IS インフィニット・ストラトス 獣の指揮者   作:ユキアン

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第10話

side アレクシア

 

 

ADのコンテナに隠れながら襲撃者に向かってサブマシンガンを撃ちまくる。それと同時に所員に指示を出す。

 

「皆、弾を惜しまないで。ありったけの弾幕を張りなさい。ラウ、データの保護は」

 

「あと2分待ってくれ。イルヴァ、武装の方は任せる」

 

「分かってる」

 

「ヤバいぞ、アレクシア。サマエルとヴァンのシグナルが途絶した。更に所長が重傷を負った。このままでは命に関わる!!」

 

「なんですって!?」

 

ユウダイの報告に思考が一瞬だけ止まる。すぐに気持ちを切り替える。

 

「ユウダイ、ここは任せるわ。データが回収出来次第撤退しなさい。私はジェイルとシャルちゃんの救助に行ってくるわ」

 

「ああ、急げ」

 

「2号機までの援護をお願い」

 

「全員、グレネードを構えろ。左から順に時間差で投げ込め。3、2、1」

 

次々と入り口にグレネードが投げ込まれて襲撃者側からの銃撃が止む。その隙にADの2号機にまで駆け寄り、素早く搭乗する。コンテナは既に積んであるのですぐにでも戦闘に移れる。壁越しに左腕のマシンガンを撃ち、襲撃者を一掃する。

 

「よしユウダイ、指揮は任せるわ。人命第一で最悪データの破棄も許すわ」

 

「了解。負傷者を先に運び出せ。武装はエール・ド・ラ・リュミエール以外破棄して構わん」

 

所員をユウダイに任せて私はアリーナに突入する。中央ではサマエルとヴァンが無惨な姿を曝し、その近くにジェイルとジェイルの前で慌てているシャルちゃんを見つける。すぐに傍に着地してADから降りる。

 

「アレクシアさん、お兄ちゃんが!!」

 

「落ち着きなさい、シャルちゃん!!」

 

シャルちゃんを一喝して落ち着かせる。軽くシャルちゃんを見ても頭から血を流しているし、左足も折れているみたいね。十分重症だけどヘッドギアから鎮痛剤を投与されたのか痛みは無さそうね。

 

「シャルちゃん、少しだけ待っていて頂戴。ジェイルの応急処置がすんだら安全な場所に運ぶから」

 

「私の事よりお兄ちゃんを」

 

シャルちゃんに請われてすぐにジェイルの容態を確認する。体中が酷い怪我を負っているけど中でも一番不味い事は背中から腹部にかけてヴァンの装甲の一部が突き刺さっている。抜けば大出血は免れないだろうが、動かせば臓器を傷つける恐れがある。このままでは確実に命を落とす。だけど、一つだけ、本来なら無理だけど、ジェイルなら助かる方法がある。その為の道具を私は持ち続けている。胸元を開いて、肌身離さず持ち続けていた鎖で巻かれたペンダントを取り出す。

私の為に産み出されて、互いを拒絶してしまい、それでも共に在る事を選んだ私のパートナー。

封印の鎖を解き、中のパラメーターをリセットしていく。それが終わり次第、ジェイルに握らせる。同時にヴァンの装甲の一部を持ち、全力で引き抜く。傷口から大量の血が流れ出す。

 

「シュバルツェ・ハーゼ、ジェイルの事を頼んだわ」

 

ジェイルに握らせた私のパートナーだったISを起動させる。

世界初の全身装甲型IS、シュバルツェ・ハーゼ

戦う為だけに産み出され、その身体を血に染め続けた数少ないIS。表では活躍せず、知る者も少ないそれは、自分と搭乗者を生かし続ける事に特化している。どのような環境、状況からも単独で生き残り任務を果たしてきた。

 

「なんで、なんでお兄ちゃんがISを?」

 

「シャルちゃん、今はそれはおいておきなさい。それよりジェイルはこれで助かるわ。シャルちゃんの治療は今は出来ないから我慢して頂戴」

 

「大丈夫です。鎮静剤のおかげで痛みは無いですし」

 

「そう。ならこのまま移動、ちっ」

 

素早くADに搭乗してコンテナを盾の様に展開してシャルちゃんとジェイルを守る。私達を始末する様にIS用のミサイルが降り注ぐ。センサーにはリヴァイヴともう一機のISの反応が表示される。

 

「ちょっとだけ我慢して頂戴」

 

コンテナを放棄して、両手でシャルちゃんとジェイルを抱えてピットまでランダム回避を行ないながら帰還する。

 

