ドラゴンクエストモンスターズ≒   作:名無しのスライム

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それにしてもどの作品にもあらくれマスクっているもんですね。


冒険の書4[勇者の資格]

「熱い…」

 

 テリーは砂漠の島の中、汗まみれで歩いていた。厳しい日差しと乾燥が水分を奪っていく。

 この島はサンドロ島。ノビス島の普通の魔物が相手では不足となってきた駆け出しのマスターが来るような島だ。島の外周に狭い平地、島の中央を囲うような少しばかり高い丘を越えれば急な傾斜があり、大きな窪地が広がっている。中の海抜は負の値に突入しているのだが、協会による地盤調査などで安全が確認されている。

 窪地の中央には先住民族か何かの儀式で使われていたと思しき石造りのステージがあり、簡素なテントが併設されている。ここで闘技場が開かれていて、ここでSSランクに挑戦して勝利することがアロマGP出場の条件となっている。

 

「こんなのでヘバっていたら持ちませんよ」

 

 一方ルカはピンピンとしていた。

 

「シルバーデビル、凍てつく波動でコイツのフバーハを消し飛ばせ」

「生憎私は凍てつく波動を使えません」

 

 テリーはルカのアンドレアルがフバーハを使うところを見ていた。フバーハは戦闘中に使う炎や吹雪を防ぐ呪文だが、このように極端な寒暖を防ぐ方法として使うこともできる。

 二人は闘技場へと向かっていた。この世界の標準的なマスターの力量を計る、SSランクを突破する、未知の魔物との出会いなど目的は多々あったが、一先ず行き先が一致した二人は共に闘技場を目指すことにして今に至る。

 窪地へと向かう急な傾斜は協会によって整備され、ぐるりと回るように緩い斜面が作られ、危うげなく降りることができる。

 二人はテントの入り口から中へ入って様子を窺う。中には人が三人いた。一人は同業者と思しき若い男、もう一人はここに来るマスター向けに何かを販売している様子の女、そして最後の一人は入口からまっすぐの奥に佇む男。

 その男は筋骨隆々とした上半身を惜しげもなく晒しているにも関わらず、顔を角が付いたフルフェイスのマスクで覆っている。いわゆる"あらくれマスク"と呼ばれるタイプの人間だ。

 

「兄ちゃんたちマスターかい?どのランクに挑戦する?」

「「SS!」」

 

 テリーとルカが声をそろえて言う。その直後、互いに顔を見合わせた。

 

「僕が先にこの世界に来たんだ!僕が先だろう!」

「いーや僕が先だ!そっちは二匹しか連れてないじゃないか」

「僕のシルバーデビルはキラーマシンみたいに二回行動できるから二匹分だ」

「そんなの認められるもんか!何でもいいからもう一匹捕まえてから…」

 

 そんな二人を見て呆れたのか、あらくれマスクの男が恐る恐る声をかける。

 

「二匹しかいないってんなら悪いことは言わねぇ、やめときな。今回はそっちの兄ちゃんに譲るべきだ」

 

 テリーは一瞬何か言い返そうとするが言葉に詰まり、そっぽを向き舌打ちした。

 

「不本意だけど、ここは君に譲ってあげるよ」

 

 そう言って不機嫌そうにテントを後にした。それを見届けてからルカが参加手続きを始める。

 

「えーと、それじゃあ僕がSSランクに参加しますね」

「スカウトリングのナンバーは?」

「156です」

「OK、それじゃあ外で仲間の魔物と作戦会議をしててくれ。始まるころになったら呼ぶからな」

 

 

 テントの外ではふてくされたテリーがシルバーデビルとギガンテスと共に窪地に生息する魔物を探していた。上から見下ろしていたときは二足歩行で羽をもたないドラゴンの幼体、コドラが生息しているのが見えていた。しかし今は見る影もない。上位のドラゴン三匹と通常よりも遥かにに高い潜在能力を秘めたシルバーデビル、野性がまだ残るギガンテス、こんな化け物がまとまってやってきたのだから下位のドラゴンは逃げる他ないだろう。

 

