と共に最後まで聖杯戦争を戦い抜くこと……そして、今世の私の主人は紅幽鹿ただ一人! 故すまんな、あなたの誘い断らせて貰うぞ征服王ッ!!」

「うむ、ならば良し。共に聖杯を奪い合う強敵として戦う事としようぞ」

 

 こうして同盟の夜は更けていった。

 




0日目の夜とは思えない進展っぷり。

そして、このあと1日目の昼、盲打ちはやらかす。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。