「ユウダイ、シャルちゃん達を頼むわ」

 

まだ残っていたユウダイにそう指示を出しながら再び放たれたミサイルをマシンガンで撃ち落としていく。

 

「了解って、おい、このISを、ああもうコンテナ用のキャリーを持って来い。それに乗って逃げるぞ。疑問は後にしろ。今は生き残るのを最優先」

 

色々と私に聞きたい事があったようだけど、なんとか押さえつけて逃げる事を最優先したようだ。それを見届けて再びアリーナに向かう。

 

「ここから先には行かせない」

 

突入してきそうだったもう一機のIS、打鉄を蹴り飛ばして押し戻す。状況は最悪、IS相手に1対2、しかもコンテナ無し。考えられる限りではかなり最悪だ。だけど、逃げるわけにはいかないだろう。

 

「相手になるわ。かかってきなさい」

 

搭乗者の保護を目的としたシステムを全てカットした上でADのリミッターを全て解除する。これで一定時間はISと互角に戦える。徒手空拳なのは何時もの事だ。リヴァイヴの方はその場を動こうとせずに打鉄だけが実体剣を取り出して斬り掛かってくる。振り下ろされるそれを装甲が一番厚い部分で受けて搭乗者の首を掴み、躊躇する事無く折る。絶対防御が働こうがどうする事も出来ない一撃によって打鉄が地面に落ちていく。それを見てリヴァイヴの搭乗者がこちらに興味を持ったのか通信を繋げてきた。

 

『良いわね、その反応。殺す事に一切の躊躇いが無かった。貴方もこちら側の人間のようね』

 

何処かで聞いた事のある様な声だけど、今はどうでも良い。

 

「どちらかと言えばそうよ。私の手は血にまみれている。だけど私はこちらを求めるわ」

 

『あらあら、誘う前に断られちゃったか。仕方ないわね』

 

「ごめんなさいね。それで、ここで退いてもらえると嬉しいのだけれど」

 

『残念だけど、もう一つやらなきゃいけないのよ。ジェイル・デュノア、彼の登場は私達にとって歓迎すべき事だけど時期が悪過ぎた。計画が狂う位なら、いっその事消せというのが上層部の意向よ。私としては今日のADの登場で彼の価値は下がったという見方だけどね』

 

「そう、ジェイルを殺るというのなら退くわけにはいかないわね」

 

装甲に食い込んでいる打鉄の実体剣を引き抜き、構える。

 

『貴方とは出来れば全力でやり合いたかったわ。私と同じ産まれ方をしている貴方とは』

 

リヴァイヴも同じ様に実体剣を構える。

 

「同じね。ということはデザインベビー。遺伝子操作を行なって産まれてきた人造人間か。嫌な世の中よね」

 

『需要があるからこそ私達は産み出された。それを否定するのはどうなのかしら』

 

お互いの中間地点で斬り結ぶ。私は右手のマシンガンを撃ち、リヴァイヴは新たな実体剣を取り出して私のマシンガンを切り落とす。

 

「そんな需要はクソ喰らえね。私は自由に生きる」

 

『同感ね。脱走防止用のナノマシンが無ければ私だって逃げてたわ』

 

壊れたマシンガンを切り離してナイフを展開する。長さが合わないので実体剣も投げ捨てて、両腕のナイフで捌いていく。

 

「そんな物、自分に高圧電流を流せば簡単に潰せるわよ」

 

『その言い方からすると自分でもやったみたいね』

 

片方の剣をナイフで挟み込んで叩き折る。瞬時加速で距離を離されてライフルを構えられる。

 

「まあね」

 

『私もやってみようかしら』

 

サマエルのコンテナの影に飛び込んでこじ開ける。中からリニアアサルトライフルを取り出してコンテナを盾にしながら発砲を続ける。

 

「一つだけアドバイスをあげるわ。ISを待機形態で持って居なさい。下手すれば死ぬわよ」

 

『ご忠告ありがとう』

 

射線を見切られて接近されるのでコンテナ内にあったグレネードをそのまま起爆させて自爆に巻き込む。お互いに爆風に飛ばされる。チャフグレネードも混ざっていたのか視界が一時ダウンする。仕方なく機体のチェックで時間を有効に使う。今の自爆で機体のあちこちに不備が発生している。全身の装甲が穴あきチーズみたいになっていて防御が期待出来そうにないし、通常機動ならともかく戦闘機動を行なうのも難しそうだ。それでも向こうも絶対防御を発生させたはず。エネルギーはかなり不安なはず。

