擬似聖杯戦争   作:三代目盲打ちテイク

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二日目 昼のこと

 大聖杯に魔力を終息させる陣の真ん中に蓬莱の玉の枝が突き刺さっている。

 一見無造作でありながら、職人芸のように絶妙に的確な位置に的確な角度で突き刺してあります。龍脈も何も傷つけずにそれでいて最大の効果を発揮するようになっている。

 

 おそらくどころか全世界を見渡しても、誰にもまねできないレベルだった。

 

「そしてこの蓬莱の玉の枝を挿した位置が実にいい。龍脈を傷つけず、むしろ富ます程。陰陽の推移を極めて良くする太極。素晴らしい。きっとこの位置に打った術者はよっぽどの腕なのでしょう。流石はキャスター。僕でもここまで的確に打てるかどうか」

 

 アサシンがキャスターを褒めるが、

 

「え? 私じゃないわよ? 私はただの歴史の編纂家。記録者でしかなくて、魔術とか無理だし。やったのはこいつ

。褒める言葉ならば、私よりもこいつにあげてちょうだい」

 

 キャスターは蓬莱の玉の枝を刺したのは盲打ちだと言って彼を指さした。

 

(孫くん……?)

 

 有部理生は即座に念話でアサシンへと話しかける。

 

(奇遇ですね、僕も今呼びかけようと思っていたところです)

(それは……嬉しいな。で、盲打ちだけど)

(術師としては確かに相当高い領域に在ります)

(でも)

(しかし今までの行動から鑑みて、あの位置に挿した動機が偶然以外に思いつかないのですが)

(奇遇ね。私も今同じことを言おうとしていたわ)

(……)

(……)

 

 盲打ちの評価が酷いが、それも当然の行いなのだから仕方ないだろう。

 

「なんぞ、言いたいことがあるんなら、言うてみィ。俺は怒らんでのォ」

「ないよ、うん、ない」

「はいはい、そんなことより出ましょう出ましょう。目的は果たしたんだし。五割くらい溜まっているみたいだし。今でも七割を超えれば起動できるはずよ、ね」

「おうおう、そうじゃのォ。まあ、それくらいあらァ、あとは俺が起動できるかのォ。まあ、それまでお前がいきちょったらの話じゃが」

「不吉なことは言わないで欲しいんだけど」

「さて何が、起こるかわからん人生じゃけェのォ」

 

 そう人生何が起きるかわからないのだ。

 盲打ちが天井を見上げる。

 

「なぁに、いつまでも見ているだけのつもりなんだら。さっさと表舞台に立ってみいや」

 

 そう誰に言うでもなく呟くのだ。

 

 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 1時限目が終わり休み時間になった直後、幽鹿から話を聞こうとしたひがつちだったが、他のクラスメートが幽鹿を質問攻めにし、タイミングを失う。

 

「く、紅さん!なん――」

 

「ねぇねぇ、紅君!

最近この街に来たらしいけど何処にすんでるの?」

「彼女とかいるの?」

「好きな女性のタイプは?」

「イギリスの学校ってどんな感じ?」

「何かスポーツとかはやってんのか?」

「あたし、今日放課後空いてるんでお茶しませんか!?」

「私と紅君が恋人になれるか占ってください!」

 

 −−おぉ、これが噂の転校生に対する質問攻撃かぁ。

 

 休み時間になった直後、クラスメイト達から様々な質問される幽鹿は謎の感動を覚えながら質問の答えを考える。

 −−色々と答えられない質問が多い。ひがつちの家に住んでるとは言えないないゆえに嘘と真実を混ぜて誤魔化す。

 

「では、答えますね。住んでる場所に関してはヒ、ミ、ツと言うことでお願いします。少し不思議な方が魅力的と言いますし」

 

 幽鹿はひがつちの方を見るが、直ぐに視線を質問してきた生徒に向けその生徒の唇に自身の人差し指を当て、妖しく微笑みながら答え、次に質問してきた生徒達に視線を向け、最初は悲しそうな表情で、次に真剣な表情で答える。

 

「彼女の有無については……残念なことに女性とは縁がなかった生活でして、悲しいことに女性と付き合ったことがないのです……。あ、だからと言って男性経験があると言うわけではありませんので、そこは勘違いしないで下さいね。

 好きな女性のタイプは、分かりません。ですが、私が女性を愛したら、命にかけてでもその方を大切にすると思いますよ」

 

 ――しかし、の子達、凄い勢いで質問するなぁ。イギリスの学校か……時計塔のことは言えないからなぁ。こんな感じで答えるか。

 

「イギリスの学校は、自分の知識を増やすのには最適な学校でしたね。ですが、友人と呼べるものは少なかったですね。ですから、皆さんと友達と呼べるような仲になって行きたいですね。スポーツはやってませんね。僕は文科系で天文……簡単に言いますと星について勉強したりしてますね」

 

 ――さて、最後の二つの質問に関してはどうするか……。てか、最近の子はここまでグイグイ来るの?!