「エントリーは終わったか?」

「作戦会議をして、呼ばれたら試合開始みたい」

 

 ルカはテリーを横目にテントの外に待機させた魔物の元へ駆け寄る。聞いた通りならば作戦会議をしているのだろうがテリーにはよく聞こえない。

 

 

 結局テリーは試合が始まるまでに魔物を捕まえることはできず、仕方なく観戦することにした。

 ステージの脇にあらくれマスクの男が立っている。ルカのドラゴン達と向かい合うようにどこからか連れてこられた魔物が三匹。巨大なイカの魔物、タコの下半身に鎧を着て槍と盾を持った人間の上半身が付いている魔物、人間の腕が生えていて槍を持った魔物。最初の一匹はオセアーノン。第八の冒険譚で主人公達が使う予定の航路を塞いだ魔物として知られている。実際は操られていただけで根は心優しく愉快な魔物だ。最後の一匹はグラコスという第六の冒険譚に登場する海底を支配する魔王の一角だ。テリーの知らない二匹目の魔物はオクトセントリーという魔物で、第八の冒険譚の世界に存在するのだが、特筆すべき存在ではないので省略され、テリーが知る機会はなかった。

 

「それじゃあ一回戦目、はじめ!」

 

 あらくれマスクの男が試合開始の合図を出すと同時に両者が動き出す。

 ルカのコアトルが先制してバイキルトをグレイトドラゴンにかけて攻撃の準備を整え、続いてアンドレアルがフバーハを唱える。グレイトドラゴンが動き出す前にオクトセントリーが槍に氷を纏わせグレイトドラゴンを突き刺す。しかしグレイトドラゴンはこれをものともせずに尻尾を振り回しオクトセントリーを吹き飛ばす。

 ステージの端に追いやられたオクトセントリーを横目にグラコスが呪文を唱えるとルカの魔物達の真上から巨大な氷が降り注いだ。ヒャド()系最上級呪文"マヒャデドス"だ。テリーの知る世界の魔物では習得はできない呪文で、マヒャドをも超える威力を誇る。

 フバーハによって防ぐことができるのは火炎と吹雪の"息吹"だけだ。最上級呪文が一切軽減されずに襲い掛かれば如何に上位のドラゴンといえど効果が目に見えて表れる。どの魔物も鱗の一部が剥がれ、息を切らしている。しかしその一方で相手を鋭くにらみつけ、その闘志が潰えていないこともわかる。

 オセアーノンは動かずに様子を見ているように見えるが、よく見れば息を吸い込み、息吹を放つ準備をしている。

 コアトルがベホマラーを唱えて傷ついた仲間たちを癒し、体制を立て直す。ルカはジリ貧を恐れ、アンドレアルにも攻勢に加わるよう指示を出す。アンドレアルは上を向いて思いっきり叫び、地獄の稲妻を呼び寄せる。ジゴスパークと呼ばれる強力な技だ。禍々しい紫色の稲妻がステージを包み込み、オクトセントリーはそのまま倒れた。

 グレイトドラゴンも続いて追撃を仕掛け、グラコスを倒すことに成功する。オセアーノンが灼熱の息を吐き出すも、ルカのドラゴン達が持つ高い火炎耐性によって一切のダメージを与えられずに終わってしまう。

 コアトルがトドメに灼熱の息吹を吐き出してオセアーノンも倒れた。

 

「試合終了!」

 

 あらくれマスクの男を合図にルカの魔物達も攻撃の手を止める。テントの中にいた女が倒れた魔物達を尻尾を生やした白い毛並みの丸々とした魔物に運ばせている。ももんじゃと言われる魔物で、鳥の様なくちばしを持っているが獣系に分類されている。

 

 

 その後にあらくれマスクの男が次の相手となる魔物達を連れてきた。一匹目は紅い肌の人型の魔物で、四本の腕に剣を二本と斧と棍棒を持っている。二匹目は雪だるまのような体型で、頭の毛をちょんまげにまとめ、ハープを持ったネズミの魔物。三匹目はカラフルな法衣を纏い、杖を持ったゾンビだ。