視界が回復して見えた光景は、先程までリヴァイヴに乗っていた人物が血を流しながら打鉄に乗り換えて私に向けてライフルを突きつけている所だった。

 

『終わりね。何か言い残す事は』

 

「貴方の名前を聞かせてもらえるかしら。本名じゃなくて良いわ」

 

『レイン。それが私のコードネームよ』

 

「ありがとう、そしてさようなら」

 

ごめんね、ジェイル。私が約束を破っちゃった。

レインがトリガーを引き、私の身体を貫いていく。もうすぐ死ぬって言うのが分かるのに、恐怖も何も感じない。ただ残念だという気持ちと、これからのジェイルの事がどうなってしまうのかが気になってしまう。

 

『貴方の事は忘れないわ。ゆっくりと休みなさい』

 

レインが私の腕を取る。そこで不思議なことが起こる。所々が赤く染まっている黒いワンピースを着た白い髪の少女が泣いている。知らないはずなのに私は彼女を知っている。そして隣に寝ているジェイルを見て理解する。

 

「最後にあなたに会えて良かったわ。ジェイルをお願いね」

 

少女は泣きながらもしっかりと頷いてくれる。

 

 

side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side ジェイル

 

 

目が覚めると、知らない天井が広がっていた。頭が回らない、一体何があった?まずは状況を確認しなければ。音、これは心電図か?ならばここは病院?口元に何かが、人工呼吸器?だんだんと頭が回り始めた。確かリヴァイヴが、そうだ、シャルはどうなった!!身体を起こして気付く。腹部が何ともない。確かに何かが貫いた。おそらくは装甲の一部のはずだ。

入院着をまくり上げて腹部を確認しても傷一つない。オレの身体に一体何が起こったんだ?そもそもオレは一体どれだけ眠っていたんだ?

分からない事が多すぎる。

 

「ジェイル!?もう気がついたのか」

 

頭を抱えていると入り口の方からユウダイの声が聞こえてきた。

 

「ユウダイ?」

 

「少し待っていろ、今医者とシャルちゃんを呼んでくる」

 

出来れば先に疑問に答えてもらいたかったが確かに意識不明だった患者が意識を取り戻したのなら医者に確認させるのが当たり前か。仕方ないのでベッドに身体を預ける。しばらくすると医者がやってきて色々と検査をされる。カルテとその結果を見ながら何度も唖然としながら検査を続けられる。結果はすぐにでも退院可能らしい。その結果が余計にオレを不安にさせる。何かがオレの腹部を貫通した。これはまぎれも無い事実だ。意識を取り戻した時には異常が無いというのはまだ理解できる。それだけの時間、意識を失っていたのならな。だが、筋肉の衰えから考えれば一週間も経っていない。何らかのイレギュラーが発生しているのは明らかだ。不安を無理矢理押し殺した頃にシャルが病室にやってきた。車いすに乗っており、それをユウダイが押している。そして一番気になるのは今まで泣いていたと思われる目だった。

 

「ユウダイ、一体何があったんだ。オレの身体はどうなったんだ」

 

新しく情報を得る度に疑問と不安が膨れ上がっていく。壊れてしまっている自分でも混乱する程に。

 

「何より、アレクシアはどうしたんだ?」

 

アレクシアという単語にユウダイとシャルが反応する。シャルは俯いてしまい、ユウダイもオレに顔を合わせようとしない。そこから最悪の事態を理解してしまう。

 

「おい、冗談だろう。何時もの様に場を和ませるジョークなんだろう。なあ、何か言ってくれ」

 

「……トライアル終了後、テロリストによる襲撃によりリヴァイヴが奪取、同時にヴァンとサマエルが大破させられた。所長もその際にシャルちゃんを庇い、重傷を負った。その後、アレクシアによって所長は一命を取り留め、アレクシアはそのまま2号機を使いテロリストと交戦、リヴァイヴを大破させるもテロリストの打鉄によって」

 

ユウダイは最後の部分だけを言わなかった。

 

「……会えるか?」

 

「今ならなんとか、あと一日遅ければ無理だった」

 

ベッドから起き上がり、ユウダイに先導されて霊安室に向かう。シャルも一緒に付いて着ていたみたいだが、それを気遣う余裕はオレには無かった。霊安室に寝かされていたアレクシアの遺体は、予想していた物より綺麗な物だった。

 

「銃弾は身体に数発叩き込まれているだけで、ISによる物だとは思えない位に綺麗な物だ」

 