 

 最後の二人に関して内心驚きながら、幽鹿は鞄の中から簡易的な占いをする為の道具を取り出し、占いを始める。

 

「お茶のお誘い嬉しいよ。でも、今日は予定があってね。また、別の機会とかはどうかな?あと、占いの結果は……少々残念だけど僕たちは恋人になれないようだ。

 けど、諦めなければ夢は叶うと言うだろう?上から言うみたいで私的には嫌だけど……頑張って私を堕としてくれ、僕がキミ達を好きになったらこの全てを捧げるほど愛するよ。レディ?」

 

 二人の少女に耳打ちで答えながら、流石にこれ以上の質問は苦しいのかチラチラと幽鹿はひがつちを見る。

 

 ――お願い、ちょっと助けて

 

 幽鹿は限界だった。

 

 そういう旨の視線を受け取り、ひがつちは幽鹿とクラスメートとの間に割り込む。

 

「ま、まぁまぁ……。紅さんも困ってるし、そこまでにしておいた方がいいんじゃないかな……?ね?」

 

 割り込みが入ったことで空気が萎えたのか、不満気に解散する生徒達。

 

「んだよ、ノリ悪ぃーな、ひがつち」

「なんか萎えちゃったね。はい、かいさーん」

「うぃーす」

 

 そして背後の幽鹿に振り返り――。

 

 ――後で話を聞かせてもらいますからね。

 

 そう、笑っていない目で告げ、席に戻る。

 

 ――若干の刺が入ってしまったのは別に、最後の女子二人に対する対応が面白くなかった訳ではない。

 ――そう、断じてそんな訳ではないのだ。

 

 昼休みに入ると幽鹿はひがつちを連れて屋上の方へ来ていた。ひがつちに自身が学校に来た理由を話す為だ。

ちなみに、幽鹿が念のためとして簡易版人払の結界を張ったため昼休みだと言うのに屋上には幽鹿とひがつち以外の生徒はいなかった。

 

(ランサー、ひがつち怖いんだけど。さっきからずっと目が笑って無いんだけど?!)

(そうですね。この私も怖いと感じます……マスターがここまで来る間に女子(おなご)に対して甘い言葉を掛けたからか、前日に男色家ネタで盲打ちと会話していたから怒っているのでは?)

(……それだ! ちくしょう、俺はホモでもゲイでもないのに!)

(とりあえず、学校に来た理由を伝えてひがつちの恋を応援していると言えば平気なのでは?)

(採用!)

(あ、女子に甘い言葉を掛けていたので、後でアイアンクローしますね)

(不採用!)

 

 質問会から幽鹿に対してだけ目が笑ってないひがつちに恐怖を感じランサーと会話し、ランサーにアイアンクローされる未来に絶望しながら幽鹿はここまで来た理由を伝える。

 

「質問会の時は止めてくれてありがとう。あー、此処まで来た理由はお前を守る為だ。何があっても守るって言ったしな。

 また盲打ちみたいに学校に襲撃かます馬鹿がいるかもしれない……あと、アドバイスをしに来た……寝不足で朝から頬を紅染め頭をフルフル振る奇妙な行動……」

 

 幽鹿はビシッと人差し指をひがつちに向け……。

 

「ひがつち、お前盲打ちかアサシンに恋してるだろ! 盲打ちは別に良いとして、アサシンは止めておけ。アサシンがマズイってわけじゃない。マスターの有部理生がマズイ。あの子絶対嫉妬して、ギリッして、グサッして、niceboatってやりそうだし……ひがつちが本気で迫ったら男って簡単に堕ちそうだし、そういう未来がマジで来そうだから止めておけよ」

 

 ドヤ顔と心配顏を同時に出すと言う器用なことをしながら幽鹿は自信満々に言い放った。

 

「…………………は?」

 

 なにを言っているのだこの人は、という考えが過りながらひがつちは少し固まった。

 

(マスター、顔がひどいことになっているぞ)

(……そんなひどい?)