 一匹目はまおうのつかいと呼ばれる魔物で、キラーマシンやテリーのシルバーデビルと同じように他の魔物が一度行動する間に二度行動する能力を持っている。二匹目はドン・モグーラという魔物で、第八の冒険譚において、とある国の秘宝を盗み、その国宝を必要とした主人公たちに退治された魔物だ。ネズミに見えるがモグラの一種らしい。三匹目はワイトキングという魔物だが、テリーの知るそれとは少々姿が異なっている。

 いずれもテリーの知る魔物だが、上位マスターの連れているそれと遜色ないほどに訓練されていることが見て取れる。その一匹一匹が自分のシルバーデビルに引けを取らない力を持っていることを感じることができ、ルカの魔物達と比較して、その勝ちを確信することができない。

 

「それじゃあ第二回戦…」

「棄権します!」

 

 試合が今にも始まるという瞬間にルカが棄権を宣言する。

 

「この戦いに勝てても…もう後がない…」

 

 闘技場は三連戦に勝利することでクリアを認められる。合間での回復は認められていないため、ルカはそのことからこの消耗度では次の戦いを突破しても、その次の戦いを突破できないと判断した。

 

「甘えるな!ルカ!」

 

 しかし外野から唐突に喝が飛ばされる。テリーが珍しく熱くなっている。

 

「お前の魔物はお前のことを信じているんだ!お前が魔物を信じられなくてどうする!」

「でも…!」

 

 ルカは魔物牧場出身のため、マスターとしては優しすぎた。自分の魔物が傷付くさまを見るのがつらくて、強くなろうとした。ルカには勇気がなかった。自分の魔物では勝てないかもしれない可能性がある相手には挑むことを躊躇い、尻込みしてしまう。魔物を慈しむ気持ちはマスターにとって重要ではあるが、ルカの優しさは最早甘さの域に達している。マスターには優しさも必要だが、もう一つ大事なことがある。それは仲間に対する信頼だ。

 ルカは幼いころから魔物と触れ合っていたがばかりに、その見る目が必要以上に磨かれ、見た魔物が自分の分析を上回ることも下回ることもなく、戦う前からその勝敗について九割方予想がついてしまった。自分の分析能力を信じるがあまり、自分の魔物を信じることができていなかった。

 

「信じれば応えてくれる!それがマスターと魔物だ!」

 

 時に魔物を信じるマスターの気持ちが、魔物を成長させることがある。テリー自信にそういった経験もあったし、近い記憶では自分がけしかけた竜王と戦ったマスターとその仲間のスライムが本来以上の力を出したこともある。

 

「で、兄ちゃん棄権すんのか?」

「取り消します。試合を開始してください!」

 

 強者へと果敢に挑み、仲間を信頼する勇敢なマスター。その姿はまさしく伝承に伝わる勇者そのものだった。

 

「第二回戦…はじめ!」




・コドラ
 小型のドラゴン系の魔物であり、潜在能力は高くない。
 おとなしい性格なので駆け出しのマスターでも比較的楽に手なずけることができる。

・オセアーノン
 その巨大な触手から放たれる打撃も、口から放たれる息吹も強力な魔物。
 その楽天的すぎる性格がマスターの悩みの種。

・オクトセントリー
 他二匹に比べ潜在能力は低いものの、知能が高く、訓練次第でその実戦能力は本来の能力をはるかに上回る。

・グラコス
 その小さい体格と、伝承の中でもダーマの神殿で得た力でアッサリ倒されたエピソードのため、あまり強いイメージが無い。
 実際はヒャド系呪文の適性などに優れていて

・まおうのつかい
 魔王系の魔物の配合材料となる魔物。
 多数の腕と武器を使った器用な戦い方が魅力的で、主人にも従順だが如何せん配合先の人気が強い。

・ドン・モグーラ
 ネタキャラのように見えるが案外侮れない強さを持つ。
 オセアーノンと同じく楽天的な性格のせいで手なずけにくい。

・ワイトキング
 ゾンビ系なので意志が弱く、基本的に命令には忠実。
 呪文攻撃が得意だが肉体的には撃たれ弱いのでフォローが必要。
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