隣でユウダイが何か言っているが耳に入って来ない。

そっと顔に触れてみる。一切の暖かみを感じない。人形にでも触れている様な感覚に……

 

「お兄ちゃん」

 

「すまない。二人だけにしてくれ。頼む」

 

「……さっきの病室で待っている。行こう、シャルちゃん」

 

「……はい」

 

二人が霊安室から出て行くと同時に膝から崩れ落ちる。

 

「っぁぁああああああああああああああああ!!」

 

オレの口から言葉に鳴らない音が漏れる。同時にオレの中の何かが完全に壊れる。

もう、オレは歩けない。オレの全てだったアレクシアが居なくなってしまったのだから。シャルやリリィも確かに大事ではあるが、オレの中ではアレクシアが芯の役目を担っていた。それが無くなってしまえばどうする事も出来ない。

 

「どうしてだ、どうしてオレばかりがこんな目に会うんだ!!」

 

床に何度も拳を叩き付ける。皮膚が破けて血が流れても止める事無く何度も何度も全力で拳を叩き付ける。そこでふと気付く。流れている血の量が少ない事に。床を殴りつけている拳を見ると、既に傷が塞がっている。

 

「はっ、ははは、随分壊れたと思ったら、とうとう化け物の域に達していたのかよ。ふは、はは、あはははははははは。巫山戯るんじゃねええ!!!!」

 

再びの全力の一撃に拳が砕け、再生する。背後で扉が開く音がする。

 

「失礼、ここに先日のテロにあった遺体があると聞いたのだけど」

 

知らない女の声だ。オレは後ろを見ずに答える。

 

「ああ、そうらしい。オレも詳しくは知らない」

 

「そこの彼女は貴方の大切な人?」

 

「ああ、大切な恩人で、師匠で、姉みたいな、オレの初恋の人だ」

 

「そう」

 

背後で銃のスライド音が聞こえると同時に身体は勝手に動き出す。素早く前に転がり、アレクシアが寝かされている台を盾にする様に隠れる。

 

「まだ心は完全に折れていないようね」

 

オレの背後に居た女は黒と白しかない女だった。肌以外、服も髪も瞳も全てが完全なる黒。そして肌は病人と、いや、人形と思える位に何処までも白い。

 

「はじめまして、ジェイル・デュノア。私はレイン、そこで眠っている彼女を殺した者」

 

その言葉を聞き、飛び出しそうになる。だが、アレクシアに鍛えられた身体はこの場を動こうとはしない。

 

「今日此所に来たのわ、明日には彼女が埋められると聞いて最後のお別れを言いに来ただけよ。貴方と出会ったのは偶然」

 

「殺した相手に態々挨拶に来ただと?巫山戯ているのか」

 

「巫山戯てなんていないわ。なぜなら彼女は私の姉の様な物だから」

 

「姉の様な物?デザインベビーの事か」

 

「そうよ。調べた所、彼女は最初の被験者ということだけは分かったわ。そして私は第2世代、だから知りたかった。私の姉はどんな人だったのかを。それは貴方の言葉で知れたわ。その成果も。だから最後に彼女の名前を教えて欲しいの」

 

少しだけ悩み、答える事にする。

 

「アレクシア・フォルスター。オレ達にはそう名乗っていた」

 

「ありがとう。今日はこれで帰らせてもらうわ」

 

「待て」

 

銃を懐に戻して帰ろうとするレインを引き止める。

 

「何かしら」

 

「オレは、お前を許さない。例えアレクシアが許そうとも、オレは絶対にお前を殺す」

 

「ええ、貴方にはその権利があるわ。それまでは私は死ぬつもりは無いわ。だけどね」

 

オレが反応出来ない速度で銃を抜いたレインが発砲する。弾は跳弾してオレの右足に命中する。

 

「何!?」

 

「これ位には反応出来ないと返り討ちにしちゃうわよ」

 

そう言ってレインは霊安室を後にしていった。追いたくても銃弾が体内に残ったままで傷口が再生を始めるので無理矢理傷口を広げて銃弾を取り出し、再生が終わる頃には既に逃げ切られていた。だけど、収穫は一つだけあった。オレの生きる目標が見つかった。奴を、レインを殺す。その為の牙を研ぐ。これでオレは再び立ち上がれる。アレクシア、お前が見たらたぶん悲しむんだろうけど、オレにはこれしか道は無い。許してくれ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アレクシアの葬儀が終わり、参加していた所員達を集める。

 

「ユウダイ、ラウ、報告を頼む」

 