(くっ、ああ。喜びと困惑が混ざったようななんともいえぬ表情だ。間違っても恋する女子がするものではないな)

(恋するって……、あ)

 

 そんなアーチャーと先ほどの幽鹿の言葉にひがつちはやっと自分の思いに気づいた。

 

 ――ああ、自分はこの少年に恋をしているのだと。

 

 そして少女は一つ深呼吸し、憑き物の落ちたような、されど少しの不満げを残した表情で。

 

「ありがとうございます。こんな時期に学校に入るなんて大変だったんじゃないんですか?でも、それぐらい心配してくれて、本当に嬉しいです。

 ……それと、私は別に盲打ちさんにめアサシンさんにも恋はしてませんよ? ……私が好きなのは違う人。

 それに学校に入るなら言ってくれれば良かったんです。お昼ご飯どうするんですか?うちの購買は競争率高いですからそれだけじゃ足りないですよね?

 だから、明日から私がお弁当作っちゃいます。好きなものとか、嫌いなものとか紅さんのこと、たくさん教えてくださいね?」

 

 そう言って幽鹿の側を通りすぎ。

 

「最後に、私が本気で迫れば男の人が落ちそうって言ってくれてとっても嬉しかったです!」

 

 振り返り今出来る最高の笑顔でそういった。

 

 ――そうだ、ぐちぐち悩むなんて自分らしくもない。ランサーのことだって正面から聞けばよかったのだ。

 

 だから、それに気づかせてくれた大切な相棒に向かって。

 

(アーチャー)

(ん?)

(ありがとうね?)

(――フッ。私はお前のサーヴァントだ。これくらいは当然のことだ。それに、全うな恋の行方というものも見てみたかったしな。)

 

 ――それでももう一度、

 

(本当に、ありがとう。)

 

 心の底からの感謝を言った。

 

――あぁ、その笑顔は反則だ。

 

 とびっきりの笑顔を見せてこの場を後にしたひがつちと、遠い日の約束した少女の笑顔が重なって胸が辛くなる。胸の辺りを強く握りしめる。

 

(……マスター)

(……すまない。大丈夫だ。ランサー、お前は俺の記憶を見たか?)

(ええ……だから、貴方が今思っていることも分かります。……マスターがひがつちを守ろうとするのは彼女と似て……)

(それは違う!俺は彼女があの子に似てるから守るんじゃない!ひがつちはひがつちだ。彼女とあの子を同一視するのは二人に対する侮辱だ……ランサー、お前は俺があの将と似ているから俺と一緒にいるのか?)

(否、私は貴方に仕えたいと最後まで戦いたいと思ったから一緒にいるのです。)

(俺はあの子に誓ったんだ。あの子に恥じないように生きると……自分の命の代わりに俺を救ってくれた彼女の分まで生きると)

(やはり、貴方は私の認めた主です。マスター)

(悪いな湿っぽい話しになった。そろそろ戻るか)

(はい。ところでマスター、ひがつちの言っていた別の好きな人とは誰でしょう?あと、食事はどうするのですか?)

(うーん、まさか有部理生じゃないのか?百合の花が咲くのか……食事に関しては栄養剤という大変便利なものがあってだね)

(マスター、それは食事ではありません。)

 

 最後の最後で締まらない空気を出しながら幽鹿も屋上をあとにした。

 

 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 歴代の聖杯戦争において今回、これ程短期間で状況が進んことは無いだろう。

 初日の盲打ちの朝からの召喚を皮切りに、これまた盲打ちの初日からの襲撃。そして同盟。

 

 現状、うちとセイバー陣営以外の五騎が事実上の同盟関係とみてもいい。

 

 三騎士のうちアーチャー、ランサー。隠密行動に長けているアサシン。行動力、機動力に優れているライダー。そして今回の聖杯戦争の鍵であるキャスター。

 ライダーとキャスターにおいては真名が解っているが他の三騎は不明。アドバンテージは自分の陣営にあるが盲打ちがいる以上、いくら情報を持っていても意味もないことだ。

 

 加えてもう一人の御三家の少年の方はサーヴァントがセイバーというだけで他のことは皆無と言っていいほど情報がない。

 だが、この際セイバー陣営は無視する。まだ2日目と始まったばかり。いずれ出会うだろうし、観測すればいいだけだ。

 

 故に優先すべきは彼女だ。

 学生らしく今日は御三家であるうちも理事を勤める学舎にいる。彼女の日常が終わり次第、会いに行こう。

 

 そう白騎士は決める。

 

 ――ああ、そういえばランサーのマスターが編入してきたな。同盟関係の彼女を守るための行動、合理的な判断だ。

 ――彼女は魔術の知識が乏しい。いくら昨夜学んだといっても所詮は一朝一夕ではどうにもならない。

 

 邪魔をされる可能性があるが、まあいいだろう。そうなれば彼にも聴けばいいだけだ。答えは多い方がいい。

 サーヴァントたちにも問うのもいいかもしれない。先達者に学ぶのは現代を生きるうえで必要な事だ。

 

 ――故に、故にこそ

 

 白騎士が行く――。

 




唐突に始まるラブコメ。

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