「今回の事件によるサンクチュアリの被害は、サマエル1号機とヴァンは中破、サマエル2号機は大破。死傷者17名、内訳は死者1名、重傷者6名その内1名は植物状態で回復の見込みは無い。政府側からは出来る限り早急にサマエルの量産、改良に取り組む様にとの指示が来ている」

 

「それからテロの首謀者は不明、実行部隊は亡国機業と呼ばれる組織だ。この亡国機業だけど、色々と諸説があるんだけど第2次世界大戦期から暗躍していた組織だと言われ、現在ではISすら所有する巨大組織だ。それにも関わらず詳細な情報はほとんど無い」

 

二人の報告が終わり、場を沈黙が覆い尽くす。

 

「諸君、諸君はどうしたい?」

 

誰も答えない。

 

「諸君、オレは奴らに復讐したい」

 

誰も反応を示さない。

 

「諸君、これを境にサンクチュアリから離れてもオレは何も言わない」

 

誰も離れようとしない。

 

「諸君、オレに力を貸して欲しい。オレ一人ではアレクシアの仇を討てない」

 

オレは頭を下げる。

 

「どうするかは諸君の判断に任せる。一ヶ月後にサンクチュアリは再活動を始める。それまでに決めておいてくれ、解散」

 

共同墓地から帰って行く所員達を見送り、最終的にオレとシャルそれからチーフの3人が残る。

 

「何人残ると思う」

 

「さあな、とりあえず抜けそうなのが機体班では3人だな」

 

「ソフト班も3人だね」

 

「大丈夫」

 

最低でも6人か。随分残る事になるな。

 

「すまん、個人的な復讐に付き合わせる事になって」

 

「気にするな。オレ達だって所長程とは言えないが、アレクシアには世話になったんだ。復讐したい気持ちは分かるさ」

 

「右に同じ」

 

「うん」

 

「私だって同じだよ、お兄ちゃん」

 

「ありがとう。皆」

 

もう一度四人に頭を下げる。頭を上げて気持ちを切り替える。

 

「ユウダイ、オレの身体は一体どうなっているんだ」

 

「はっきりと分からないが、とりあえずまともな人間とは言えなくなった。所長の身体に融合する様にISコアらしき物、おろらくはISコアが変質した物が体内にある。それによってかどうかは分からないが、身体が普通の細胞とナノマシンで構成されてる……ぽい。詳しく調べても朧げにしか分からないのが現状だ」

 

「その為かどうか分からないけど、とりあえずそのコアらしき物の解析とかはサンクチュアリに丸投げされた上に他の企業が所有するISコアを回される事になってる。ADの存在は秘匿される事になったけど予算は最優先で回してくれるみたいだ」

 

「理由はオレの存在か」

 

「たぶんな。所長のデータとかを餌に色々と国益になることをするんだろうな。例えばドイツになら向こうが開発中の第3世代用の装備のデータとか、アメリカなら資源ってな具合にな」

 

「そこは別に反対しないさ。となると優先事項はオレのISらしき物の解析と装備の開発、その次にADの改良と量産ラインの確立、それより若干優先度は下がるがシャルのISの開発、最後に当初のプランから存在する空中母艦の建設かな」

 

「空中母艦に関しては政府にプレゼンを行なう方が先だと思うけどね。まあ、そっちの方は後回しで良いでしょ」

 

「そうだな。とりあえず方針はそんな感じで良いだろう。出来れば新たに人員を増やしたい所だが、信頼出来る奴というのが一番の条件だからな」

 

「一応信頼が出来る奴が何人か居るけど、声をかけようか?」

 

「僕の方も何人かいるよ」

 

「同門、仕事が無いって」

 

「落ち着いた頃に声をかけてくれ。一人一人会って採用するかどうかを決める」

 

「それしか無いか」

 

「シャルは身体を治す事を最優先。全治まで1ヶ月だったか?」

 

「うん。だけど、リハビリもあるし鍛え直す必要もあるから2ヶ月は現場に戻れないと思う」

 

「問題は無いな。ではオレ達も引き上げよう」

 

シャルの車いすを押しながら共同墓地を後にしようとする。

 

「所長、最後に声をかけなくていいのか」

 

「一人でこの場に居たら、弱音を吐いて歩けなくなりそうだからな。ここに来るのは全てが終わったときだけだ」

 

足を止めずにオレは歩き出す。ここに戻ってくるのはアレクシアに復讐を終えた事を報告し、そして……

 

 

side out

 

 

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